ispace 公開タイミングはあれで良かったのか?

少し前の話になりますが、ispaceは、「民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション 1 月面着陸の状況について」を公表しました。テレビ等でも盛んに報道されましたので、多くの方がその状況についてご覧になったと思います。

ispace

ispaceは、月への物資輸送を行うペイロードサービスのほか、パートナーシップサービスの提供など、月面開発の事業化に取り組む次世代の民間宇宙企業です。日米欧に子会社を設置し、事業を展開している東証グロース上場企業です。

上場と月面着陸

同社は今年4/13に東証に上場を果たしました。まだまだ事業としての実績もなく、赤字企業ですから公開価格は254円。しかし、月面着陸を控えているという投資家の夢をのせて上場。上場初値は4倍近い1,000円でした。証券会社から同社IPO株式をもらった人は大儲けですね。

その後、さらに人気を集め、4/19には2,373円の高値を付けています。このころ、同社は同月中に月面着陸する予定としており、その後民間企業として世界初の月面着陸を4/26に行うと公表しました。そしてその当日、着陸に失敗したことを認めたのが冒頭の開示です。

上場直後はほとんどの場合投機的な動きが加速し、上げる場合も下げる場合もより激しい価格変動となりがちです。ispaceも同様で、「民間企業として世界初の月面着陸」という材料で急騰し、その失敗で暴落するということになりました。5/2の終値は1,010円です。

月面探査にしろ、株式公開にしろ、かなりの準備期間があると思われます。株式公開直後に着陸失敗というこのタイミング、これで良かったんですかね。普通に考えると、公開タイミングを遅らせるなどの対応は必要だったんじゃないでしょうか。たしかに成功していれば最高のタイミングだったかもしれませんが。。。投資家に投機を促すようなこのタイミング、どうかと思います。

熊谷組 北海道新幹線トンネル工事試験で虚偽報告

熊谷組は5/2、「弊社JV施工の工事におけるコンクリートの単位水量試験およびスランプ試験の虚偽報告について」を同社ホームページで公表しました。北海道新幹線の札幌延伸に向けたトンネル工事で、ゼネコンの熊谷組などでつくる共同企業体(JV)がコンクリートの品質管理試験で虚偽の報告をしていました。

熊谷組

熊谷組は、ダムやトンネルなどの大型土木工事に強みをもつ準大手のゼネコン。特に大型トンネル工事には定評があります。また、高層ビルの建築工事にも多くの実績を持っています。早期から海外展開も積極的に行ってきた東証プライム上場企業です。

不正の概要

コンクリートの単位水量試験(コンクリート1㎥に含まれる水の量を測定する試験)及びスランプ試験(固まる前のコンクリートの柔らかさを測定する試験)において、必要な手順を踏まずに試験したのに「適切に実施した」と報告していたということです。施工したコンクリートの強度については現在調査を進めているところだそうです。

この不正、発注者である「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構」が現場立会を行ったことで発覚しています。以前当ブログでも取り上げた、大成建設の札幌で建設中の高層ビルにおける施工不正。あの件も発注者であるNTT都市開発が現場を巡回した際に発見してました。

発注者が施工業者等からの実績報告を鵜吞みにすることなく、自ら現場に足を運びチェックすることの重要さが分かります。こういうチェックがしっかり行われるようになると、もっともっと不正が発覚するんでしょうかね。それも怖い話ですが。

富士通子会社のシステム 住民票の写しなど証明書誤交付

富士通100%子会社の富士通Japanは3/30、住民票の写しなど公的証明書をコンビニで交付する同社のサービスで27日に障害が発生し、横浜市で、申請者とは違う住民の証明書が発行されたと発表しました。

富士通Japan

富士通Japanは富士通の100%子会社で、自治体、医療・教育機関、および民需分野のソリューション・SI、パッケージの開発から運用までの一貫したサービスを提供する企業。AIやクラウドサービス、ローカル5Gなどを活用したDXビジネスの推進も。非上場企業ですが、売上高は6,000億円に迫ります。従業員数もなんと10,000人。

障害の概要

障害が起きたのは、横浜市のマイナンバーカードを使ってコンビニで住民票の写しや印鑑登録証明書などを交付できるサービス。3/27、3/28の両日で、申請者とは別人の住民票の写しを誤って交付してしまった例が5件(11人分)あったといいます。

