島津製作所 調査結果の報告が面白い

島津製作所は2/10、「外部調査委員会からの調査報告書受領及び当社の対応について」を公表しました。子会社の社員が医療機関に納品したX線撮影装置の故障(一定期間が経過すると回路を遮断するタイマーをセットし、自動的に故障するように仕掛けていた)を装って修理をしていた問題ですね。

調査報告書に基づく同社の発表

「不正の可能性を疑うべき事情があり、かつ、正常取引であることを示す証拠や不正の実行可能性を否定する証拠が確認されない事案」として38件の事案(熊本県・宮崎県・鹿児島県・長崎県)を選定した。んだそうです。

日本経済新聞の報道

この件について日経は、「既に判明していた熊本県内の5件の不正のほかに、熊本・宮崎・鹿児島・長崎県の医療機関で合計38件の不正行為が疑われる事例があった。」と伝えています。開示文書と比べると、不正である蓋然性がより高いという印象を与える書きぶりです。

さらに、「新たに不正行為の疑いがあると分かった38件でも、相手先の病院に不正に得た修理費用を返還するなどの補償を実施する。43件の補償額は合計で約9000万円になる見通しだ。」と続けていました。

関係者の処分についても

開示では、島津メディカルの代表取締役社長 減給 10%(1 か月)、常務取締役
技術本部長 常務解職、技術本部長解任とだけ記されているんですが、日経では、「社長は10%減給とし、技術本部長だった常務は常務職と技術本部長を解く。ただ、社長の減給は1カ月で、元常務は取締役には留任する。」と伝えています。

「たった1ヶ月、10%だけかよ」とか、「取締役には残るんかい」みたいな、記者の主観が伝わってくる感じが、なかなか面白いです。

楽天 (楽天モバイル) 従業員の不正行為 新たな展開

楽天モバイルの基地局整備事業をめぐる水増し請求問題。当ブログでは楽天モバイルの従業員の不正行為として取り上げてきました。この事件に関して新たな展開です。下請け業者「TRAIL」(東京都港区)が東京国税局から約70億円に上る所得隠しを指摘されたということです。

おさらい

携帯電話基地局整備をめぐり、楽天モバイルが取引先から不正な水増し請求を受けていたという事件。水増し請求の損害は約46億円に上るということで、一部は同社の当時の担当従業員側に還流していたとみられるということでした。キックバックですね。

その際、共謀していたのが、物流会社の日本ロジステックという会社の役員とされていました。昨年の9月当時に判明していたのはこの辺りまででした。

新たな展開

この不正事件に関し、楽天モバイル従業員や日本ロジステック元役員に加え、TRAIL社長の「共謀」があったという情報です。TRAILという会社も運送会社みたいで、日本ロジステックの下請けとして動いていたということのようです。どうやらこの水増し請求で儲ける不正のスキームを考えたのは、このTRAILの社長みたいです。

このTRAILという運送会社、いまでもネットのホームページは残っているんですが、「会社の概要」というページ(会社の住所や社長、役員の紹介などがあったと思われる)だけが消失、「お探しのページは見つかりませんでした」という状態になっています。

不正が行われている間、TRAILの売上は20倍以上に膨らみ、役員報酬ももの凄いことになっていたようです。社長はしこたま儲けたけど、会社自体は近く破産手続きを申し立てる見通しという情報も。逃げたな、、、ってことですかね。

大豊工業 子会社従業員の不正行為(その2)

昨日取り上げた大豊工業の子会社従業員の不正行為。同日株価が急落(631円、41円安)していました。どこからか情報が漏れたかなとも思いましたが、実はこの開示、第3四半期の決算発表と同時に、ザラ場中(14:00)に行われていたんですね。

従業員一人の不正でおしまい

同社株価の急落は業績の悪化を受けたもののようです。業績の下方修正に関する開示の中でも、今回の不正に関する記述等(調査にどの程度費用がかかったかなど)もなく、何もなかったように不正事案を終わらせています。これっていつもTOYOTAが使う手口ですよね。メディアには巨大な広告費払ってるから心配しなくていいんだ、ってノリ。

