物言う株主と総会屋

物言う株主(アクティビスト)

株主としての権利を積極的に行使し、会社を変えていこうとする投資家のことを指していて、アクティビストとも呼ばれています。最近ではスチュワードシップ・コードの制定により、こうした投資家の影響力がより一層強力になってきています。

スチュワードシップ・コードというのはコーポレートガバナンス・コードの投資家版です。機関投資家向けの行動規範ですね。こちらは2014年に「責任ある機関投資家」の諸原則として金融庁が策定・公表し、今年5月に改訂されています。これもやはり7つの原則により、投資先の企業に対して持続的成長に資するよう議決権を行使することなどを求めています。

総会屋との違い

昔の総会屋は少数の株主として株主総会に乗り込んできて、議事進行を妨げるなどの妨害をし、またはそうした行為をちらつかせて、金を脅し取るなんてことをしていました。

一方で、現在のアクティビストは議決を左右しかねないほど大量に株式を買い付け、企業の経営に直接影響力を行使してきます。取締役の選任や、増配の要求、内部留保の活用などがよく聞く彼らの要求だったりしますね。

もちろんまともなアクティビストもいるでしょう。企業経営の効率化に資することもあるでしょうが、一方で、その企業を食い物にしてしまうような輩が居ることも事実です。このように、手口は違うものの、経営陣にとっては総会屋以上に手強い相手になってきていると思われます。

そうは言っても所詮素人

経営に口を出してくると言っても、彼らが当該企業の専門性を十分理解した株主であるわけでもなさそうです。最近の事例でも、大塚家具の件で久美子社長を支持して、前社長を追い出したアクティビストもある外資系ファンドでしたが、その後大塚家具が上手く行っているという話は聞きません。

正直kuni個人としては総会屋よりタチが悪いと思ってます。大塚家具の例のように、特に影響力を行使してくるのは外資系です。日本の文化や従業員、さらには顧客に至るまで、十分に理解せずに欧米流を押し付けられるというのは、長年会社や従業員、顧客と向き合ってきた経営者にとっては、ある意味妨害でしかないかもしれません。

地方銀行もターゲットに

PBRが1倍を下回っている地方銀行などは、こうした外資系アクティビストの格好のターゲットです。PBR0.4倍の地銀なら、買って即清算させれば投資金額は2.5倍になるわけですからね。まぁ、すぐに清算なんて出来ないんですが。

彼らとしては、滅多に潰れることがない日本の銀行で、PBRが0.4倍、そんな株を買い付ける。持ち合い解消で株が纏めて売られてますので、株式の調達には事欠きません。

買うだけ買ったら、株主への還元を厚くしろと迫る。配当金を増額させておいて、それを材料に株価が上昇したらさっさと売り抜ける。地銀同士の統合を経営に飲ませて、統合時の買い取り株価にプレミアムをつけさせて儲ける。なんてことを仕掛けてきます。

今の地銀は配当を増やそうにも、利益が出せてないわけですから配当原資がありません。含みのある有価証券を売却するとか、内部留保を吐き出して捻出するしかないですよね。これからも逆風の環境下で耐えていかなければならないのに、財務の健全性を損なうような経営へと追い詰められていくわけです。

なんだか書いてると悲しくなってきます。物言う株主、、、そろそろしっかりと対峙していくべきじゃないですかね。

スルガ銀行 株主 創業家株式売却

スルガ銀行 創業家株売却へ

9/21 日本経済新聞記事です。創業家が関連企業などを通じて保有するスルガ銀行株を売却する意向とのこと。企業文化・ガバナンス改革委員会に対し、このことや同行からの借り入れを返済する用意があることを伝えてきたようです。

昨日の日経記事、金融庁は一喜一憂でしょうね。スルガ銀行は今後の焦点と見られていた創業家に新しい動きが出て、やっと道筋が見えてきたと思いきや、仮装通貨67億円が流出。これでまたいろいろと批判にさらされるんでしょう。流出の事実の公表の仕方などちょっと気になるところもあります。ただ、このお話は別の投稿で。

創業家関連企業の持ち株は発行済み株式の15%超

この15%の株はどこに行くんでしょうかね。創業家の手を放れることで、新しい経営陣が、機能不全だったガバナンスを立て直し、健全な地域金融機関として再建さしていく。とまぁ、メディアが描いてきた勧善懲悪の構図がこれで完成しそうなもんですが、そう簡単には行きません。

