三井住友信託銀行元社員によるインサイダー取引 調査結果等を公表

三井住友トラストグループは5/1、「三井住友信託銀行株式会社の元社員によるインサイダー取引に関する調査結果 および再発防止策や処分等について」を公表しました。部長職が約3000万円の利益を得ていた事案。

取引の概要

3月24日、SESCは部長職の社員による3銘柄(カッシーナ、サンウッド及びJTOWER)の取引につき、イ ンサイダー取引の嫌疑により告発し、3月25日、東京地検は当該部長を3銘柄の取引に係る金融商品取引法違反(インサイダー取引)の事実により在宅起訴しました。

調査結果

調査結果を読んで感じるのは、三井住友信託銀行のインサイダー防止にかかる管理態勢が意外によく整備されていて、当該部長のルール違反・暴走であったこと。調査報告書では次のような評価が。

「全ての上場会社等の特定有価証券等の自己売買等が原則禁止されていた。」

「社内規程類に基づく自己売買の事前許可制又は事前届出制がとられていた」。

「インサイダー情報管理等に関する社内規程類の整備状況という観点においては、特段の不備は見受けられなかった。」。

「有価証券等取引を行っていないことについては、誓約書による自己申告によって担保されていた」。

「取引先重要情報管理票を用いた情報管理そのものは、基本的に厳格かつ適切に運用されていた」。「インサイダー取引の防止のための研修が相当程度の頻度において実施されていた」。などなど。

最低限のルール整備が行われていたものの、こんなことが起きたのでもう一段階踏み込んだ改善策を求められています。しかし、これで2~3割の報酬減額とは、役員はつらいねぇ。

東証社員インサイダー事件 起訴内容認める 懲役1年6月求刑

東証社員インサイダー事件の初公判が4/24、東京地裁でありました。検察側は細道被告が業務上閲覧できた部署内の共有情報を父親に繰り返し伝えていたとし、細道被告は罪状認否で「間違いありません」と述べたたとのこと。伝えられた情報をもとに株を不正に取引したとしてインサイダー取引違反の罪に問われた父親の正人被告(58)も起訴内容を認めました。

おさらい

上場部開示業務室に所属し、上場企業の未公表情報に関する相談を受けていた細道被告が、TOB情報を得て、対話アプリのLINEの電話機能などで父親の正人被告に伝達。正人被告が情報が公表される前に合計3銘柄を取引して約409万円を不正に設けていたという事案でしたね。

懲役1年6月求刑

検察側は「市場の公正性と健全性、一般投資家の信頼を低下させた程度が大きい」などとして、2人に対し懲役1年6月、罰金100万円を求刑。父親の正人被告には追徴金約2116万円も求めました。判決は5月9日に言い渡されるということです。

409万円の利益に対して2人とも懲役1年6月。罰金が200万円に追徴金2116万円。インサイダー取引がどれだけ割に合わない不正かがよく分かりますね。

動機が

父親の正人被告が未公表情報を求めていたようで、これに対して細道被告は被告人質問で断り切れなかった理由について「父親との関係があまり良くなく、改善したい気持ちがあった。インサイダー取引は必ず露呈すると認識していたが、喜んでもらいたいという気持ちを優先してしまった」と語ったそう。東証元社員は(DVなどを背景にした)被害者だったんでしょうか。

オウケイウェイブ 自社株買いにおける不正まで登場

報道によると、東京地検特捜部は4/4、インターネットサイト運営の「オウケイウェイヴ」について、会社法で定める手続きを経ることなく同社株を不正に取得したとして、元社長ら経営陣3人を同法違反(自己株式不正取得)罪で在宅起訴したとのこと。

インサイダー取引

問題がややこしくなってきましたが、同社で起きた問題がクローズアップされたのは。2022年4月に発生した特別損失の発生という情報を公表する前にまんまと同社株を売り抜けたというインサイダー取引でした(詳細は過去記事をお読みください)。この時も東京地検特捜部が動いていました。

自己株式不正取得

で、今回問題になっているのは、上記よりも3か月前の2022年1月に実施した自己株式の取得(約8億円)が、会社法の定める手続き(取締役会決議)を経ることなく行われていたということです。普通、会社法違反だけで在宅起訴はないと思われますので、おそらく違法に会社資金で株価を買い上がる中で社長ら経営陣3人が売り抜けていたというおまけも付いてきそうです。

だとすると、会社の資金で自己株を買い上げる中で売り抜け、3か月後に致命的な悪材料を公表する直前にも売り抜けていたことになります。おそらく悪材料はもっと手前から見えていたんでしょうね。何とか自社の株価水準を維持しつつ、自らの持ち株を売り抜けようとあれやこれやと不法行為を行っていたってことになります。現時点ではkuniの想像も含めた投稿ではありますが、、、こいつらとんでもない輩です。

金融庁出向中のインサイダー取引 元裁判官に有罪判決

金融庁に出向中にインサイダー取引をしたとして、金融商品取引法違反(インサイダー取引)罪に問われた裁判官出身の元金融庁職員(32歳)。その判決公判で、東京地裁は3/26、有罪判決を言い渡しました(この事件の経緯等は過去記事でご覧ください)。

判決の内容

判決は「懲役2年、執行猶予4年、罰金100万円、追徴金約1020万円(求刑は懲役2年、罰金100万円、追徴金約1020万円)」という内容です。求刑に対して違ったのは、「執行猶予4年」というところですね。

「金融庁による監督制度の信頼を大きく失墜させた。規範意識の欠落は甚だしい」と断じたそうです。「市場の公平性と健全性、市場に対する一般投資家の信頼を大きく損なった」とも。そのとおり。執行猶予なしでよかったのに。

これまで明らかになっていなかったんですが、被告はTOB情報を利用したインサイダー取引を重ね、約393万円の利益を得ていたそうです。

さて金融庁は

前にも書きましたが、この事件。裁判官の出向を受け入れ、企業開示課課長補佐として働かせていた金融庁の責任も問われて然り。このあと金融庁としてどのような対応(処分や再発防止策など)をとるんでしょうかね。

セブン&アイ・ホールディングス 大規模な自己株取得をめぐる盛大なインサイダー祭り

セブン&アイ・ホールディングスが大規模な自己株取得を実施する方向で調整していることが、複数の関係者への取材で分かった。とのこと。KuniはBloombergの記事で読んだんですが、ほかの報道機関でも出てるのかな?

自己株取得

このところカナダの同業者からの買収提案やら、創業家による買収など、様々な動きが報じられてきた同社。今回報じられたのは、2兆円規模の自己株取得という話。6日開催の取締役会で決議し、同日午後にも発表するといいます。複数の関係者への取材で分かったそうな。

マーケットは

このいわゆる観測記事(観測記事と呼ぶべきかどうかはビミョー)により同社株は一時10%高と大幅高。もちろんこの関係者なる人物から情報を仕入れて、公表前に買った投資家はインサイダー取引が問われることになるんですが、報道で観測記事を読んで買った投資家はインサイダー取引に問われることはありません。

あくまで観測記事を読んで行動しただけという判定なんですね。しかし、今回のようなケースはどうなんでしょう。メディアにリークした奴がいるわけで、メディアが報じたのが先か、その前に動いたのか、、、ビミョーです。報道が先走って観測記事を書く行為ってホント面倒なんですよね。

リークする奴ってのは、少しでもメディアと仲良くして、自社にとってネガティブな報道を控えてもらうという目的があるんだろうけど、マジで困りものです。メディアにリークする奴を取り締まるルールって出来ないもんでしょうか。報道の自由なるものが障壁になるんだろうけど。