三井住友トラスト 責任銀行原則を支持 日本の辛い立場

1/22付け日本経済新聞の記事から。銀行に社会的責任を果たすよう求める「責任銀行原則」に、日本の銀行としては初めて支持を表明しました。

責任投資原則

最初にこうした動きが現れたのは「責任投資原則」でした。似てますが、「銀行」と「投資」のところが違います。責任投資原則は2006年に国連が公表したもので、略称PRIと表示されることもあります。責任投資原則は資産運用において、ESG(環境、社会、ガバナンス)問題に配慮することにより、社会的責任を果たして行こうという基本精神に賛同を求めたものです。つまり、まずは機関投資家を巻き込んだということです。

日本版スチュワードシップ・コードというのもありますが、長期的視点に立ち、投資において社会的責任を果たして行こうとするところは似ていますね。ただし、責任投資原則の方がESG問題により重きを置いた原則となっていて、6つの原則、35の行動が示されています。

責任銀行原則

そして今回三井住友トラストが支持を表明したのが、責任銀行原則です。こちらは略称PRB、今年の9月に発効予定ということで、昨年11月末にドラフト版が公表されていたところです。世界を代表する28の銀行が創設機関として責任銀行原則を公表しましたが、この中に日本の銀行の姿はありませんでした。

ここでカギになっているのが、日本がESGのうちの「E」、環境問題において苦しい立場に立たされていることなんです。震災で福島を失い、その後も次々とその他の原発を失った日本はいま、石炭火力発電に頼っています。そう、最も二酸化炭素排出量が多い発電方法に逆戻りしてしまっているんですね。

そのため、世界中の投資家や銀行が石炭火力への投資や融資を控える中、日本のメガバンクは同じような明確な行動がとれなくなっているんだと思います。メガバンクの辛い立場は十分理解できます。そしてここまで、日本の銀行からは責任銀行原則を支持できていなかったということです。

いま求められる国策

辛い立場に置かれていることは皆で理解したとしても、そこで思考停止しているわけにもいきません。震災で日本に起こったことを世界も一定程度理解してくれると思いますが、だからこそ、ここから何ができるかを前向きに考える姿を示していく必要があると思うわけです。

石炭10:原油7.5:天然ガス5.5 。何だかお分かりでしょうか。同じエネルギーを得るために燃焼させた場合に排出される二酸化炭素の量です。石炭火力がやり玉にあがりますが、石油や天然ガスもそれなりに排出されるんですね。石炭火力の二酸化炭素排出量を減らすテクノロジーの開発、国策として推しませんか。

また、以前当ブログで取り上げた洋上発電のような、再生可能エネルギーへの取り組みも重要です。もっともっと国策としてスピードを上げていくべきです。原子力発電の再開についても、もう一度しっかり議論する必要があります。野党の皆さんも与党の足を引っ張るための原発論ではなく、真剣に日本の未来を考えてほしいものです。

TOYOTAとパナソニックの電気自動車向けバッテリーの合弁会社設立が話題になっていますが、バッテリー作ったら電気も一緒に付いてくるわけではありません。このバッテリーに充電するための電力を新たに作らなければなりません。どう考えても今の日本の電力事情では、電気自動車を走らせる電力は供給できそうにないです。国民ももう一度しっかり考え、国策として強力に新しい電力供給体制を推進していくべきだとkuniは思います。

厚生労働省 毎月勤労統計 失敗の隠蔽

勤労統計の不適切調査

厚労省が所管する、賃金や労働時間の動向を示す毎月勤労統計が世間を騒がせています。本来とるべき方法とは違う方法で調査(全量調査するべきところを抽出調査していた)を継続していたというもので、なんとその期間は15年にも及んでいたようです。

加えて、この不適切な方法で調査を続けていた間、当該不適切な方法で調査してもよいという文章が、当時の「調査方法の手引き(マニュアルみたいなもの)」に堂々と書かれていたとか。つまり、楽な方法で不適切に調査しただけでなく、マニュアルの方も書き換えて、不適切ではないように偽装工作までしていたということです。

厚労省は昨年裁量労働に関するデータでも不適切な扱いがあり、メディから酷く叩かれていた時期がありました。問題ある統計が見つかって、咎められた。普通は他のデータは大丈夫なのか?と、横展開して調査を実施し、同様のミスや不正がないことを全力で確認するはず。厚労省の場合はそれができなかっただけでなく、勤労統計においては隠蔽工作までやっていたわけです。

膿を出し切ることの重要性

これまで当ブログで取り上げてきた上場企業の不正・不祥事においても、「あの時に十分調査して一掃しておいたら、ここまで酷い状況にはならなかったのに」と考えさせられる事例が少なくありませんでした。足もとで判明した事態を解決するだけでなく、他にも類似した行為が行われていないか、膿を出し切ることが重要です。

