株式会社イズミ ランサムウェア被害で 今期純利益30%減

イズミは8/28、2025年2月期の連結純利益が前期比30%減の144億円になりそうだと発表しました。2月に発生したランサムウエア(身代金要求型ウイルス)被害を受け、システム障害が長期間継続、業績を悪化させることになってしまいました。

株式会社イズミ

イズミは広島市に本社を持ち、中国・四国、九州に集中して出店するドミナント展開を推進。複合型GMS(総合スーパー)「ゆめタウン」を中心に、食品スーパー、近隣型商業集積など計197店を運営する東証プライム上場企業です。

ランサムウェア被害

今年2/15、社内サーバーに対するサイバー攻撃が検出され、何者かが同社で運用するVPN装置の脆弱性を利用して、グループ会社のサーバーに侵入しランサムウェアを実行。これにより同社サーバーデータが暗号化されてしまいました。個人情報最大約780万件の漏えい懸念も公表されてましたね。

業績悪化

今回の第1四半期の開示によると、ウイルスによる不具合は5/1までに復旧したものの、発注システムを止めた影響で、商品供給不足や販促アプローチができず、減収減益となりました。ランサムウェア被害による販売機会逸失などで発生した利益影響額(損失)は約29億円だそうです。ちなみに、同社はランサムウェア被害を除けば第1四半期は実質増益だとしています。

システムの復旧作業にかかった費用等、詳細は公表されていませんが、ランサムウエア被害が業績に与えるインパクトがどれ程のものかがわかる良い事例ですね。皆さんの会社は大丈夫ですか?情報セキュリティは単なるコストではなく、重要な投資ですよ!

西川ゴム工業株式会社 不適切会計の社内調査費用で3億円を計上

メキシコの連結子会社において不適切な経理処理が判明し、調査を行ってきたものの、8/26に無事有価証券報告書の提出を完了した西川ゴム工業。同日、「特別損失(環境対策引当金繰入額および特別調査費用引当金繰入額)の計上に関するお知らせ」も公表しました。

開示の概要

今回問題となったメキシコの連結子会社の棚卸資産の計算等。これについて疑義のある事象に関する調査を行ってきましたが、その調査費用として特別調査費用引当金繰入額 300 百万円を特別損失に計上したとのこと。

不適切な会計処理とその調査

そもそも棚卸資産の計算等に疑義がありと認識したのが4/25。そこから社内初期調査を行い、5/20日より、デロイトの公認会計士等も参画させて社内調査体制を強化したといいます。この社内調査体制強化後、8/15まで調査を実施しています。つまり調査期間は3か月弱。

開示では、「デロイトの公認会計士等 40名が社内調査チームに参画した」とありますが、これ本当ですかね。デロイト側にそんな余力があるとも思えませんし、延べ人数のことでしょうか。だとしてもかなりの人数。3か月で3億円という費用も納得できます。

会社側は、「会計処理等の誤謬と結論付け」ていましたが、それでも調査を外部の専門家に頼るとなると、こんなに費用が掛かるんですね。

ウイルプラスホールディングス 自己株式を取得し過ぎてしまった件

ウイルプラスホールディングスは8/26、「分配可能額を超えた自己株式取得に関する特別調査委員会の設置のお知らせ」を公表しました。今年5月、自己株式を999 円で700,000 株、総額699,300,000 円を取得したのですが、これが法の定める買い付け可能金額を超えていたと。

ウイルプラスホールディングス

ウイルプラスホールディングスは、BMW、MINI、ボルボ、ジープ、アルファ ロメオ、ジャガー、ランドローバー、ポルシェなどの輸入車ディーラーを運営する持株会社です。グループ子会社が主力の新車販売のほか、中古車販売、車輛整備などを展開。東京・神奈川・福岡を中心に店舗を運営する東証スタンダード上場企業です。

事案の概要

会計監査人からの指摘を受け、自己株式取得の時点で、自己株式取得により株主に対して交付される金銭等の帳簿価額の総額が、会社法及び会社計算規則により算定した分配可能額を超えていたことなどが判明したということです。

時々見る事案ですね。配当払い過ぎちゃった事件や自己株式を取得し過ぎちゃった事件。単純に経理が財源規制に関する法令をしっかり押さえて計算できていなかったってことなんでしょうが、その割に特別調査委員会を設置するというのはやや大袈裟な反応に見えます。

単純なミスではなく、同社株の売り主に対する不適切な対応(無理やり引き取らされた)だとか、経営上の判断に問題があったりするんでしょうかね。

従業員が本業の損失を不正により補填する時

先日、当ブログで取り上げたNTP名古屋トヨペットで発生した従業員による不正行為の事件。同社からの開示情報が少ない中、日経では「一部は自身の口座にも振り込ませていたといい、勤務先で自身が生じさせた未回収金を穴埋めしようとした」と報じられていました。

ちょっと気になった動機

従業員が不正を働き資金を得る際のもっとも一般的な動機は、遊ぶ金が欲しい、抱えてしまった借金をどうにかしたいから、というもの。ギャンブルや主に異性を対象とした交遊(風俗やね)のためにお金が必要だったから、という理由がほとんどです。

しかし、今回のNTP名古屋トヨペットの事件では、「一部は自身の口座にも振り込ませていたといい、勤務先で自身が生じさせた未回収金を穴埋めしようとした」とされており、多くの不正の動機とはちょっと違う感じです。もっとも、「一部」という表現で限定しているので、その他はギャンブル等に費消されていた可能性はありますが。

自身が生じさせた未回収金を穴埋め

本業で出してしまった損失を他のところで不正にお金を得て補填するという行為の裏にどのような状況があったんでしょうね。正規の業務で失敗して会社に損失を出させてしまう。どんな会社でもありうることです。

それを不正(犯罪)を犯してまで埋め合わせなければならないというプレッシャー。なにがなんでも会社の利益を上げ続けなければならないという雰囲気やそれを醸成する態勢やカルチャー。ここにメスを入れておかないといけません。くれぐれも行為者だけを処分して終わり、なんてことのないよう。

JFE 子会社JFEスチール東日本製鉄所(千葉市)で工場火災

千葉日報によると、24日午前10時10分ごろ、千葉市中央区川崎町のJFEスチール東日本製鉄所千葉地区東工場のコークス工場で、集塵機設備が火元となり火災が発生したということです。この工場火災、不思議なほどメディアでは全然取り上げられていません。

JFEホールディングス

JFEホールディングスは、鉄鉱石を原料として鉄鋼製品を生産する大手高炉メーカー。2002年、日本鋼管(NKK)と川崎製鉄の経営統合により発足。粗鋼生産量は日本製鉄に次ぐ国内第2位。自動車用鋼板など高級鋼材に強みを持っています。もちろん東証プライム上場企業です。JFEスチールは同社の子会社。

火災の概要

残念ながら火災については冒頭に書いたことしかわかりません。千葉日報が唯一報道していますが、記事の途中から会員しか閲覧できないので。

この会社ヤバい

今回起きた火災以外にもかなりたくさんの事故を起こしている企業ですね。主なものだけでも
2024年3月 同工場で火災発生
2024年2月 従業員が高所から転落死亡する事故が発生
2023年9月 工場内で溶けた鉄が漏出する事故。

これらはいずれも同じ工場です。さらに、他のグループ企業まで入れて時代を遡ると、バンバン出てきます。2012年には事故が多すぎるとして、千葉県と市による立ち入り調査も受けています。残念ながら、その後もまるで改善してないってことですね。