東京証券取引所 株式の最低投資金額、10万円程度に引き下げ

東京証券取引所は、株式投資に必要な最低投資金額を10万円程度に引き下げるよう全上場企業に要請するようです。現在は上場規程で50万円未満を努力義務として定めています。投資単位の大幅な引き下げで、若年層も少額から日本株を購入できる環境を整えたいとの考え。

新NISA

NISA等で日本株が不人気な理由の一つとして、最低投資額が50万円必要なこと、値嵩株ではさらにそれ以上の金額になることが挙げられてきました。そのため、最低投資額が少額で始められる米国株式に流れてきたというわけです。

最低投資額引き下げ

最低投資額を引き下げることには反対しませんが、日本特有の「100株単位でしか売買することができない単元株制度」の見直しを行うべきでは?と考えます。上述のように欧米の株式等が小さな金額で取引できるのは、1株単位での取引が可能だからなんです。グローバルスタンダードに合わせましょうよ。

「最低投資金額を10万円程度に引き下げる」という方法は、上場している企業に努力してもらうというスタイル。一方、会社法を改正して「1株単位での売買を可能にする」という方法は、東証や行政等が汗を流せば済む話。なんでも上場企業に丸投げというこの体質はいかがなものかと。

ストップ高 東証 制限値幅の拡大運用

コロナショックを何とか乗り切り、買い下がっていたインデックス投信はすべて利益を出して売却することができました。そして、コロナが追い風になる可能性が高いだろうと、売らずに残していた唯一の保有株式がストップ高。買値の2倍近くに、、、ありがたいことです。

東証制限値幅

東証では一日の売買における値動きの幅を価格水準に応じて一定に制限していて、この値幅を制限値幅といいます。例えば、前日の基準値段(終値と考えて良いです)が500円以上700円未満の銘柄は、制限値幅は100円。つまり、当日上下100円の幅しか動きません。

1000円以上1500円未満の銘柄なら上下300円。こんなふうに決まってるんですね。700円以上1000円未満であれば、上下150円なんですが、このゾーンの値幅は、kuniが相場を職業にしていたころにはなかったような気がします。

制限値幅の拡大運用

こんなふうに一日に動ける値幅が制限されているわけですが、一方で需給が偏り、株価の方向性が明らかな場合には、売買を早く成立させた方が良いので、例外的な措置が取られることもあります。一定の要件(連続してストップ高やストップ安して売買が成立しないようなケース)を満たすと、制限値幅を2倍に拡大するという運用です。

8/3からは4倍に

それでもなかなか売買が成立しないケースがあることから、8/3から制限値幅の拡大運用が4倍に拡大されました。その記念すべき8/3にkuniの保有銘柄がストップ高したんですが、値幅拡大の要件を満たしておらず、制限値幅は拡大されず。これはちょっと残念でした(欲張りすぎですね)。

プレサンスコーポレーション 明浄学院事件で東証から「改善報告書」の提出請求

東京証券取引所より、6/24、有価証券上場規程第502条第1項第2号に基づき「改善報告書」を提出するよう求められ、同規程第508条第1項第2号に基づき「公表措置」が実施されました。前代表取締役社長及び元従業員らが業務上横領罪で逮捕、起訴された事件ですね。

ここまでの経緯

10/30 大阪地方検察庁特別捜査部の強制捜査を受けたことを公表
12/5  従業員が、明浄学院事件に共謀した疑いで大阪地検特捜部に逮捕される
12/17 社⾧が、同事件で元理事⾧他と共謀した疑いで大阪地検特捜部に逮捕される
12/23 社長交代と外部経営改革委員会設置を公表
3/31 外部経営改革委員会からの調査報告書の受領を公表
5/14 外部経営改革委員会の提言を踏まえた当社再発防止策についてを公表
6/24 東京証券取引所による「改善報告書」の提出請求について公表

明浄学院事件

学校法人明浄学院(大阪府熊取町)の資金21億円を元理事長らが着服したとされる事件なんですが、外部経営改革委員会の調査報告書等を読んでもその実態がよく分かりません。

ただ、この明浄学院の21億円というのは、プレサンスコーポレーションが明浄学院の保有する土地を購入するために支払われた手付金です。元社長と元従業員が元理事長らと共謀していたんだとすると、プレサンスコーポレーションが21億円の被害者ということですね。

ガバナンス

この会社、2020年3月期の決算を見ると、かなりの好業績です。売上高は2240億円で前期比40%増。経常利益でも320億円、この事件の影響は軽微といえますね。分譲マンション供給ランキング3年連続第2位だそうです。

