相次ぐスマホ決済の不正被害

スマホで決済するサービスで、第三者による不正利用が相次いでいます。昨年12月にヤフーのペイペイでクレジットカードの不正利用が発生。100億円を還元するキャンペーンが大人気になったこともあり、この不正利用も派手に報道されました。ここ最近では7月にスタートしたばかりのセブンペイでも大規模な不正利用が発生しています。今週はTポイントの不正利用もニュースになっていました。

不正利用による損害に対する補償

上記のペイペイ、セブンペイも顧客の損害に関しては運営会社が全額補償しています。が、しかし、今後も運営会社が全額補償してくれるとは限りません。今は各社が顧客の囲い込みを競い合っている場面ですから、全額補償していると考えておいた方が良さそうです。

7/24付け日本経済新聞に「スマホ決済の不正被害 『補償』8割明記なし」という記事があり、その中でスマホ決済運営会社各社の利用規約を調査し比較しています。

「不正があっても支払いの責任を利用者が負う」としているのが、d払い、メルペイの2社。
「会社に重過失などがない限り、会社は責任を負わない」としているのが、ペイペイ、楽天ペイ、オリガミペイ、セブンペイ、auペイ、ファミペイの6社。
「会社が補償に応じる」と明記しているのが、Jコインペイ、LINEペイの2社。

運営会社が補償すると明記しているのは、Jコインペイ、LINEペイの2社だけであり、残りの8社は補償するとは明記されておらず、救済基準があいまいなわけです。

補償が明記されているクレジットカード

同じキャッシュレス決済であっても、クレジットカード大手は会員規約で定められた手続きを踏めば、不正利用による支払いを免除すると明記されています。この手続きというのは「警察と自社に対して届出がされること」らしいです。

スマホ決済との補償に関する違いの背景にあるのは、クレジットカード運営会社が損害保険に加入していて、不正被害が発生しても運営会社に大きな損害が出ないような体制が構築されているからだそうです。

被害が発生した場合の顧客対応から損害の補償に至るまで、こうした体制構築にも当然コストが掛かっているはずです。これらのコストとクレジットカードの決済手数料の高さの関係性って、どの程度説明可能なんでしょうかね(ただ、決済手数料を負担するのは販売店ですが)。

統計改革推進会議 有識者による再発防止策

政府は8月2日、統計改革推進会議(議長・菅義偉官房長官)を開きました。厚生労働省などで相次いだ統計不正を受け、有識者による作業部会を設けて再発防止策を議論したようです。政府統計の抜本改革策を協議するそうです。

再発防止策の検討内容

不正が長期間発見されることなく放置されていたという発生原因については、ガバナンスの強化を実施。具体的には、既に7月、内閣官房の統計改革推進室に約30人の統計分析審査官を新たに配置しており、同審査官を中心に各省庁の調査や集計を外部から点検する仕組みを整備することで、統計へのチェック体制を見直すそうです。

再発防止策の定番であるモニタリングの態勢を構築するということですね。新たにリソースを30人追加しています。

専門人材が不足していたという発生原因については、職員の研修を強化するほか、民間人材の活用で統計の水準を底上げすることも検討課題とし、人材育成をテコ入れするとしています。ここでは民間人材の投入が検討されています。

そして、業務が非効率だったという発生原因については、調査する側の手間が省けるとともに、集計作業が簡略化できてミスが発生しにくくなり、回答者の負担も減らすことができる、デジタル化を推進すると言ってます。

以上が、8/3付で日本経済新聞が報じた第1回統計改革推進会議での再発防止策の検討結果です。まだ結果というよりは現段階での議論というべきですね。厚労省の毎月勤労統計の不正問題で設置した特別監察委員会や、総務省統計委員会の点検検証部会がそれぞれまとめた報告書もたたき台として提供されているようです。

