前田建設 愛知県新体育館 コンセッションに注力

週刊ダイヤモンド3/13号で、「前田建設、親子げんかの顛末」という記事を読みました。前田道路に対する敵対的TOBが話題になり、当ブログでも取り上げました。両社はその後どうなったのか、と思っているところに、この記事が目に入ったわけです。

TOB成立後

同紙によると、あれほど敵対していた割には、前田道路の社員の大量退職もなく、上手くいってるようですね。「親子げんかは親によって完全に制された」なんて表現になってました。まぁ、対等合併とかじゃないですからね。これが合併だったら揉めてたでしょうが。

コンセッションに注力

同記事では、現在、前田建設がコンセッションに注力していると紹介していました。コンセッションとは、「利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を公共主体が有したまま、施設の運営権を民間事業者に設定する方式」だそうです。

たしかに今年2/17、「愛知県新体育館整備・運営等事業における落札者の公表について」を開示しており、前田建設工業を代表企業とするグループが落札者として選定されています。落札金額は約200億円。かなり立派な体育館のようです。

これを機にエンターテインメント業界にゲームチェンジを仕掛けるんだとか。開示でも世界最大のスポーツ&ライブエンターテイメント会社のシナジーを活かすことで、、、。みたいなくだりがあります。販売するチケット価格にダイナミックプライシングを導入しようということみたいです。

コンソーシアムの名称は「Aichi Smart Arena グループ」で、Anschutz Sports Holdings という会社も入ってます。これが世界最大の何とかという会社のようです。調べてると前田建設が代表企業なのは設計・建設期間であって、維持管理・運営期間の代表企業はNTTドコモになってるんですが、、、まぁ、いいか。

ルネサスエレクトロニクス ノダ 工場火災が後を絶たない

京三製作所、日鉄鉱業、日本金属、先月から続く工場火災ですが、今月もルネサスエレクトロニクス(6723)、ノダ(7879)の子会社で工場火災が発生しました。ルネサス セミコンダクタ マニュファクチャリングと石巻合板工業です。

ルネサスエレクトロニクス

ルネサスの方は大々的に報じられていますね。世界で半導体不足が脅威になっている真っ只中の3/19、同社の主力工場が火災に。週明けの株式市場が急落した材料の一つにもなりました。茨城県ひたちなか市の那珂工場N3棟の一部工程における火災です。

自動車の走行を制御する半導体の生産ラインに被害が出ていて、生産再開には1カ月程度かかるとの説明がされました。車載半導体は米国での寒波の影響で生産ラインが停止。世界的にひっ迫が深刻化しているといわれているなかでの被災だけに、世界中が注目したはずです。

調べてみると、ルネサスの同工場。2/13に発生した福島県沖地震でも被災していて、地震発生前の生産能力に戻るのに1週間を要しています。火災直後の3/20に発生した宮城県沖地震の影響はなかったようですが。しかしまぁ、踏んだり蹴ったりです。

ノダ

ノダは内装材、住宅機器や繊維版の製造販売などを手掛ける企業。もともとは材木屋さんですね。その子会社である石巻合板工業で3/20に火災が発生しました。原因が気の毒で、宮城県沖地震直後の津波注意報を受け、従業員等が一時避難した際に発生しています。

石巻で津波注意報なんか出た日にはそりゃ避難しますわな。工場を点検した後に避難したとは言いますが。地震発生からわずか10分後の火災発生。やっぱり地震の影響でしょうね。

サンテック 役員報酬の一部返上

昨年、従業員が1億3400万円を横領して行方不明に。その後その従業員が死亡(自殺?)という結末となったサンテック。3/19には「役員報酬の一部返上に関するお知らせ」を公表しました。代表取締役は月額報酬額の50%を3か月間返上するとのこと。

もう一つの責任

当ブログでは取り上げてきませんでしたが、もう一つ責任を問われる事案が起きていたんですね。太陽光発電所建設工事における工事完成遅延による遅延違約金(3億10百万円)の特別損失計上です。

太陽光発電所建設工事において、使用前自主検査時に電力会社との連携不具合が発生し、受電できない状況となっていて、この不具合が解消できずに工事完成が遅延してしまった。そんな説明がされています。読む人が読めば分かるんでしょうが、kuniにはさっぱり。

