知床半島沖の観光船沈没事故にみるリスク管理

北海道・知床半島沖で観光船沈没事故が起きてしまいました。現時点で14人が死亡、12人が行方不明となった海難事故。今さら多くの説明は不要と思われます。この事故から見えてくるリスク管理の問題は、昨今の企業の不祥事にも関連する要因がたくさんありそうな気がします。

コスト削減とリスク管理

まず最初に、運航会社が直前に多くの熟練従業員を解雇していたという話。コロナの影響で事業が振るわず、コスト削減のため、運航に必要な様々な場面で、多くの経験やスキルを持った従業員が解雇されていたということです。

通常通り運営されている組織というのは、一定の人員さえ確保していれば問題なく運営されるものです。ただし、そこへ通常とは異なる状況が発生した際に、頼りになるのは長年にわたり業務を見てきた熟練従業員の経験やスキルなわけです。

いざという場面に備えた(平時は不要かもしれない)装備。このような状況では出航させるべきではないという判断。航海中の異常に対する最善の対応。どれをとっても熟練従業員の知見と、トップに対する進言などがあれば、このような事態は避けられていたと思われます。

企業経営でも同じ

こんなふうに考えていくと、システム障害を繰り返して社会的な批判を浴び続けた銀行と、非常によく似た構図が生まれていたことが分かります。観光船の運航もシステムの運用も、経営が考えるより多くのコストがかかるもの。しかし、そのコストに見える部分は将来のリスク回避の保険でもあるわけですね。

システム障害に限った話ではありません。当ブログで取り上げる企業の不祥事の数々。コスト削減のために従業員を切り捨ててきたことが、事故や不祥事の原因となった事例はいくらでもあります。企業の経営陣には「他人事ではない事故」としてとらえる必要がありそうです。

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