旅工房 従業員による不正 調査報告書

東証マザーズ上場の旅工房。今年5月12日付で「法人営業部門の従業員の不正発覚」を公表していました。併せて外部調査チームによる調査を開始したんですが、6/26付で同チームによる調査報告書を受領し、公表しています。

不正の概要

不正が行われた期間は2017年6月から2020年5月までで、売上げへ与える影響は当初予想の数千万円から、3億8200万円へと拡大(利益への影響は7600万円)しています。

不正の手口は売上の架空計上と、同社においてこれまた架空の仕入れで金券を取得・換金し、そのお金を架空の売上の代金として顧客名義で同社へ振り込むという形がメインのようです。旅行業者、それも法人営業ということで、kuniとしては商流というか、ビジネスを全く理解できていません。上手く説明できなくて申し訳ないです。

この従業員、同社に入社した直後から不正を繰り返してきたようで、最初に金券を換金し、送金したのは退職した前職の会社の口座だそう。前の会社でも架空の売上があってその辻褄を合わせるために送金。これが最初の不正です。

ただ、いずれにしてもこの不正、自転車操業になるのは間違いないですよね。成績を上げるためということですが、、、。kuniも金融機関で顧客のお金に手を出して、穴埋めするためにほかの顧客の口座から、、、。みたいなのを見てきましたが、こんなの必ず破綻します。

被害額等

にもかかわらず、2年10カ月も発覚しなかったというのは、同社のコンプライアンスの態勢があまりに脆弱だったということ。調査報告書でも一通り不備が指摘されています。

この従業員が不正に領得した金券類の総額は3億6600万円。このうち顧客名義で旅工房へ入金された分を除くと約5100万円だそうです。さらに本人が自己負担で仕入先に支払った金額を除いて、約3900万円を利得したことになる。と報告書は指摘しています。

サクサホールディングス(6675) 特別調査委員会設置 架空取引も

6/24 サクサホールディングスは同社の連結子会社において、不適切な会計処理に関わる疑義が判明したことを受けて、特別調査委員会を設置し調査を開始することを公表しました。外部の専門家2名と社外監査役2名で構成する委員会です。

サクサホールディングス

聞いたことない名前の会社だったのでスルーしそうになりましたが、田村電機製作所と大興電機製作所が統合してできた会社なんですね。統合時の名称は田村大興ホールディングス。その後サクサホールディングスに商号変更しています。

元々は電話機のメーカーですが、そこから発展させ、音声と情報通信を融合させた情報通信ネットワーク関連システムやセキュリティー分野などにも展開しているようです。

不適切な会計処理

問題の会計処理があったとされているのは連結子会社のサクサシステムアメージング。不適切な会計処理とは、今回のプレスリリースで次のような疑念があると記されています。

2017年3月に計上した仕掛品に関わる不適切な会計処理(開発プロジェクトの中断、規模縮小に伴う会計処理)
2017年9月にサクサ株式会社に販売したソフトウェアに関わる不適切な会計処理(対象ソフトウェアの実在性有無と架空取引の可能性)

今のところ開示されている情報はここまで。またシステム会社の架空取引ですかぁ。実は、より気になるのは同日に開示された「(変更)剰余金の配当に関するお知らせ」の方。

当期の配当を55円として定時株主総会に付議することとしていたんですが、これを無配へと変更しているんですね。調査結果により、過年度の財務諸表に大きな修正が入る可能性があることを懸念しているようです。配当金総額は3億2千万円ほどなんですけどね。

プレサンスコーポレーション 明浄学院事件で東証から「改善報告書」の提出請求

東京証券取引所より、6/24、有価証券上場規程第502条第1項第2号に基づき「改善報告書」を提出するよう求められ、同規程第508条第1項第2号に基づき「公表措置」が実施されました。前代表取締役社長及び元従業員らが業務上横領罪で逮捕、起訴された事件ですね。

ここまでの経緯

10/30 大阪地方検察庁特別捜査部の強制捜査を受けたことを公表
12/5  従業員が、明浄学院事件に共謀した疑いで大阪地検特捜部に逮捕される
12/17 社⾧が、同事件で元理事⾧他と共謀した疑いで大阪地検特捜部に逮捕される
12/23 社長交代と外部経営改革委員会設置を公表
3/31 外部経営改革委員会からの調査報告書の受領を公表
5/14 外部経営改革委員会の提言を踏まえた当社再発防止策についてを公表
6/24 東京証券取引所による「改善報告書」の提出請求について公表

