国土交通省 サブリースの実態調査

7/3 国土交通省は、「近年のサブリース契約における賃貸住宅管理業者と家主との間での家賃保証を巡るトラブル等を踏まえ、多様化しているトラブルの実態を正確に把握し、賃貸住宅管理業の適正化につなげるための調査を実施する」と公表しました。

調査の概要

賃貸住宅管理業者の事業形態や管理業務の契約状況等を詳細に把握し、賃貸住宅管理業の現状や課題を検証したうえで、賃貸住宅管理業者登録制度における未登録業者の登録促進や登録制度の見直しなど、賃貸住宅管理業の適正化につなげることを目的としているそうです。

また、賃貸住宅管理業者と家主および入居者との間のトラブル実態等を把握するための調査も、順次、実施する予定としています。こちらは「順次」と言ってますから、一斉調査で見えてきた事案ごとに、個別調査を実施していくという意味でしょうね。

 【調査対象者】   約11,000業者(登録制度に未登録の業者も含む)
 【調査方法】    郵送による書面調査およびインターネットによるWeb調査
 【調査機関】    令和元年7月5日(金)~令和元年7月26日(金)

先行した金融庁の調査

サブリースの実態解明に向けた動きとしては金融庁が先行しました。そりゃそうですよね、サブリースショックみたいなのが起きると、公益性の面からも大きく不良債権を抱え込む可能性のある金融機関をまずは調査・把握しておきたいところです。

昨年10月~11月にかけて、121の銀行、261の信用金庫、148の信用組合に対してアンケート調査が行われ、今年3月には調査結果報告書を公表しています。ここでは調査結果については触れませんが、この調査により金融庁は各銀行の実態を把握し、さらにその先に居る賃貸住宅管理業者についてもある程度の情報を収集できていると思われます。

報告書の最後には、「当庁の問題意識を幅広く発信していくとともに、引き続き関係行政機関と必要な連携を実施していく」と書かれており、その連携先が国土交通省になるわけですね。

調査対象多過ぎ

当ブログでもサブリースについては何度か取り上げてきましたが、国土交通省としてはこれといった動きが見られませんでしたね。これまではオーナーや入居者への注意喚起といったレベルの情報発信程度です。やっと本格的な調査ということです。

しかし、11,000業者って多過ぎです。金融庁の相手はせいぜい500業者でした。いやぁ、大変だと思いますが、国交省、頑張ってください。しかし、この調査と、続く個別業者の調査、本気でやったら悪質な業者どんだけ出てくるんだろうか。

クロネコヤマト 引っ越し事業再開? 駐禁回避の違反行為も

先月中旬に、日本経済新聞が伝えていました。ヤマトホールディングスの子会社であるヤマトホームコンビニエンス(YHC)が、代金の過大請求問題に対する業務改善命令を受け、全面停止していた引っ越し事業を9月から再開する方針とのこと。

受注停止からちょうど1年

YHCに対する行政処分・業務改善命令(国土交通省)は、今年に入って1月に発出されています。ただ、それよりも前、昨年の8月末から新規受注を全面停止していましたので、9月から再開ということなら、ちょうど1年ということになります。これで喪が明けたということですかね。

その間、再発防止策として代金の過大請求ができないシステムを導入するとか言ってました。見積時に担当者が使用するタブレットを導入し、荷物量に合わせて料金を自動計算するんだとか。商品設計も見直して、顧客に分かりやすい明瞭な料金体系に変更するとかも。

日経はかなりポジティブ

「今年春の引越繁忙期はこのYHCが受注を停止していたことも影響して、引っ越し料金が約10%上昇した」と日経は伝えてましたね。「秋の異動に伴う繁忙期には間に合いそうだ」とも書いていました。ちょっと違和感ありますよね。あれだけの不祥事を起こしておいて、メディアがYHCの復活を望んでいるかのような書きぶりです。

