投資商品に関する意識調査 金融庁

4/10 日本経済新聞で「投資商品の比較「説明なし」7割 金融庁調査」というタイトルの記事が掲載されました。かなり唐突感のある記事でしたので、金融庁の公表資料を確認してきました。正式なタイトルは、『リスク性金融商品販売にかかる顧客意識調査について (インターネット調査結果分析の中間報告)』となっています。

調査の背景・目的

金融庁は、2017年3月に「顧客本位の業務運営に関する原則」を公表しました。併せて,その定着度合いを客観的に評価する「自主的な成果指標(KPI)」の策定・公表を働きかけ、金融事業者は顧客本位の業務運営に取り組んできたわけです。

その取り組み状況を検証するため、金融庁は金融事業者の経営陣・本部・営業現場に対し、モニタリングを実施。各金融事業者の「取組方針」と取組みの実態とが乖離していないか検証もしています。

今回の顧客意識調査は、 「原則」を公表して2年が経過する中、「顧客本位の業務運営」の定着・浸透に向けた金融庁の金融事業者に対する取組み(指導)が、顧客に適切に届いているのかどうかを検証する目的で行われたもの。ということです。この一連の流れといいますか、PDCAのサイクルを頭に入れたうえで、調査結果を見てみましょう。

顧客意識調査の調査対象者等の前提

調査はインターネットと郵送により行われています。インターネットでの調査対象者は、全国の20歳以上の個人(金融機関従事者を除く)で、 リスク性金融商品の購入等にあたり、意思決定に関与する人で、有効回答者数は6,259人。一方、郵送による調査対象者は、全国の60歳以上の個人(金融機関従事者を除く)で、リスク性金融商品の購入等にあたり、意思決定に関与す る人で、有効回答者数は1,500人だそうです。

リスク性金融商品の定義は、「外貨預金、仕組預金、投資信託、貯蓄性保険(終身保険や個人年金保険、養老保険など、貯蓄性を重視し た保険)、仕組債、外貨建て債券、株式(含む自社株式、従業員持株)」。

インターネット調査対象者と郵送による対象者(高齢者が中心)の数の違いにやや違和感がありますが、今回公表されたのはインターネット調査の方でした。

まとまらないまとめ

今日の記事は調査の目的や前提の説明でこんな文字数になってしまい、金融庁の宣伝で終わってしまいます。「8割が、リスク性金融商品の購入後、フォロー・アドバイスを受けていない、あるいは、ほとんど受けていない。」という結果など、今回日経が伝えている「投資商品の比較「説明なし」7割」と同じくらいドキッとするアンケート結果が、他にもたくさん出てます。金融関係者はぜひチェックしてみてください。

スルガ銀行再建策

4/10 日本経済新聞でスルガ銀行の再建策について報道がありました。りそなHD、SBIHD、新生銀行の3金融機関に加え、なぜか家電量販店のノジマが支援に名乗りを上げているんだそうです(ノジマの本社は横浜で、神奈川、静岡で約100店舗展開してます)。また、例によって「複数の関係者によると・・・」という記事でして、ソースがはっきりしませんが、おそらく情報の多くが金融庁関係者からリークしているような感じです。

金融庁のプラン

記事中に「株価が500円強まで低下し、時価総額は1200憶円、割安感が出たため、金融庁も2018年度内には決まるだろうと見ていた」などと書かれています。金融庁としては、資本提携や資本参加といった形で、いずれかの金融グループ傘下に収まることを期待していたと思います。

ところが、本命と思われていたりそなHDは、あくまで資本提携ではなく業務提携にこだわったとか。まぁ、当のりそなHDにしても、先日書いたように、自行におけるレオパレス21絡みの不良債権化問題等もあり、スルガ銀行の救済どころではないんでしょうね。ただ、今後のサブリースショックの破壊力次第では、2行一緒にしておいて、最終的に公的資金の注入なんていう大技もありかもしれません。二度とそんな光景は見たくないんですけど。

4陣営の見立て・思惑

記事を読んでいて少し気になることが。「個人に強いスルガ銀行の顧客基盤を使えば相乗効果が出る可能性がある」というSBIの見立てです。いや、微妙な書き方ですが、この見立ては日経によるものですかね。いずれにしても、ここでいう「個人に強い」とか「顧客基盤」って、幻想に過ぎないですからね。

他にも、不祥事後も貸出金利回りが3.35%だとか、実質業務純益が423憶円で、ライバルの静岡銀行を上回るなどという見立てもあります。これらも決して将来のスルガ銀行を表したものではありません。

