三井住友銀行 ファイアーウォール規制違反?(その2)

「選択」という雑誌で報道されている三井住友銀行のファイアーウォール規制違反行為に関する第2弾。平成17年に優越的地位の濫用で公正取引委員会および金融庁から行政処分を受けた三井住友銀行が、今回またもや同じ優越的地位の濫用で処分を受けそうだというお話です。

今回は銀証連携で発生

前回と違うのは、今回は三井住友銀行の優越的な地位を利用して、SMBC日興証券が金融商品取引契約を締結していることと、金融庁の検査で行為が発見されたことです。前者については、証券界からあまりそのような話が聞こえてきません。証券側については「優越的地位の濫用について、意図して行為を行っているという認定がされていないのかもしれません。

銀行が優越的地位を濫用して、証券の商品を買い付けるようお膳立てしておき、のちに証券から連絡させて実際の取引をさせる。証券マンの方にはお膳立ての場面が見えているわけではないので、違反行為までは問えない。ただし、多くの取引の実態を検証すれば銀行の違法行為に関する疑義を持つことはできたのではないか?金融庁もこの辺りについて改善を求める程度ですかね。

金融庁の検査で発覚

問題はもう一つの、「金融庁が検査で発見したこと」の方です。平成18年に三井住友銀行は行政処分を受けたわけですが、それから間もなく、金商法のファイアーウォール規制が緩和されています。当時の国会では、「こんな事件が起きていて、舌の根の乾かぬうちに、ファイアーウォール規制の緩和とは一体どういうことだ」、と金融庁長官が野党議員から問い詰められたりしていました。

こうした世論を押し切って、金融庁は規制緩和を実行したわけです。さすがに当時の金融庁長官は、今では年収2億円といわれる(というか自分で自慢しているらしいですが)森長官ではありませんでしたけどね。とにかく、金融庁が頑張って規制緩和したら、また同じ三井住友銀行がやりやがった。そういう展開なわけですね。

金融庁はどう動くのか

ここまでの規制緩和の流れや三井住友銀行事件の歴史を踏まえ、金融庁はどういう判断を下すのでしょうか。せっかくメガバンクのガバナンスを信じて規制緩和してやったのに、裏切られた。よって極刑に処すんでしょうか。

それとも、メガバンクといえども、証券や信託との連携なしには、今後のビジネスモデルを考えることはできない。極刑に処して、連携ビジネスを抑え込んでしまうようなことにでもなると、揚げたばかりの「金融育成庁」の看板に傷がついてしまう。ここはグッと我慢して「トップとの議論」、「深度ある対話」で改善させていくのでしょうか。

三井住友銀行 ファイアーウォール規制違反?

「選択」という雑誌の2019年1月号に「三井住友銀が悪質金商法違反」という記事が掲載されました。ここで言っている金商法違反というのは、ファイアウォール規制違反のことで、中でも主に「優越的地位の濫用」という違反行為のようです。

違反行為が行われた経緯と行為の概要

2016年4月に、三井住友銀行副頭取だった人物がSMBC日興証券の社長に就任し、人材交流として証券から銀行の法人営業部隊にも営業員を積極的に出向させます。いわゆる銀証連携を強力に推進しようとしたわけです。証券マンが銀行員と一緒に法人回りをしながら、証券の商品を買わせたり、証券に口座を作らせたりしたというお話です。

その際問題になるのが、ファイアーウォール規制で、今回問題視されているのが優越的地位の濫用という違反行為です。銀行は顧客に融資をしていたり、これから融資しようとしているとき、顧客に対して優越的な関係にあります。お金を借りたい顧客に、その弱みに付け込んで顧客が必要としていない商品を買い付けさせる、といった行為を優越的地位の濫用といいます。

もともとは独占禁止法の定める不公正な取引方法であり、銀行が単独でこの行為を行った場合も違反となりますが、金商法が銀行と証券を分離するファイアーウォール規制の中に取り込みました。ということで、今回指摘されている行為は、銀行の優越的な地位を利用して、グループ会社の日興証券の商品を買わせたという整理になります。

