AMR 薬剤耐性菌問題

AMR(antimicrobial resistance)という言葉をご存知でしょうか?薬剤耐性だそうです。薬剤耐性については知っていましたが、AMRという言葉は初めて聞きました。週刊東洋経済の記事からです。ジム・オニール氏のこの記事は、気候変動への対策を求める声が強まっているが、それと同じくらい深刻なAMRについては置き去りにされているという主張です。

薬剤耐性

抗生物質を使い続けていると、細菌の薬に対する抵抗力が高くなり、薬が効かなくなることがあります。このような抗生物質への耐性を持った細菌のことを薬剤耐性菌といいます。薬剤耐性は、耐性を持たない別の細菌に伝達され、その細菌も薬剤耐性化し、次々に連鎖していくこともあるそうです。

具体的な例としては、院内感染のニュースなどで聞くことがあるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が挙げられます。抗生物質(ペニシリン)で駆逐されたはずのブドウ球菌は、耐性を身につけ耐性化、これに対応するためにメチシリンが作られましたが、さらに耐性化したのがメチシリン耐性黄色ブドウ球菌というわけです。

社会へのインパクト

抗生物質が発明されたことで人類を大きな恩恵を受けてきました。細菌の耐性化が進むというのは、要するに抗生物質が発明される前の時代に戻っていくということ。気候変動と同じくらい深刻な問題であることがよく分かります。製薬会社は儲かる見込みが低いことから、新薬の開発を避けているといいます。

AMR対策。気候変動への対策と同じレベルの社会課題でありながら、今のところは気候変動に隠れてしまっていて、AMR対策は世界的にも広がりを見せていない。少なくともこういう現状であるということは、投資家としても認識しておく必要がありそうです。今後、株式市場でも折に触れて材料化するはずです。

キックバック 平和不動産

少し前になりますが、平和不動産の行った不動産取引ににおいて、同社が支払った仲介手数料が同社従業員等にキックバックされていた件の調査報告書が公表されていました。平和不動産は東京証券取引所の大家さんです。1949年の取引所再開当時からの上場企業です。

キックバックの概要

不正を働いたのは同社の不動産ソリューション部長とその部下の計3名。彼らは社内規則に違反して無許可で個人会社を経営していました。平和不動産が当事者となる不動産取引に関して、同社が仲介手数料を支払った仲介業者から、アドバイザリー報酬等を個人会社で受領するというのが典型的な手口です。

2014年~2019年の約5年間で、部長は23取引。その他二人(いずれも次長)は5取引、7取引の報酬を受領。このキックバックは基本的に、「手数料過大支払い」と「収益機会盗用」の二つのパターンで立証してます(詳細は省略します)。

上場企業のレベルじゃない

非常に歴史のある上場企業で、不動産会社と書くと、かなり大きな企業をイメージすると思いますが、この会社、従業員はたったの110人です。取引所の大家さんだから上場させてるだけで、昔から「なんで上場してんの?」と誰もが思う上場企業だったんです。

おまけに今回舞台となった不動産ソリューション部。部長1名、次長6名、副参事1名、課長2名、その他6名の合計18名の人員構成。金融機関なんかでいうと超小規模店のレベルです。これくらい小さな組織だと不正など出来たもんじゃありません。

隅から隅までおよそ目が届く範囲のはず。もちろん、行為者3人のうち2人が部長と次長だったから、というのはありますけどね。そうそう、もう一人この悪事を知ってて知らないふりしてた従業員(報告書では幇助者)もいます。部長の指示には逆らわない方が得策と考えたようで。

実態のある取引に対するキックバック

しかし、不動産取引におけるキックバックって難しいですね。不動産を売る会社も、買う会社も仲介手数料3%支払いに納得して支払いました。なかなか出て来ない良い物件を持ち込んでくれたということで、仲介業者は売り手側のトップセールスに感謝の意味で1%の報酬(キックバック)を。例えばこのケース、どの企業も損をしていないようにも見えます。犯人の部長もそう主張しているようですが。

ソニーの自動運転車 米デジタル技術見本市(CES)

世界最大のデジタル技術見本市「CES」が開幕し、ソニーは自動運転システムを搭載した試作車を発表しました。ん?、何でソニーが?、と感じた方も多かったのではないでしょうか。っていうか、kuniは素直にそう感じたわけですね。

これからはモビリティだ

「過去10年のメガトレンドはモバイル(携帯電話)だった。これからはモビリティだ。」とは、ソニー吉田社長の言葉です。自動車向け画像センサーの市場を指しているわけですね。スマホ用がメインで、高シェアを誇るソニーの画像センサーですが、次は自動車向けの市場を開拓するということです。

そのため、自ら試作車を作って、関連するノウハウを蓄積するんだそうです。ちなみにこの試作車、「aibo」の開発チームが中心になって作成したそうです。

「リアルタイム」と「エッジコンピューティング」

吉田社長のインタビュー、なぜか日経ではカットされてた部分。日経産業新聞ではこんなお話がありました。「ソニーが取り組むべきテーマは『リアルタイム』と『エッジコンピューティング』の技術だ。リアルタイムの情報は検索できないし、自動運転ではサーバーとやりとりしている時間はない。エッジ技術の最たるモノだ。」

