トヨタやホンダなどで不適切事案が判明?

日刊自動車新聞は5/31、「トヨタやホンダなどで不適切事案が判明 国交省が調査結果公表へ 悪質性など踏まえ処分検討」と報じました。ダイハツ工業などの認証不正を踏まえ、同様の不適切な事案がないかどうか、国土交通省が自動車メーカーなどに社内調査を指示した結果のようです。

日刊自動車新聞

日刊自動車新聞は、1929年(昭和4年)創刊の世界最大級の自動車業界紙なんだそう。 日本国内外の自動車業界動向を取り扱っています。その電子版で今回この件が報じられてます。

調査結果

ダイハツのほか、日野自動車や豊田自動織機で相次いだ認証不正を踏まえ、国交省は1月末から順次、自動車や装置の型式指定を取得している自動車メーカーやインポーター(輸入業者)、装置メーカーなど合わせて85社に対し、型式指定申請に関する社内調査と報告を求めていました。

過去10年を遡り、型式指定申請に関する各種試験の運用や試験結果などを調査するとともに、客観性を担保するため外部組織などによるチェックも求めていたそうです(報告期限は6月上旬)。

同紙によると、これまでにトヨタやホンダが不適切な事案を報告したもよう、だそうです。常連さんのトヨタはともかく、これまでこうした不正とは縁がなかったホンダまで出てきたんですね。2社以外にも不適切な事案が見つかっているとの情報もあるそうです。道路運送車両法上、問題があるかどうかはこれから精査されるようです。

三菱製紙 子会社三菱製紙エンジニアリング株式会社で検査不正

三菱製紙は5/10、「当社子会社での不適切な事案の判明及び特別調査委員会の設置について」を公表しました。同社100%子会社である三菱製紙エンジニアリング株式会社において、製造していた耐熱プレスボード製品に関して検査測定データの改ざん及び所定の検査の一部不実施の事実が判明したということです。

三菱製紙

三菱製紙は印刷用紙、情報用紙を提供する製紙会社。インクジェット用紙、特殊機能紙、写真印画紙、写真感光材料、電子材料、CTP印刷版や印刷製版機材なども手掛けています。王子ホールディングスの持分法適用関連会社で業界7位程度の企業ですね。もちろん東証プライム上場企業です。

不正の概要

不正が発覚したのは100%子会社の三菱製紙エンジニアリング株式会社。三菱製紙白河事業所で製造していた耐熱プレスボード製品に関する検査においてです。出荷検査の一部の検査項目につき、検査で得られた実際の数値とは異なる数値を検査成績書に記載していたほか、 金属探知機による全数検査が抜き取り検査となっていました。

耐熱プレスボードとは、「全芳香族ポリアミド繊維を主成分とする、高い耐熱性・難燃性・電気絶縁性を持つボードで、抄紙技術で形成したシートを複数枚重ねてホットプレスしたもの」、と説明されています。変圧器等に使用されるようです。

こうした事実を受け三菱製紙では、外部専門家である弁護士 4 名で構成される特別調査委員会を設置し、同社及び同社子会社の各製造拠点におけるた耐熱プレスボード製品だけでなく、類似事案の有無も含め、調査を実施するとしています。

住友重機械工業 子会社住友ナコフォークリフトで検査不正

住友重機械工業子会社の住友ナコフォークリフトは4/26、「フォークリフトの特定自主検査における不適切検査について」を公表しました。労働安全衛生法並びに労働安全衛生規則で定められているフォークリフトの特定自主検査において、定期自主検査指針に沿った検査を行わなかった事実が判明したということです。

住友ナコフォークリフト

検査の不正が判明したのは住友ナコフォークリフト販売株式会社。住友重機械工業と米国ハイスター・エール・グループの合弁会社だそう。トヨタ(豊田自動織機)、三菱ロジネクスト、コマツに次ぐ国内第4位のフォークリフトメーカーです。

