顧客本位の業務運営と金融商品販売ルールの規制緩和

このところ金融商品販売に係る各種規制の見直しが始まっています。契約締結前交付書面の交付方法の見直しや、高齢者への金融商品販売ルールの見直しなどです。ここ10年ほどを振り返ると、金融商品取引業者から見て、重要な規制が3つ設けられました。

契約締結前交付書面

契約締結前交付書面は、金融商品を勧誘する際に、あらかじめ、または同時に交付しなければならない書面です。証券取引法あらため金融商品取引法が施行される際の目玉の規制でした。書面の記載内容から、記載時の活字の大きさに至るまで、細かく規制されました。

この書面の交付漏れを防止するため、金融商品取引業者は毎年一回、主要な書面を書面集という形にして、全顧客へ一斉送付するという方法を取りました。法施行当時は、各社が一斉に書面集を作成するため、書面に適した紙や、印刷会社のラインが不足するなんてこともありましたね。懐かしいです。

書面の改定があるごとに交付時期が各社ずれてきたので、今では各社の交付時期がバラバラになっています。規制が求める説明を事細かく文字にしたため、出来上がった書面は、「こんなのいったい誰が読むの?」っていう書面になってます。

一番の目玉のはずが、一番問題ある規制になってしまったというのが実感です。送り付けられる顧客もたまったものではありません。この契約締結前交付書面の交付方法についても見直しが行われるようです。できれば書面の内容についても見直しを進めてもらいたいところです。

高齢顧客への勧誘による販売に係るガイドライン

この規制もインパクト大きかったですね。高齢者を75歳以上とし、80歳以上を超高齢者として、ほぼ一律に勧誘前の手続きや、受注方法、約定通知の仕方からモニタリングに至るまで、ガイドラインが設けられました。法令や規則ではないものの、監督指針にも同じものが取り込まれたため、実質的にはルール化されたようなものです。

この高齢者勧誘ルールについても今月上旬、金融庁が見直しを進めようとしていることが報じられています。人生100年時代に、最後の25年間が一律に規制されるのは確かに変な話。「年齢」が一律に資産運用のハードルになっている現状を改めるのは、とてもいいことだと思います。長くなってしまったので今日はここまで。続きは明日。

ネットワンシステムズ 新たに発覚した原価付替取引

2/13に公表された、「特別調査委員会の中間報告書受領及び公表に関するお知らせ」では、調査期間を1カ月延長し、3/12を目途に最終報告書を受領する旨の説明がありました。その中では、調査の過程で、「原価付替取引」が存在することが発覚したため、、、という話もありました。

原価付替取引(ゲンカツケカエトリヒキ)

今では全部で9社が関与したといわれ、注目を集めていますので、ついつい架空循環取引の方に目が向いてしまいますが、新たに原価付替取引も発覚したようです。公表文の中では次のような表現になってました。

「特別調査委員会による調査の過程で、本不正行為に類似する不正(原価付替取引)が存在することが発覚し、当該不正の疑いに係る会社との平成20年以降の直接取引を対象として追加調査を実施することが必要になったことから・・・」

原価 付け替え

原価とは、商品を提供するために必要とした費用といっていいでしょうか。かなり雑な説明ですが。材料費に加え、労務費や光熱費などすべての費用を足し込んだものです。例えば、売上げ1000万円のシステム開発に800万円の原価が計上されていれば、200万円の利益ということになります。

逆に800万円の売上しかないのに、原価が1000万円かかってしまうと、200万円の赤字ということになります。この時、会計上原価として認識していた1000万円のうち、300万円分を他のプロジェクトに掛かった費用として不正に計上すると、100万円の利益が出せるわけです。この行為を原価の付け替えと言います。

昨年6月に電気興業(6706)という会社が、この原価付替取引の発生に関する調査結果を公表していました。コンプライアンス意識の欠如や原価計上ルールの不徹底など、発生原因が分析されていましたが、最も大きな原因は「赤字案件を発生させないというプレッシャー」でした。

赤字案件を戒める過度な手続き(経営への赤字上申書など)がプレッシャーとなり、原価の付け替えという不正の動機になっています。おそらくネットワンでも同じ状況があるんでしょう。ここでも見積書の案件名の書き換えなど、協力している業者が出てきそうですね。

SMBC日興証券 プロスペクト インサイダー取引

2/19付の日本経済新聞には、SMBC日興証券のインサイダー取引事件をめぐる民事訴訟のニュースと、プロスペクト(3528)のインサイダー取引のニュースがありましたね。全く関係のない2件のインサイダー取引に係る記事です。

SMBC日興証券

以前、当ブログでも取り上げましたが、SMBC日興証券の執行役員(当時、三井住友銀行から出向中)がTOBに係るインサイダー情報を知人に提供し、3600万円の利益を得たという事件が事の始まりです。当時の金商法では、情報提供者を処罰する規定がなかったため、最高裁までもつれた事案です。

結局、最終的には横浜地裁で教唆犯が成立しているんですが、法令ギリギリのところで塀の向こう側に落ちた感じでしょうか。この件についてはいろいろと裏の話もあったようで、、、。

