野村證券に業務改善命令

またまた野村です。金融庁は野村証券と野村ホールディングスに金融商品取引法に基づく業務改善命令を出す方針を固めたという報道です。東京証券取引所の市場区分見直しに関する情報を一部の投資家に漏えいした問題についての金融庁の判断ですね。野村証券に対する行政処分は2012年のインサイダー問題以来だそうですが、ここのところ不祥事だらけで常連さんのイメージです。

大崎貞和フェロー

情報を流したのは野村総合研究所の大崎貞和フェローという人物。東証が設置した市場区分に関して議論する有識者懇談会のメンバーです。この「市場構造の在り方等に関する懇談会」での議論・情報を野村証券のストラテジストや機関投資家を顧客に持つ営業員に伝えていたというお話。

この事件は3月下旬に発行されたFACTAという雑誌が報道していました。この情報が機関投資家に対して、野村証券のビジネスとして提供されていることから、会社ぐるみの対応ではないかとも言われています。大崎氏はこの報道を受けて政府の国会同意人事案から外されたりしてますね。

漏えいした情報

実際に機関投資家等に提供された情報というのが、「東証は一部上場・降格基準を250億円にしたい意向」というものらしいです。当時、降格基準は時価総額500億円ではないかとの観測がありました。そのため500億円未満だからとして売られていた銘柄は、買戻しが入るかも、、、みたいな感じで情報提供されているらしいです。

これって情報漏えいではなく、立派に積極的な情報提供ですよね。金融庁はインサイダー取引には当たらないとしているようですが、一連の行為は相当酷いです。ただ、一方で、「野村は主幹事企業の一部上場という地位を守るために、意図的に情報を流して議論を潰したのではないか」なんていう見立てまであるようです。

コンプライアンスの鬼門 プロフェッショナル

今回の業務改善命令、主役は政府が頼りにするほどの有識者。いわゆるプロフェッショナルはコンプラ的には非常に扱いにくい存在です。高度な専門性を有するが故、企業は非常に高い報酬で報います。高収入の彼らは一般的な社員とは別という感覚を持ちやすく、そのため会社のルールを守らない傾向が強いんですね。また、この手の輩は短期間で企業を退職し、別の企業に転職していく傾向もあり、会社に対するロイヤリティも低くなりがちという事情もあるような気がします。

終身雇用や年功制が廃止される方向に進んでいますが、一方で会社を次から次へと渡り歩く専門性の高い社員達に対して、コンプライアンスをいかにして徹底していくか。これは意外に大きくて、新しい課題だと思います。