オリジン(6513) 中国連結子会社で不正行為 キックバック(その2)

中国連結子会社で現地責任者による不正行為が発覚したオリジン。昨日の記事で書き切れなかったことなどを追記します。

発覚の経緯

当初はこの不正行為が疑義に留まっていたことから、同社は本社内に調査委員会を立上げ、日本および中国現地の弁護士と連携しつつ、万全を期して調査を進めてきたといいます。そのうえで、同社が現地法律事務所に対して監査を依頼したことが発覚の端緒となりました。

不正な捻出資金

キックバックされていた資金、というか、正確には取引先に支払われた資金も含めた不正に捻出された資金、合計約76百万円。相当部分の回収を進めているようですが、法的措置も視野に入れ損害額の回収に努めるとしています。業績への影響は軽微だと。

不正行為の発生原因

不正行為が発生した原因については、行為者が現地責任者であったことから、業務の属人化と権限の集中により牽制機能が働かず、架空契約が長期間に渡り見過ごされていたものと認識しているとのこと。一番よくみられる子会社任せのガバナンスというやつですね。

内部通報制度についても、既に導入済みであったものの、必ずしも十分機能してこなかったとしています。この「必ずしも」のところについてはこれ以上の説明がなく、詳細は不明です。親会社のガバナンスと子会社における内部通報制度の機能不全。定番です。

こうしてどこの企業でも起きている二つの機能不全。今現在何も起きていない(と思っている)企業こそ、これらの再点検が必要です。事が起きてからでは遅いんです。

昭和電線ホールディングス 検査不正(その2)

「当社グループ製品の品質試験に関する不整合の判明と特別調査委員会の設置について」を公表した昭和電線ホールディングス。この公表を読んでよく分からないままのことがありまして、、、前回は詳しく書けなかったので、(その2)です。

試験方法と計算方法

顧客との間で定められた「試験方法」ではなく、JIS規格に準拠した「計算方法」により合否を判定していたというところ。前回も少し触れましたが、製品の合否を試験するのではなく、計算によってのみ判定していたと読める部分です。

つまりもっと正直に書くと、顧客との間で定められた試験を実施することなく、一般的な規格に準じた計算のみで判定していたと。ん~、kuniの読み方が悪いのか。

是正時期と外部からの指摘

もう一つよく分からないのが、是正時期と外部からの指摘を受けた時期の問題です。「2021年2月に外部からの指摘を受けて行った当社の社内調査により判明いたしました。」と説明されています。

ところが一方で、「2018年9月に自主的に同社内で是正されており、同時期以降は、現在に至るまで適切に品質試験が行われている」というんですね。2018年に是正されているのに、なぜ2021年になって外部から指摘を受けたのか。ここしっくりこないというか、整合性を欠いています。

2021年2月に、3年以上前の検査不正について、外部から指摘を受けた。ということですかね。以上2カ所が腑に落ちないところでした。まぁ、特別調査委員会の調査結果を待て、ということなんですが。

昭和電線ホールディングス 検査不正 特別調査委員会を設置

昭和電線ホールディングスは7/21、「当社グループ製品の品質試験に関する不整合の判明と特別調査委員会の設置について」を公表しました。検査不正が発覚したのは同社子会社の昭和電線ケーブルシステム株式会社だそうです。

昭和電線HD

昭和電線HDは建設や産業機器、電力分野向けなどを主力とする電線メーカー。電力・建設用電線などを扱うエネルギー・インフラ事業を中核に、通信・産業用デバイス事業、電装・コンポーネンツ事業を展開しています。

今まで知りませんでしたが、もとは東芝から独立してできた会社なんですね。元の社名は昭和電線電纜株式会社でした。kuniにはこの社名の方がしっくりきます。

昭和電線ケーブルシステム

昭和電線ケーブルシステムは昭和電線グループの中核企業。社会基盤を支える電力ケーブル・通信ケーブルから、エンジニアリングまでの幅広い製品ラインナップを有していて、今回不正が発覚したのが、同社が販売する鋼心アルミニウムより線、および硬アルミニウムより線です。より線というのは、複数のアルミニウム素線をより合わせた完成品のことだそうです。