金融庁検査の対応、訴訟の嵐、まともにやったんじゃ、そもそも生き残れそうにない銀行の事業環境。加えて、ここから参入してくるであろう、この会社の解散価値に着目した物言う株主たち。

BPS 1,400円 PBR 0.4倍

昨日このニュースを受けて株価は620円のストップ高。創業家が手を引き、創業家に対する怪しい融資に関してもクリアになるということで、株価は一気に反応しました。ここで市場が注目したのが、以前紹介した一株あたり純資産(BPS)、すなわちこの銀行の解散価値です。

その他の銀行株も金利の上昇気配を材料に、3日間上昇していたことも手伝ってのストップ高。早くも目標株価を1,400円とか言ってる人もいますね。ここで注意しておくべきことをいくつか上げておきましょう。

まず、一株あたり純資産の1400円について。過剰な融資から発生する貸し倒れでどれぐらい損失を計上するか。これにより純資産は減少します。また、ほとんどの融資がでたらめだった訳ですから、今後の訴訟等で賠償金額が膨らみ、これも純資産を減少させます。一方で株主代表訴訟では経営陣の責任を問い、賠償金は会社に入りますので、こちらは純資産を増加させる作用があります。

次に、PBRの0.4倍について。別の投稿でも取り上げましたが、もともと地銀株のPBRは0.4倍を下回っていたわけですから、他行との比較ではそれほど上げ余地はないということです(ただし、銀行株全体が上げ始めてますから、地銀株PBRも上昇傾向にありますが)。こんな風に考えていくと、このあと大きく上げるとは思えないわけですね。

最低限これくらいのことを頭に入れて、値動きを見ていきましょう。ただ、一般投資家が手を出す銘柄ではないですからね。最後に、この株、信用取引の空売りの買戻しという特殊要因があります。上げるときの勢いは凄いはずです。実はこれが一番の材料でして、完全に理屈抜き。マネーゲーム化すると思いますので、、、あくまで傍観で。

地銀株PBR、0.4倍割れ その2

9/12 日本経済新聞19面の記事。前回は主にPBRという指標について書きましたが、今回は地銀株がPBR(株価純資産倍率)でみて非常に割安になっている、という事実について見てみましょう。

PBR 0.3倍割れが20行

記事内で紹介されていた、PBRが0.3倍を下回っている地銀が20行。ランキング形式で掲載されてましたが、高知銀行、愛知銀行、大光銀行・・・。第二地銀(昔の相互銀行ですね)がズラッと並んでると思いきや、第一地銀もけっこう入ってます。

地銀(第一地銀)が全64行中12行、第二地銀が40行中8行ランクインしてます。ほぼ同じ割合ですね。これはちょっと意外でした。ちなみにメガバンクを見てみると、三菱UFJ:0.65倍、三井住友:0.61倍、みずほ:0.62倍、となってるようで、、、こちらも酷いもんです。

ついでに、野村証券:0.63倍、大和証券:0.84倍と、証券も良くありません。東証が公表している業種別PBRを見てみると、鉱業、繊維、紙・パルプ、ガラス・土石、鉄鋼、金属製品、海運、倉庫・運輸、卸売り、銀行、証券、その他金融、という12業種が1倍を下回っていました。

日経の記事でも書いていたように、地銀は経営環境やスルガ銀行の不祥事などもあり、投資家から敬遠されているのでしょうが、業種別に見てみると、マーケットは将来性についても冷静に判断しているように見えます。

PBRの高い業種

逆にPBRが高い業種を見てみると、1位は情報・通信、サービス業で両方2.1倍、続いて医薬品、小売業が1.8倍、空運が1.7倍、食料品が1.6倍となっており(このデータは2017年のものです)、その業種の現在の勢い、将来性という意味で納得感のある結果になってますね。

PBRは使える指標か

PBRという伝統的な指標について見てきましたが、PERも含めて指標としての有用性が薄まってきていると言われています。いわゆるプラットフォーマーと呼ばれるような企業などが典型的です。儲けるための仕組み創りに力を入れるあまり、「収益」を敢えて生まない企業や、この儲けるための装置が財務データ上「資産」と認識されない企業が増加してきているためです。

ここまでPBRについて取り留めのない話を書いてきましたが、株式投資をされる方に注意。指標はあくまで指標でしかありません。時にマーケットは指標を覆しにきますので、十分注意してくださいね。

