地銀株PBR、0.4倍割れ その2

9/12 日本経済新聞19面の記事。前回は主にPBRという指標について書きましたが、今回は地銀株がPBR(株価純資産倍率)でみて非常に割安になっている、という事実について見てみましょう。

PBR 0.3倍割れが20行

記事内で紹介されていた、PBRが0.3倍を下回っている地銀が20行。ランキング形式で掲載されてましたが、高知銀行、愛知銀行、大光銀行・・・。第二地銀(昔の相互銀行ですね)がズラッと並んでると思いきや、第一地銀もけっこう入ってます。

地銀(第一地銀)が全64行中12行、第二地銀が40行中8行ランクインしてます。ほぼ同じ割合ですね。これはちょっと意外でした。ちなみにメガバンクを見てみると、三菱UFJ:0.65倍、三井住友:0.61倍、みずほ:0.62倍、となってるようで、、、こちらも酷いもんです。

ついでに、野村証券:0.63倍、大和証券:0.84倍と、証券も良くありません。東証が公表している業種別PBRを見てみると、鉱業、繊維、紙・パルプ、ガラス・土石、鉄鋼、金属製品、海運、倉庫・運輸、卸売り、銀行、証券、その他金融、という12業種が1倍を下回っていました。

日経の記事でも書いていたように、地銀は経営環境やスルガ銀行の不祥事などもあり、投資家から敬遠されているのでしょうが、業種別に見てみると、マーケットは将来性についても冷静に判断しているように見えます。

PBRの高い業種

逆にPBRが高い業種を見てみると、1位は情報・通信、サービス業で両方2.1倍、続いて医薬品、小売業が1.8倍、空運が1.7倍、食料品が1.6倍となっており(このデータは2017年のものです)、その業種の現在の勢い、将来性という意味で納得感のある結果になってますね。

PBRは使える指標か

PBRという伝統的な指標について見てきましたが、PERも含めて指標としての有用性が薄まってきていると言われています。いわゆるプラットフォーマーと呼ばれるような企業などが典型的です。儲けるための仕組み創りに力を入れるあまり、「収益」を敢えて生まない企業や、この儲けるための装置が財務データ上「資産」と認識されない企業が増加してきているためです。

ここまでPBRについて取り留めのない話を書いてきましたが、株式投資をされる方に注意。指標はあくまで指標でしかありません。時にマーケットは指標を覆しにきますので、十分注意してくださいね。

地銀株PBR、0.4倍割れ

9/12 日本経済新聞19面の記事。地銀株がPBR(株価純資産倍率)でみて非常に割安になっている、というお話。この指標、現在株価を一株あたりの純資産で割って計算するもので、PER(株価収益率)と並んで伝統的な株価指標の一つです。

PER(ピーイーアール)とPBR(ピービーアール)の計算方法

PER=株価/一株当たり当期純利益 で計算される

(例)株価1000円で、1株当たり当期純利益が50円の会社であれば「20倍」に買われている、などと言います。

同じように

PBR=株価/1株当たり純資産 で計算される

(例)株価1000円で、1株当たり純資産が500円の会社であれば「2.0倍」に買われている、などと言います。

今回話題になっているのはPBRで、地銀株平均で0.4倍を下回っているというものです。PBRが1.0倍、というケースで考えてみましょう。1.0倍とは、株価つまり1株の値段と一株当たりの純資産が同じということを意味します。会社を解散して残る純資産を計算し、1株当たり純資産を計算すると株価とイコールになるということです。

地銀株の0.4倍の意味をザックリ理解

株価が400円、発行済み株式数が1億株、純資産額が1000億円の地銀があったとします。先ほどのPBRの計算式に当てはめると、1株当たり純資産が1000円になりますから、400÷1000=0.4(倍)。これで地銀のモデルが出来ました。

なぜ、この状態があり得ないほど割安なのかを考えてみます。ある投資家がこの株を400円で1億株全部買い付けたとします。400億円の投資です。完全に経営権を握ることができますので、会社の営業を停止、会社を整理して残った資産を株主(自分)に返還します。すると、株主(自分)に1000億円が返還されるということになります。

400億円の投資で、即1000億円のリターンが得られる投資方法が存在するということであり、株価が多少変どうしたとしても、つまり株価500円でも、600円でもすばらしい投資効果が得られます。この投資の採算がとれなくなるのは、株価が1000円になった場合です。株を買って、会社を精算してチャラですね。

このように、いくら人気がない株であっても、会社の純資産(解散価値)に注目する投資家が現れ、利益を得ようとする(裁定取引といいます)ので、(通常は)株価が1000円より大きく乖離して下がることはないというわけです。

どうでしょう。PBRが1倍を割れることの意味、何となく理解できたでしょうか。長くなったので、続きはまた。

投信、ネット証券の顧客36%が損失

インターネット証券経由で投資信託を購入・保有している顧客のうち2018年3月末時点では64%が評価益を、36%が評価損を抱えていることが分かった。金融庁が都銀・地銀29行を対象に調べたところ、同じ18年3月末で投信を保有する顧客のうち46%と半数近くが評価損を抱えていた。今回の調査によると、ネット証券の方が銀行よりも投信で評価益がある顧客の比率は高い。

ある時点での投資信託の評価損の比較

18年3月末時点での比較だそうですが、これってそんなに意味がありますか?たしか、大幅に儲かって既に売却した実現益は全く考慮されてなかったですよね。また例によって金融庁のミスリードが始まりましたか。有価証券投資なんて、一番重要なのは売却のタイミングです。実現できなかった評価益なんて何にもなりません。

投資信託の買い付け時手数料

投資信託の種類を特定しているようでもないので、顧客は買い付け時に一定の手数料を払っているはずです。都銀・地銀で買い付けた投資信託はおそらく3%程度の手数料、ネット証券の場合だと1%以下。平均するとそれくらいでしょうか。ネット証券の場合はもっと手数料率低いかもしれませんね。

買い付けた後、投資対象としているマーケットがそれぞれ3%、1%、上昇するまでは評価損ということになります。この統計、もし買い付け時手数料を考慮していないのであれば、両者の評価損の比較は何の意味も持たないということです。

だから手数料をもっと下げなさい

この統計から言えることは、「だから対面販売の銀行等はもっと手数料を引き下げなさい」ということだけです。販売した後の乗り換え営業や、短期での売却といった、銀行の営業姿勢を槍玉に挙げようということであれば、ちょっと違う気がしますね。

手数料についてどういう取り扱いにしているのか、少し調べてみようと思います。この手数料についてしっかり配慮されてるようでしたら、また更新しますね。