ちなみに、日経が報道したその日、ヤマトホールディングスはホームページで「本日の一部報道は当社の発表に基づいたものではありません」とお知らせを出していました。

今度は駐禁回避の違反行為

業務改善命令を受けたにしろ、それを本当に真摯に受け止め、本気で改善したんだったら復帰も良いでしょうよ。くらいに思っていたわけですが、7/2のYHCのホームページでは、「ヤマトホームコンビニエンスの駐車車両に関する報道について」というお知らせが出ています。

「本件は当社社員が配達業務を行う際、駐車違反の取り締まりを避けるために行った違反行為であり、既に警察署にも本件に関する報告を行いました」と書かれています。当該報道をkuniは見ていないんですが、ググってみると、「駐禁回避のためにナンバープレートを隠して作業する」みたいな行為のようです。

これでまた引越業務の再開は延期になるんでしょうか。駐禁回避のためにドライバーが苦肉の策でやっているんだとしたら、ドライバーには少し同情するんですが。。。会社がこうした行為を指導してたり、黙認してたりということだと、これは問題ですね。

野村證券 底なしの不祥事

6/28 野村證券社員二人が20代の女性にお酒を飲ませて乱暴したとして、準強制性交容疑で逮捕されました。また、例によってプレスリリースはなし。警察が逮捕に踏み切る前に退職させているので、メディアは元社員と報じてますが、犯行時2/15はまだ社員。

会社行為 社員の行為 元社員の行為

野村証券は、東証の市場区分見直しに関する情報を利用した営業行為に対して、5/28に金融庁から業務改善命令を受けたばかりです。野村総研(NRI)も含めた野村グループぐるみの会社行為でした。

社員の犯罪行為については、以前取り上げたように、千葉県の社員寮で大麻不法所持で二人が逮捕されたばかりです。そこへ今回は婦女暴行事件。雑誌「選択」の記事によると、これ以外にも婦女暴行事件があって、会社としては事実を把握しているとか。しかしまぁ、これだけ続けて出てくると、いったいどれだけの犯罪が隠されてるんだか、って感じですよね。

さらに、昨日は本当に元社員の犯罪行為まで報道されました。こちらは野村自身がプレスリリースで公表しています。2014年入社で姫路支店在籍後、2016年9月に退職した社員(中村成治)が、退職後に設立した会社(株式会社Foresight)で架空の投資商品を提案している疑いがあるとしています。

なぜ、この不祥事だけホームページで公表したんでしょうね。それもかなり詳細に、元社員の氏名まで明示して。いろいろと勘ぐってしまいますが、公表文の中に次のようなくだりがあります。「お客様への被害拡大防止の観点から、当社社員の関りも含めて調査を進めるとともに、警察への相談を行っております」

かなり怖いお話ですね。現野村証券の営業員もこの架空商品とやらの勧誘に関与している可能性をほのめかしています。実は大手のメディアはまだ取り上げていませんが、船橋支店の営業員がこの架空商品と思われる取引を、Foresightの中村氏同席で顧客に勧誘・契約させたという被害が既にでているようです。この被害者には詐欺被害の救済と称して、また別の営業員が詐欺的な勧誘をしているとか。。。

金融庁次第かな

もうここまでくると立ち直れないかもしれませんね。非常に問題ある会社組織が、次から次へと犯罪者を育て、世に放っているかのような構図。監督する金融庁も今回はさすがに許さないんじゃないでしょうか。社長の引責辞任、、、、それだけで済むのか。「選択」さんが以前から書いているように、社長交代やメガバンク傘下入りも現実味を帯びてきましたね。

金融庁 老後2000万円問題 想定以上の効果

昨日、公取委を取り上げましたので、本日は金融庁を。老後2000万円問題、国会で散々もめた末に、参院選の争点になってしまいました。何ともくだらないことを、、、と思いながら見ていた人は少なくないと思います。こんなことしか争点にできない野党って、残念でしょうがないです、ホント。

金融庁にとっては自身でも想定外の効果

ここで少し整理しておきます。問題となったのは6/3に公表された、金融審議会 市場ワーキング・グループがまとめた「高齢社会における資産形成・管理」という報告書です。皆さんも時間があったらご覧になってください。kuniは読んで何の違和感もありませんでした。