現場力を低下させないために

以前当ブログでも取り上げた日経コラムに、「現場力の低下」がありました。「不正や不祥事が発生するたび、新たな制度やルールが作られます。それら全ての規制を守ることが目的化してしまい、現場力の著しい低下を招いている」というやつです。

この会議では、現場力を低下させないための配慮もあったでしょうか、人材育成のテコ入れという施策も再発防止策に取り込まれそうです。しかしまぁ、有識者11名が参加して検討しました、というほどの内容にもなっていないような気もします。

統計とは

統計とは、現象を調査することによって数量で把握すること、または、調査によって得られた数量データ(統計量)のことだそうです。データの利活用で莫大な利益を上げる企業がある一方で、データの集め方で不正を働く霞が関。なんなんでしょうねこのコントラストは。

データが勝手に集まってくる仕組みを考えた奴らと、訪問調査や郵送調査といった昔ながらの方法から進化できなかった奴らの違いということでしょうか。どこまでデジタル化できるか注目しましょう。

異常震域 震源三重県沖 宮城で震度4

7/28 午前3時31分 三重県南東沖を震源とする地震が発生し、震源から約600キロ離れた宮城県で最大震度4、東京都千代田区で震度3を観測。って、なんだこれ?って思いませんでしたか。てっきり何かの間違いだろうと思ってましたが、これ異常震域という現象なんだそうです。

通常であれば、震源地で最も大きな揺れを観測し、震源地から離れるほど揺れが小さくなるはずです。日本列島の下に深く潜り込んで行っている太平洋プレート。このプレートの深いところで発生した地震はプレート内で伝わりやすく、プレートの浅い部分に近い東北や関東で大きく揺れたということらしいです。

今回の三重県南東沖震源の深さは420kmとかなり深い地震でした。地震の規模はマグニチュードは6.5です。異常震域により太平洋プレートの浅い所に位置する関東から東北にかけて震度4とか3を計測してますが、中部地区では震度1ということになりました。

南海トラフ巨大地震との関係

よく聞く南海トラフ巨大地震というのは、フィリピン海プレートが日本列島の下に潜り込む場所で起こる地震だそうで、想定されている震源の深さは10km~40km程度とされています。そのため、今回の地震は南海トラフ巨大地震との関係はないとみられているようです。

が、しかし

ということで一安心なわけですが、ちょっと気になる報道もありました。立命館大学の教授の話として伝えられていましたが、「地震はM6.3以上の場合、1度目よりも2度目の方が揺れが大きいことが経験的に知られている」とのこと。続けて、「3年前の熊本地震も前震はM6.5で、その後に起きた本震はM7.3でした。今回も1週間以内に再び大規模な地震が起きる可能性を否定できません」。ですと。

同じ震源で起きたら、やはり異常震域で東北と関東が被災するんでしょうね。いやいや、勘弁してくださいよ。そろそろ1週間ですかね。教授が言うような本震が来ないことを祈りましょう。

ユーラスエナジーホールディングス 発電所内にデータセンター運営

7/30付け日本経済新聞の記事です。国内風力発電最大手のユーラスエナジーホールディングスは、風力発電所内にサーバーを設置し、データセンターの運営事業に乗り出すと発表した、というニュースです。京セラが北海道に再生エネ100%で稼働するデータセンターを作ってますが、発電所の中にというのは聞いたことがありません。

(株)ユーラスエナジーホールディングス

kuniは初めて聞いた名前の会社でした。豊田通商が60%、東京電力HDが40%出資して2001年に設立された資本金181億円の会社です。事業内容は「風力および太陽光発電事業」となっています。従業員は366名になってますね。社名のユーラス(Eurus)はギリシャ神話に登場する「東の風の神(エウロス)」に由来するものだそうです。

エネルギー供給と環境負荷低減を両立するという社会ニーズに対応するため、日本、米国、欧州の3地域を中心に、数多くの風力発電事業を展開している会社です。2008年からは太陽光発電事業にも参画しています。

