キックバック 東邦システムサイエンス 大和ハウス

今年度も残りわずかとなってまいりました。期末の数字の総仕上げやら、来期計画の策定やら、サラリーマンには何かとバタバタする時期。お疲れ様です。 年度末ということで今年度の不正・不祥事を振り返っていましたら、ちょっと珍しい事例がありましたので、ご紹介します。

2件発生したキックバック

企業として架空の発注や水増しした発注を行い、その取引先からキックバックとして金銭を担当者が受け取っていたという類の不正です。今年度上場企業において2件発生していました(kuniが調べた限りでは)。東邦システムサイエンスという会社と、ダイワハウスです。いずれも企業の不正ではなく、役職員個人の犯罪ですね。

東邦システムサイエンス(4333)

元取締役の男が同社として総額約1億2,000万円の架空取引の発注を実行し、発注先の協力会社から発注金額の一部をキックバックとして受け取っていたという事件です。システム開発会社にはありがちな事件ですね。国税局の税務調査が発覚の端緒となったようです。個人の犯罪とはいうものの、会社の内部統制を整備し、監督すべき立場の取締役がとなると、会社としての不正・不祥事と言わざるを得ませんし、非常に悪質です。

社内調査委員会の調査結果によると、同取締役は約7年間にわたり、社内外の関係者と共謀の上、実行していたということ。この元取締役の部下である4名についても本件不正行為に関与していたことを認めています。

ちなみに、同社では内部通報制度については整備済みではあるものの、2017年度、2018年度上半期において、通報実績はゼロ。改善策の中では内部通報制度の実効性向上に努めることも書かれていました。内部監査の実効性向上についても同様に書かれています。

大和ハウス(1925)

こちらは元営業所長が、同社が手掛ける建設事業を巡って、取引先から約4,000万円のキックバックを得ていたというもの。東京国税局の税務調査を受けて、このキックバックが所得として認定され、所得隠しとして指摘されたんだそうです。

元所長がキックバックされた金銭、実は受け取っていたのは、妻が取締役を務めるシンガポールの会社で、コンサルティング名目で8,000万円を受領。これをキックバックした取引先企業の副社長と折半したということです。めちゃくちゃ、きな臭いです。

おまけにこの事件についてはダイワハウスは一切開示しておらず、関わりたくないような様子。当の元所長は同社から何のお咎めもなく退職金ももらって自主退職したとか。さらに、この事件にはあるキャバ嬢が関与していて、、、芸能ニュースみたいになってます。この事件はホント良く分かりません。

ソーシャルレンディング エーアイトラストに2回目の行政処分

何度か取り上げてきたエーアイトラスト、2月下旬に証券取引等監視委員会から行政処分の勧告が行われていましたが、3/8 金融庁(関東財務局)が2回目の行政処分を行いました。今回は第二種金融商品取引業の登録を取り消すという内容です。まぁ、予想された通りですね。

また、業務改善命令としては、顧客が出資した財産の運用・管理の状況等を精査して、顧客への説明を徹底することとか、出資した資金の顧客への返還に関する方針を策定して速やかに実施すること、とかが求められています。しかし、こういうのって履行されるんですかね。経営陣はまだ所在はっきりしてるんでしょうか。

ソーシャルレンディングってどうなんですかね

今でもこのソーシャルレンディングの世界って、アフィリエイトなんでしょうかねぇ、宣伝するというか煽るというか、そんなサイトがたくさん出てきます。各社の利回りランキングとかも掲載してるんですが、8%、10%とか、中には13%なんてのもあります。こうしたサイトに煽られて素人投資家が手を出していると思うと、、、。

この低金利で銀行は貸し出す先がなくて困ってます。地銀辺りはかなりリスクをとった先にも融資を拡大してきており、その積極性に警鐘を鳴らす向きもあります。そのような時代であるにもかかわらず、銀行から融資を得られない先がこのソーシャルレンディングの貸出先ですよね。投資家の皆さんはそういうことを考えたことあるんでしょうか。

さらに、10%の負債を抱えてもやっていけるということは、それだけ儲かるビジネスであるということです。それほど収益性の高いビジネスがあるとは考えにくいですし、そのビジネスに本当にずば抜けた収益性や将来性があるのなら、既存の金融機関が喜んで融資します。