投資用不動産向け融資の多くが不正な融資であり、過去数年間、地銀の中の優等生と言われてきた、その営業力は虚構だったわけです。加えてこうした不正融資の餌食になった顧客は少なからず同行から離反していくでしょう。顧客基盤も大きく傷ついているはずです。

スルガ銀行は十分な引当金を積んだとみられているようですが、これもあくまで不正である可能性が高い融資分だと思われます。それ以外の投資用不動産に対する融資も(たとえ不正がなかった案件だとしても)、サブリースショックの規模次第では不良債権化する恐れはあると思われます。こんなことも含めてですが、4陣営ともに、やや見立てが甘いように感じます。不良債権処理の規模等の精査が進むと、まだまだ、このお話二転三転ありそうですね。

企業不祥事 アップデート 住友重機 IHI レオパレス21

2018年に一気に噴き出した検査不正という企業不祥事。今年になってあまり見かけなくなってきたと思っていましたが、やはりまだまだ出てきます。第3社委員会の設置など、真因分析やその他不正事案の徹底調査が行われることが一般的になったため、不祥事を発表した企業が、その他の不正等についても発見し、追加で公表するケースも増えてきました。

これはこれで良いことなんですが、やはり残念ですよね。ということで、3社の追加事案等について、アップデートしておきます。

住友重機工業

今年1/24に、本社とグループ3社で検査不正があったことを公表した住友重機。動く歩道の定期点検やスキーリフトの駆動装置関連などで無資格者が点検したり、、、とかいうあの件です。去年の6月以降相次いで不正を発表している同社ですが、また新たな検査不正が追加されました。

3/28公表の検査不正の内容は、一つ目が、半導体製造装置向け部品の検査に関する遡り調査で約2000件の不正が追加されたというもの。二つ目に、子会社の住友重機ハイマテックスでも約3000件の検査結果の書き換えなどが見付かったというもの。この公表に併せて、社長の報酬を2か月間2割返上すると発表していますが、果たしてこれで打ち止めなのか。

IHI

3/5に日本経済新聞の報道で、航空機エンジンの整備事業において無資格者による検査が行われていたことが発覚したIHI。その後、3/29には経済産業省から行政処分を受けており、不正があったエンジンが209基に上ったことも明らかになりました。

その後4/6にはエンジンの整備だけではなく、エンジン部品の製造過程においても検査不正をしていたことが報道され、4/9には国土交通省がIHIを行政処分したことも報道されました。結局今回見つかった検査不正は、エンジン整備と部品製造を合わせて、約14,000件だそうです。内部通報が発端ではあったが、上手く活かすことができなかったことも伝えられています。

米国ではボーイングが、737MAX 2機の墜落で大変なことになっています。制御システムのソフトの不具合が主因のようですが、IHIが製造した部品が原因の一つとかになっていたら、この会社潰れますよ。航空機でこんないい加減なこと出来ちゃう感覚、理解できません。

レオパレス21

こちらは新たな施工不良等のニュースではありませんが、レオパレス21の入居率の話題をアップデート。4/6付け日経では、同社が管理・運営するアパートの3月の入居率は84.33%に低下したとのこと。同社の場合は新年度が始まる直前の3月が、1年を通じて入居率のピークになることも紹介しています。にもかかわらず、前月から1.24ポイント低下しているんですね。

入居率は過去1年で10%低下してきましたが、このまま低下し、80%前後まで下がると、逆ザヤになる(オーナーに保証する家賃を実際の賃料収入が下回る)ようです。この辺りの数字は覚えておいた方が良さそうです。

西武信用金庫 反社会的勢力に融資

4/9 日本経済新聞に掲載された記事です。金融庁が立ち入り検査をしている中で、反社会的勢力と関わりのある企業に融資していた疑いがあることが分かったということです。この検査、もとはといえば投資用不動産への不適切な審査や融資等を確認するための検査でした。いやぁ、またややこしい案件が出てきたもんです。

みずほ銀行の事件

2013年にみずほ銀行の事件で大きく取り上げられ、反社会的勢力という言葉も相当メジャーになったような気がします。当時、同行が提携先のオリエントコーポレーションの提携ローンを通じて、反社会的勢力である暴力団に対して、230件、2億円の融資をしていたと報道された事件ですね。