で、今回はSMBC日興証券が、この事件のおかげで社会的信用を失ったとして、この元執行役員を相手に損害賠償を求めていたということですね。日興証券の社長は今では三井住友銀行出身ですから、三井住友銀行が元行員(執行役員)に訴訟起こしてるようなもんですが、結局この請求は棄却されました。

プロスペクト

一方、プロスペクトは東証2部上場、、元は繊維会社です。バブルが弾ける頃から不動産業に進出し、これも上手くいかなくなって、太陽光発電関連など、最近では事実上投資会社みたいな会社になっているようです。

昨年2月14日、同社が無配と特別損失を公表する際、当時株主だった伸和工業とその社長の西村氏はインサイダー情報を得て直前に売り抜けた疑いを掛けられており、証券取引等監視委員会が強制捜査を行ったというニュースです。インサイダー情報を提供したのはプロスペクトの元執行役員でした。こちらは既に解任されています。

この事件にはまだまだ続きがありまして、、、。西村氏は売り抜けた後も再度プロスペクト株を買い戻し、主要株主になるまで買い増ししています。で、昨年11月に臨時株主総会の招集をプロスペクトに請求。

まぁ、簡単にいうと西村派の役員を入れて会社を支配しようということなんですが、その最中に、監視委員会のガサ入れを受けたというオチなわけです。インサイダー取引で挙げられた人物が会社の乗っ取りとは、、、ゲッコーか。

積水ハウス 元会長が株主提案 現経営陣の交代

このところ大和ハウス一色になってましたが、今回は積水ハウスの登場です。五反田の一等地をめぐる地面師事件で55億円の損失を被った責任を取った?、かのように退陣したこの和田元会長。4月の株主総会で株主提案という形で現経営陣との戦いに挑むことになりました。

五反田地面師事件

4月の株主総会に向けて盛り上がってきそうですので、ここまでのおさらいを。地面師事件というのは2017年に起きました。地面師(詐欺師)グループが、五反田の他人の土地の地主や地主のアドバイザーになりすまして、第三者に売り付けるという手口で、積水ハウスから63億円(被害額は55億円)をだまし取ったという事件です。

その後犯人たちは逮捕されましたが、この事件、なぜ積水ハウスがこんな詐欺に引っ掛かったのか、事件の全貌が解明されないままでした。そして、この事件を調査した調査対策委員会が作成した調査報告書も公表されないままとなっていたわけです。

調査報告書

その調査報告書が昨年10月、週刊東洋経済にスクープされたんですね。それによると、この五反田の案件、決裁はまず社長から行われ、回議者には事後回付という形で行われています。社長が決裁しているので回議者である役員たちには忖度が生まれたということのよう。

で、問題は、当時の社長と決裁した役員全員が会社に残り、案件に直接関与してなかった当時の会長が追い出される格好になったということなんですね。その追い出された会長というのが、冒頭の和田元会長です。本来であれば事件の責任を取るべき人物たちが、謀反を起こし、逆に会長を追い出すという小説のような展開だったわけです。

和田元会長 復活の可能性

株主提案では経営陣の刷新を求めていて、和田元会長を含む11人の取締役候補があげられています。外国人も二人含まれていて、米国の投資ファンドの幹部だとか。ブラックロックと組んだのでは、などという噂もあるようで、、、株主総会へ向けてかなり面白くなりそうです。長くなったので今日はここまで。。。

2/13 ネットワン、ダイワボウ情報システム 2/14 東芝の公表 を受けて アップデート

2/13にネットワンシステムズが「納品実体のない取引に関する調査 中間報告書」を公表したところまでは、当ブログでもお伝えしました。その後、日本経済新聞が、ダイワボウ情報システムも絡んでいたことを伝え、ダイワボウは日経の記事の誤りを指摘。また、東芝も調査結果を公表しました。

6社目はダイワボウ情報システム

ネットワンシステムズが主導した一連の架空循環取引に、ダイワボウ情報システムも関与していたことを日経が伝えました。2014年度から2016年度に合計50億円の売上高を架空計上していたという内容です。

ネットワンの中間報告書では関係する企業名は一切伏せられていたんですが、、、これ誰がリークしたんでしょう。ネットワンの上層部だとしたら酷い話です。報告書の上ではきれいごとを並べて、甲社、乙社なんて書いておいて、裏では他社の社名平気で出してるわけですからね。

で、翌日の適時開示ではダイワボウHDが、架空の売上は50億円ではなく、約7億円であると公表しています。金額はまぁともかく、日経が書いたら翌日すぐに調査結果を公表って、、ここまで知ってて隠してきたわけで、、、これまた残念な話です。

東芝も決算発表に合わせて公表

東芝も調査委員会を設置して調査していたようで、2/14、決算短信と一緒に調査結果を公表しました。2015年11月から2019年7月までの間に24案件、435億円の架空売上を計上していたとのこと。架空のエンドユーザーはやはり官公庁です。

担当者等の取引への主体的な関与や、主導してきたネットワンの某氏との共謀についても否定しています。また、報告書では見つからないんですが、新聞等が伝える会見の記事では、「一連の取引には東芝ITを含め、9社が関与していた」とされています。芋づる式公表はまだまだ続きそうです。