曙ブレーキ工業 検査不正 11万4000件

曙ブレーキ工業は2/16、ブレーキやその部品で検査データの改ざんなど、約11万4000件の不正があったことを公表しました。曙ブレーキはブレーキの世界大手、今回不正のあった製品は国内完成車メーカー10社に納入されています。

公表に至るまで

2019年11月 曙ブレーキ山形製造における不正を新経営陣が認識
2019年12月 社内調査を開始
2020年2月 調査対象を国内全生産拠点に拡大
2020年3月 一部の顧客から不審な検査データについて指摘
2020年3月 特別調査委員会を設置し調査を開始
2020年9月 同委員会の調査結果報告書受領
2021年1月 対象製品について顧客との評価・検証を終了

不正の概要

同社では日常検査とは別に、顧客から指定された検査項目に関して定期的な検査を行っているそうです。不正はこの定期的な検査で起きています。手口は3種類。実測データを書き換える行為。検査を実施せずに過去データ等を流用する行為。要求されているサンプル数を満たさず検査を実施する行為。

これらの不正は2001年1月から行われていて、定期報告データ総件数19万件に対して、11万件が不正なデータとなっています。全国の生産拠点は6ヵ所ありますが、そのうち4ヵ所で不正が行われていました。

公表のタイミング

冒頭に公表に至るまでの経緯を書きました。通常は不正が発覚した時点、もしくは調査を開始する時点で第一報を公表するものですが、同社はこれを14か月間以上隠してきました。これは非常に大きな問題です。その間、不正に関する情報はどこまで拡散したんでしょう。

同社の従業員等関係者は今よりかなり高い株価で売り抜けることができたと思われます。後半には完成車メーカーにも情報が共有されてますから、完成車メーカーの関係者も売り抜けるチャンスあったでしょうね。これはマズいよ。

大豊建設 従業員の不正行為(その2)

外部調査委員会を設置して従業員の不正を調査していた大豊建設。2/15には正式に四半期報告書の提出期限延⻑に係る承認申請を行い、これが承認されたことを公表しました。承認申請した開示において、新たな不正が発覚したことも公表しています。

見えてきた不正の概要

①建築部⻑が、⼯事下請業者に対する⽔増し発注・架空発注を通じて⼯事下請業者に預け⾦をプールさせた疑い
②上記①でプールした預け⾦から、他現場の別⼯事の原価の⼀部を補填して原価を付替えた疑い
③作業所⻑において、⼀部取引における⼟⽊部⾨の原価を建築部⾨の原価に付け替えた疑い
④作業所⻑が⾃⼰の担当する現場の⼯事において発⽣した⼯事下請業者に対する⼯事原価を、同⼀⼯事下請業者による他の⼯事における⼯事原価として付け替えた疑い
⑤作業所⻑が架空発注を通じて外部業者にプールさせた預け⾦から私物を購⼊させるというキックバックの疑い

不正の規模

不適切な取引に係る不正⾦額は約280百万円で、同社の最終損益に与える影響としては約62百万円を⾒込んでいるとしています。原価の付け替えは基本的に全社の損益に影響しませんから、約62百万円がキックバックで作業所長が懐に入れた金額でしょうかね。

当初の開示では、「東北支店と大阪支店の従業員が」と表現されていましたが、ここへきて支店名がどこかへ。代わりに建築部長が登場。組織図で見ると本社建築部門に建築部がありますから、本社ぐるみの行為になってきたようです。

それでもまだ終わらない

しかし、今回の提出期限延長申請は、上記の不正以外のさらなる疑義によるもののようで、2⽉4⽇に、それまでに把握されていなかった新たな類型の不適切な取引の疑いのある案件が発覚したとしています。さてさて、今回の不正行為、どこまで拡大するんでしょう。

ミスターマックス・ホールディングス 調査報告書を公表

ミスターマックスHDは2/15、社内調査委員会の調査報告書を受領し、公表しました。同社の従業員による会社資産の不正流用の疑義に関する調査結果です。延長承認されていた四半期報告書も同日提出されています。

不正の概要

開示文によると、「当社従業員2名が取引実体のない請求を取引先に指示して、当社に101百万円の支払をさせ、上記従業員の1名が個人的に取得し、あるいは取引先にプールして支払の補填に充てるなどしていた」とのこと。また、「この2名は上記以外に取引先2社から個人的なリベートを取得していた」とも。

懲戒解雇されたこの2名は、同社の情報システム部の部長と課長です。不正を主導したのが部長。不正が発覚するのを防ぐため、部下である課長を引き込み、甘い汁(リベート)を吸わせた、という展開だったようです。