その他の業者も

ネットで検索するとたくさん出てくるソーシャルレンディング業者。エーアイトラストの場合は経営者たちの経歴を見て、いかにもという感じでした。他の業者についても、既に行政処分を受けているみんなのクレジットだとか、maneoマーケットだとか、、、。なにやら一時期の悪徳FX業者の一斉摘発時期に似てきましたね。

証券取引等監視委員会と各地の財務局が検査に入ろうにも、なかなか全部を検査しきれません。一年、二年かかってしまうんじゃないでしょうか。悪徳業者はその辺りのことまで計算しているかもしれません。自分たちの順番が来る前に撤退、みたいな。

kuniはその他の業者まで全てを調べたわけではありません。中にはまともな融資先しか相手にしない、まともな業者もあるのかもしれません。それでも皆さん、是非慎重に投資してくださいね。それから、エーアイトラストに投資された皆さんの資金、できるだけたくさん戻ってくることを祈っております。

世界の半導体市場が急減速

3/8 日本経済新聞に「世界半導体、30か月ぶり減 GAFA向け足踏み 1月売上高、データ特需失速」という記事が掲載されました。しかしまぁ、長いタイトルですな。デジタル経済の成長をけん引してきたこの半導体の市場、現状と今後について整理してみたいと思います。

何が起きているのか

1月の半導体世界売上高(3か月移動平均)が前年同月比5.7%減となったと伝えています。このところ毎年20%以上成長してきた市場も、2018年後半に減速し、この1月のデータでマイナス圏に入ったということのようです。(ちなみに元データは確認できていません)

急減速の原因と今後の期待

① 米ネット大手がけん引してきたデータセンター投資の停滞
② 中国の景気減速で半導体需要の停滞
③ メモリー市場の4割を占めるスマホ販売の減少
④ 仮想通貨のマイニング用サーバ向け特需の終了

記事では以上4つの原因を上げていました。一方で、この記事のすぐ隣(紙面の)には、今後期待できそうな明るい話について触れていますが、なぜ、わざわざ別の記事にしたのか良く分かりません。スマホとかでテキストで読むユーザーは読み飛ばしちゃうかもって感じです。

その期待というのが次世代高速通信規格「5G」です。現在我々が使っているスマホの上部には「4G」で通信している旨の表示がされていますが、これの次世代技術になります。いまさらこれ以上の説明は要りませんよね。現在の4Gから通信速度が100倍になるというヤツです。

5Gが普及する過程では、データを演算処理するロジック半導体の需要が大幅に増えると書いてますが、ちょっと難しいですね。ロジックICとか論理素子ICとも呼ばれるこの半導体は、どちらかというとパソコンのCPU寄りの集積回路のようです。前半の記事が主に取り上げていた単純なメモリーとは違うんですね。ということで、今後の好材料として、

⑤ 5Gの立ち上がりで2019年のどの辺りから半導体市需要が喚起されるか
⑥ 他にも Iot や 、中でもEV(電気自動車)の立ち上がりでの需要喚起

という要因も加えて、今後の半導体市場を見ていく必要があるということです。この中でもやはり大きいのは②の中国の景気ですかね。また、これを大きく左右しうる米中貿易摩擦の行方も気になります。トランプ氏があえて米朝関係でビッグディールを取りにいかなかったのは、中国との交渉(これこそがビッグディール)を控えていたからだとkuniは思っているのですが。米中の関係、どうなっていくでしょう。

最後に、半導体の主戦場がPC→スマホと変化してきましたが、今後は⑤⑥の「5G」、「Iot」、「EV」に変化していくという基本線は押さえておいた方が良さそうです。

東証 市場区分見直し(その2)

3/10 日本経済新聞の記事に、東証の市場区分見直しに関するニュースがありました。現在の東証の問題をいくつか指摘していますが、おそらくこの指摘は東証内部で検討されている改善に向けた議論の中で出てきている課題とも一致してるんでしょう。

東証市場区分の課題

① 1部上場企業数が多すぎる
② 1部上場企業に時価総額や売買代金が小さい企業が多い
③ 2部やマザーズ経由の内部昇格の方が1部直接上場よりハードルが低い

記事ではこれらの点を指摘しています。③が原因となって、①②のような状況が生まれているということです。③の内部昇格ルートに関するレギュレーションは2012年に変更されているそうで、それまでは500億円の時価総額が必要だったのが、40億円に引き下げられています。

