2020年度の会計不正 前年度比46%減

8/25付け日本経済新聞に「会計不正、公表46%減 昨年度 在宅勤務普及、発見に壁」という記事がありました。2021年3月末までの1年間で、粉飾決算などの会計不正を公表した企業は25社で、前の年度に比べて46%減少したということです。

日本公認会計士協会

このデータ、日本公認会計士協会が集計した結果だそうで、財務諸表の利用者をだますために虚偽の記載をする「粉飾決算」と、会社のお金を私的な目的で使うなどの「資産流用」の2つを会計不正と定義し、公表日ベースで集計したものだそうです。

2020年4月から2021年3月末までの間に、企業が会計不正を公表した件数であって、同期間に不正が行われていたというわけではありません。つまり、会計不正が減少した、ではなく、不正の検知率が低下したというのが正しいかと思います。

日経でも、「在宅勤務の広がりなどで対面の機会が減ったことを主因に、発見が減ったというのが実態ではないか」という見方を紹介していました。

リモート監査

上記は公認会計士のコメントですので、監査法人の目線で書かれていますが、企業内部の監査部や監査役による監査でも同様です。コロナ禍により支店や支社、工場などへ足を運び、膝詰めでやり取りする伝統的な監査手続きはできません。

新型コロナウイルスの感染拡大が、企業のいわゆる三様監査全てに「新常態」をもたらしているわけです。そこで重要になるのがリモート監査。監査法人各社もリモート監査を確実に機能させるため、デジタル技術の導入を進めているようですが、企業内部はどうでしょう。

システム投資と監査関係費用。企業の経営者には最も無駄な経費と映っているコストですが、今のうちにしっかりと態勢整備しておかないと、アフターコロナは大変なことになってしまいますよ。

エフオン(9514) 売電価格の不正操作?(その2)

売電価格の不正操作が報道されたエフオン。昨日書ききれなかった点をいくつか追記しておきます。なんだかこの会社、上場企業らしくないというか、ホームページとかを覗いてみても、あちらこちらに違和感を感じるんですよね。

同社の沿革

エフオンは1997年設立で、2005年には東証マザーズに上場を果たしています。2016年には東証一部へ指定替え。大株主は発行済み株式の32%を保有する日本テクノという会社です。同社は取引先としても大手のようです。

社長の略歴

まず最初に違和感を覚えたのが社長の略歴です。2005年にエフオンに入社されているんですが、その前が「三菱証券株式会社 部長代理」となっています。皆さんの会社でもそうだと思いますが、部長代理って名刺上の肩書きで、部に何人かいらっしゃるような感じですよね。マネジメントをする役割ではないケースがほとんどだと思います。

で、2005年に入社されて、2006年には取締役。2008年には代表取締役社長に就任されています。もの凄い出世ですね。証券会社時代の上得意のお客さんに引き抜かれたって感じでしょうか。証券界ではよくあるパターンですが。

その他の役員

次に違和感があったのが、同社ホームページでは役員が一切紹介されていないこと。普通は取締役と監査役までは少なくとも略歴付きで紹介されてるものですが、、、ここはなぜか。実際には社長以下取締役が8名(社外取3名含む)、監査役が3名いらっしゃいます。

内部通報者は

メディアに対する内部告発がきっかけで騒ぎになったようですが、その前に同社内での内部通報もあったようです。社外に情報が拡散してしまった今、通報者はどうなっているんでしょうかね。そのあたりも気になるところです。

元旦ビューティ工業 従業員の不正行為 架空取引及び詐欺

元旦ビューティ工業株式会社は8/23、「当社元従業員による架空取引及び詐欺の疑いについて」を公表しました。調査委員会を設置する準備をしているということですが、第一報からこんなにストレートなタイトルで開示する企業も珍しいですね。

元旦ビューティ工業

元旦ビューティ工業は、大型建築向けを主力とする金属屋根を手掛ける建材メーカー。軽くて強い金属屋根の特性を活かし公共建築物をはじめ、一般住宅向けなどの製品の開発から製造、販売、施工までを一貫して行う企業です。

舩木板金工業(個人経営)からスタートしていて、現会長(おそらく創業者)のお名前が、舩木 元旦 さんなんですね。初めて知りました。

不正の概要

同社元従業員の個人的な金銭の借入先より、返済期日が過ぎても借金が返済されず、元従業員とも連絡が取れなくなったとの相談を同社の別の従業員が受け、本人に確認をしたところ借金の事実を認めたとのこと。

