前田道路 NIPPOと資本提携 前田建設のTOB

前田建設工業から敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けられている前田道路。従来の2020年3月期計画の6倍に相当する535億円の特別配当実施のニュースが今月21日。さらに、今度は27日、同業のNIPPOと資本・業務提携の協議を始めると発表しました。

NIPPOとの提携

最初にこのニュースを見た時、「またずいぶんふざけたことやるもんだなぁ」というのが第一印象でした。当ブログでも過去に取り上げました、道路舗装用アスファルト合材カルテルの仲間同士です。

アスファルト合材の価格を不正に引き上げるカルテルを結んでいた9社。公正取引委員会は、独占禁止法違反(不当な取引制限)で、過去最高となる総額399億円の課徴金納付を命じましたが、その道路舗装大手9社のうちの1社が前田道路。そしてもう1社がNIPPOです。NIPPOはカルテルには加わっていましたが、違反を自己申告したようで、処分は免除されています。

業界1位のNIPPOと2位の前田道路の提携ですので、独占禁止法に抵触する可能性に言及しているメディアが多いようですが、公正取引委員会はどう判断するんでしょうか。わずか半年ほど前に処分したばかりですからね。この「カルテル組んでた2社が」という感情的なものもあるでしょうし。

前田道路の言い分

とまぁ、良いイメージのない前田道路だったんですが、同社のTOBに対する反対意見表明のお知らせや、特別配当のお知らせの中での主張は、至極真っ当なものですね。

前田建設は前田道路が抱える内部留保を狙って子会社化を企んでいるが、内部留保は株主全員の利益であり、前田建設だけに提供されるものではない。よって当該内部留保を特別配当と言いう形で株主全員に還元する。そんな感じです。

特別配当は前田建設にも支払われるわけですから、これはこれで前田建設にとっても良い話かもしれません。ということですが、このまま手打ちになるかというと、、、まだ続きがありそうです。

楽天に緊急停止命令 公正取引委員会

「楽天市場」で一定額以上の購入代金を「送料込み」と表示する方針、出店者に不利益を与える恐れがあるとして、公正取引委員会は28日、楽天に対し緊急停止命令を出すよう東京地裁に申し立てました。「送料込み」であっても、やはり独占禁止法に抵触するとの判断です。

適切な判断

公取委による緊急停止命令の申し立ては2004年以来だそうです。緊急停止命令は独占禁止法で規定されていて、同法違反が疑われる行為を一時的に取りやめさせる措置です。排除措置命令よりも緊急性が高く、公取委の申し立てに対し裁判所が命令を出すかどうか決めることになります。

全てはアマゾンとの競合なんですね。送料無料がアマゾンの強みだといわれています。アマゾンは長い間自前の物流網を整備してきました。そのため長期間赤字を垂れ流してきたんですね。一方の楽天は物流に関しては出店者に委ねることで事業の立ち上がりのスピードを重視してきたんだと思います。

そして、ここにきて自前の物流網で送料をアマゾンが負担するビジネスモデルのメリットである送料無料を打ち出そうとしたわけです。しかし、楽天の取った手段は、自ら赤字を垂れ流しても、、、ではなく、出店者側に負担をかけるという発想です。これはやはり違うんじゃないかな。公取委の判断は適切だと思います。

オリジナリティが

公取委の申し立てを受けてもなお、楽天は、「法令上の問題はないと考えている。公取委には理解を得るべく全面的に協力する」とコメントを出していますが。アマゾンと同様に送料無料に、、、という発想。何より一番気になるのは、楽天のオリジナリティがなくなってしまったことではないでしょうか。

もう一度原点に返った方が良いのでは?アマゾンの顧客は商品の購入者ですが、楽天の顧客は出店者です。そもそもビジネスモデルが違うわけですから、そのオリジナリティを強みに変える変革が必要なはず。

積水ハウス 元会長が株主提案(その2)

積水ハウスの元会長が、4月の株主総会で株主提案という形で現経営陣との戦いに挑むことになった件、当ブログでも以前取り上げました(この記事、先に読んでいただいた方が良いかも)。その時は五反田の地面師事件のおさらいが中心になってしまいましたので、今日はもう少し深掘りしておきます。

Save Sekisui House

という名前のサイトがあります。このとおりにググってもらうとすぐに出てきます。「本ウェブサイトの目的」には、次のように書かれています。

本ウェブサイトでは、積水ハウスの一部取締役に対する地面師事件及びその後の情報隠蔽の責任を追及する株主代表訴訟に関して、情報を随時更新しておりますので、頻繁に本ウェブサイトを確認されることを推奨致します。

引用した上記文章の手前には、情報提供も歓迎すると書いてあり、元会長が情報収集するために設置したサイトではないかとの見方もあるようです。

和田元会長の追放劇

2018年1月の積水ハウス取締役会。和田会長(当時)は取締役会前夜に賛同する取締役たちと、地面師事件で取引を承認した阿部社長(当時)解任動議に賛成する打ち合わせまでしていたといいます。社長解任は決定的と言っていい状況でしたが、翌日の取締役会では、和田派の取締役2名が阿部社長側に寝返ってしまいます。で、5対5の賛否同数で社長解任動議は否決されます。