そしてさらに、5/1には足立区でも同様の障害が確認されました。誤発行は3人分の住民票写しと、1人分の印鑑登録証明書の計2件で、いずれも足立区内のコンビニで3〜4月に発生したということです。横浜市で発生した誤交付を受けて、富士通ジャパンが他の自治体向けのサービスも点検して判明しました。

他の自治体向けサービスの点検は4月末で完了し、足立区以外の不具合はないとのこと。事実上の終結宣言ですが、マイナンバーカードやら個人の公的証明、かなり皆さん敏感な対象だけに、、、この誤交付はいただけません。親会社の富士通からも何ら開示がされてないってのも気になります。

KNT-CTホールディングス子会社(近畿日本ツーリスト) 過大請求さらに拡大

KNT-CTホールディングスは5/2、「当社連結子会社による『新型コロナ関連受託業務における過大請求』に関する緊急社内点検について(経過報告)」を公表しました。4月中旬に2億9,000万円の過大請求を公表していました。

過大請求額は最大約16億円

調査委員会の調査とは別に実施してきた緊急社内点検において、これまでに疑義があることが判明した過大請求額は最大約16億円にのぼるとのこと(前述の2億9,000万円を含む)。点検対象は2020年4月1日から 2023年3月31日実施の、近畿日本ツーリスト株式会社が取り扱った762自治体等からの受託事業2,924件だそう。

緊急社内点検で、過大請求であると認識し、自治体に報告した金額が5億8,400万円。さらに、十分な証憑が確認できない等の理由で一旦過大請求と分類した金額が最大見積額約10億円という内訳です。当ブログで前回取り上げた際に、まだまだ出てきそうと書きましたが、やっぱり出てきましたね。

まだ確定した金額ではなさそうですが、東大阪市が突出していて3億円超なのに対して、その他の自治体がいずれも数千万円以下というバランスの悪さも気になるところ。

取締役内定も取消し

KNT-CTホールディングスでは、取締役専務が新社長、社長が新会長へ、という取締役の異動内定を4/25に公表していたんですが、今回この異動についても取り消す旨の開示がされています。まぁ、こんなことになってきたら当然でしょうね。

「コンプライアンスの徹底、ガバナンス体制の強化等再発防止策の構築、実施および当社グループ全体の信頼回復に向けた諸改革を図るため」だそうです。

大平洋金属株式会社 株主は大変なことになってそう

大平洋金属株式会社は4/28、「電気炉の溶融物漏出事故について(第 5 報)」を公表しました。第5報ということなので遡って調べてみると、この事故の発生は昨年の3/29なんですね。1年がかりで第5報とは。

大平洋金属

大平洋金属は、ステンレス鋼の主原料となるフェロニッケル(ニッケル20%、鉄80%の合金)を製造、販売する企業。ニッケル鉱石を購入し、青森県八戸市の本社製造所に備えた電気炉でフェロニッケルを生産しています。東証プライム上場企業です。

事故の概要

八戸本社・製造所において、フェロニッケル製造設備である電気炉の修繕中に、炉内に残留していた溶融物が炉外へ漏出したというもの。人的被害はなく、生産設備は全て一時停止しましたが、その後すぐに、電気炉全3基のうち、漏出のあった電気炉1基を除き、生産を再開しています。保険の適用で業績に与える影響も軽微としていました。

第5報とはなっているものの

事故の第5報という開示にはなっていますが、実際のところは業績悪化のお知らせ。中国の「ゼロコロナ政策」や不動産不況でステンレス需要が減速。減収。電力代の高騰などで生産コストの上昇幅も広がり最終赤字にということらしいです。

まぁ、大変なことになっているようですが、問題は同社の業績に対する見込みの甘さです。今年2月には34.9億円の赤字と見込んでいた経常利益を26.6億円の赤字に上方修正。ところが、第5報と同時に公表された4/28の開示では、26.6億円の赤字→49.6億円の赤字へと再度下方修正。

こりゃ投資家や株主はたまったもんじゃないっすね。昨年の事故発生前に4,500円していた株価は今では1,800円ほど。1/3近くまで下げています。3月末決算を受けて、6月の株主総会は荒れるかもね。