コンピューターの歴史は、メインフレーム→パソコン→クラウドというふうに、集中処理と分散処理という「流行り」を繰り返してきました。順番で行くと次の技術は分散だと言われています。そこでの主役がエッジコンピューティングというわけです。吉田社長のコメントはまさにこれを指しているわけですね。

エッジコンピューティングはクラウドの対極にある技術。つまりGAFAへの対抗宣言とも言えるかもしれません。日本企業が巻き返しを図るなら、エッジは狙い目というわけです。メインフレームからパソコンにシフトした当時(日本が世界をブイブイ言わせていたころ)の再現なるか。楽しみですね。

笑えない話 NTTラーニングシステムズ メールアカウント乗っ取られる

NTTラーニングシステムズという会社が、第三者による不正アクセスを受け、メールアカウントを乗っ取られるという事件が発生しました。このアカウントから大量のメールが送信されたようで、具体的な被害は確認していないといいますが、受信者にはメールを開かずに削除するよう呼び掛けています。

12/10に事実判明 事実公表は12/25

名前の通り、NTTグループの会社で、主にNTTグループ企業向けの教育・研修事業を手掛けている非上場企業です。12/10にメールが大量送信されていることに気付いていながら、2週間も経って公表、、、メール開くな。って言われてもねぇ。この対応には疑問ありですね。

情報処理安全確保支援士(セキスぺ)

この事案、たまたま見付けたものの、被害の状況等からして、読み飛ばすレベルの事件でした。が、どこかで見たことある企業名だったものですから少し調査。すると、、、この会社、情報処理安全確保支援士が義務付けられている講習の「講習運営事業者」でした。

情報処理安全確保支援士(セキスぺ)というのは、サイバーセキュリティに関する国家資格です。資格取得者の知識や技能を継続的に維持、向上させるため、毎年のオンライン講習と、3年に一回の集合講習の受講が義務付けられている、かなり力の入った国家資格なんですね。

つまり、サイバーセキュリティを担う専門家育成のための講習運営事業者に選ばれていた事業者がサイバー攻撃を受け、他者にもメールをばらまき、脅威を与えてしまったという、笑えないお話なんです。

おまけ

情報処理安全確保支援士にはNTTラーニングシステムズから集合講習の通知が来たりするので、大量に送られたメールは情報処理安全確保支援士にも届いたかも。さらに、届いたメールを開封して、自分が被害者になった情報処理安全確保支援士も居たりして、、、。などと考えていると、笑ってはいけない話ですが少し笑ってしまいました。

いや、それでもやはり笑えない話です。こういう事業を営む会社がサイバー攻撃を受け、、、「不正利用されたアカウントのパスワードが類推されやすいものであったことが原因」では。まったくシャレになりません。

特別調査委員会設置 ネットワンシステムズ 日鉄ソリューションズ(その2)

昨年12月中旬に「特別調査委員会設置 ネットワンシステムズ 日鉄ソリューションズ」という記事を書きました。この記事、意外に多くの方のお読みいただいてるようです。2社ともに不正経理と思われますが、当ブログに来られた方が検索エンジンに使われたキーワードから察するに、どうもネットワンシステムズの方を気にされてる方が多いようです。

株価は2800円処

特別調査委員会設置が伝えられる直前の株価3100円台から急落し、一時2600円割れまで。その後自律反発して、現在2800円処です。それなりにインパクトのある悪材料が出たものの、その後材料なしということで、特別調査委員会の報告書など、新たな材料待ち。

ここ最近の特別調査委員会や第三者委員会は、概ね1か月~2か月の調査期間を要しているようですので、当時案ですと1カ月後の1/17辺り、遅くとも2月中旬までには結論が出るといったところでしょうか。もちろん、調査対象期間次第ですが。

問題はガバナンスの評価

元々国税の指摘に伴い設置した特別調査委員会ですので、追徴税がどのくらいになるのか、とか、業績に与える影響は、、、といったことが気になるかもしれません。が、しかし、2013年の不祥事発生当時とは大きな違いがあることは意識しておく必要がありそうです。

同社のガバナンスに対するステークホルダーの評価の影響です。似たような不正・不祥事を再発させてしまった同社のガバナンスに対するステークホルダーの反応。これまで組み入れてきたファンドは同社株を除外するでしょうし、株主にしても同様です。取引先でさえ今後の取引を見直さざるをえなくなるでしょう。

こうした動きは7年前とは格段に違ってきており、業績悪化をも含めて、ちょっとした負のスパイラルを引き起こす可能性がありそうです。まずは特別調査委員会の結果報告を待つしかありませんが、、、日鉄ソリューションズも含め、両社の今後の動向、追い掛けていきたいと思います。