その直後、逆に阿部社長が議長を稲垣副社長に交代させる動議を出し、6対5で可決(一人増えてるのは、退席していた阿部社長が戻ってきたため)。続いて和田会長の解任動議が出され、、、この時点で議長が和田会長に自発的な退任を促し、辞任に追い込まれたそうです。(以上、週刊東洋経済2019年10月19日号から引用させていただきました。)

どうでしょう、この展開。後に映画にでもなればかなり面白そうです。このような追放劇で葬られた元会長が、4月下旬に予定される株主総会に挑むわけです。しかし恐ろしい展開ですね。こんな取締役会出たくありません。

個人情報1件500円 サイバー攻撃に対するリスク感度が低すぎる

2/26付け日本経済新聞に「サイバー保険に『ベネッセの呪縛』個人情報の安さ普及阻む」という記事がありました。サイバー保険があることを知っている中小企業でも、その加入率は6.9%でしかないんだそうです。日本の個人情報の安さがその原因だとしています。

ベネッセの個人情報漏えい事件

2014年にベネッセ(進研ゼミの会社)の委託先の契約社員が個人情報を不正に外部に持ち出し、3000万件を超える個人情報が名簿業者に売却されるという事件が起きました。この事件の被害者に対し、ベネッセは金券500円を配ったというお話です。

万が一個人情報が漏えいしても、一人500円くらいなら、、、ということでインパクトがなく、日本ではサイバー保険が浸透しないということを言ってる記事ですね。確かに、GDPRやカリフォルニアの新法の下では、個人情報の漏えいでも高額の制裁金や損害賠償となります。

しかし、この記事、サイバー攻撃=個人情報漏洩、的な論調になり過ぎてますね。いまどきのサイバー攻撃は攻撃対象とした中小企業の情報だけを狙っているわけではありません。何でもかんでも繋がってる時代です。中小企業を攻撃してそこから繋がっている取引先大企業だって狙われます。ECサイトが攻撃されれば、何日も商売が止まってしまいます

メディアにも責任

新型コロナウィルスはこれでもかというほどニュースにしますが、どこかの企業がサイバー攻撃を受けて、結果どういう実害が生じたか、、、なんて調べもしないし、ニュースにもなりません。毎日のように攻撃を受けた企業が出てくるのに、ものの2~3日もしたらどこも報道しなくなります。

コロナウィルスは病気に感染する恐怖ではなく、自社で感染者を出すレピュテーショナルリスクに対する恐怖に変化しているように感じます。メディアの力、もの凄い破壊力です。サイバーリスクも同じように報道すればいいのに。自社が踏み台になって大勢の被害者を出してしまうリスクを企業経営者に実感させるような報道を。。。そう思いません?

VPP シェル子会社ゾンネンが日本で始動

昨年7月に一度取り上げましたVPP(バーチャル・パワープラント)。やはりロイヤル・ダッチ・シェルの子会社、独ゾンネンが日本で次世代電力サービスを2021年にも開始すると発表しました。2/25付の日本経済新聞、1面トップの記事です。

VPPのおさらい

コミュニティメンバー(参加する各家庭)が太陽光発電と蓄電システムを自宅に設置します。これらの世帯をネットワーク化し、メンバー同士で過剰な電力を持つ世帯から、電力が不足している世帯へ融通するというものです。初期投資で200万円くらいかかるものの、その後は電気料金ゼロで電気を使えます。

コミュニティ全体で電力が不足すれば、通常の電力網から電力を取り入れます。逆に余れば電力網に放電することもあります。このように、コミュニティの中での電力の融通や外部の電力網との電力のやりとりを、瞬時で行う技術というのが、ゾンネンのウリなんですね。

東芝エネルギーシステムズ

日経でも少しだけ触れていましたが、昨年1月から東芝エネルギーシステムズも東京電力エナジーパートナーと組んでVPPの事業を始めています。偶然だと思いますが、同じ日の日刊工業新聞は、この東芝エネルギーシステムズの事業について報じていました。

こちらはVPPを実現するための機能を選んで利用できるサービスを開始するという内容です。例えば蓄電池の制御という機能をVPPの事業者にサブスクで提供するというサービスです。ゾンネンのような企業に対して、VPPを実現するための様々な技術を提供するプラットフォームのような感じでしょうか。

日経では電力の需給調整の技術的な難しさや制度設計の遅れが指摘されていましたが、東芝エネルギーシステムズには何とか海外勢に負けずに頑張ってほしいものです。VPPを実現する事業者としてなのか、プラットフォーマーとしてなのか、どちらが正解なのかよく分かりませんが、とにかく頑張ってほしい。残念なことに、同じ再生エネ関連の風力発電では日立が関連事業を手放してしまいましたしね。