今年1月に当ブログで取り上げた、モルフォ株式をめぐるインサイダー取引。金融庁の課徴金納付命令が、東京地裁により全面的に否定された件です。日本経済新聞でも取り上げられてましたね。判決が企業法務の専門家の注目を集めているんだそうです。
重要事実の発生
モルフォがデンソーとの業務提携を行うことについて決定したのがいつのタイミングだったか、が争点になっていて、日経では過去の二つの判例との比較をしていました。日本織物加工株事件と村上ファンド事件です。この二つの事件の判決では、いずれも実質的な決定時期をかなり早いタイミングで捉えています。
そのため、金融庁はモルフォのケースについても、守秘義務契約を締結し、そのことが経営陣に共有されたタイミングを、実質的な決定時期と判断したんですね。
ところが今回の地裁の判断は、「業務提携の決定は一般の投資家の投資判断に影響を及ぼす程度に具体的な内容を持つものでなければならない」としています。守秘義務契約の締結段階では、具体的な内容を持っておらず、重要事実は発生していないということです。
潮目が変わった
実はインサイダー取引規制における重要事実の決定時期については、以前から決定時期を早くとらえ過ぎているという批判が多かったんですよね。そのため法務関係者の多くが今回の判決を評価しているようです。
幅広に捉えられてしまう恐れがあるため、上場企業側も過剰規制に走る。上場企業のそういった過剰な反応に関しては、当の金融庁も見直すべきだとの方向性を示していました。国側は控訴しているようですが、kuniもこの判決は妥当だと思っています。
あと、この役員が「買付に関してあらかじめ会社に了解を得ていた」というのも、判決に影響してるかもしれません。会社としてはインサイダーには当たらないという判断をしているわけですからね。