それにしても雑な対応

本来なら公正な目線で事案を評価できる第三者委員会等を設置して、不正行為の詳細や、上席の関与、担当役員や親会社の責任などを調査しますが、、、何もなし。いつ発覚してどのような調査をしたかも不明です。11年間にも及ぶ不正行為。従業員一人だけを悪者にして終わらせてよい事案でしょうか。

TOYOTAは1/26に社長の交代を発表しました。これって異例のタイミングです。そして2/2には子会社の不祥事を公表。で、TOYOTAの決算発表は2/9に予定されているそうです。本来ならこの2/9に社長交代が発表されそうなものですが、社長交代にケチが付かないように順番を変えた?

社長交代に影響させず、ダラダラと不祥事案件を長引かせないように、一人を切ってさっさと終わらせた?これくらいの親子会社間では、子会社に選択の余地などありませんからね。などなど、大豊工業の今回の対応はいろいろと考えさせられます。っていうか、kuniが勝手に妄想してるだけですけどね。

大豊工業 子会社従業員の不正行為

大豊工業は2/2、「当社子会社の元従業員による不正行為に関するお知らせ」を公表しました。従業員の不正行為が発覚したのは、100%子会社である大豊精機株式会社だそう。この開示では調査委員会の設置等については触れていません。

大豊工業

大豊工業は、自動車エンジンの軸受(ベアリング)製品を主力とする、トヨタ系自動車部品メーカーです。エンジンベアリングでは世界トップクラスのシェアを誇り、国内外の自動車メーカーや部品メーカーに供給しているようです。愛知県豊田市の企業で、トヨタが発行済み株式の33%を保有してますね。

不正行為の概要

不正行為が発覚したのは大豊工業の100%子会社の大豊精機という会社。資本金878百万円といいますから、そこそこデカい会社ですね。搬送装置や溶接機、金型設備、自動車部品の製造および販売を手掛けています。

この会社で、2011年10月から2022年9月の間にわたり(なんと11年間も)、従業員が架空取引を行っていたということです。同社に対する架空請求による被害額は総額で約2億円。当該従業員は懲戒解雇、損害賠償請求訴訟を提起する予定で、警察とも被害届について相談しているとのこと。

開示で説明されていることはここまでなんですが、「本件は、当該元従業員らが架空取引を行い騙取していた事案です。」という一文が気になります。この部分以外は従業員一名による不正行為のように書かれてるんですけどね。この「ら」は、架空取引に関与した取引先等を含めて複数形にしたってこと?

株式会社ヤマト 第3四半期決算発表を延期

株式会社ヤマトは1/26、「2023年3月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)発表の延期に関するお知らせ」を公表しました。 25日に決算発表行うべく準備を進めてきましたが、一部の取引について精査が必要となることが判明したということです。

おさらい

何とも漠然とした延期の理由です。しかし、ここまでの同社の開示の経緯等を考えると、ただの延期とも思えない節もあります。当ブログでも取り上げましたが、昨年9月に不正が発覚しています。同社子会社のスズデンで、従業員が架空の経費を計上し、約1億3,400万円を横領していたという事案でした。

約1か月間、社内調査委員会で調査を行い、10月末には調査結果を公表。当該従業員の処分(懲戒解雇)を行い、刑事上の法的措置を進めるとしていました。再発防止策についても公表していましたね。

決算発表の延期

まぁ、こんなことがあった同社だけに、今回の決算発表の延期は気になるところなわけです。「一部の取引について精査が必要となることが判明」。まぁ、普通に考えると、いったん解決したとしていた従業員の不正に絡んで、新たな不正が見つかったとか、類似した不正や取引等が他にも見つかったとか。

ありそうですよね。あくまでkuniが勝手に妄想してるだけですが。第三者委員会でもいろいろと調査の限界があるわけですが、同社の場合は社内調査委員会でしたからねぇ。なおさら、見えていなかった部分は多かったのではないかと。