りそな銀行 レオパレス21

選択という情報誌の4月号に、りそな銀行の記事が掲載されています。2003年に公的資金の注入により、実質国有化されたりそな銀行。その3兆円の公的資金を2015年にやっと完済したわけですが、そこに今度はレオパレス21がらみの投資用不動産関連融資の問題が浮上しているというお話です。「公的資金再注入の危機」などという物騒なサブタイトルも。

スルガ銀行との比較

スルガ銀行は不動産業者とつるんで、融資の条件となる預金残高等の改ざんにより、不正融資をしていました。このことが明るみに出ることでスルガ銀行は制裁を受け、また採算が取れない無理な貸し付けにより、オーナーが返済不能に陥ってしまうという構図でした。不動産業者も銀行も悪事を働いていたということです。

一方でりそな銀行の場合は、今のところこうした不正は確認されてなさそうです。レオパレス21の施工不良問題が泥沼化したことで、レオパレス21関連の投資用不動産に貸し付けた資金が大量に不良債権化するのでは、という構図のようです。

施工不良の解消のための改築費用や、入居者の引越費用などにより、レオパレス21の業績は相応に悪化するでしょうし、入居率が大幅に低下してくると彼らのようなサブリース業者は「オーナーへの支払い>実際の家賃収入」という状況になり、毎月一定の資金がキャッシュアウトしていきます。それでレオパレス21はアウトに、という見立てですね。

レオパレス21オーナーへの融資残高

一方で、オーナーはと言うと、入居率が下がっても一定期間は家賃保証がありますが、いずれ条件が改定されて、家賃収入が低下。「借入の返済額>家賃収入」となってくるあたりから、返済不能に。銀行にとっては不良債権化するわけです。

りそな銀行のレオパレス21関連の投資用不動産向け融資残高は、記事では8,000億円~1兆円と推測して、これが不良債権化した場合に、りそなに何が起きるかということを書いています。まぁ、確かにこの想定通りだと、かなり危ないことになってきますね。

世間的にもアパートローンの出し手としては、かなり有名な銀行でした。スルガ銀行、西京銀行、そしてりそな銀行。ありえない話でもなさそうです。いずれにしても何度か書いてきたように、サブリースショックが現実のものになりつつあることは間違いなさそうです。

三菱UFJ銀行 指定金融機関 辞退

このニュース自体は今年2/25に流れていたものです。地方自治体の公金収納や支払い事務などを受託する指定金融機関。三菱UFJ銀行が、芦屋市や宝塚市、明石市、伊丹市、池田市、所沢市など、10市程度の地方公共団体の指定金融機関を、辞退することになったというお話。

三菱が口火を切った

その昔、指定金融機関になることは、多額の公金預金の受入れや縁故債の引受などのメリットがあり、銀行同士が結構競い合ってた記憶があります。その見返りとして、銀行は窓口収納業務など各種手数料を無料化または大幅割引してきました。今ではそのメリットもなくなり、全くコストに見合わない業務となってしまったため、いただくべきコストをちゃんと払ってくれという交渉が始まっていたんですね。

しかしながら、ここに出てきた10市はいずれもその交渉を受け入れなかったということです。ちなみに、芦屋市の場合は、年間7万200円だった費用を、1500万円というレベルに引き上げる交渉だったそうです。これだけ見ると吹っ掛けてる感じですが、実際にかかっているコストであり、妥当な要求なんです。

10市はいずれも、三菱UFJ銀行が輪番制で指定金融機関を務めていた先のようで、三菱が口火を切った形です。そのため、他の銀行も地公体との交渉がしやすくなったようで、10市の中には、三菱と一緒に輪番を組んでいたもう一つの銀行が交渉を続け、手数料等の増額に成功した事例も出てきたとか。

銀行が好調だったころの慣行

時代が変わって、銀行も国や地公体にコスト割れのサービスを続けていくことができなくなりました。三菱と言えば3年ほど前、国債の入札に参加する際の特別な資格である「国債市場特別参加者(プライマリーディーラー)」を返上したという出来事もありました。この辺りから、既に三菱はコストに関してかなり敏感に対応していたように感じます。結果的に、御上よりもステークホルダーを志向し始めている。そんなふうにも言えるかもしれませんね。