検査不正の概要

2018年9月までの間、アルミニウム素線の抜き取り試験数の一部について、顧客との間で定められた抜き取り数に満たない数で試験を実施していました。

また、同より線の引張荷重試験についても顧客との間で定められた試験方法ではなく、JIS規格に準拠した計算方法により合否を判定していました。って、これ計算してただけで、検査してないってことでしょうかね。

で、2018年9月に自主的に同社内で是正されている。と説明されてるんですが、ん~、よく分からんね、これって。

理研ビタミン 例の連結子会社 青島福生食品有限公司を譲渡

理研ビタミンは6/8、「連結子会社(青島福生食品有限公司)の異動(持分譲渡)および当該子会社に対する債権放棄に関するお知らせ」を公表しました。昨年、不適切な会計処理ですったもんだした青島福生食品有限公司をやっと切り離します。

おさらい

昨年の夏、中国子会社の青島福生食品におけるエビの加工販売取引の実在性が確認できなかったり、棚卸資産の過大計上の疑義が出てきたりと、決算発表は遅延するわ、上場廃止の危機にも見舞われました。時間の問題だろうなとは思っていましたが、決断したようです。

譲渡を決定

「青島福生食品の業績悪化および不適切な会計処理を契機として、グループ内における同社の位置付けについて検討を行い、青島福生食品の全持分を譲渡することが最善である」、と判断したようです。正解だと思います。

譲渡価格は1人民元ながら、10億円程度の債務弁済を受けるようです。青島福生食品に対する貸付債権については、過年度に貸倒引当金を計上していることもあり、譲渡と債権放棄による業績への影響は軽微で済むようです。

さてと、

ここまでの判断は大正解だと思います。今後米中冷戦が本格化する中、中国連結子会社なんぞ何の役にたちません。リスク以外の何物でもないと思います。開示文書にもありましたが、既に当地での人件費は全然安くないんです。

今後の代替生産拠点をどうするのかは言及されていませんが、労働の質が高い国内に生産拠点を戻すべきだと思います。このニュースで株価は上がるのかな?興味ありますね。

オリンパスの劣化が止まらない 希望退職者募集

オリンパスは2/26、「社外転進支援制度の実施結果に関するお知らせ」を公表しました。あまり聞かないタイトルですが、要は希望退職者の募集結果ですね。同社および同社国内グループ会社を対象に、950名を予定していたところに、844名の応募があったようです。

粉飾決算

オリンパス事件。社名が事件名になるほど超デカい不祥事でした。バブル当時は多くの企業が「財テク」に走り、バブルが弾けたとたんに巨額の損失を抱えました。オリンパスはその投資による損失を簿外に移し替える「飛ばし」という不正を行います。いわゆる損失隠しですね。

さらに、この損失の隠蔽は続けられ、その補填のために巨額の企業買収を繰り返すといった不正が続きました。2011年にイギリス人経営者マイケル・ウッドフォードがこの不正を正そうとして解任され、これを契機に不正の全貌が明らかになりました。とてつもなく凄い事件でした。

1990年代から始まり、2011年に発覚です。20年間隠し続け、そのあと処理(もちろん不正です)に専念してきた旧経営陣。当然企業としての競争力は低下せざるをえません。

映像事業の譲渡

その後もオリンパスの劣化は続きます。スマホに取って代わられたデジタルカメラなど映像事業も不振を極め、今年1月とうとう映像事業を手放しました。ニコン、キャノンも同様に苦しんでいますから、これはオリンパスだけというわけではありませんけどね。

社外転職支援制度の実施

映像事業を売却し、内視鏡を中心とした医療事業に経営資源を集中する計画を打ち出していて、今回の希望退職の募集はこうした事業再編の一環と説明されています。粉飾決算に始まり、事業の再編・再スタート、ここまで結局30年を要したわけです。こんなことでは事業環境の変化についていけませんよね。