地銀株PBR、0.4倍割れ

9/12 日本経済新聞19面の記事。地銀株がPBR(株価純資産倍率)でみて非常に割安になっている、というお話。この指標、現在株価を一株あたりの純資産で割って計算するもので、PER(株価収益率)と並んで伝統的な株価指標の一つです。

PER(ピーイーアール)とPBR(ピービーアール)の計算方法

PER=株価/一株当たり当期純利益 で計算される

(例)株価1000円で、1株当たり当期純利益が50円の会社であれば「20倍」に買われている、などと言います。

同じように

PBR=株価/1株当たり純資産 で計算される

(例)株価1000円で、1株当たり純資産が500円の会社であれば「2.0倍」に買われている、などと言います。

今回話題になっているのはPBRで、地銀株平均で0.4倍を下回っているというものです。PBRが1.0倍、というケースで考えてみましょう。1.0倍とは、株価つまり1株の値段と一株当たりの純資産が同じということを意味します。会社を解散して残る純資産を計算し、1株当たり純資産を計算すると株価とイコールになるということです。

地銀株の0.4倍の意味をザックリ理解

株価が400円、発行済み株式数が1億株、純資産額が1000億円の地銀があったとします。先ほどのPBRの計算式に当てはめると、1株当たり純資産が1000円になりますから、400÷1000=0.4(倍)。これで地銀のモデルが出来ました。

なぜ、この状態があり得ないほど割安なのかを考えてみます。ある投資家がこの株を400円で1億株全部買い付けたとします。400億円の投資です。完全に経営権を握ることができますので、会社の営業を停止、会社を整理して残った資産を株主(自分)に返還します。すると、株主(自分)に1000億円が返還されるということになります。

400億円の投資で、即1000億円のリターンが得られる投資方法が存在するということであり、株価が多少変どうしたとしても、つまり株価500円でも、600円でもすばらしい投資効果が得られます。この投資の採算がとれなくなるのは、株価が1000円になった場合です。株を買って、会社を精算してチャラですね。

このように、いくら人気がない株であっても、会社の純資産(解散価値)に注目する投資家が現れ、利益を得ようとする(裁定取引といいます)ので、(通常は)株価が1000円より大きく乖離して下がることはないというわけです。

どうでしょう。PBRが1倍を割れることの意味、何となく理解できたでしょうか。長くなったので、続きはまた。

コンビニATM、ローソン銀来月開業

9/11 日本経済新聞 9面の記事。ローソン子会社のローソン銀行が来月から開業するとのこと。というニュースなんですが、これまでローソンが銀行持ってなかったの知りませんでした。ATMは既に13000台展開しているものの、銀行業は営んでなかったんですね。

地銀と連携、共同店舗も探る

社長の会見では「「地域経済の活性化へ地銀やローソンと一緒に取り組む」と、地銀との連携を強調した」とあります。

銀行がこぞってATMの廃止を検討しているなか、その代替手段としてコンビニのATMは最有力。キャッシュレス化は避けて通れないかもしれないが、ATMの需要は引き続きある程度残るはずと予測しているんでしょう。

コンビニ各社の勢力図を都道府県別に見ると、けっこう偏りがあるのはみなさんもご存じだと思います。関東はセブン、関西はローソンみたいな色が付いています。

今回のローソン銀行の戦略は、この競争力がある都道府県に資源を集中し、そこを地盤としている地銀等を取り込むことにありそうな気がします。

それにしても今さらローソン銀行

記事にあるように、なぜこのタイミングで?ですよね。やはり、銀行がATMを手放すタイミングだからでしょうか。共同店舗も構想しているようですが、こちらはターゲットの地銀一行との共同店舗ということになると思われます。ATMはいくつもの銀行と提携できますが、共同店舗構想となると、複数行相手というのは無理がありそうです。

また、共同店舗とは言ってますが、ローソン銀行が銀行として預金や貸し出しで儲けるのではなく、銀行免許を持つことで店舗の共同化を進めようとするところに意味があるのかもしれません。何かと足枷の多い銀行業ですが、地銀の合理化ニーズに相当貢献しそうな構想ですし、金融庁もNOとは言わないでしょう。やはり「このタイミング」は地銀の合理化ニーズにあわせた、としか思えませんね。

ATM、リテール窓口業務は完全廃止し、その機能はローソン銀行の店舗で代替・サービス継続。一方支店に関しては大幅に削減するとともに、残した支店も全て空中店舗化。地域金融機関の新たな合理化ビジネスモデルとして、来年あたり、こんな地銀が20行くらい出てくるかもしれませんね。