昔の慣行にメスを入れ、地方の指定金融機関の座は地方金融機関に返すことになっても構わないという判断。これをきっかけに銀行界が当然の要求をし始めるといった新しい潮流を作ろう。そんな狙いもあったのかもしれません。

三菱UFJモルガンスタンレー証券

最後に脱線。昨年、三菱UFJモルガンスタンレー証券が国債特別資格を停止される、というニュースがありましたが、こちらは国債先物取引で相場操縦をしてしまったことに対する処分でした。上記の話とは違います。。。実は2004年に、当局検査において検査忌避で業務停止命令を受けたUFJ銀行(当時)も、同じ資格取り消しを受けてます。三菱UFJグループ、この資格とは因縁があるようで。

メガバンク 新卒採用減 米国債で巨額損失

4/2付の日本経済新聞、金融経済面は賑やかでしたね。三菱UFJ銀行の新卒採用45%減。検証、みずほ巨額損失(下)、三菱UFJ系証券2社合併。この日の日経は新元号「令和」関係に多くの紙面を割き、お祝いムードでしたから、金融界の惨状が目立ちました。

三菱UFJ銀行 新卒採用45%減

2020年春の新卒採用数を530人へということで、前年比45%減らすことを決めたとのこと。みずほや三井住友は既に今年度から先行して採用を減らしているので、三菱はちょっと遅れた感じですか。

一方で、新卒予定の大学生の就職志望先ランキングの方でも、3メガバンクは順位を大幅に下げています。採用は抑制しつつ、どう優秀な人材を確保するかが課題になるとか、質の高いデジタル人材にシフトするみたいなことも書かれてましたが、それはやっぱり人気のあるころにやっておかないとね。

あの志望先順位ではそれもかなわないでしょう。結局金融って、会社は違えど、やってること、志向すること、みんな一緒なんです。今までもそうだったし、たぶんこれからもそうでしょう。これくらいの巨大な産業がIT人材を本格的に求め始める。金融界が動くとデカいですからね。こうやってIT人材バブルは膨らんでいきます。

みずほ巨額損失(下)

こちらの記事も刺激的でした。メディアも含めて、ある程度好意的に見てきたみずほの巨額損失の計上ですが、この記事では同時に行う米国債の含み損の処理1500億円にフォーカスしています。

みずほに限らず、銀行は短期で資金を調達して米国債で運用しているんですが、そのドル資金の調達コストが運用利回りを上回る、逆ザヤの状況が続いています。昨年末辺りから逆転し、今のところ解消しそうにない。となると、このまま運用を続けていても損失の垂れ流しとなるわけです。

そこで、みずほはこの運用ポジションを解消してしまうという決断をしたということなんですね。ところが、その経緯について、「みずほは決断できぬままでいたが、金融庁は早期の損切りを水面下で促し続けてきた」とか、「新社長になり、新しい中期経営計画を作る前は絶好のタイミングとみて畳みかけた」などと伝えています。要するに、行政が主導した外債の損切りだったということのようです。

しかしまぁ、このストーリーって、、、やっぱり金融庁がリークしてるんですかね。メガバンクももちろんそうなんですが、地銀も外債でやられてる構図は全く一緒だと思われます。みずほがこんなふうに追い込まれたということは、、次は我が行、、、そんなインパクトはあったでしょうね。

三井住友銀行 今度は不当手数料?

「選択」3月号でまた三井住友銀行が書かれちゃってます。今回のタイトルは『三井住友銀行で「不当手数料」強要横行』。またなんとも物騒な言葉が並んでいること。以前当ブログでは同誌が報じた三井住友銀行のファイアーウォール規制違反の疑いについて取り上げたことがあります。今度は不当手数料だそうです。

不当な手数料 3億5,000万円の融資に1,500万円のアレンジメントフィー

記事では、メガソーラー関連会社の社長が三井住友銀行に3億5,000万円の融資を打診したところ、銀行員が持ってきた提案書にアレンジメントフィー1,500万円が要求されていたとのこと。通常の融資でも手数料がとられることはあるとしながらも、4.28%もの手数料は不当であるという主張になっています。確かに高いですね。