ここまで成長した企業のわりに、ガバナンスはお粗末で、組織図を見てもコンプライアンス担当セクションがなかったりします。調査報告書では内部監査機能が脆弱で、監査等委員会も機能していなかったと指摘しています。身の丈に合った態勢が必要ですね。

東証市場再編 3市場に集約 が、しかし、、、

金融庁は東京証券取引所の市場改革に関する金融審議会の報告書案を公表しました。現在ある5市場を、新一部(仮称:プライム市場)、スタンダード市場、グロース市場の3市場へ集約するというものです。この報告書を受けて、東証が本格的な検討に入るとのこと。

プライム市場の上場基準

上場基準の中に「流通時価総額基準」というものが。「流通株式数×株価」で計算される数値です。高株価だが流通する株式数が少ない。とか、流通株式数は多いが低株価。といった企業はこの基準に抵触することになります。この流通時価総額基準については、100億円を目途に検討することが考えられる、としています。

他にも流動性基準やガバナンス基準、収益基準といった基準について提言していますが、基本的に上場時の基準と退出(降格)時の基準を同一とするよう求めています。

で、問題は経過措置なるもの

利害関係者すべてに配慮した議論を行うとこういう結果になる、という典型的な結論がこの経過措置でしょう。現一部上場企業は、基準を満たしていなくても、「制度変更後も一定の条件の下、当分の間、プライム市場への上場・上場維持を基本的に認めることが適当と考えられる。」としている部分です。

流通時価総額を満たしていなくとも、より高いガバナンスについてのコミットメントを行う限りにおいて、、、上場維持を認める。とか、流動性の基準を満たしていなくとも、流通株式比率向上に向けた取組等を策定・開示することにより、今後の流通株式比率の向上に向けたコミットメントを行う限りにおいて、、、上場維持を認める。 みたいな。

大鉈を振るわなければならないときであれば、これまで野放図な一部上場を許して場口銭を得てきた取引所と、一部上場により利益を享受してきた「値しない」上場企業が、不利益を覚悟で取り組むんじゃないかな?既得権のオンパレード。ゆるゆるの改革案ですね。

東証 市場区分見直し(その2)

3/10 日本経済新聞の記事に、東証の市場区分見直しに関するニュースがありました。現在の東証の問題をいくつか指摘していますが、おそらくこの指摘は東証内部で検討されている改善に向けた議論の中で出てきている課題とも一致してるんでしょう。

東証市場区分の課題

① 1部上場企業数が多すぎる
② 1部上場企業に時価総額や売買代金が小さい企業が多い
③ 2部やマザーズ経由の内部昇格の方が1部直接上場よりハードルが低い

記事ではこれらの点を指摘しています。③が原因となって、①②のような状況が生まれているということです。③の内部昇格ルートに関するレギュレーションは2012年に変更されているそうで、それまでは500億円の時価総額が必要だったのが、40億円に引き下げられています。

最高位市場の創設

2012年のルール変更がこのバランスの悪い市場を作った原因である、という批判を受けながら、現在の1部上場銘柄から時価総額基準で2部降格銘柄を大量に出すとは思えないんですよね。東証の責任問題を軸にして新しい市場区分を考えていくのが正解のような気がします。

東証自身が、最も批判を浴びることなく、最高位市場の上場銘柄数を減らす方法はというと、1部市場の上位に最上位市場を新設することでしょう。「特定市場」とかね。英国ではプレミアムと呼ばれるそうですが。

プレミアムには約500社が上場しているそうですから、日本の特定市場も日経平均採用225社に300社程度を加えて厳選500銘柄程度に。時価総額基準とESGにおいて世界に通用する銘柄群としましょう。当然、ガバナンスに関しては東証が唱えるコーポレートガバナンス・コードを十分に満たしている企業です。

過去5年間に不正・不祥事を起こしている企業は特定市場から除外するという基準もあっていいかもしれません。しかしこれやると日経平均採用銘柄で特定市場から漏れる銘柄も出てきそうですね。いずれにしても、まず最高位市場の創設が行われると思います。

特定市場 1部市場 2部市場

これで、最高位市場には500銘柄程度。これに1部市場1600銘柄、2部・ジャスダック・マザーズが1500銘柄。2部市場とジャスダック、マザーズは統合して2部市場でいいんじゃないでしょうか。それでもまだ1部市場はやや多すぎますか。

1部から2部への降格は、2012年以前の昇格時の時価総額基準500憶円で見直しというのはどうでしょう。500億円未満で何社くらいが降格になるんでしょうね。ただし、これをやると東証が責任を問われかねないので、3年程度の経過措置付きということで。

以上、kuniの勝手な新市場区分予想でした。日経によると、東証から今月中にも改善案が公表されるらしいです。