国土交通省 鉄道車両における輪軸の緊急点検の結果を公表

国土交通省は9/30、「鉄道車両における輪軸の緊急点検の結果(速報)」を公表しました。9/12に全国の鉄軌道事業者に対し、鉄道車両における輪軸の緊急点検を指示。各社からの報告内容を速報としてとりまとめたということです。

点検結果

点検の対象となる鉄軌道事業者計156社のうち、不適切な事案が確認された事業者は計93社だったとのこと。そのうち、データの改ざんが確認された事業者(鉄道会社)は計52社。その製造を担った事業者等としては、JR東日本、JR貨物、メトロ車両、京王重機整備、総合車両製作所の5事業者が挙げられています。

現在運行中の車両の安全性に問題はないということですが、国交省は「記録を書き換えるといった不正行為は鉄道輸送の安全確保の仕組みを根底から覆すものであり極めて遺憾」としています。

JR貨物での不正に端を発したこの輪軸問題。予想通りほとんどの鉄道会社で同様の状況であったことが判明しました。輪軸の不正って車両整備全体から見るとかなり狭い範囲でのお話ですよね。その他様々な車両製造・整備における問題点はいったいどれくらいあるんでしょう。そっちの方が気になります。

JR東日本子会社の総合車両製作所 輪軸2114本で検査データ改ざん

JR東日本子会社の総合車両製作所は9/27、「輪軸組立作業における数値の差し替えについて」を公表しました。といっても、非上場企業ですので、同社ホームページでひっそりと。親会社であるJR東日本はこのことを一切開示していません。

総合車両製作所

総合車両製作所は鉄道車両やコンテナを製造する、JR東日本(東日本旅客鉄道株式会社)100%出資の輸送用機器メーカーです。同社の前身は、我が国初のステンレス車両の国産化に成功した「東急車輛製造株式会社」。2012年に事業譲渡され総合車両製作所に。

不正の概要

東急電鉄や伊豆急行、江ノ島電鉄を含む鉄道会社など29社に納品した輪軸2114本で、検査データを改ざんしていました。国土交通省は同日、30日から総合車両製作所と東急電鉄に特別保安監査を行い、安全管理体制などを確認すると発表しています。

総合車両製作所の開示文では、「検査成績の数値の差し替え」と表現されていて、「差し替え」という言葉が何度も出てきますが、、、これ、検査データの改ざんですから。「差し替え」という言葉を使えば罪が軽くなるとでも?

おまけに、9/20には一旦、東急電鉄にデータの改ざんはなかったという報告をしていたにもかかわらず、その後改ざんが見つかったという情けない経緯があったようで。JR東日本がいっさい子会社の事実を公表せず、この件に触れていないことも大きな問題。

川崎重工業 舶用エンジンにおける検査不正 調査結果

川崎重工業は9/27、「(開⽰事項の経過)舶用エンジンにおける検査不正について」を公表しました。船舶用エンジンで燃費性能データを改ざんしていた問題で、同社は社内調査の結果をまとめ、国土交通省に提出しました。

おさらい

有害な窒素酸化物の規制が始まった2000年以降、大型貨物船やコンテナ船、タンカーなどに搭載された船舶用エンジン673台で燃費性能に関わる測定データを改ざんしていたと先月(8月)発表。特別調査委員会を設置して調査してきました。

発生原因

今回の開示で発生原因として、「燃費の性能を満たさなければならないというプレッシャー」、「コンプライアンス違反の認識があっても言いだせない組織風土」、「品質よりも納期や利益を優先してしまう意識」などが挙げられています。

ここで気になるのが、「コンプライアンス違反」という言葉であり表現。「コンプライアンス」という用語はかなり幅広い意味で使われる言葉であるため、時に問題を曖昧にしてしまうことがあります。今回の検査不正は、「顧客との契約違反や、当局や自主規制機関が定める規制に対する違反」と、明確に社内で定義するべきではないか。と感じました。

問題を曖昧にとらえている限り、従業員の意識も曖昧なままになってしまいます。こういうことを繰り返していても、会社は再生できないんじゃないかと。

輪軸組立作業不正(その3) 京王電鉄 JR九州

京王電鉄は9/19、グループ会社で鉄道の保守や整備を行う京王重機整備が実施した車輪と車軸を組み立てる作業で1786本の輪軸で圧入力値が基準値から逸脱ししていたことを公表しました。そのすべてで記録を改ざんしていたということです。

不正の概要

都営地下鉄、都電での輪軸組立作業で多くの不正が判明していたため、この結果はある程度想定できました。上記では1786本としていますが、その中には先日書いた都営地下鉄や都電における受託分も含まれていますので、京王電鉄分だけでは1500本弱という結果のようです。

なお、これらの結果について、京王重機整備の圧入作業後、京王電鉄では全ての輪軸について超音波探傷検査を実施し、傷がないこと、異常がないこと、また、3ヶ月ごとの定期検査において、車輪の内面距離(バックゲージ)を測定し異常がないことをそれぞれ確認しており、安全は確保されているということです。

JR九州

JR九州では、在来線の車両については、9 割程度の確認が終了しているとしながら、車輪の圧入力作業において、圧入力値が目安値を超過している輪軸が 328本見つかったとのこと。安全性の確認は取れているようで、こちらはデータの改ざんはなかったようです。

輪軸組立作業不正 東京メトロ、都営地下鉄、都電でも

JR貨物で発覚した輪軸組立作業不正、データ改ざんに続き、JR東海で最大圧入力値が目安値を超過している輪軸が在来線車両で11軸見付かりました(データ改ざんはなし)。そして今度は、東京メトロ、都営地下鉄、都電でも同様の問題が確認されています。

東京メトロでの点検結果

東京メトログループのメトロ車両で輪軸組立作業において、基準値を超過している輪軸が225軸あることが判明。また、同社が作業を受託していた東葉高速鉄道(2軸)と埼玉高速鉄道(6軸)でも同じく確認されており、データ改ざんも認められているとのこと。

都営地下鉄、都電

都営地下鉄、都電での輪軸組立作業は、京王重機整備という会社が受託していますが、三田線の203軸と新宿線の230軸、大江戸線の1軸、荒川線33軸で問題が確認されました。基準値を逸脱していたにもかかわらず、当局に対しては基準値内の数値に差し替えて提出していたことが判明しています。

基準値超過や不正行為の報告は今後も増え続けそうです。今のところ京王重機整備の酷さが目立っています。同社は名前の通り京王電鉄の車両整備を担当しているようですので、京王電鉄でも同様の点検結果が出てきそうですね。