最高位市場の創設

2012年のルール変更がこのバランスの悪い市場を作った原因である、という批判を受けながら、現在の1部上場銘柄から時価総額基準で2部降格銘柄を大量に出すとは思えないんですよね。東証の責任問題を軸にして新しい市場区分を考えていくのが正解のような気がします。

東証自身が、最も批判を浴びることなく、最高位市場の上場銘柄数を減らす方法はというと、1部市場の上位に最上位市場を新設することでしょう。「特定市場」とかね。英国ではプレミアムと呼ばれるそうですが。

プレミアムには約500社が上場しているそうですから、日本の特定市場も日経平均採用225社に300社程度を加えて厳選500銘柄程度に。時価総額基準とESGにおいて世界に通用する銘柄群としましょう。当然、ガバナンスに関しては東証が唱えるコーポレートガバナンス・コードを十分に満たしている企業です。

過去5年間に不正・不祥事を起こしている企業は特定市場から除外するという基準もあっていいかもしれません。しかしこれやると日経平均採用銘柄で特定市場から漏れる銘柄も出てきそうですね。いずれにしても、まず最高位市場の創設が行われると思います。

特定市場 1部市場 2部市場

これで、最高位市場には500銘柄程度。これに1部市場1600銘柄、2部・ジャスダック・マザーズが1500銘柄。2部市場とジャスダック、マザーズは統合して2部市場でいいんじゃないでしょうか。それでもまだ1部市場はやや多すぎますか。

1部から2部への降格は、2012年以前の昇格時の時価総額基準500憶円で見直しというのはどうでしょう。500億円未満で何社くらいが降格になるんでしょうね。ただし、これをやると東証が責任を問われかねないので、3年程度の経過措置付きということで。

以上、kuniの勝手な新市場区分予想でした。日経によると、東証から今月中にも改善案が公表されるらしいです。

IHIでまた検査不正

3/9 日本経済新聞の記事です。IHIが3/8に記者会見を開き、航空機エンジン整備での検査不正を発表したとのこと。見つかった不正は2年間で211件。そのうち208件は必要な資格を持たない従業員が検査を行っていたようです。残り3件は規定と異なる手順で検査していたというもの。

3/5 日経でも報道

「IHIが民間航空会社から受託しているジェットエンジンの整備事業で不正が発覚し、国土交通省の立ち入り検査を受けていたことが4日、分かった。」 記者会見より前、この報道が先行しました。これを受けて同社が発表したウェブ上のお知らせがいけてません。

「本日の一部報道について」というタイトルで、「本日、当社の民間航空機エンジン整備事業に関する不適切な事象について、日本経済新聞朝刊などにおいて報道がなされましたが、これは当社が発表したものではありません」と知らせています。これに続けて、立ち入り検査で不適切な事象があったことが判明したことを認めてはいますが、書き出しの他人事のような台詞には違和感を覚えた方が多かったのではないでしょうか。今もそのまま掲載されています。

不正の常連

日経記事にも書かれているように、IHIは不正・不祥事の常連です。「本日の一部報道について」に見る開示の姿勢が、同社の体質、カルチャーを示しているような気がします。加えて最初の報道から3日経ってからの記者会見。こんなやり方だから新聞で取り上げる方にも力が入るというものです。

ちょっと脱線しますが、ホームページでの公表については是非KYBの姿勢を見ていただきたいです。ほとんどの会社が不正・不祥事に関するニュースやその後の更新情報を、プレスリリースのコーナーで言い訳程度に表示していますが、KYBは違います。トップページにほぼ全面にお詫び記事とともに更新ニュースを掲載しているんですね。本来のホームページのコンテンツはほとんど隠れてしまっています。

こんなところに会社の姿勢が表れていると思いますし、そのためかマスメディアのその後の追及も少ないように感じます。内部通報で発見対処できたことも含めてIHIとは非常に対照的です。

国内重工メーカーの優等生?

IHIはプラント建設や発電用原動機などの事業再編を進めており、「中核部門と非中核部門の線引きをはっきりさせている。国内重工メーカーの中では最も改革が進んでいる」と評価されていました。にもかかわらず、ガバナンスは付いてきてないんですね。

同社のグループビジョンでも、「航空エンジン事業において主導的地位を確保するとともに、宇宙開発事業においては推進系技術を中核として産業化を確立する」とあります。中核事業でこのありさま。そして、不正に対する残念な企業風土。昨年4月に内部通報があったにもかかわらずその好機を逃し、今回も初動が3日間遅れ、いやぁ、本当に残念な会社です。