不正の概要

制動装置の検査のうち、定期自主検査指針で示されているブレーキ内部の検査において、ブレーキドラムを外しての検査を作業員の判断で省略し、怠っていたというもの。2017年~2019年、2021年の2台の車両で延べ4件の不正が行われていたということです。なんかよく分からん表現です。他に同様の不適切な検査がないか、現在調査中とのこと。

ちなみに、豊田自動織機のフォークリフトでは、排ガス性能の認証不正ということで、国土交通省の所管でしたが、住友ナコのこの事案は労働安全衛生法に関するもので厚生労働省の所管なんだそうです。

住友重機械工業では数年前に、本社やグループ会社で大規模な検査不正などが発覚しています。この事案も今後の調査により不正の拡大が判明するかもしれません。

ファナック株式会社 規格不適合検査で特別調査委員会を設置

ファナック株式会社は4/24、「当社欧州向けロボカット製品における EMC 指令に基づく整合規格不準拠の試験実施の疑義及び特別調査委員会の設置に関するお知らせ」を公表しました。決算発表時期を迎え、またこうした検査関連の不正が出てき始めましたね。

ファナック

ファナックは、工作機械などに搭載されるCNC(コンピューター数値制御)装置で世界トップシェア。CNCやサーボモータなどのFA(ファクトリーオートメーション)部門を主軸に、その基本技術を応用してロボット事業、ロボマシン事業(小型マシニングセンタ、電動射出成形機など)なども手掛ける東証プライム上場企業です。

不正の概要

同社が製造・販売するロボカット製品(ワイヤ放電加工機)について、欧州の EMC 指令の整合規格である EN 規格への適合性を判断するために、同社が当該規格に基づいて実施したとされる試験が、当該規格に準拠しない条件の下で実施された可能性があるとのこと。

その結果、EMC 指令適合性の確認結果に疑義がある状態で欧州へロボカット製品を出荷している可能性があることが判明したといいます。同社の社内調査により 2024年3 月下旬に判明したということです。

対象製品に関して事故が発生した旨の報告は受けてないということですが、事実関係の調査を徹底的に行うため、特別調査委員会を設置することになりました。そういえば、先月、東京国税局がファナックに対し、およそ97億円の申告漏れを指摘したっていう話もありましたね。個人的には非常に良い会社というイメージでしたが、何かが変化してきてるんでしょうか。

IHI 連結子会社のIHI原動機 燃料消費率の測定データを改ざん

船舶用のエンジンなどを製造するIHI原動機が燃料消費率の測定データを改ざんしていたことが、報道されました。このデータは試運転の際に測定して取引先に報告するもので、国土交通省は会社側に事実関係の報告を求めるともに、詳しいいきさつを調査する方針とのこと。

IHI原動機

IHI原動機は東証プライム上場企業であるIHIの100%子会社で、資本金は30億円。内燃機関、ガスタービン機関、舶用機器の製造及び販売を行っている企業で、源流は上場廃止となった新潟鐵工所みたい。親会社のIHIは、航空エンジンで国内トップシェアを有し、橋梁など海外大型プロジェクトで実績を持つ総合重機大手の一角です。

データ改ざん

IHI原動機は船舶用のエンジンを組み立てた後に行われる試運転の成績書に、実際に測定された燃料消費率とは異なる数値を記載していたということです。

この成績書は試運転のあとに取引先に報告するもので、2003年以降に製造された国内向けの船舶用エンジンおよそ1900台のうち、1500台余りでデータの改ざんが行われていたとのこと。また、およそ800台で取引先との間で決められた値を満たしていなかったということです。

IHIもこの事案について開示を行っていますが、この中での子会社関係者に対するヒアリング調査に関する以下の記述は気になります。「燃費データを良く見せることや、データのばらつきを整えるために修正していた旨の証言があったほか、前任者から引き継いだとの証言があった」。

親会社のIHIは2004年、2007年に加え、2019年には航空機エンジン整備での検査不正が発覚し行政処分を受けています。これだけの機会がありながら、子会社にも不正がないか、チェックできなかったんですかね。