三井住友銀行事件 金融機関の独占禁止法違反

実は平成17年に、公正取引委員会は三井住友銀行に対し、独占禁止法違反を理由として違反行為の排除措置を取るよう勧告を行っています。これを受け、平成18年に金融庁は三井住友銀行に対して行政処分を行っているんです。記憶されている方もいらっしゃると思いますが、優越的地位を利用して金利デリバティブ(金利スワップ)を売り付けていたあの事件です。

行政処分では、金利系デリバティブ商品の取り扱い6か月間の業務停止であったり、法人営業部の新設禁止、内部管理態勢の改善などの命令が出ています。国会でも議論になったりしていた記憶があります。にもかかわらず、なんでまた、こんな、同じようなことを?というのがkuniの率直な感想です。顧客本位の業務運営が求められ、それをいかに実現していくかを各金融機関が知恵を絞っているこの時代にですよ。理解不能です。

もう少し突っ込みどころがあるんですが、少し長くなりましたので、本日のところはこの辺にしておきます。続きは次回ということで。

三井住友銀行 SMBC

ちょっと理由があって三井住友銀行のことを調べていました。その理由とは関係ないんですが、以前から気になっていたこともついでに調査。日本語だと三井住友なのに英語表記ではSMBCって何で???。という素朴な疑問。Wikipediaで調べてみました。

対等の精神

「三井住友」を「Sumitomo Mitsui」とした理由は、日本語表記だと三井が初めとなり、英語表記では住友が初めとなるという、対等の意味からだそうです。また、国際的にはMitsuiよりもSumitomoの方が名前が通っているからという意味もあるそうです。

メガバンクが生まれる当時の合併交渉の難しさが伝わってきますよね。今となっては紛らわしいわ、てなもんですが、あの頃は大変だったみたいですよ。社名もそうだし、組織のつくりから、存続させるシステムの選択も。最終的にはお偉い人たちのポスト争いまで。ポスト争いは合併後も続いてますけどね。

メガバンクの志望動機

調べていてまたまた脱線、面白いモノを見付けました。就活学生に対してアドバイスしているブログです。人事面接で「メガバンク3行の中でなぜ当行を志望したのか?」と聞かれた場合にどう答えるべきかを指南しています。

三菱UFJ、三井住友、みずほ、それぞれの会社の特長やらを上手く取り込んで、模範回答を示しているんですが、まさに模範回答。面接していてこんな解答ばかりだと、面接官面白くないだろうなぁと思います。御社の強みとか、御社の社風だとか、、、分かりませんて、会社の外からその会社の実態なんて。ましてや皆さん会社体験のない学生なんだから。

そこで、kuniが面接官をグッと引きつける回答を考えてみました。「メガ3行の中でどうして当行を選ばれたんですか?」。

「いえ、メガバンク3行とも面接受けてます。銀行ならメガしかないと思っていますので、地銀等は考えておりませんが、正直なところメガ3行の中でどの銀行を、というのはまだ自分の中にはありません。企業側も事情は同じだと思うんですが、何度も面接を繰り返して学生のことを知ろうとするように、私も企業訪問や面接とかを通じて、3行のことを理解できるんじゃないかと思っています。最終的な選択はそれからのつもりです。」

どうでしょう。直球すぎますかね。kuni自身も新卒やキャリア採用の面接、何度もやってきましたけど、これくらい正直に話してくれる人の方が好きですね。会社の志望動機なんて、定番の質問ですから、面接受ける側にも十分準備ができています。十分準備されているからこそ、皆さん似たような回答で面白くないんですよね。

三井住友の本題に入る前に少々長くなり過ぎました。本題は明日にでも。なお、志望動機の回答例をお使いになるのは自由ですが、あくまで自己責任ということで。

南都銀行の店外ATM セブン銀行が広域受託

コストダウンに迫られる地銀とそれを囲い込もうと企むローソン銀行の記事を以前書きましたが、地方銀行第一号は南都銀行。それも相手はローソンではなくセブン銀行となったようです。

2019年より店外ATM入れ替えへ

2019年中に駅や大学を中心に店外に設置された南都銀行のATMを、セブン銀行のATMに置き換え、共同でATMを運営、その後の利用、運用状況を確認しながら順次拡大していくとのこと。ローソン銀行が目指していた店舗の共同運営については視界に入っていないようです。