しかし、この事件、メディアによってかなり歪められた情報だったことが後にわかります。金融庁の指摘では、あくまで反社会的勢力としか言ってませんが、メディアはこれを暴力団と表現しました。反社会的勢力=暴力団と理解したメディアの誤報は、当時のみずほ銀行にかなりのダメージを与えたと思います。まぁ、この事件以外にもいろいろあったので、こういうバイアスが働いたのかもしれませんが。

反社会的勢力とは

みずほの事件で市民権を得た感のある「反社会的勢力」ですが、実は明確な定義がありません。一応の定義としては、「暴力団、暴力団員、暴力団を辞めて年経過しない人、準構成員、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、共生者、密接交際者などなど・・・」こんなのがあるんですが、これでも明確とは言えません。

辞めて5年経ったら反社会的勢力ではなくなるんですが、その後も暴力団との一般的な付き合いとかがあったりすると、途端にどうするべきか議論が分かれたりします。暴力団員の家族の口座は?なんてのもよくある話。密接ってどの程度のこと?みたいなのもあり。

さらに、金融機関がその属性を知り得たかどうかという問題もあります。知らなかったらどうしようもありません。今回の西武信金の記事でも少しだけ書かれてますが、「反社との関係がある顧客と知りながら融資したのか」、「知らずに融資したのなら、その後それを知ったのちに取引を排除すべく対処しているか」といった点が検査の焦点になると思われます。

慎重な報道だけど

みずほの事件で学んだからでしょうか。今回の日経は慎重に書いてますね。あくまで「暴力団など反社会的勢力と関わりのある企業」としていますし、「西武信金が疑わしい取引を認識した経緯やその後の対応を調べている」といった感じです。情報を流している当局側も気を付けてるんでしょうね。

しかし、金融庁がこういう形でリークしてるわけですから、彼らとしても行政処分まで持っていけるという自信があるんでしょう。彼らにとっては、投資用不動産への不適切融資以上に、秋のFATF調査団の来日というイベントを睨んで、マネロン関係の指摘をお土産にする方がお偉方に喜ばれたりするのかも。

タンス預金は増加中?

先日、「1万円札 高額紙幣廃止 キャッシュレス決済推進」という記事を書いたところですが、週刊東洋経済でこれに関連した面白い記事を見付けました。信用金庫にお勤めの方曰く、高齢化が進む日本の地方では、タンス預金が増えてきているというのです。

マイナンバー 低金利の長期化 相続税対策

同記事によると、マイナンバーの普及や低金利の長期化、そして相続税対策といった理由から、高齢者が銀行から預金を引き揚げて、現金で家に置く、いわゆるタンス預金が増えているということです。推測ではなく、実際に預金から引き出されていく場面をとらえていますので、信憑性は高そうです。

マイナンバーについては、2021年に預貯金のマイナンバー登録が義務化される可能性が高いとか。相続税対策もそうですが、持ってる人はどんだけ持ってるかを知られるのが嫌みたいですね。お金持ちにしかわからない事情です。

記事ではさらに、「それがオレオレ詐欺のグループに狙われるんですよ」とも。最近の流行である「アポ電詐欺」の連中からしてみると、まさに絶好の高齢者ですよね。自宅に大金があるわけですから。先日流れていたニュースでも、アポ電詐欺の被害額が、たしか260万円とか言ってました。あります?普通。そんな大金が自宅に。。。ところがあるんですね。上記の理由で。

中国ではキャッシュレス決済の普及で

いずれにせよ、こういう状況はなくさないと。ということで東洋経済の記事に戻ると、中国は最近スマホ決済が一気に普及しました。すると、今では強盗がほとんどなくなったそうです。現金の消えていく中国は、犯罪者にとってまさに冬の時代ということです。

キャッシュレス決済の普及で、高齢者宅への強盗(上の話ではアポ電詐欺も含む)は抑制できそうだというわけです。オレオレ詐欺は銀行まで出かけて送金させちゃうので、キャッシュレス決済だけでは防止できそうにないですけどね。

先日書いたように、高額紙幣の廃止はキャッシュレス決済を推進するでしょうし、現金の使い勝手を悪くする作用もあります。特に保管についてはスペースの問題が出てきます。自宅に260万円、千円札で保管しようとは思わないでしょう。

新札だと100枚が約1センチになります。260万円は千円札で2600枚。約26センチになります。これだけ現金引き出してくるのも面倒くさいと思うんですが。。。それでも現金好きなお金持ちは26センチの束眺めて楽しむんですかね。