ZOZO インサイダー取引で中国子会社役職員に課徴金 1,300万円

証券取引等監視委員会は9/8、「株式会社ZOZO社員から伝達を受けた海外居住者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について」を公表しました。2019年にヤフー株式会社(現Zホールディングス株式会社)がゾゾ株式の公開買付を行った際のインサイダー取引ですね。

取引の概要

TOBの重要事実公表前に、TOBに関する情報がヤフー側からゾゾの役員に伝達され、役員が従業員に伝達。この従業員が中国子会社の役職員に伝えたところ、当該役職員が公表前に約5,500万円でゾゾ株を買い付けたというものです。実際には日本にいる知人名義で買い付けています。

平均買付単価は約2,113円で、公表後2,615円まで上昇しており、中国子会社役職員に課される課徴金の額は1,303万円だそうです。海外居住者と表現されてるので、やっぱ中国人なんでしょうかね。この事件の調査には中国証券監督管理委員会が協力したんだそう。

ポンと5,500万円出して知人に送金できる人ですから、それなりの人物だと思われます。資産家の多くは中国共産党員だといわれてるし、共産党員だったんだろうか。最近は党員の不正に対して厳しく対処しているからなぁ。などと別のところに興味が・・・。わざわざ「役職員」と表現してるので多分役員ですね。

あと一つ不思議なのは、公開された監視委員会の資料によると、買付株数が2万5,977株となっているところ。どうやってこんな端数を買った?知人も少しだけ相乗りしてたから案分してこうなったのかな?

オープンハウス 三栄建築設計をTOB(その2)

一昨日取り上げたTOBの件。TOBにかかる重要事実の公表前の三栄建築設計の株価の動きが怪しいと書きました。今日はこの件についてもう少し詳しく掘り下げてみようかと。反社と繋がっているとして信用を失墜してしまった三栄建築をオープンハウスが買収します、という話です。

株価の推移

8/14(月):1,601円(+48円)、8/15(火):1,716円(+115円)、8/16(水):1,843円(+127円)というのがTOB公表前の同社株の株価推移です。先日も書いた通り、TOBに関する公表は8/16の取引終了後の18:15でした。

ここに書いた3日間の出来高を伴った急上昇はいったい何だったの?というのが問題点です。調べてみると8/14や15日に、今回の反社とのかかわりを調べていた調査委員会が調査結果を公表しており、これに反応して株価が反騰したという見方もあるかもしれませんね。

大きく下げた株価が少し戻ったというのであればともかく、同社株はここ1年1,700円台を付けたことがありません。いわゆる新高値のゾーンまで買い進まれたことに対しては違和感しかないという感じです。そのため、インサイダー取引の存在を感じさせるわけです。

投資家心理として

6月に反社とのつながりが初めて公表された際、同社株は1,300円割れまで売られました。反社会的勢力とのつながりなどけしからん。と、材料に反応して同社株を手放された株主は1,300円程度で売却されたと思われます。

その後、悪材料出尽くしという感じで8月上旬にはもともと付けていた1,500円台を回復。やれやれという形で多くの株主がギリギリ損切かチャラってところで売却したでしょう。今回の反社の話題で株主は振り回されたわけです。

そして、TOBの材料が出ました。株主の多くが損切りさせられた一方で、反社の創業者はTOBにより2,000円台で売り抜けられることが確定したわけです。多くの一般株主が振り回され、損してしまったなか、反社はここ1年以上付けたことのない高値で売れちゃうんですね。反社丸儲けというこの構図、許されていいもんでしょうか。

Abalance(Aバランス)株式会社 決算発表延期でストップ安?