セブン銀行のプレスリリースによると、現在も26社で449台を受託、運営しているそうですが、地方銀行では初めてのようです。また、日本経済新聞では、「全体の4割に当たる239台の支店外ATMを一括委託する」という書きぶりになっていますので、これまでのセブン銀行の実績との比較でもかなり大きな案件ですね。

地方銀行にとってのコスト削減モデルに

同じく日経によると、南都銀行はATMの運営費が今の半分に圧縮できるとしており、1億円以上のコスト削減を目指しているとしています。地銀に限った話ではありませんが、ATMのメインユーザーは高齢者、地方になればその傾向はさらに強まります。ATMを削減するとなると、顧客やその地域からの反発が予想されます。

どこだったか忘れてしまいましたが、地銀がある地域の営業所だか、ATMだかから撤退を決めたら、その自治体の取り扱い金融機関から外されたとか、外されそうになったといった話もありました。

だったら、ATMだけ全部コンビニに任せようという発想にならない方が不思議ですよね。もちろん、コンビニ銀行使ってみたらとっても便利。ってことで、「コンビニ銀行に顧客を奪われるんじゃないか」、という心配も分かります。けど、まだその分野で戦うの?って感じです。もっと自分たちの強みを出せて、収益性改善できそうな戦場で戦わないと。

ふくおかFG傘下の収支管理アプリ導入

「南都銀行がふくおかFGの傘下のフィンテックベンチャーが運営する収支管理アプリの提供を受ける」なんていうニュースも見つけました。iBankマーケティングという会社らしいですが、広島銀行、沖縄銀行に続いて3行目らしいです。こういう新しいサービスにも対応しつつ(単独でできなかったらどこかと組むのもありでしょう)、レガシーコストには大鉈を振るう。地銀の中では参考になる動向かもしれませんね。

なお、iBankマーケティングのHPで確認したところ、収支管理アプリ「Wallet+」を今現在使えるのは、福岡銀行のほか、沖縄銀行、熊本銀行、親和銀行となっています。南都銀行はまだ準備中ということでしょうか。

三菱UFJ マネロン疑惑

先週末のことでしたが、MUFGがマネロン防止のルールを破ったとして、処分を求めるニューヨーク州金融サービス局との間で訴訟になったという報道がありました。同局は国際的な制裁対象となっている企業や個人との取引を避けるための内部チェックを、MUFGが意図的に無視していたとしているそうです。昨年から検察当局の捜査を受けていたともいわれています。北朝鮮がらみのようですね。

開示の必要はなかったのか

少し気になることがあります。米当局の捜査を受けていること、もしくは訴訟を起こされていることに関して、何ら開示がされていないことです。当局の捜査中ということで、情報の開示が禁止されていたのでしょうか。米国でのこの手のお話、数百億円といったレベルの制裁金が課されることも珍しくないだけに、気になるところです。

一方で株価対策といわれている増配を公表

加えて、そうしたことが起きている最中に増配を発表していて、それが下げ続ける株価対策ではないかとも言われていることです。この対策が功を奏したかどうかは別の問題ですが、この対策で株価が反発したのちに、当の訴訟に敗訴、業績下方修正で株価は急落。なんてことになったら、というようなことは考えなかったんでしょうかね。

こんな風に考えていくと、いろいろと引っかかるところが多いニュースなわけです。この訴訟自体は、米国に進出する銀行には税金やらショバ代みたいなもの、といった冷めた見方もあるかもしれません。しかし、投資家にとっては優しいお話ではありません。

海外への融資を強化してきたメガバンク

メガバンク3行は揃って海外部門を強化することで収益を確保してきました。地銀は生き残りをかけて、アパートローンやカードローンに積極展開してきました。その結果、融資の審査等が緩んでしまい、あちこちで問題が発生しています。メガバンクにしても同様で、同じような誘惑があったと思われます。

融資の審査もマネロンのチェックも、地銀のように甘くなっていなかったでしょうか。積極展開するところ、成長するところにガバナンスの盲点があります。今回は三菱のニュースですが、三井住友、みずほも対岸の火事ではなさそうです。

また、一部の報道機関しか取り上げていなかったり、ニュースに具体性がいまいちないことや続報も入ってこないなど、何やら不自然なニュースでもあります。ひょっとすると、また司法取引の成立で妙な幕引きだったり、ライバル行への飛び火なんてのもあるかもしれませんね。