SAR(ストック・アプリシエーション・ライト) 日産自動車 西川社長

日産自動車の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)を含む複数の役員経験者が、報酬をかさ上げして受け取っていた疑いが持たれています。問題になっっているのは「ストック・アプリシエーション・ライト」(SAR)という株価連動型の報酬です。

今回の悪事(もういい加減にせ~よ)

役員がいったん自社株を取得したとみなし、事前に定めた期日に株価が上がっていれば、その差額を金銭で受け取る仕組み。この期日を株価がさらに上がった日まで後ろにずらすことで、西川氏は数千万円を上乗せして報酬を得たといいます。

平成27年 第116回 株主総会招集通知 第4号議案

4年前の日産の株主総会招集通知、第4号議案に「取締役に対し株価連動型インセンティブ受領権を付与する件」というのがあります。今問題になっているSARを株主総会で承認した場面ですね。以下全文引用します。日産が採用したSARがどんなものか、理解できると思います。

<株価連動型インセンティブ受領権の要領>
(1)権利の内容
権利行使日の前普通取引日における当社普通株式 1 株当たりの市場終値が下記行使価額 を上回っている場合に、その差額を受領する権利
(2)年間付与総数
適用期間内の各事業年度(4 月 1 日から翌年 3 月 31 日まで)について、6 万個(当社普 通株式 6 百万株相当数)を上限とする。  
(3)行使価額
当初の行使価額は、取締役会が定める条件に従って適用期間内における各事業年度(4 月 1 日から翌年 3 月 31 日まで)毎に決定される日の、㈱東京証券取引所における当社普通 株式 1 株の普通取引の終値(当日に終値がない場合は、それに先立つ直近の取引日の終値) とする。
(4)権利行使可能期間
各権利付与日から 10 年を経過する日までの範囲内で、取締役会が定めるものとする。
(5)行使条件
権利付与対象者の権利行使の条件は、取締役会が定めるものとする。
(※) 取締役が株価連動型インセンティブ受領権を実際に行使できる数は、被付与者に 付与された権利の数を上限として、被付与者毎に設定される業績目標の達成度等 の条件に応じて変動します。
(6)適用期間及び権利付与日
適用期間は、平成 30 年度末までとし、権利付与日は、取締役会が定める条件に従って適用期間内における各事業年度(4 月 1 日から翌年 3 月 31 日まで)毎に決定される日とする。

石井浩郎議員 JPアセット証券 特別利益の提供

自民党の石井参院議員がJPアセット証券との金融先物取引において、不足した証拠金を建て替える便宜を受けていたことが伝えられました。日本経済新聞の記事では、関係者への取材で分かったとしています。

証券取引等監視委員会の勧告

8/30 証券取引等監視委員会はJPアセット証券への検査の結果として、「顧客に対し特別の利益を提供する行為」が認められたため、行政処分を行うよう勧告しています。この勧告内容についてはkuniも読みました。利益提供の相手が一人だけ?、というところが気にはなってたんですよね。

なんと、その唯一の顧客が石井選手でしたかぁ。kuniと同世代の元プロ野球選手です。近鉄で活躍したスラッガー、後に巨人にも3年くらい在籍していたので、それなりに有名人になってたと思います。今は政治家なんですね。しかしまた、、、つまんないことをしたもんです。

野球が繋ぐ不正の輪

このJPアセット証券、HPで従業員数も開示していません。監視委員会の勧告資料で見ると、常勤役職員45名になってますね。この規模でなぜか硬式野球部を持ってます。けっこうな頻度で「硬式野球部セレクション」なんてのをやって、部員を募集してるんですね。

普通に考えて、この規模の証券会社が硬式野球部を維持できるとは思えませんが、野球繋がり、ということで元プロ野球選手の石井氏に便宜を図る、なんてことになったんでしょうか。

もう一つ気になるのは、元巨人の投手だった林氏が逮捕された件との関係です。FX取引で損失補てんをしたとして逮捕された東郷証券の実質的な経営者です。二人がプロ野球選手として一緒に過ごした時期はなさそうですが、年齢も近く、逮捕の直後辺りからJPアセット証券に検査が入っているようなタイミング。何か関係があるのかと。

プロ野球選手は博打がお好きなようで。。。なんとか賭博やら、金商法違反など、、、他にも野球選手がぞろぞろと出て来なければ良いのですが。

株式持ち合いの解消 リクルートの売出し

9/5 日本経済新聞朝刊のトップは「持ち合い株の解消加速」という記事でした。ここ5年間で約1万銘柄(約12%)減少した。とか、日本株に占める持ち合い株の比率が約1割に低下した。などと伝えています。解消は最終局面に入っているとも。

「持ち合い比率」とは

記事では野村資本市場研究所の論文を引用していましたが、言葉の定義を明示していません。「持ち合い比率」と唐突に書かれても、どういう比率かピンとこない人が多いのではないでしょうか。野村資本市場研究所のHPで論文チェックしてきました。

論文では「持ち合い比率」とは、「上場会社(ただし、上場保険会社を除く)が保有する他の上場会社株式(時価ベース)の、市場全体の時価総額に対する比率(ただし、子会社、関連会社株式を除く)」としっかり定義されていました。

ちょっと意地悪な話ですが、市場全体の時価総額に変化がなく、持ち合いを続ける企業だけが不評で株価を大きく下げた場合(最近ではこういう傾向あるんです)、持ち合い解消は進まなくとも、持ち合い比率は低下することになります。天邪鬼ですが。。。