上記のように、同社から約1億円を引き出したのは部長の方ですね。同社とリベートを取っていた取引先2社との間に、IT企業3社から4社を挿んだ格好で架空取引が行われています。同社としての被害額は約1億円ですが、これとは別に取引先2社からリベートも取ってます。

大口取引先C社

リベートを取っていた2社をはじめ、登場する企業は従業員10名程度の企業ばかりなんですが、大口取引先経由で行われた架空取引や水増し取引に登場する企業は上場企業です。

この大口取引先は報告書ではC社とされていて、1950年設立の上場大手ITベンダーと説明されています。さらに、POSレジ機器及びそのシステム、店舗システム関連機器等で業務を依頼してきたとあります。

これってどう見ても東芝テックですよね。設立年次も一致。請求書で水増し等の操作もやってるみたいだし、、、今回の事件も飛び火しそうです。

京三製作所 大豊建設 朝日ラバー 決算発表延期

2021年3月期第3四半期決算発表が迫る2/10、上場5社が決算発表の延期を公表しました。うち2社は新型コロナの影響での延期。タイトルにある3社は訳ありの延期ですね。当ブログで取り上げてきた3社ですので、ここらでアップデートを。

京三製作所

同社に関しては非常に気の毒で、、、。本社工場における火災が原因です。開示された情報、第4報では次のような記述が。「警察・消防による現場検証が行われましたが、当社設備に起因する出火ではありませんでした。引き続き関係当局の調査に全面的に協力しております。」  もう残るのは放火ぐらい。マジで気の毒です。

大豊建設

契約金額を水増しした発注を行い、水増し分を同業者にてプールしてもらったうえで、同社が発注する別工事の工事代金に充てるといった不正が発覚した同社。調査の過程で原価の付け替えやプールさせた金の流用などが出てきているようです。

プロジェクトが儲かっているように装う原価の付け替えや、資金の横領、これくらいのことが出て来るのはまぁ当然ですよね。以前書いたように、2月初旬までと見込んだ、実質3週間弱という調査期間の想定は、やはり甘過ぎました。決算発表を延期して徹底した調査を実施。それでいいと思います。ちなみに今回の開示は「延期の可能性」としています。

朝日ラバー

同社連結子会社における棚卸資産の過大計上の発覚について、調査委員会の設置を公表していた朝日ラバー。同社も延期を公表しました。当該連結子会社が中国の子会社ですからね。

調査委員会の設置から既に1か月半近く経過しましたが、今回の開示には新たな情報が一切含まれていませんでした。理研ビタミンなんかもそうでしたが、調査自体が難航しているものと思われます。

アルコニックス株式会社(3036) 特別調査委員会 調査報告書を公表

アルコニックスは2/5、同社の連結子会社における不適切な会計処理に関して設置していた特別調査委員会から、調査報告書を受領し公表しました。名古屋営業所の所長が一人で行ってきた会計不正だったようです。ただし、一連の不正による所長の個人的な利得はまったくなかったようです。

アルコニックス三伸 名古屋営業所

不正の舞台になったのは連結子会社のアルコニックス三伸 名古屋営業所です。不正を行ったのは2017年に所長となった人ですが、従業員は他に3名のみ。所長になる以前から実質的に所長同様の役割だったといいます。つまり誰も彼を牽制できない状況。

加えて、本社からの管理もほとんど実効性のあるものではなく、まぁ言ってみればやりたい放題の環境だったんですね。この所長、入社当時は同営業所の所長を父親がやっていたとか。所長の息子だからみたいな扱いもあったかもしれません。

不正の概要

取引先との銅管取引(販売)における売上原価の過少計上と、それに伴う棚卸資産の架空計上というもの。銅が高騰し、取引先に販売価格の値上げを打診するも、難色を示されたため今回の不正を始めたようです。

そしてこの不正を続けることで、帳簿上の在庫が積み上がり、棚卸で事態が発覚することを恐れて次の不正を始めます。棚卸のこの超過した在庫分をまた別の取引先に販売したことにして、後にこれを買い戻すという架空往復取引を続けるようになったんですね。

2013年4月以降

証跡としては2011年当時の架空往復取引が確認されているようですが、アルコニックス三信の販売管理システムのデータが2013年4月以降しか残っていないため、調査報告書ではそれ以前の不正については推計できないとしています。ここは妙にアッサリ。

前回も書きましたが、2010年の東証一部上場に対して、この会計不正がどういう影響を与えていたのか、、、については一切分からないままですね。これで東証は納得するんでしょうか。