TATERU 特別調査委員会 調査結果報告書

今年9月に設置されたTATERUの特別調査委員会が、12/27に調査結果報告書を公表しました。建設資金の借り入れを希望する顧客の預金通帳残高を水増しし、実際よりも多く見せることで、銀行の融資審査を通りやすくしていたという事件です。

本調査の留意事項(調査の前提)

冒頭の留意事項にはいくつか気になることが書かれています。
・入手した資料等から確認できた内容の全てを網羅的に記載したものではないこと
・入手した資料はTATERUから提供を受けたものであり、メールサーバや個々人のメールを独自に全て収集し精査したものではなく、限定的なものであること
こんな感じです。

ほかにも、検討対象となった資料の署名・押印は真正であることを前提としているとか、TATERU側が提出した資料が基本的に正しいことを前提としているとか。社員に対するヒアリングも営業系社員に限定されていたりと、読んでいて全体的に適切性や十分性において疑問を感じさせる内容でした。

第三者委員会日弁連方式

当ブログでも何度か取り上げてきたスルガ銀行などの場合は、日弁連方式で実施した旨が冒頭で書かれています。日本弁護士連合会が公表している「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に即した第三者委員会の運営のことで、企業からの独立性を強く意識した運営方式です。

調査報告書の事前開示は一切せず、企業の現在の経営陣に不利な内容も報告書に記載します。もちろん、真に正しい報告書が出来上がるのであれば、この日弁連方式以外の方法でも全然かまいません。しかし、「会社のことを本気できれいにして再生したい」と思うなら、今のところ日弁連方式を選択すべきです。

TATERUの特別調査委員会の委員も濱法律事務所とTMI総合法律事務所の弁護士となっていますので、委員会設置に際して日弁連方式の選択についての提案はあったものと思われます。しかしながら、その選択はされなかったということのようです。

調査結果

と、こんなふうに、前提がかなり怪しいなぁ、って感じではあるんですが。調査の結果、「営業部長以下31名の従業員が不正に関与し、2,269件の成約物件のうち350件で改ざんがあった」となっています。同時に営業担当常務の辞任、他の取締役の役員報酬減額も発表しています。新聞等ではここの部分くらいしか報道されてません。

調査結果や改善策を見ても、納得感のない点がいくつか。まず、部長より上の経営層には何の責任も認められなかったこと(つまり部長以下の判断で行われたこととして、トカゲのしっぽ切りになっていないか)。そして、「上場前から不正が行われていて、それを発見した際にも、経営が適切な対応を取っていなかったこと」に関する評価の部分。

今年は上場直前に上場申請が取り消される事件が何度かありました。TATERUも上場審査が適切に行われていたら、上場延期、もしくは申請の取り消しとなっていたかもしれません。上場により莫大な創業者利益を得たCEOや役員にとって、今回の減給なんてゴミみたいなもんですね。

SMBC日興証券 インサイダー取引事件(その2)

前回書いたように、SMBC日興証券では近年2回のインサイダー事件が起こっています。2012年には組織の頂点に位置する執行役員。そして今回の事件は組織の底辺に位置する新入社員です。また、執行役員は銀行からの天下りでしたから、いずれも証券会社に入って間もない二人という見方もできますね。

証券会社の実務を知らない人達

二人とも証券会社の実務を知らない人達ですね。ここでいう実務というのは、株や債券を顧客に買ってもらう苦労を指しています。特に株式の場合は、よほど顧客に気に入ってもらい、信頼されないと買ってもらえません。やっと買ってもらったにしても、信頼してくれた顧客を裏切るような結果になることもしばしば。

そういう経験を積み重ねて、インサイダー取引や相場操縦といった、いわゆるマーケットにおける禁じ手を憎む下地ができてくるんだと思います。インサイダー取引に関する研修は受けていたはずですが、しっかり腹落ちしていない。みんなが一生懸命努力して相場に参加しているのに、そんな卑怯なことは絶対だめだという感覚になっていないんだと思うんですよね。

投資銀行業務の特殊性

今回の事件は、いわゆる投資銀行業務に従事している者による犯行です。投資銀行業務は証券会社の中でも最も人気のある職種で、採用段階から一般コースとは別扱いしている業者が多いと思います。一般的にはまず最初に営業店で証券営業を経験させるんですが、高学歴で野心家の投資銀行業務志望者は途中で辞めてしまうんですね。