出し切ると言うと簡単なようですが、見えていないものを探す訳ですから、膨大な労力と時間を要します。それでも全社員が経営層の持つ危機感を共有して,その作業に当たることだけでも非常に有意義だと思います。これをやらなければ、従業員たちは経営層のその場限りの危機感を見切ってしまうことになるのです。

失敗の共有

優れた企業は失敗を見付けたら、それをすぐに組織で共有し、修正します。もちろん組織として発見できるように、その方法についても態勢(発見統制)を整備し、「失敗は咎められることなく会社に役立てられる」という企業風土も浸透させています。

前にも一度書いたことがありますが、マシュー・サイド著 「失敗の科学」という書籍がこの辺りに詳しいです。コンプライアンス業務に就いてらっしゃる読者には、是非読んでおいていただきたい一冊です。

廃プラスチック分解 水素を活かす 昭和電工

1/20 日本経済新聞に「水素を生かす(下) 廃プラ分解、ホテルの電力に」というコラムがありました。昭和電工の川崎事業所では、年間6万トンもの使用済みプラスチックを高温で分解して水素を製造しているそうです。同市の臨海部に建設されたホテルへパイプラインで供給する実験も2018年から始まったとのこと。

2年間ほどで株価は6倍に

昭和電工と言えば、昨年まで大きく株価を上げた銘柄として、証券の世界では話題になった企業です。2016年央の安値1000円辺りから、昨年10月の高値6,470円まで上昇し、現在は3,500円程度。上げも凄かったけど、下げ方もまた強烈です。

電気炉向けに黒鉛電極の販売が好調でしたし、黒鉛電極自体の値上げが浸透したことから大幅な増益基調となってました。19年12月期も大幅増益予想となっています。既に締めた直近12月期は来月辺りに発表されるんでしょうか。第4四半期が米中貿易戦争の影響をどれくらい受けるのかが気になる銘柄です。

廃プラスチックに新たな生命を吹き込め

今回、日経に取り上げられた廃プラスティックから水素を作るという話題。昭和電工のHPで調べてみました。すると特設の新卒採用サイトのプロジェクトストーリーというコーナーで、このKPRプロジェクト(廃プラスチックに新たな生命を吹き込め)が成功するまでのお話が掲載されています。

もともと学生向けの情報提供ですので非常に分かりやすいです。また、他にも2つのプロジェクトが紹介されていて、昭和電工の魅力を上手く表現しています。時間があったら是非読んでみてください。kuniお勧めです。

決算短信を読んでみました

ついでに2018年度第3四半期の決算短信も読んでみました。第3四半期までは米中貿易戦争が本格化する前ですので、引き続き好調な決算となっています。非財務情報から、この会社の魅力、いくつかか書いておきます。

「ESG投資のための3指数に2年連続採用」。世界的なインデックスプロバイダーであるFTSE Russell社(注)のESG投資指数「FTSE Blossom Japan Index」および同MSCI社の「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」「MSCI日本株女性活躍指数」の構成銘柄に、2年連続で採用されたようです。

また、社会的責任投資ファンド「モーニングスター社会的責任投資株価指数」(モーニングスター社運営)に5年連続で、また「SNAMサステナビリティ・インデックス」(損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント株式会社運用)にも7年連続で選定されています。

さらに、株式会社シナモンと、AIを活用した技術文書活用システムを共同で開発することを決定したようで、この共同開発は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「AIシステム共同開発支援事業」の助成事業に採択されています。

他にも、「パワー半導体SiCエピウェハー高品質グレードの3次増強を決定」、なんてのもありました。次世代の新技術てんこ盛りみたいです。かなり、伝統ある会社ですが、なかなか魅力的な事業に挑戦してますよね。今後も少し追い掛けてみたいと思います。

外貨建て保険 説明不十分 販売増で苦情も急増

1/19 朝日新聞デジタル版の記事です。銀行が販売した外貨建て保険に対する、2017年度の苦情件数が急増したという内容で、生命保険協会がまとめた資料を紹介しています。「元本割れするリスク」や「解約時の税金など」に関する説明を受けていない、または不十分といった内容だと報じてます。

元本確保型

今さらなんですが、「元本確保」という言葉は何とかした方が良いかもしれませんね。このブログをお読みいただいている方は、金融リテラシーの高い方が多いと思いますので、この言葉に騙されたりしないと思うんですが、高齢者の場合はそうでもないんですね。

あくまで元本が戻ってくるのは、償還(満期)まで保有した場合であり、かつその建て通貨での元本ということでしかありません。途中で解約した場合や、償還(満期)時も為替が円高に振れていると円換算で元本を割り込むことがあります。

後で苦情になるのは高齢者

営業には流れというものがありまして、突然元本確保型の保険販売ではないんです。そもそも取引が始まるときには、「元本保証の商品だけにしてね」なんていう顧客の要望を聞いたうえでスタートするわけですが、その後営業員を信頼し始めると、少しづつ「あの人が勧めてくれる商品なら大丈夫」みたいな信頼が出来ていきます。