CGレンダリングサービス実証事業を開始

ユーラスが実証事業を開始するのは、同社がテキサス州に持つブル・クリーク風力発電所内に、コンテナ型サーバーセンターを設け、クラウドベースのCGレンダリングサービスの提供を行うというもの。サービス開始は2020年1月を予定しています。

CGレンダリングが必要とする膨大なコンピューティングパワーを、再生エネルギーにより給電しようということですね。同社のホームページも見ましたが、コンテナ型って、本当に一般貨物輸送や海上輸送に使われるコンテナなんです。コンテナを増やすことで柔軟な拡張も可能とのこと。

再生エネの地産地消

クラウドコンピューティングサービスでCGレンダリング機能を提供する。つまり、膨大な電力はサーバーが置いてある発電所で作られるわけで、まさに再生エネの地産地消が実現します。ユーザーは僅かな電力と一般的なパソコンで良いわけですから助かります。

日本における再生エネのネックになっているのが、送電線の確保です。洋上風力発電等で発電したとしても、その電力を人口密集地に送る送電線が足りないんですね。パソコン等のインターネットに接続して使用される端末が消費する電力は、このクラウドコンピューティングサービスで送電不要にすることが可能ということです。

今回はCGレンダリングで実証するわけですが、企業の基幹システムなんかもクラウドに移行していってる時代です。可用性やセキュリティなど課題はあると思いますが、これらも再生エネ電力発電所内データセンターへ、、、という時代が来るかもしれません。そうなるとその需要は膨大ですよ。

現場を衰退させる形式主義

7/25 日本経済新聞コラム「大機小機」に、「現場を衰退させる形式主義」というのがありました。行き過ぎた形式主義が現場の思考停止を招いている。という主張です。

再発防止策の罠(PDCAの罠)

このコラムで冒頭に新ルールについて触れています。「不正や不祥事が発生するたび、新たな制度やルールが作られます。それら全ての規制を守ることが目的化してしまい、現場力の著しい低下を招いている」。このコラムの言いたいことがここに凝縮されているように思います。

最近のかんぽ生命のニュースを見ていて分かるように、金融機関では発生した法令違反や規則違反をすべて金融庁に届出します。速やかに届け出た後に、真因分析を行い、再発防止策にまとめてそれを受理してもらうという一連の手続きがあるわけです。

再発防止策の中には、必ず、二度と発生させないための新しいルールが盛り込まれていますし、当該ルールが遵守されていることを確認するためのモニタリングも組み込まれます。定期的なモニタリングの結果を経営がきちっと確認するための会議体やレポーティング方法も定められています。そうして新しいルールを軸とした新しいPDCAが生まれ、日常業務の中に組み込まれていくわけです。

コラムでは、「全ての規制を守ることが目的化してしまい」と書かれていますが、ルールを守るだけではすみません。ルールを守っていることを別の人たちがモニタリングし、経営に報告し、結果次第でまた新たなルール、、、というところまでのPDCAも含めて、「目的化してしまっている」と言いたいんだと思います。

形式主義

コラムの言う形式主義は、法令や規則、ガイドラインやマニュアル、と幅広く指しているようですが、こうしたものへの依存は責任の所在を分散させ、組織的に動かすには便利な手段と一定の評価を与えつつ、問題点も指摘しています。

その問題点として、「職場での対話や各人が考えたり、五感で感じ取ったりという人間本来の能力を低下させている。」と言っています。「洞察力、思考力、対話力といった能力はいったん失われてしまうと容易には取り戻せない」とも。

誰がその業務を行ったとしても、同じように業務を遂行できるよう、マニュアルやガイドラインが整備され、ことが起きるたびにそれが追加され、詳細化してきました。詳細化により組織の縦割り、いわゆる蛸壺化もどんどん進みます。形式主義で失ってしまったのは、余人をもって代えがたい職人の技だったのかもしれません。マニュアルの世界と職人の世界。上手く融合できないものですかねぇ。