だから入り口から支店営業をさせずにいきなり投資銀行業務に就きます。これが正直問題ではないかと思います。先ほど書いたように証券の実務を経験しないので、法令等に関する実感がないんです。会社からちやほやされ、2、3年で大きなビジネスをし始めるので、すぐに天狗になり、そんな奴が多いような気がします。おまけにそこを踏み台にして外資系に転職するシナリオまで描いている人が多いんです。

あとは証券アナリストですかね。この人たちも証券実務を知らず、特殊なキャリア形成をしていくので、ルールに関して鈍感で、違反も多いですし、何様?って感じの人が多いですね。実務を経験していない証券マンは要注意です。

職業倫理 プロ意識 企業文化

SMBC日興証券に話を戻しましょう。悪意を持った犯罪を二度と発生させないために、改善策がてんこ盛りです。プリンターに印刷した紙を取り残さないようにする仕掛けや、個室(会議室)の増設、モニターカメラによる監視、誓約書を年に2回提出させる、など。

極めつけがこれです。「職業倫理とプロフェッショナル意識を企業文化にまで定着させる」。問題はどんなふうに実現するか、ですね。素直にそこを教えてもらいたいです。文字にすると格好いいし、美しいですが、、、、その実態は泥臭い研修等の繰り返しですかね。SMBC日興さん、大変だと思います。

SMBC日興証券 インサイダー取引事件

11/29 SMBC日興証券の元社員とその知人が金融商品取引法違反で逮捕され、12/19 同法違反の事実で起訴されました。25日に調査報告書と同社の対応が公表されています。この事件、いろいろと考えさせられる事件です。

入社後1年3か月あまりの新入社員の犯行

SMBC日興証券では2012年に当時の執行役員がインサイダー取引で逮捕されるというショッキングな事件が起きています。この執行役員は銀行からの出向者ということになっていますが、まぁ天下りですね。

そして今回、6年前の悪夢再びということになったわけですが、なんと今度は新入社員による犯行。ニュースでは確か30歳と伝えていましたので、28歳の時の犯行ということになりますか。大学院卒とのことですがちょっと年齢が合わないな。まぁ、いいや。

今回のインサイダー取引、オフィス家具のイトーキが連結子会社のダルトンに対してTOBを行った際、投資銀行部門に所属していた犯人が友人にインサイダー情報を伝えて儲けさせたという事件です。10年前くらいでしたか、金融商品取引法等が改正され、他人に利益を得させたり、損失を回避させることを目的に、インサイダー情報を伝達したり、当該銘柄の取引を勧めることも禁止されました。

相当な悪意

もう一つ驚きなのが、犯人自身が業務上知り得た情報ではないことです。同じ部署が取り扱っていた情報ではあるものの、プロジェクトメンバーではない犯人には伝わらないよう、相応に情報隔離、管理がされていたようです。にもかかわらず、断片的な情報を基に積極的に調べ、非公開の案件情報を取得し、知人に伝達しています。相当な悪意を持った犯行と言わざるを得ません。

日興証券における上記法人関係情報の管理の態勢は、kuniが報告書を読む限り、それなりの態勢になっていると思います。しかし、悪意を持った社員を前提とした管理態勢にまでは仕上がっていなかったということですね。こういう悪意に満ちた事件に対する改善策は非常に厳しいものにならざるを得ません。

悪意を持った社員への対抗策

会社の業務でこんなこと考えたくないですよね。性悪説でルールや態勢を考えるという作業は、ホントに身体によくないです。こういう悪意を持った社員を事前に上手く見つけることが出来ればいいのですが。ちなみに、報告書では犯人の予兆的な事実として以下のことをあげています。
① 業務上必要とはいえないフォルダへのアクセスやインターネット検索の履歴が数多く発見された
② 内部管理責任者によるデスクチェックでは、抽斗の施錠漏れや机上の未整理という問題点が指摘されていた

たったこれだけです。その他さまざまな場面で総じて高評価を得ており、上記2点以外に予兆を感じさせる事象はなかったようです。この2点、日常生活における社員の情報管理に関する意識の高低で、予兆を、、、。これはかなり難しいですね。直属の上司に期待することがまた増えそうです。課長の業務はどこまで行っても減りそうにありません。

東洋証券に行政処分

この週末金曜日に金融庁は東洋証券に行政処分を行いました。証券取引等監視委員会の処分勧告に対する回答になります。処分の内容は業務停止が含まれていないごく一般的なものでした。

行政処分の概要

当処分内容に関する顧客への説明と適切な対応、外国株式の正確な損益を伝えるための態勢整備、再発防止策の策定と実行、役職員への研修実施、責任の所在の明確化といったことが求められています。この日から1か月間以内に改善報告書を提出することになります。その後半年間に一度の改善進捗状況の報告もセットになっています。

