損保ジャパンはなぜ ビッグモーターとの取引を再開したのか

日本経済新聞は10/10、「損保ジャパン、取引再開30分で決定 社外調査委が糾弾」と報じました。ビッグモーターがかなりヤバいことやってそうだぞ、っていう状況が伝わってくる中、社長の鶴の一声でそれまでの議論がひっくり返り、わずか30分で取引再開となったということです。

役員ミーティング

取引再開が決定されたのは7/6の役員ミーティングだそう。事前打ち合わせではビッグモーターに対する追加の調査が不可避との認識が共有されていたそうですが、役員ミーティングでは社長の一声で取引再開が決定したということです。その間わずか30分。ビッグモーターの悪質な水増し請求の手口についての情報は、役員ミーティングの出席者の多くに事前共有されていたらしいです。

この役員ミーティングには法務やコンプライアンスなどの部門からの出席者はいなかったとのこと。そもそも役員ミーティングってなに?ってことですよね。執行側の役員だけで会社にとって重要な決議を行えるという態勢がそもそもの問題です。

これぐらいのサイズの会社であれば、こうした決定は取締役会で行われてしかりです。取締役会であれば監査等委員(または監査役など)が必ず出席しますし、監査等委員が要請して監査部長やコンプライアンス部長などを同席させることもできます。もちろん、出席したとしても機能しなかった可能性はありますが。

ブレーキを踏む者を排除し、執行側の役員だけで「役員ミーティング」なる会議を開催し、重要な決定を行えてしまう。これメチャ危うい態勢です。

北弘電社 今度は元従業員に訴えられる

北弘電社は10/10、「当社に対する訴訟の提起に関するお知らせ」を公表しました。取締役が主導する形での原価の付け替えなどの不正会計、有価証券報告書等の虚偽記載を受けた課徴金納付命令の勧告など、揉めまくった同社。詳細は過去記事をご参照ください。

訴訟の嵐

今回の開示では、元従業員から未払賃金及び遅延損害金の請求など、令和4年8月1日から令和5年4月30日までの未払法外残業代及び遅延損害金を請求する訴訟を提起されたそうです。訴訟を提起したのは今のところ1名で、請求額は263万5,210円だそうです。とうとう元従業員にまで訴えられ・・・。

いやぁ、なかなかスッキリしませんね。今年6月には、請負経費・報酬金のうち一部未払いがあるとして、横浜市の取引企業から3億3,000 万円を請求する訴訟が提起されています。

もう少し遡ると、昨年11月。元同社取締役に対して、一連の不正会計を引き起こしたことにつき、善管注意義務違反があったとして、北弘電社が4億2 万4,498円の損害賠償請求訴訟を提起しています。

債務超過

不毛な争いが続いていますが、その間に同社は前年度末に2,639 百万円の債務超過となっています。同社としては今期末の黒字転換を予想していますが、果たしてどうなるやら。そんな同社ですが、株価の方はなぜか1,300円台をキープしたまま。これって北海道スタンダードなの?

菊水化学工業 調査委員会の設置

菊水化学工業は10/10、「調査委員会の設置に関するお知らせ」を公表しました。2023年3月下旬に下請業者の申し出により、2019 年3月期において一部不適切な会計処理が行われていたことが判明したということです。23年3月になって19年3月期のことですかぁ。

菊水化学工業

菊水化学工業は建築塗料のメーカー。建築仕上材、建築下地調整材、タイル接着材、建築土木資材の製造、販売およびその関連商品の販売、建築物の改修改装工事(ビルリフレッシュ)を手掛けています。名古屋市に本社を構える東証スタンダード上場企業です。

不適切な会計処理

開示によると、下請業者の申し出により2019年3月期において一部不適切な会計処理が行われていたことが判明したとしており、同社担当者が赤字工事の発覚を免れるために、請負代金の支払いを遅らせていたといいます。社内調査を行い、当該担当者及び下請業者へ事実確認をしたところ、約 3,000万円が未払いだったとのこと。

はぁ?、何それ。2019年3月期の工事ですから、すでに3年半のあいだ未払いってことですよ。まぁ、これから外部の有識者で構成する調査委員会を設置して実態を把握するんでしょうが。3年半も下請けが我慢した理由や、今頃になって表面化させた理由。そこらはまず知りたいところですね。

オリエンタルコンサルタンツホールディングス 調査結果を公表

オリエンタルコンサルタンツは10/10、「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」を公表しました。税務調査(東京国税局)から原価の付け替えを指摘されていた事案で、8月から特別調査委員会を設置して調査を行ってきました。

原価付け替えの蔓延

調査報告書では、「全社的に原価付け替えが行われていたと認めることができる」とし、原価付替えが社内に蔓延していたことを指摘しています。

2021年10月~2023年6月において予算管理者を務めたことがある者 406 名を対象にアンケートを実施したところ、196名(約 48%)から原価付け替えを行ったことがあるとの回答があり付け替えの件数は2,357件で、その金額は原価合計7億3,889万7,401円だったそう。

部長やチームリーダーも認識しているケースもあったようで、支社長の一部においても、原価付け替えが行われていたことを認識していたものと認められる。としています。

売上の先行計上

ほかに売上の先行計上なども指摘されているんですが、こちらは、現場において実態を伴わない売上計上が一部発生していることを認識していた支社及び本部の幹部職員並びに経営陣は認められなかったとしています。

まぁ、結局のところ、幹部職員や経営陣が関与したとまでは言えないという、玉虫色の調査結果となっています。これだけ蔓延しているんだから、何かしら関与があったんじゃないかと思いますけどね。

兼松 → 双日 営業機密持ち出しで元従業員を逮捕

大手商社「兼松」から営業秘密を不正取得したとして、警視庁は9/28、大手商社「双日」元社員を不正競争防止法違反(営業秘密侵害)の疑いで逮捕しました。持ち出された情報には兼松が管理していた自動車の部品に関するデータや取引先の営業情報が含まれていたといいます。

兼松 双日

兼松は電子、食料、鉄鋼などに強み持つ専門商社。一方の双日は旧ニチメン、旧日商岩井が経営統合した総合商社で、自動車、航空産業、石炭、肥料などの各事業に強みを持つ企業です。売上高で比較すると、商社部門で双日は第11位、兼松は第19位という位置付け。

逮捕容疑

容疑者は兼松で自動車部品の取引を扱う部署に勤務。2022年6月に兼松を退社し、翌月に双日に転職しています。兼松在職中にもファイルを持ち出していたほか、転職後も元同僚の派遣社員のIDやパスワードを使用したとみられているようで、土日にデータベースへのアクセスを繰り返していたということです。

多くの社員が休む週末に、単一のアカウントから多数のアクセスがあるとして兼松が異常を検知し、社内調査に乗り出し被害が判明したとしています。

容疑者は転職前の6月にも自分のアカウントを使って兼松の内部データ約3万7千ファイルをダウンロードした形跡があったといいます。この時点で退職(転職)に待ったをかけることができれば、ここまで大きな事件にはなっていません。

通常、上場企業であれば、退職の〇か月前までには退職する旨を自己申告しなければならない。みたいなルールがあるものです。退職予定者の業務端末の動作記録(ログ)を調査できるIT技術と、退職までの期間を合理的に組み合わせる社内ルールがあれば、回避できたのではと思うんですが。