明浄学院事件

学校法人明浄学院(大阪府熊取町)の資金21億円を元理事長らが着服したとされる事件なんですが、外部経営改革委員会の調査報告書等を読んでもその実態がよく分かりません。

ただ、この明浄学院の21億円というのは、プレサンスコーポレーションが明浄学院の保有する土地を購入するために支払われた手付金です。元社長と元従業員が元理事長らと共謀していたんだとすると、プレサンスコーポレーションが21億円の被害者ということですね。

ガバナンス

この会社、2020年3月期の決算を見ると、かなりの好業績です。売上高は2240億円で前期比40%増。経常利益でも320億円、この事件の影響は軽微といえますね。分譲マンション供給ランキング3年連続第2位だそうです。

ここまで成長した企業のわりに、ガバナンスはお粗末で、組織図を見てもコンプライアンス担当セクションがなかったりします。調査報告書では内部監査機能が脆弱で、監査等委員会も機能していなかったと指摘しています。身の丈に合った態勢が必要ですね。

エルピクセル 取締役が33億円を着服

画像解析ソリューションを開発する東大発ベンチャーのエルピクセルは、6/10、同社元取締役が33億5000万円を着服していたことを公表しました。前日にこの元取締役は警視庁に逮捕されています。この会社、上場企業から高い技術を評価され、かなりの資金調達をしてきています。

エルピクセルの概要

設立は2014年3月、資本金は27億円という千代田区大手町の企業です。ライフサイエンスと画像解析を背景に、独自の技術を研究・開発しています。などというコメントがHPでは見られます。が、kuniには難しすぎる世界です。

同社のプレスリリースによると、元取締役は2017年4月から2019年1月まで、会社資金を元取締役個人名義の銀行預金口座に多数回にわたって振込送金し、横領していたといいます。被害額は33億5000万円ですが、うち5億9500万円は横領発覚前に同社口座に返還されていたとのこと。

発生原因

スタートアップやベンチャーなどと呼ばれる企業のアキレス腱は間違いなくコーポレート部門。それもガバナンスやコンプライアンスを押さえるセクションです。組織として未熟なうちはこういうセクションにお金がかけられませんからね。それはやむを得ないところがあると思います。

エルピクセルも同様で、同社口座の資金を元取締役が一人で管理していたといいます。それなりのサイズの企業であればあり得ない態勢です。が、起業して当面はこんなもんでしょうね。大金もありませんから、こうした不正も起こりません。

事業のサイズと守りの態勢

ではこのエルピクセルがどこで間違ったのか。同社は2016年10月にジャフコ等から7億円を調達しています。2018年10月にはオリンパス、富士フィルム等から30億円を調達しています。これまでの会社に不釣り合いな出資を受けた時点。つまり2016年10月がそのタイミングだと思います。

この時点で、大きな資金をしっかり管理するための組織や態勢、ルール作りが必要だったんですね。不正にとって魅力的な環境が整った時点で、守りの態勢も当然必要になるというわけです。

住友重機械工業 労働組合元書記に懲役8年の判決

労働組合連合会の積み立て年金口座の資金着服事件で、口座から3億円余りを着服したとして、業務上横領罪に問われた元書記に懲役8年(求刑懲役10年)の判決が言い渡されました。今年1月に逮捕された会計を一人で担当してきた女性への判決です。

当初は10億円とも

事件発覚というか、この女性が逮捕された当時、着服金額は6億円とも10億円とも言われていました。既に時効になっているものも含んでいるようでしたが、今回の判決では「2013年12月~18年1月、37回にわたって連合会の口座から自身の口座に送金し、計約3億3660万円を横領した」とされています。

判決は

懲役8年(求刑懲役10年)の判決というのはどうでしょう。起訴された業務上横領罪は刑法253条で、法定刑は「10年以下の懲役」だそうです。 もし最高の10年を求刑されても、一般的に「7割司法」「7掛け判決」といわれるように、懲役6~8年の幅に収まるのでは、、、という予想でした。その通りになりました。

着服したお金は

着服したお金は、趣味である馬術競技馬や競走馬の入手や維持・管理費、高級外車や高級バッグなどの購入に使っていたといわれています。被告は刑事裁判で判決が言い渡されたわけですが、これとは別に、労働組合側が民事訴訟を起こして損害賠償を請求することは可能です。

しかし、過去の着服事件では、発覚したときにはほとんど被告の手元にお金は残っておらず、回収不能というのがよくあるパターン。今回のケースも逮捕時には安いアパート暮らしだったといいますから、回収は見込めないでしょうね。となると次は、杜撰な管理体制でこの横領事件を許した労組幹部も責任を問われることになりそうです。