処分内容のレベル感

先ほど一般的と書いたように、セットメニューのような処分内容になっています。東洋証券の実態、それほど酷いものではなかったのかもしれません。うわさで聞いていた話でもそういう感触を得ていましたが、処分勧告までかなり強引に持って行ったような感じがします。

監視委員会の勧告では「会社ぐるみであり、3線の指摘に対して全く聞き入れない経営」といった構図が指摘されていましたが、そうでもなかったのでしょうか。まぁたまにあるんですよね、「経営に報告され一定の対応がとられていたとしても、実態が改善されなかったら何もしなかったと一緒」なんていう強引な検査官の言い分。やっぱり先祖返りしてるようで、検査官の質の問題もありそうです。

この後の展開

処分内容の概要からいくつか取り上げてみましょう。まず、「顧客への説明と適正な対応」というのがあります。適切な対応というのは、伝えた損益が間違っていたこと、および正しく損益を聞かされていたらその売買をしていなかったという顧客に対しては、当該売買をなかったことにしてあげる(原状回復といいます)ことを指しています。

また、「責任の所在明確化」というのは、まぁ言葉通りではあるんですが、社内的に誰の責任を問うかということでして、通常は誰かを社内処分してこれに応えることになります。1か月間の間に金融庁へ改善報告書を提出することになるんですが、この改善報告の中で役員等の降格や減給といった処分内容を報告するとともに、東洋証券自身のプレスリリースでその処分内容を公表することになります。

東洋証券に関する監視委員会の検査結果をここまでトレースしてきました。森長官退任後に金融庁がどう変わっていくのか、検査のやり方やその結果の評価である程度見えてくると思われます。コンプライアンス等の業務にかかわっていない証券マンの皆さんも、当局の考え方や検査の傾向は知っておいた方が良いですよね。良かったらこの後も一緒に見ていきましょう。

ACGAのコーポレートガバナンス ランキング 日本は7位

ACGA(アジア企業統治協会)がまとめた2018年のコーポレートガバナンスランキングでは、日本は7位だそうです。2年ごとにまとめるそうですので、前回は2016年。この時は4位ですから大きく順位を下げたことになります。

アジアのコーポレートガバナンス上位

1位はオーストラリア、2位香港、3位シンガポール、4位以降はマレーシア、台湾、タイと続いています。で、日本とインドが7位で、後ろには韓国と中国ですと。なんとも情けない結果ですよね。ACGAが評価する際の基準を詳細に公表しているわけではなさそうですが、いずれにしても残念すぎます。

日本に対する評価

このお話、日本経済新聞では12/14に報道されているんですが、調べてみるとロイターは12/6には報道してるんですよね。日本に対する評価として、「コーポレートガバナンス・コード」や「スチュワードシップ・コード」について触れているところの伝え方がかなり違ってます。

日経ではこれらを評価しているかのような書きぶりになっていますが、ロイターでは「厳しい規制改革よりもソフトローに焦点を当てることは、規制当局が少数株主の権利をめぐる問題に対処していないことを意味する」と、明らかに批判している書きぶりになっています。

2年間で多発した企業の不正

ロイターの方が正しく伝えているように見えますので、ロイターから引用します。ここ2年間で起きている日本企業の不正等を評価した結果だと思われますが、「社外取締役や監査委員会を通じた、取締役会レベルの監視強化による日本のガバナンス改善への取り組みは、見栄えはするものの、実際は多くの企業の取締役会ではほとんど変化はみられていない」という辛辣なモノになっています。

取締役会レベルでの監視の強化、に焦点が当てられていますが、日本の企業が抱える最大の課題ですね。取締役会レベルで監視する役回りは、社外取締役と監査役そして社外監査役です。このうち、社外取締役と社外監査役は、その会社のことをよく知りませんし、業界のこともよく分かっていないことが通常です。

加えて、監視される側は社外取締役や社外監査役に自身にとって不都合な情報を開示しようとしません。そうなると自ら進んで資料請求したり、納得できるまで事実関係を説明させるなどして、取締役会の円滑な運用を妨げるようなこともやっていく必要が出てくるわけです。

本気で務めるとなるとかなりしんどい仕事ですよね。ほとんどの会社が、そんな役割に見合う報酬を設定していないと思います。おそらくここが一番の問題です。監査役なんてもっとひどい状態ですよ。その辺りの実態をもっと社会で評価しなおす時が来たんじゃないでしょうか。