段ボールで紙ストロー タナックス

段ボール製造のタナックス(京都市)が、従来品よりも低コストで耐久性のある紙ストローを作る技術を開発したそうです。日経産業新聞が伝えていました。製造コストを従来品の5分の1に下げるといいます。早ければ2020年度中に発売とのこと。

片面段ボール紙

環境問題の象徴的な存在になってしまった感のある紙ストローですが、その製造コストの高さからなかなか普及していません。様々な企業がトライしていて、ほかにもいろいろと製造方法があると思うんですが、あえてこの段ボールストローを取り上げてみました。

なんといっても製造方法がユニークです。筒状の凹凸を表面に出した「片面段ボール紙」。これは土台となる平面の紙と、クッションの役割を果たす波状の紙を張り合わせた構造。波の方向に沿って切り取ることで茎のように空洞ができ、これがストローになるというものです。図がないのでうまく伝わったかどうか。。。

片面段ボール紙というのは従来からあるものなので、製造設備はそのまま使えるようで、製造コストが抑えられると。プラスチックストローが1本0.5円。従来の紙ストローが5円。タナックスの段ボールストローは1円ですね。耐久性もかなりのものということですし、これならユーザーも動きそうです。

もうひとつのタナックス

調べていて混乱したんですが、福井市にも全く同じ社名のタナックスという会社が。。。こちらも紙を扱う専門商社です。両社とも創業者は田中さん。で、タナックスみたい。

さらにややこしいことに、福井市のタナックスもプラスチックストローの代替品を製造していて、なんとこちらは福井産の六条大麦の茎を使用した「麦ストロー」です。たしかに、ストロー(straw)は和訳すると麦わら、、、ですから理にかなってるかもしれません。

段ボールストローと麦ストロー、どちらが普及するのか。まだまだ他にも参入している企業はたくさんあると思います。京都のタナックスも福井のタナックスも頑張ってほしいですね。

VPP シェル子会社ゾンネンが日本で始動

昨年7月に一度取り上げましたVPP(バーチャル・パワープラント)。やはりロイヤル・ダッチ・シェルの子会社、独ゾンネンが日本で次世代電力サービスを2021年にも開始すると発表しました。2/25付の日本経済新聞、1面トップの記事です。

VPPのおさらい

コミュニティメンバー(参加する各家庭)が太陽光発電と蓄電システムを自宅に設置します。これらの世帯をネットワーク化し、メンバー同士で過剰な電力を持つ世帯から、電力が不足している世帯へ融通するというものです。初期投資で200万円くらいかかるものの、その後は電気料金ゼロで電気を使えます。

コミュニティ全体で電力が不足すれば、通常の電力網から電力を取り入れます。逆に余れば電力網に放電することもあります。このように、コミュニティの中での電力の融通や外部の電力網との電力のやりとりを、瞬時で行う技術というのが、ゾンネンのウリなんですね。

東芝エネルギーシステムズ

日経でも少しだけ触れていましたが、昨年1月から東芝エネルギーシステムズも東京電力エナジーパートナーと組んでVPPの事業を始めています。偶然だと思いますが、同じ日の日刊工業新聞は、この東芝エネルギーシステムズの事業について報じていました。

こちらはVPPを実現するための機能を選んで利用できるサービスを開始するという内容です。例えば蓄電池の制御という機能をVPPの事業者にサブスクで提供するというサービスです。ゾンネンのような企業に対して、VPPを実現するための様々な技術を提供するプラットフォームのような感じでしょうか。

日経では電力の需給調整の技術的な難しさや制度設計の遅れが指摘されていましたが、東芝エネルギーシステムズには何とか海外勢に負けずに頑張ってほしいものです。VPPを実現する事業者としてなのか、プラットフォーマーとしてなのか、どちらが正解なのかよく分かりませんが、とにかく頑張ってほしい。残念なことに、同じ再生エネ関連の風力発電では日立が関連事業を手放してしまいましたしね。

独シーメンスの岩石蓄電 22年にも商用化

初めて聞きました。岩石蓄電だそうです。再生可能エネルギーで発電した電力を使い、岩石を熱してエネルギーをためる蓄電システムです。太陽光や風力といった再生可能エネルギーには、曇りの日や風が止んでしまうと電力の供給ができなくなるという弱点があります。その弱点を克服するために蓄電池が必要になるということですね。

岩石蓄電

今回、独シーメンスが商用化予定の岩石蓄電、容器の中に火山岩が約1000トン詰まっています。風力発電で得た電力でヒーターとファンを稼働させて熱風を作り出し、容器に送り込みます。すると内部の岩石が熱を吸収、保存するというわけです。