リクルートの売出しが号砲に

株式持ち合いの解消といえば、最近発表されたリクルート株の売出しが象徴的です。リクナビの件を受け、持ち合いを維持してきた株主がリクルートとの縁を切るため、一斉にリクルートに対して申し出てきたんでしょう。13社で合計1億2000万株、発表時の株価で約4000億円の売出しです。

何だかこれって、きっかけになりそうですね。「株式持ち合い」の様々な新しいリスク面を見せられたって感じです。日経が伝えたように、これから持ち合い解消の売りが膨らんでくるかもしれません。

リクルートは金額がデカいので、売出しという方法を取りましたが、規模がそこまで大きくない場合は、ブロックオファーという形がとられることが多いようです。一旦どこかの証券会社に引き取らせ、その証券会社が個人顧客に販売します。これって、証券会社の収益にけっこう貢献するんですよね。完全に干上がっていた証券界に、干天の慈雨となりますやら。

南海電鉄に続き大阪メトロでも台車に亀裂

南海電鉄の特急「ラピート」の台車で、長さ14センチの亀裂が見つかったというニュースがありましたが、大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)の御堂筋線の台車でも、7月に亀裂が見つかっていたことが分かったそうです。ラピートの台車と製造会社は同じでした。

日本製鉄株式会社(5401)

この件を巡っては、先に南海電鉄の通勤列車でも平成26年以降、台車に亀裂が10か所以上、見つかっていたことが報じられています。これに続く形で大阪メトロでも、、、ということです。

亀裂が見つかった南海電鉄の特急「ラピート」と通勤列車の台車は、いずれも「日本製鉄」が製造していました。さらに、大阪メトロについても「ラピートの台車と製造会社は同じだった」と報じられていますので、これも日本製鉄製ということです。

ちょっと社名に馴染みがない方もいらっしゃるでしょうか。昔の新日鉄です。八幡製鐵所の流れを汲む新日本製鐵(新日鉄)と、住友グループの鉄鋼メーカーである住友金属工業が2012年に合併して新日鐵住金となり、さらに2019年4月1日に新日鐵住金から日本製鉄に商号変更してますね。

昨年度、後を絶たなかった検査不正でしたが、最初に大きな問題として取り上げられたのが神戸製鋼所でした。この神戸製鋼所の品質データ改ざん・捏造問題は、日本の製造業の信頼性をも揺るがす事態となったわけですが、実は10年ほど前には日本の多くの製鉄会社で検査データの捏造などが見つかっています。

その中には当時の新日鉄も入っていました(正確には子会社ですが)。5年間にわたって製造した配管用のステンレス鋼管12万本あまりについて、日本工業規格(JIS)で定められた水圧試験を行わず、試験データを捏造し、「新日鉄ブランド」で出荷していたというものです。

検査不正 再び?

神戸製鋼所の件では同社特有の問題であって、他の鉄鋼会社は大丈夫。という感じで報道されていたように思いますが、今回の台車の亀裂の問題、検査不正等へと繋がっていかなければ良いのですが。。。

おまけ

株屋はこの会社の社名を書くとき、kuniもそうでしたが、「鉄」という字の右側の部分、「失」ではなく「矢」と書いていました。縁起が良くないんですね、金を失うと書くのが。もうかなり昔の話ですけどね。

ラック不正入札 日本貿易保険

8/29 政府出資の特殊会社「日本貿易保険」のシステム開発の入札を巡り、同社元顧問が公契約関係競売入札妨害容疑で逮捕されました。情報セキュリティ大手の「ラック」の社員らに審査基準を漏らしたり、提案書を代わりに作成した疑いだそうです。ラックの社員ら3人についても同容疑で書類送検するとのこと。

情報セキュリティ大手 ラック(3857)は、資本金10億円、従業員数2220名、売上高387億円(いずれも19年3月期末、連結ベース)で、2009年4月にJASDAQに上場している会社です。

昨年10月に発覚

実はこの事件、最初に報道されたのは昨年の10/23なんですね。日本貿易保険が調査委員会を設置して調査してきた結果として、システム開発の入札において不正があったと発表しました。ラックも同じように調査委員会を設置して事実関係の調査をしてきたうえで、10/25、12/3と、同社の社員が不当に関与したとは認識していないと発表しています。

そこから8か月後、「元顧問が逮捕され、ラックの社員ら3人についても同容疑で書類送検する」という報道になったわけです。

日本貿易保険 調査委員会の報告書

日本貿易保険は調査委員会の報告書を開示しています。報告書によると、元顧問はラック社による提案書作成への関与について、次期貿易保険システムに関する自らの構想に沿った提案がなされるよう、提案書のレビューをし、代わりに作成しただけであり、不正の意思もなかったと主張しています。

しかし、調査委員会は、元顧問の各種行為が、ラック社の提案が日本貿易保険において高い評価を得ることにかなりの貢献をしていることは明らかであり、これによって入札の公正性は著しく害されたとしています。また、これほどまでに特定の応札者(ラック社のこと)のために、便宜を図る理由が分からないとも。

個人の行為ですが・・・

報告書も完全に個人の行為としていますが、社長が惚れ込んで外部から招へいしたシステムの専門家というお墨付きの下、ほぼガバナンスの効かない状態でやりたい放題だったようです。個人の行為ではあるものの、会社としての管理責任は逃れようがありません。

ラック社としては、引き続き同社の社員が不当に関与したとは認識していないという立場ですが、このあと元顧問に対する経済的な利益の供与等の証拠が出てくるかどうかが注目されるところです。