不当な手数料と言えば、以前当ブログでは東日本銀行の行為を取り上げました。歩積両建預金を迫ったり、根拠が不明確な手数料を徴求したり、さらに顧客に実体のない営業所を登記させて、不適切な融資をしたりといった行為が組織的に行われていたというものです。昨年7月に金融庁から行政処分されました。

優越的地位の「活用」

記事に話を戻しましょう。思わず笑ってしまったのがこの社長と銀行員の会話です。社長が「融資の見返りにこんな訳の分からない手数料を要求するなんて、これこそ優越的地位の濫用ではないか」と詰め寄ると、銀行員が「これは優越的地位の濫用ではなく、優越的地位の活用です」と答えたとか。

顧客との間でこんなやり取りする銀行員がいるとは到底思えないんですが。記事ではこの行為が優越的地位の濫用に該当するかどうかの考察も行っているんですが、そういう問題ではないような気がしますね。いまどき法令に抵触するかどうかではなく、顧客本位の業務運営を競っている時代ですから。しかし、それにしてもこんな事例があるとは、、、。

強要と横行

記事のタイトルでは「強要」と「横行」が強調されていますが、今回取り上げている事例は冒頭のメガソーラー関連会社社長の件だけです。社長は結局他行から借り入れしたそうですから、強要されてるふうではないです。また、横行というには1事例のみではちょっとという感じです。他にもこんな苦情等が何件も寄せられているとか、、、が必要ですよね。

今月の三井住友銀行に関する記事は詰めが甘かったようですが、来月号でもう少しその辺りを深掘りしていくんでしょうか。

地方銀行の人材紹介業

昨年1月、金融庁は監督指針を改正し、銀行による人材紹介業を解禁しました。「その他の付随業務等の取扱い」という項目の改正です。その他の付随業務というのも皮肉なもので、実はこの付随業務で何とか地域金融機関の生き残りをという施策なわけです。

ちなみに、その他付随業務として、記されている業務は、原文のまま引用すると、「銀行が取引先企業に対して行うコンサルティング業務、ビジネスマッチング業務、人材紹介業務、M&Aに関する業務、事務受託業務」という感じで、5つの業務が併記されています。人材紹介業務を含めて、すべての業務が現在の苦境を脱するために重要な業務のようです。

続けて、「なお、実施に当たっては、優越的地位の濫用として独占禁止法上問題となる行為の発生防止等、法令等の厳正な遵守に向けた態勢整備が行われているかについて留意する」よう求めています。そう、優越的地位の濫用が懸念される業務であるからこそ、従来認めてこなかったわけです。

当時メガバンクの人員削減のニュースなども流れていたものですから、kuniは「この改正で銀行員の再就職支援が可能にしたのか」などと考えてしまったものです。

根付くか 地銀の人材紹介事業

週刊金融財政事情2/25号では、このタイトルで地銀の人材紹介業務の特集をやっていました。人材紹介業務の持つ可能性についてレポートされており、要点をまとめると次のような感じ。
① 地域の持続可能性を高め、事業承継の問題を解決
② 首都圏人材を地方に還流させ、地方の成長を促進
③ 人材紹介業務が、地域総合サービス業の契機に

紹介手数料は紹介した人材の年収の3割程度と言いますから、年収600万円の人材を1件紹介しても、150万円程度。これで銀行の収益が回復できるとは到底思えませんが、人材を紹介することで顧客に非常に喜んでもらい、本当の意味で顧客の懐に飛び込むことができる、そうです。

たしかに、このままだと、地方の事業は後継者がなく、事業が成り立たなくなります。つまり、銀行の顧客が確実に減少していくということです。その減少を食い止めるだけでも意味のあることですし、地域金融機関であるがこそ、顧客の内情にまで通じているという強みもあります。

過疎化が進む地方に首都圏の人材が還流し、事業承継の問題を解決し、新たな活力も与えることができる。こうしたまさに地域密着型のコンサルティング業務の延長線上に、地域総合サービス業という地銀の未来があるというお話でした。ちょっと端折りすぎですね。20ページにわたる特集ですので、地銀関係者の皆さんは必読かと。