グループ17社において会計不正が発生したアウトソーシング。調査結果報告書を開示し、1/14には、四半期報告書を提出し、併せて「再発防止策の策定等に関するお知らせ」も公表。一旦当事案に関しては終結していました。
再発防止策の中で特筆してお伝えしたい事案
その後1/17、「適時開示した再発防止策の中で特筆してお伝えしたい事案」という文書を公表していました。適時開示はされていないので、kuniも見落としていたんですが、同社ホームページで公表されています。
「再発防止策の中で特筆してお伝えしたいこと」。パワーポイントでまとめられた文書で、次の項目からなっています。①内部通報制度の見直し、②トップ主導の社内風土改革、③コンプライアンス意識の改革、再発防止策の徹底、④事業計画・数値目標について。
適時開示する再発防止策が形式ばったものになりがちなのに対し、この文書では経営の心意気というか、本気度みたいなものも感じられます。特に②、③については、「経営トップである私、土井みずからが責任をもって」という表現で語られているんですね。
代表取締役 土井さん
土井さんは代表取締役社長兼会長。経営トップが改革の意思を明示しているところが良い感じ。発生した不祥事が自らの責任であることも認めているからこそ、こういう表現をされたんだと思います。
末端の従業員を切ってお終い。外部講師によるコンプライアンス研修を・・・みたいな、経営者自身の覚悟が疑わしい再発防止策が多いなか、同社のこの「再発防止策の中で特筆してお伝えしたい事案」、なかなか新鮮でした。
コメントが非常に長くなってしまいました。すみません。
木で鼻を括ったようなスライドでなく経営者個人の声が伝わる感じがするという点で画期的なことは認めるのですが、あくまで仕事をくれる顧客や出稿する外部委託相手などの外部ステークホルダー向け「ポーズ」という印象は拭えません。報告書を読むと、
「先送りを指示した幹部が既に2013年に居た(その後退社)」
「その後継者が『上からの指示』として先送り等の不正を継続的に行わせた」
(『上からの指示』だったから、海外子会社含め不正が伝播していった)
「2021年に発覚したときの処分が寛大で再発防止策にならなかった」
ことが読み取れます。
不正を指南したのは「末端の従業員」ではなく、幹部中の幹部。
それを「社内風土改革」という耳ざわりの良い言葉で誤魔化しています。必要なのは幹部の綱紀粛正(コンプラ最重要視)です。それに綱紀粛正にはそれを破った場合の強烈な懲戒(一般社員だったらちょっときつい言葉ですが、幹部に対してはより厳しい処分が適当)が必要です。こういうところが曖昧なので、社外向けのポーズと思いました。更に対策として外部取締役の任が「特に営業部門に対するブレーキ役」。違いますよね。社外取締役の最大の任務は本来、内部執行役の監視だと思うのです。まるでオトモダチ社外取締役。
過大な利益が必要だったのは子会社の上場への条件をクリアするためと読めますが、それに土井さんが一切気が付かないというのは経営者としてあまりにもお粗末か、嘘をついているか、また知ろうと知るまいと代取としての結果責任は問われるところだと思います。
別件で日本M&Aセンターホールディングス(東証1部)でも売り上げの前倒し計上の不正が多数あったと報告されていますが、その調査委員会の報告書(2/14公表)によれば、
『M&Aセンターでは三宅卓社長ら経営陣から発せられる強いメッセージのもと、売り上げ至上主義的経営が行われ、結果として「ビジネス・パーソンとして許容されない一線を踏み越えてしまった」』
という厳しい言葉が投げかけられています。またそれを受けて、代取社長が
『役員、行為者の処分を厳格に行い、経営陣全員がコンプライアンス、ガバナンスに力を入れ、再発防止に努めてまいります。』
不正の起点本人の言なので守られるかどうかは不明ですが、まず役員から、これが当たり前の経営者の姿だと思うのです。
今回調べてみたのですが、こういう不正売上計上って、自己又は第三者の利益を図ったという点が証明されないと背任や横領には問いづらいのでしょうか。違法配当罪や有価証券報告書虚偽記載罪くらいしかないのかな。
返信遅れましてすみませんでした。
かなり深いですね。
ご指摘の部分はその通りだと思うんですが、要はここからどうしていくのかという意味で、それなりの意味があるかと。
いずれにせよ、宣言したことをどれだけ忠実に遂行していくか、ですけどね。
いつもありがとうございます。