そうなったうえで、この低金利時代。営業員としても少しづつリスクを取って、少しでも顧客に喜んでもらえる商品を、と考えるようになります。しっかりリスクを説明したうえで、「じゃぁ、すこしだけやってみようかしら」となってくれれば良いんですが、そうでもないよろしくない営業員もいるわでです。

信頼関係ができたうえで、元本確保型という商品を勧められると、高齢者は留意すべきところ「確保と保証の違い」まで細かくチェックできません。一通り商品の魅力的な部分だけ説明を受け、契約に至ってしまいます。当然良いところだけしか説明されていないので、償還時や途中解約時に元本割れ、聞いていた話と違うという苦情等になります。

多くの場合が家族からの苦情

1月、5月、8月。苦情が増加する月なんですが、何故だか分かりますでしょうか?正月、ゴールデンウィーク、お盆。そう、実家を出て暮らす高齢者顧客のご子息等が、実家に戻ってくるタイミングで、契約に関する書類とかを見付けてしまう。そんなふうに苦情は増加するんです。それもご子息等からの問い合わせという形で。ご家族からの苦情って多いんですよね。

ご家族からの問い合わせであっても、お金にまつわる個人情報ですので、問い合わせに対してスムースな対応がなかなかできない。顧客本人の了解を得たり、ご家族であることを確認したりといった面倒な手続きが、ご子息の不信感を買い、火に油を注ぐことになったりもします。

朝日のこの記事

とりとめのない話になってしまいましたが、朝日のこの記事「2012年との比較で、販売が5倍近くに増加していて、苦情は3.3倍に増加」という説得力のないお話になってます。それって、苦情発生率でみると減少してるじゃん。

足元で苦情が増加している(1月なので)という話を聞いたはいいけど、足元の実態調査をすることなく、協会の古いデータで記事書いちゃったもんだから、、、ちょっと間の抜けた記事になってしまったんでしょうね。

野村證券元社員 顧客の現金詐取事件(その2)

最初の事件、2017年5月の豊橋支店での詐欺および窃盗に関して公表された「当社元社員の逮捕について」を読むと、<再発防止に向けた取り組み>が添付されています。同業他社の皆さんも参考になると思われますので、全文引用します。

<再発防止に向けた取り組み>
1.ATM出金に関するモニタリングの強化
2.野村カードの不正利用防止措置の強化
  ① 口座開設時の原則不発行化
  ② 長期未使用カードによる出金に関する制限措置の導入
3.管理職による社員行動の確認態勢の強化
4.長期在籍社員に関する管理・牽制の強化
  ① 連続休暇取得時等におけるお客様確認の実施
  ② コンプライアンス研修への緊急招集による牽制態勢の強化
5.お客様への注意喚起や取引状況の確認機会の確保
  ① 注意喚起文書のホームページ掲載やお客様への送付
  ② 電子書面を長期未確認のお客様に対する報告書等の郵送
6.法令遵守意識の醸成を図るための研修のより一層の強化
(引用以上)

再発防止策 少々解説

1のモニタリングは、それまで使用してなかったのに、急にカードがATMで使用されたとか、それまでの実績との比較でかなり大きな金額が引き出されたといった、異常値に着目してモニタリングを行うことを指していると思われます。

2-①は、高齢者のようにカードを利用する意思がそもそもない顧客には、後に営業員が悪用しかねないカードを発行しないという考え方。2-②は、何年間か使用されなかったカードは、一定の手続きを取らないと再度使用出来ないようにしてしまうということのようです。

4の長期在籍社員というのは、転勤することなく一定期間以上同一顧客の担当者を継続している営業員のことで、一定期間は5年と定義する例が多いように思います。4-①は連続休暇を取得させ、休暇中に顧客確認をすること。4-②は任意の休暇期間ではなく、強制的に会社が時期を決めて職場離脱させ、その間に顧客確認しようとするものですね。

5-②は取引報告書など顧客が郵送ではなくWebで確認するという契約をしている場合で、にもかかわらずWebで確認したログがない顧客に、野村の判断で取引報告書等を郵送してみるというもの。これはやや苦情も覚悟した対応だと思われます。

3件の詐取事件

ということで、ここまで見てきて3件の事件の全体像が見えてきました。最初の豊橋支店の事件が、顧客からの問い合わせで発覚しているのに対し、後から公表された北九州支店と横浜支店の事件は、それぞれ2017年7月と9月に、野村証券自身によるモニタリングによって事態を把握しています。最初の事件を受けて<再発防止に向けた取り組み>を公表した直後に、その取り組みにより発見したということですね。

当局に届け出て、世間に対しても公表した改善策がしっかり機能した好事例ということも出来そうです。内部管理態勢の強化とその実効性の向上は実を結びつつあるということでしょうが、ほぼ同じ時期に3人の社員がこうした事件を起こしてしまった。その事実は非常に重いです。真因については解明できたんでしょうか。ここからがガバナンスのキモです。