Abalance株式会社は8/14の午前9時ちょうど、「2023 年6月期決算発表の延期に関するお知らせ」を公表しました。同日公表予定でしたが、1週間延期して、8/21に公表予定だそうです。開示文には、「決算数値の確定に時間を要しているため」、という理由だけが記されています。

ストップ安

額面通り受け止めるなら、1週間延期しただけの話。にもかかわらず同社株はストップ安(-1,500円)。ここまで売る?って感じです。同日の取引開始と同時に公表されていて、その直後には前日より500円以上高い水準まで買われたんですが、その後反落してます。

よく見ると前日(先週末)にも出来高が急増して下落していて、決算発表の延期が一営業日前に洩れていたのでは?という感じはありますね。

投資家動向だけか、不正とかか

「決算跨ぎ」とかいって、決算の数字が公表される前日までに仕込んでおいて、好決算の公表と同時に売り抜ける、なんてことする人も多いらしいけど、それにしても極端すぎるような。1週間の延期と、期限を明示していることもあり、この後不正が発覚という続報が出てくる確率は低いと思われますが・・・。

それでも、重要な情報が漏れやすいという会社の態勢や、ここまで大きな下げを見せられると、どうしても不正等が潜んでいるのではと勘ぐってしまいます。

分かってるようでよく分からない 米国の債務上限問題

このところイエレン米財務長官は6月5日にも政府の資金繰りが行き詰まると警告していましたね。その後、5/31、債務上限停止法案が下院で可決され、デフォルト回避に前進、、、というニュースが。6/2には上院でも可決され、債務不履行(デフォルト)が回避されることになりました。

債務上限問題とは

債務上限に関する交渉がもつれ、米国債の格下げにつながったりして米国経済のみならず世界経済が大混乱に陥るなんてこともありました。それゆえ今回もかなり注目を集めてきたわけですが、そもそも債務上限問題って何?なんでこんなことが問題になるの?って、感じですよね。

連邦政府ができる借金の上限(発行できる国債などの総額)は法律で定められており、これが債務上限と呼ばれるものです。米国の会計検査院によると、債務上限として具体的な額を定めているのは、米国とデンマークの2カ国だけなんだそう。

日本には上限の定めなし

その他の多くの国では、債務残高の上限を国内総生産(GDP)比で何%という形で定めているようですが、日本では債務上限が定められていません。そのため、日本人にとっては債務上限問題って、いまひとつ肌感覚がなく、よく分からないモノになってしまうんですね。

毎度毎度散々もめながら、最後には妥協して上限の引き上げが行われる(1960年以来、上限は78回見直されているらしい)わけで、債務上限の規定なんか撤廃すればいいのに。と思うんですが、やはりそうした議論も実際にあるようです。

もちろん、際限なく債務を膨らませないように一定の規律を、というのは理解するんですが、そのために世界中を巻き込んで、金融市場まで大混乱させる政治ゲームは、、、勘弁してほしいものです。

ispace 公開タイミングはあれで良かったのか?

少し前の話になりますが、ispaceは、「民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション 1 月面着陸の状況について」を公表しました。テレビ等でも盛んに報道されましたので、多くの方がその状況についてご覧になったと思います。

ispace

ispaceは、月への物資輸送を行うペイロードサービスのほか、パートナーシップサービスの提供など、月面開発の事業化に取り組む次世代の民間宇宙企業です。日米欧に子会社を設置し、事業を展開している東証グロース上場企業です。

上場と月面着陸

同社は今年4/13に東証に上場を果たしました。まだまだ事業としての実績もなく、赤字企業ですから公開価格は254円。しかし、月面着陸を控えているという投資家の夢をのせて上場。上場初値は4倍近い1,000円でした。証券会社から同社IPO株式をもらった人は大儲けですね。

その後、さらに人気を集め、4/19には2,373円の高値を付けています。このころ、同社は同月中に月面着陸する予定としており、その後民間企業として世界初の月面着陸を4/26に行うと公表しました。そしてその当日、着陸に失敗したことを認めたのが冒頭の開示です。

上場直後はほとんどの場合投機的な動きが加速し、上げる場合も下げる場合もより激しい価格変動となりがちです。ispaceも同様で、「民間企業として世界初の月面着陸」という材料で急騰し、その失敗で暴落するということになりました。5/2の終値は1,010円です。

月面探査にしろ、株式公開にしろ、かなりの準備期間があると思われます。株式公開直後に着陸失敗というこのタイミング、これで良かったんですかね。普通に考えると、公開タイミングを遅らせるなどの対応は必要だったんじゃないでしょうか。たしかに成功していれば最高のタイミングだったかもしれませんが。。。投資家に投機を促すようなこのタイミング、どうかと思います。