一方、蓄積した熱エネルギーから電力を取り出すときは、岩石の熱気で水蒸気を作り、タービンを回して発電するとのこと。

発電量が不安定な太陽光発電や風力発電の設備にこの蓄電池を併設して、発電量の変動を均す(平均する)わけです。現在この役割で最も多く使われているのはリチウムイオン電池だそうですが、蓄電容量が少なく、価格競争力が弱い。その弱点を克服するのがこの岩石蓄電ということです。

この蓄電システムに使われるのは安価な岩石(火山岩なので火山国日本ではそこらにタダで転がってます)、ヒーターやファン、タービンなどの機材はごくありふれた量産品でOK。そのため、システム全体のコストはリチウムイオン電池の10分の1だそうです。おまけに長い利用実績を持つ機器の組み合わせのため、信頼性も高く、耐用年数も長い。良いことだらけです。

もう一回発電するのかぁ

なるほど、安上がりでたしかに実用的ですね。再生可能エネルギーの弱点を克服するための当面の技術かもしれません。が、しかし熱から電気を取り出すのに、もう一度タービン回して発電するというのが何とももどかしい。このプロセスこそ熱電発電素子の出番なんですよね。そう、三桜工業の持つ技術です。その後研究の成果が聞こえてこないけど、どうなってるんでしょうね。

AMR 薬剤耐性菌問題

AMR(antimicrobial resistance)という言葉をご存知でしょうか?薬剤耐性だそうです。薬剤耐性については知っていましたが、AMRという言葉は初めて聞きました。週刊東洋経済の記事からです。ジム・オニール氏のこの記事は、気候変動への対策を求める声が強まっているが、それと同じくらい深刻なAMRについては置き去りにされているという主張です。

薬剤耐性

抗生物質を使い続けていると、細菌の薬に対する抵抗力が高くなり、薬が効かなくなることがあります。このような抗生物質への耐性を持った細菌のことを薬剤耐性菌といいます。薬剤耐性は、耐性を持たない別の細菌に伝達され、その細菌も薬剤耐性化し、次々に連鎖していくこともあるそうです。

具体的な例としては、院内感染のニュースなどで聞くことがあるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が挙げられます。抗生物質(ペニシリン)で駆逐されたはずのブドウ球菌は、耐性を身につけ耐性化、これに対応するためにメチシリンが作られましたが、さらに耐性化したのがメチシリン耐性黄色ブドウ球菌というわけです。

社会へのインパクト

抗生物質が発明されたことで人類を大きな恩恵を受けてきました。細菌の耐性化が進むというのは、要するに抗生物質が発明される前の時代に戻っていくということ。気候変動と同じくらい深刻な問題であることがよく分かります。製薬会社は儲かる見込みが低いことから、新薬の開発を避けているといいます。

AMR対策。気候変動への対策と同じレベルの社会課題でありながら、今のところは気候変動に隠れてしまっていて、AMR対策は世界的にも広がりを見せていない。少なくともこういう現状であるということは、投資家としても認識しておく必要がありそうです。今後、株式市場でも折に触れて材料化するはずです。

チャレナジー(Challenergy) 垂直軸型マグナス式風力発電機

マドリードで開催されている第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)。小泉環境相の演説は不評でしたが、民間はジャパンパビリオンを展示して頑張っているという報道がありました。その中でも目を引いたのが、チャレナジーの垂直軸型マグナス式風力発電機です。

チャレナジー(Challenergy)

2014年に設立された会社のようです。社長は清水敦史さん。東日本大震災がきっかけになり、キーエンスのエンジニアから転じてこの会社を設立。垂直軸型マグナス風力発電機を発明されたんですね。

ホームページの社長の挨拶。「風力発電にイノベーションを起こし、全人類に安心安全な電気を供給する」とあります。「大手電機メーカーで研究開発に従事していた当時に、東日本大震災とそれに伴う原発事故を目の当たりにし、エンジニアとしてエネルギーシフトに革命をもたらす事業を興すことを決意しました」とも。  メチャカッコイイっすね。

マグナス式風力発電

マグナス力について、同社のホームページでは次のように説明されています。

回転する円柱または球が一様流中(風や水の流れの中)に置かれたときに、その流れの方向に対して垂直の方向に力が働くことを「マグナス効果」といい、こうして生み出される力(揚力)がマグナス力です。野球のカーブボールやゴルフのスライスといった現象も同じ原理によるものです。

いろいろメリットはあるようですが、最大のメリットは台風のような激しい風でも安定して発電できることだそうです。kuniも実は気になっていたんですね。最近当たり前のようにやってくる大型台風とか、あの大型プロペラの風力発電って大丈夫なのかと。あまり報道されないけど、実際にはけっこう壊れてるみたいです。

台風や突風に強く、一般的な風力発電と比較して低回転のため、騒音やバードストライクなど環境影響の低下も期待できるとのこと。既にTHKが量産化の支援もしているみたいです。期待できそうですね。

もし同社の方が読んでおられたらですが、ホームページのニュース一覧、12/2のニュース、、、COP24になってますよ。