株式会社クシム 解任された取締役田原氏が動いたようで

不正・違法に、事業子会社であるZEDホールディングスの株式を譲渡したクシムの現経営陣を取締役から退任させ、株主総会までの仮取締役を選任するため、仮取締役兼仮代表取締役の選任を2/12付で東京地方裁判所に申し立てたということです(田原氏のnoteより)。

株主総会が選ぶ取締役

1/31までに開かなければならない定時株主総会を延期している状況。総会を招集しないことで延命を図っている現経営陣に対して、権利義務取締役が職務の執行に関し不正・違法な職務執行をしているとして、現経営陣を権利義務取締役から退任させ、株主総会までの仮役員を選任するため、仮取締役の選任を申し立てたということのようです。

田原氏は、ZEDホールディングスの株式を譲渡したことは、クシムが保有する子会社株式(全ての事業)の譲渡を行ったもので、不当・違法なものであると主張されており、私のような部外者から見ても納得感のある内容のように思います。

現経営陣の反応は

今回の子会社株式の譲渡のみならず、これまで現経営陣が行った善管注意義務違反が疑われる不当・違法な行為について田原氏は、取締役会決議に賛成した全ての取締役に対して、同社に著しい損害を及ぼしたことを理由に、民事・刑事の両面から、その不正を追求していくとのこと。

会計監査人が辞任したり、筆頭株主が持ち株を減らしたりという状況で、さてさて、クシム現経営陣はこうした動きに対してどのような対応を見せるのでしょうか。

株式会社サンウェルズ 再発防止策・役員の処分を公表

サンウェルズは2/12、「再発防止策の策定及び関係者の処分に関するお知らせ」を公表しました。他にも決算短信やらなんやら膨大な数の開示を行っています。で、なぜか同社株はストップ高。まぁ、大きく売られてたからってのはあるだろうけど、、、よく分かりません。

再発防止策

一通り再発防止にかかる施策が並んでいるものの、ほとんどの施策が現場に対する改善策という感じです。今回の不正請求の本質は現場にあったのでしょうか?そうじゃなくて現場を追い詰め、不正を容認してきた経営陣にその責任が大きかったんじゃないかと思います。

関係者の処分

代表取締役社長 苗代 亮達 月額役員報酬の50%減額(6か月)
専務取締役 長山 知広 取締役辞任、執行役員(経営戦略本部長)へ降格
常務取締役 越野 亨 取締役辞任、執行役員(運営本部長)へ降格
常務取締役 上野 英一 役付変更、取締役へ降格 
月額役員報酬の30%減額(3か月)

処分内容をあえてそのまま載せてみました。30%減額は役員3名に課されるという理解でいいんでしょうかね。読者の皆さんはこの処分、妥当だと考えますか?

不正があった企業の処分の事例の中では、それなりの処分に見えます。が、しかし、彼らは国庫から28億円を盗んだ企業ですからね。そもそも主たる現経営陣が居残ることに大きな違和感を感じます。

株式会社日本抵抗器製作所 連結子会社で従業員の不正行為

日本抵抗器製作所は2/10、「不正行為の発覚および令和6年12月期決算発表の延期に関するお知らせ」を公表しました。タイトルで不正があったことをここまで明示する開示は久しぶりに見る感じがしますね。なんだかんだと隠したがる開示が多い中、潔さすら感じます。

日本抵抗器製作所

日本抵抗器製作所は、自動車をはじめ各種産業用途で利用される電子部品を製造販売する企業。主な製品は、抵抗器、ポテンショメーター、ハイブリッドIC、電子機器などで、販売先は国内を中心に、アジアや欧州など海外にも展開。東証スタンダード上場企業です。

不正の概要

連結子会社である株式会社日本抵抗器大分製作所の経理担当による不正行為が発覚。不正行為は約6年にわたって行われており、総額1億5千万円を超える現金を株式会社日本抵抗器大分製作所の銀行口座から引き出していました。会計帳簿には虚偽のデータを入力して発覚を免れようとしていたとのこと。

当該従業員は引き出した現金の私的流用を認めていることから、今後懲戒解雇処分並びに刑事告訴を進めていくとしています。

社外の弁護士、税理士を含めた社内調査委員会を設置して、事実関係の調査をはじめ不正行為の原因並びに今後取るべき対策について鋭意検討を進めているとし、2/14に予定していた決算発表を延期するということです。

株式会社MTG 特別調査委員会の調査結果

連結子会社である株式会社M’sエージェンシーにおいて、主に2024年9月期中の広告に関連する仕入計上に関する文書の改ざん等により、費用の計上年度のズレもしくは未計上が発生している疑いを調査していたMTG。2/7に、「特別調査委員会による調査報告書受領に関するお知らせ」を公表しました。

歯切れの悪い

調査報告書については、プライバシー、個人情報及び秘密情報保護の観点から、部分的に非開示措置を施した上で公表するとしていますが、今回の開示では一部新しい情報が出てきています。ただ、なんとも意味がよく分からない内容になっています。

当初、「累計約660百万円の費用の過少計上」としていたものが、調査の結果、688百万円に増加しましたね。本件以外の類似事案は検出されなかったとのこと。そして気になる一文が

「M’sエージェンシー元代表者が、会計上の損益等に影響を及ぼすことを意図していた事情は認められず、また元代表者以外の者が本件の不適切行為に積極的な関与をしていたことを示す事情は認められなかった」というくだり。

文書の改ざん等により、と言いつつ、代表者も意図せず、従業員も関与していないとはどういうことでしょう。「何言ってるのかわかんねぇなぁ」ってやつですわ。「意図していた事情」や「積極的に関与」ってとこが焦点だと思いますが。何とか影響小さく逃げ切ろうとする悪知恵が透けて見えるようで・・・。

株式会社サンウェルズ 老人ホームで28億円超の不正な報酬請求

株式会社サンウェルズは2/7、「特別調査委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ」を公表しました。昨年9月に共同通信の報道で、パーキンソン病専門の有料老人ホームで、入居者への訪問について実際とは異なる記録を作り、不正に診療報酬を請求していたと報道された件に関する続報になります。

おさらい

報道を受け当初は、共同通信が報道した不正請求に関する記事を否定するとともに、記事の内容が同社の信用を毀損しているとして、訴訟を含めて法的措置を検討している」という強気の対応でしたが、その後特別調査委員会を設置して調査を開始していました。

そして今回の調査結果の公表。なんと、「ほぼ全てのホームで入居者への訪問看護を巡る診療報酬の不正請求(訪問時間を実際よりも長くするなど虚偽の記録で)や、必要がないのに訪問する過剰な請求があり、試算では総額約28億4700万円に上る」という酷い結果が出てきました。

経営陣の責任

気になる経営陣の関与について調査報告書は、「現経営陣による従業員に対する指示等の積極的な関与の事実は確認されなかった」としていますが、「不正の個別事案が少数存在していることを認識していた者は居た」としています。認識していたならなぜそれを経営陣で問題視してこなかったの?って話。

積極的な関与がなくても、実態を見過ごしてきたこと自体が取締役の善管注意義務違反。取締役の責任は重いよ。再発防止策ではその責任に対する処分等が注目されます。まさに今業界全体に類似事案が拡大していってるさなかだけに、世間は許さないでしょう。2/10の同社株はストップ安となっています。