ANAグループ従業員 客になりすまして欠航や遅延の補償金を不正に受領

報道によると、ANAのグループ会社の従業員が、機材トラブルなどによる欠航や遅延があった際に乗客に支払われる補償金を、不正に受領していたことが4/23、判明したとのこと。どのグループ会社なのかは不明。

ANAホールディングス

ANAホールディングスは航空会社大手。世界最大規模の航空連合「スターアライアンス」に加盟し、国内外で旅客や貨物の輸送サービスを手掛けています。中核事業子会社の全日本空輸(ANA)のほか、LCC(格安航空会社)事業を手掛けるピーチ・アビエーションなどを傘下に抱える東証プライム上場企業です。

不正の概要

この従業員は業務用端末を使い、補償対象となっている乗客の情報にアクセス。氏名や搭乗便の情報、補償に必要な申請番号を入手。その後、登録された乗客のメールアドレスを自分のアドレスに改ざんし、乗客になりすまして補償金を受け取っていたということです。

3月に乗客から「補償の申請ができない」とANAに問い合わせがあったことから問題が発覚したとのこと。内部調査の結果、昨年9月から今月までに370件、総額約800万円の被害が確認されているといいます。酷い話ですが、ANAホールディングスからは何の開示もないようです。

顧客情報への不正アクセスと取得、改ざんが行われ、本来顧客が受け取るはずの補償金を詐取しているわけで、かなり重大な犯罪ですよ。被害にあっている顧客は他にもいるだろうからその周知も必要では? ANAホールディングスの開示姿勢、これでいいんですか?

株式会社オルツ ストップ安売り気配

当ブログで一昨日取り上げた株式会社オルツ。連休明けの本日、朝から売りが殺到しストップ安売り気配となっています。やはり、投資家(株主)にとってかなりのインパクトのある材料として認識されたようですね。

売り気配

この記事を書いている時点で、337円のストップ安売り気配となっており、朝から一度も値を付けられません(前週末の株価は417円ですから80円安のストップ安)。1100万株の売り長(買いはわずか3万株ほど)という状況が事の大きさを表しています。

監査法人 幹事証券 東証

昨日も一言だけ書きましたが、この会社、上場の際に既に不正が行われていた可能性が高いと思われます。だとすると、上場審査がどのように行われていたのかが問われることになります。ちなみに監査法人はシドーという会社で、IPO時の幹事証券(上場に向けた支援等を行う証券会社)は大和証券のようです。

幹事証券では通常、公開引受部とか、公開審査部という部署があり、公開予定企業が公開させて良い企業(公開に値する)かどうかを、長い時間かけて審査していきます。その結果をもとに幹事証券の経営判断として取引所に上場申請をさせるわけです。それを受けて東証でも同様の審査が行われます。

監査法人→幹事証券→東証、という順に会計処理の妥当性をチェックし、上場するに値するかどうかを審査していくため、上場前から粉飾決算が行われていたとすると、彼らの責任は当然追及されることになります。(この記事はあくまで粉飾上場だったとすると、という前提で書いています。)

株式会社オルツ 粉飾決算か 第三者委員会を設置

株式会社オルツは4/25、「第三者委員会設置及び 2025年 12⽉期 第1四半期決算短信の開⽰が四半期末後 45⽇を超えることに関するお知らせ」を公表しました。売上が過⼤に計上されている可能性が認められたためとしています。

株式会社オルツ

オルツは、個人の行動やパターンを学習してカスタマイズされたAI(人工知能)であるパーソナルAI(PAI)や、膨大なテキストデータを学習して自然言語処理を実行する大規模言語モデル(LLM)の開発などを手がける東証グロース上場企業です。昨年10月に上場したばかりです。

粉飾決算

同社の「 AI GIJIROKU 」の有料アカウントに関し、⼀部の販売パートナーから受注し計上した売上について、有料アカウントが実際には利⽤されていないなど、売上が過⼤に計上されている可能性が認められたとのこと。

過去の業績を見ても、毎期売上はかなりの勢いで伸びていますが、利益はマイナスが拡大しています。確かに違和感のある状況。現状では粉飾決算が確定しているわけではありませんが、その可能性は高そうです。売り上げの過大計上だけで済むのか、架空循環取引などが出てくるのか。「今⽉初旬より、証券取引等監視委員会の調査を受けており、これが端緒となった」というのも気になります。

そして何より問題は上場して半年しか経っていないこと。いわゆる粉飾上場の可能性も高いわけです。投資家はたまったものではありません。ここでも東証の上場審査はどうなってるんだというお話に(幹事証券もだけど)。当事案、かなり大きな問題に発展しそうです。

東証社員インサイダー事件 起訴内容認める 懲役1年6月求刑

東証社員インサイダー事件の初公判が4/24、東京地裁でありました。検察側は細道被告が業務上閲覧できた部署内の共有情報を父親に繰り返し伝えていたとし、細道被告は罪状認否で「間違いありません」と述べたたとのこと。伝えられた情報をもとに株を不正に取引したとしてインサイダー取引違反の罪に問われた父親の正人被告(58)も起訴内容を認めました。

おさらい

上場部開示業務室に所属し、上場企業の未公表情報に関する相談を受けていた細道被告が、TOB情報を得て、対話アプリのLINEの電話機能などで父親の正人被告に伝達。正人被告が情報が公表される前に合計3銘柄を取引して約409万円を不正に設けていたという事案でしたね。

懲役1年6月求刑

検察側は「市場の公正性と健全性、一般投資家の信頼を低下させた程度が大きい」などとして、2人に対し懲役1年6月、罰金100万円を求刑。父親の正人被告には追徴金約2116万円も求めました。判決は5月9日に言い渡されるということです。

409万円の利益に対して2人とも懲役1年6月。罰金が200万円に追徴金2116万円。インサイダー取引がどれだけ割に合わない不正かがよく分かりますね。

動機が

父親の正人被告が未公表情報を求めていたようで、これに対して細道被告は被告人質問で断り切れなかった理由について「父親との関係があまり良くなく、改善したい気持ちがあった。インサイダー取引は必ず露呈すると認識していたが、喜んでもらいたいという気持ちを優先してしまった」と語ったそう。東証元社員は(DVなどを背景にした)被害者だったんでしょうか。

東京証券取引所 株式の最低投資金額、10万円程度に引き下げ

東京証券取引所は、株式投資に必要な最低投資金額を10万円程度に引き下げるよう全上場企業に要請するようです。現在は上場規程で50万円未満を努力義務として定めています。投資単位の大幅な引き下げで、若年層も少額から日本株を購入できる環境を整えたいとの考え。

新NISA

NISA等で日本株が不人気な理由の一つとして、最低投資額が50万円必要なこと、値嵩株ではさらにそれ以上の金額になることが挙げられてきました。そのため、最低投資額が少額で始められる米国株式に流れてきたというわけです。

最低投資額引き下げ

最低投資額を引き下げることには反対しませんが、日本特有の「100株単位でしか売買することができない単元株制度」の見直しを行うべきでは?と考えます。上述のように欧米の株式等が小さな金額で取引できるのは、1株単位での取引が可能だからなんです。グローバルスタンダードに合わせましょうよ。

「最低投資金額を10万円程度に引き下げる」という方法は、上場している企業に努力してもらうというスタイル。一方、会社法を改正して「1株単位での売買を可能にする」という方法は、東証や行政等が汗を流せば済む話。なんでも上場企業に丸投げというこの体質はいかがなものかと。