その後、元従業員は出社することもなく連絡が途絶えたため、同社は直ちに元従業員の自宅に赴き事実確認及び社内調査を行ったといいます。

その結果、2019年4月から2021年4月までの期間において、屋根工事下請会社と架空取引を行うとともに、総額約1,200万円近くの金額を個人的な借金の返済にあてていたという詐欺が疑われる事象が発覚したということです。

架空取引の実態や詐欺の内容について、弁護士を加えた調査委員会の設置準備を行っているようで、詳細な事実関係の確認と再発防止策の策定などを実施していくとしています。ちなみに、この従業員、8/21付けで懲戒解雇処分となっています。

エフオン(9514) 売電価格の不正操作?

エフオンは8/16、「一部報道について」を公表しました。同社が「バイオマス発電所の売電価格の決定に関して、外部の検査機関に提出する燃料のサンプルを改ざんし、売電価格を不正につり上げていた」などという報道は事実と異なり、同社が発表したものではないという内容です。

エフオン(EF-ONと書いてエフオンと読むらしい)

エフオンは木質バイオマス(廃材等を選別・破砕した木質チップ)をエネルギー源とした発電所の開発、建設および運営などを行うグリーンエナジー事業と、企業等の顧客設備の省エネルギー支援サービス事業を展開する東証一部上場企業です。

事の始まりはNHKのクローズアップ現代

NHKの番組「クローズアップ現代」において、売電価格の不正操作を複数の社員が内部告発したと放送されたのが事の始まりのよう。この時は社名は伏せられていたんですが、後に別のメディアの取材により、エフオンであることが分かった、、、という展開に。

同社の開示によれば、この件に関しては既に昨年7月に調査委員会を設置して調査済みであり、10月には報道されたような不正の事実は認められなかったという結果だったとしています。ただし、この調査委員会の設置や結果の報告等は、当時まったく開示されておらず、その信憑性については何とも。

8/16の開示はざっとこんなところなんですが、同社のホームページを見ると、8/14にも別の「一部報道について」が掲載されていて、こちらの内容は少々物騒な内容になっています。

「意図的に当社への誹謗中傷行為や攻撃的行為を繰り返すものに対して、当社は毅然として法的措置への対処や司法当局への相談を検討しております。」という記述が、8/16の開示では削除されてますね。

これまでの報道等を見ている限り、非常に違和感のある表現ですし、誰に対する威嚇なのか、と考えさせられてしまいます。かなり裏の事情があるのかも。

メタネーションとは 水素と二酸化炭素で都市ガスを生成

8/20付け日本経済新聞に「メタネーションとは 水素から都市ガス生成」という記事がありました。ちょこちょこ見かけるメタネーションという言葉。2050年に温暖化ガス排出量を実質ゼロにする政府目標の達成に貢献する技術として、都市ガス業界の切り札ですね。

水素 二酸化炭素

それぞれの調達方法を整理します。まず水素は、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーで、水を電気分解して作ります。一方の二酸化炭素は、工場や発電所が稼働する際に排出する二酸化炭素が回収され、利用されます。

こうして調達した水素と二酸化炭素を反応させて、メタンガス(都市ガス)を作るという技術なんですね。

カーボンニュートラル

水素の製造過程では自然の力を利用するので、二酸化炭素は排出されません。都市ガスを燃焼させると、そこで二酸化炭素が排出されますが、その二酸化炭素は工場や発電所で回収したモノですから、実質的に排出量は相殺される。これでカーボンニュートラルが達成できるというわけです。

インフラ整備

都市ガスの代わりに水素を燃料として使えば一番良いわけですが、そのためには一般家庭へと続くインフラ整備が必要になります。巨大なインフラですからお金も時間もかかるわけです。メタネーションであれば、現行のインフラがそのまま使用できてしまう。ココがポイントですね。

2050年までの道のりにおける最初のマイルストンとなりそうな2025年大阪万博。万博会場内でどのようなエネルギー技術を実証、実装していくべきか示した「EXPO2025グリーンビジョン」。この中で21の技術が取り上げられているんですが、メタネーションも21番目に入ってます。