昨年11月末の時点では、横領事件に関する責任だけではなく、工事完成遅延の件をも含めて、取締役の経営責任について明確にする予定としていました。

役員賞与の不支給

その後2/19には、2021年3月期通期の業績予想の修正(純損失9億円)を公表していますが、その中で同3月期に係る役員賞与の不支給についても併せて公表。月額報酬の返上については改めて取締役会で決議することになったと。

そして3/19の取締役会で役員報酬の一部返上を決議し、公表に至ったということです。代表取締役は月額報酬額の50%を3か月間返上。その他の取締役は月額報酬額の30%~10%、3か月間の返上。で、社外取締役2名も10%返上だそうです。

昨年までは横領事件と工事完成遅延の両責任に対して役員報酬の返上を決議するとしていたんですが、最後の3/19付の開示では、とうとう横領事件に関しては言及していません。ココにはどんな作戦、思惑があったのでしょうか。

加賀電子(8154)米国子会社における資金流出事案 ビジネスメール詐欺?

加賀電子工業は3/19、「当社米国子会社における資金流出事案について」を公表しました。悪意ある第三者による虚偽の送金指示に基づき資金を流出させる事態が発生したとのこと。弁護士等による対策チームを編成し、既に現地の捜査機関に届け出ているようです。

ビジネスメール詐欺

事案の発生は今年2月。損失見込み額は最大で5億円といいます。捜査上の機密保持のため、現時点ではこれ以上の詳細情報は控えるとしています。このところあまり聞かなかったBEC(ビジネスメール詐欺)の被害にあった、と思われます。

BEC(Business E-mail Compromise)は、業務用メールを盗み見して経営幹部や取引先になりすまし、従業員をだまして偽口座に送金させ資金を詐取するというサイバー攻撃の一種です。2017年12月にJALが3億8,000万円の被害に遭いました。

ビジネスメール詐欺は、「経営幹部になりすます方法」と「取引先になりすます方法」の2つのタイプに分類されます。JALのケースは取引先になりすましていました。攻撃者が送信する(送金指示)メールの信憑性を高めるために、事前に業務用のメールを盗み見して準備します。

最終的には攻撃者が用意した口座に送金を指示しますので、取引先になりすましたうえで、それまで使用していた口座とは違う偽口座を指定してきます。ここが重要です。振込先口座の変更依頼があったときに、メール以外の方法でその変更依頼の信憑性を確認することですね。

加賀電子は

とまぁ、情報がない中でありそうな想定を書きましたが、同社の開示の中には「資金流出後まもなく、指示が虚偽であることに気付き、犯罪に巻き込まれた可能性が高いと判断し」とあります。ビジネスメール詐欺に違いないと思うのですが。。。

ネットワンシステムズ 外部調査委員会 調査報告書~ガバナンス・企業文化の観点から~

ネットワンシステムズは3/18、「外部調査委員会調査報告書~ガバナンス・企業文化の観点から~」を公表しました。架空取引や水増し取引により同社の資金を流出させ、これを還流させて着服していた事案の原因分析・再発防止策に関する報告書ですね。

調査報告書

① 内部統制・内部通報・企業文化の視点からの分析
② 三様監査の視点からの分析
③ 過去調査を踏まえた再発防止策の不徹底という視点からの分析
④ 経営陣によるガバナンスの視点からの分析

調査報告書では上記4つの視点から発生原因を分析しています。2013年、2014年、2019年と不祥事を発生させておきながら、今回4度目の2020年事案ですからね。気になるのは、過去の経験が現在の同社にどのように活かされていたのか、です。

報告書ですから問題点や課題ばかりを取り上げるわけですが、はっきり言って何も活かされていませんね。再発防止策に限りませんが、あれだけの経験をしてきたわけですから、組織のあちこちに進化した形跡くらいはありそうなものですが。けど、なさそうです。

ガバナンス

それで止めはやはり経営陣ですね。報告書では「リスク管理体制の構築・運用に係る『他人事』の姿勢」と表現されていました。リスク管理体制の脆弱性を認識しながら、その是正のための取組みを行っていないと。やっぱり経営なんですよ、企業は。

1年前に当ブログで、「会長、社長、常務執行役員、3人の役員報酬自主返上について、全員、『10%減給1か月』ですと。これだけ世間を騒がせておいて、ずいぶん軽く見積もりましたね。」などと書きましたが、報告書でもこの場面取り上げられてました。

2013年事案と同等の処分案ということで10%減額としたらしいですが、実際には同事案の処分は30%減額だったそうです。つまり事実と異なる説明で10%に決定していたようです。取締役会決議事項がこれですからね。