思いもよらない大炎上になってしまい、とうとう金融庁企画市場局長が謝罪するという結果になってしまいました。役所の機能からすれば、与党を窮地に追い込み、確かに残念なことになってしまったわけですが、彼らの目的とするところについては、想定以上の効果が得られたのではないかと思います。

金融庁は個人に対して、資産形成に対する意識を高めるべく、様々なことに取り組んできましたが、その効果はそれほど感じられませんでした。今回の大炎上は違ったようで、このことで明らかに多くの国民が、自分の老後に備えた資産形成のことを考え始めているようです。

6月に入って、金融機関等が主催する資産形成セミナーは応募が殺到しているそうですし、大手のネット証券ではIDECOの申し込み件数が報告書発表前の2倍近くに急増したとか。まぁ、言ってみれば副作用で野党を勢い付かせてしまいましたが、金融庁が企図した長期資産形成の勧めに関しては、期待した以上の反響があったわけです。

まとめ

老後2000万円事件をきっかけに、日本ではなかなか根付かなかった、投資や運用に関するリテラシーが大きく向上してくれるのではないか。正直なところkuniも期待しているところです。金融庁はこれまで、個人の資産形成を阻害してきた金融機関の営業姿勢を是正させるべく、フィデューシャリー・デューティーや顧客本位の業務運営を浸透させてきました。

顧客の資産形成に向けた主体的な行動を補う仕組みとして、「第三者による金融機関の業務運営の評価(例えばR&IによるFD格付など)」や「顧客にアドバイス等を行う担い手の多様化(IFA)」なども支援してきました。

そして今回の老後2000万円問題が、とうとう「顧客の主体的な行動」を誘発することとなったわけです。『「顧客本位の業務運営に関する原則」の定着に向けた取組み』で示した工程表通り、、、結果的に勝者は金融庁かもしれませんね。

公正取引委員会に注目

このところ公正取引委員会(以下、公取委)の動きが活発になっています。というか、メディアで取り上げられる機会が増えているといった方が正しいかもしれません。長崎県の地銀合併問題で真っ向から対立した金融庁が、老後2000万円問題で大炎上したことで一層元気付いている、と見る向きもありますが、、、。

GAFAへの規制

GAFAと呼ばれる巨大なプラットフォーマーへの規制が世界中で議論されていますが、日本においてこれを取り扱うのはまさに公取委です。金融庁が斜陽産業(言い過ぎました)の地銀の指導や統合といった監督を行っているのとは、かなり対照的ですよね。今まさに最も旬な業界を相手にするわけです。おまけにその一角、フェイスブックがステイプルではありますが、仮想通貨など金融領域にまで進出し始めています。「アマゾンが金融に進出したら」という話題も未だ尽きません。

コーポレートガバナンスの課題も

コーポレートガバナンスについて、「上場企業の経営者がリスクを取って成長しようとしない」とか、「上場維持や企業として存続することが目的化している」という話を聞くことが増えました。いわゆる攻めのガバナンスが足りていないのではないかというご意見です。

そういう実態が原因となって、行われてきた合理化や徹底したコストダウンは、検査工程の人員削減や監査部門の弱体化を引き起こし、、、多くの企業で不正・不祥事へとつながっていきました。そしてさらに、コストダウンの流れは下請け企業へも大きな影響をもたらしているのではないかとの懸念が出てきます。

下請け企業への知財吸い上げ防止

下請け企業に対して、より安くて、良い商品を納入させることで、親企業側はコストダウンを図る。それが不当なものであれば当然問題です。政府も、大企業の働き方改革に伴う下請け企業への「しわ寄せ」を防止するため、総合対策の取りまとめに動いてますし、先日書いた「ノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為」にしてもこれら不当なものに対する危機感のあらわれと言えます。

後者の知的財産については、先日公表された調査結果で、企業が取引先から知財の開示を不当に強いられる事例が多数判明したことを受け、公取委が企業や業界団体向けの説明会を開催するなどの防止対策に乗り出しました。同調査結果に基づく個別企業の調査も始まっていると思われます。

権益拡大の好機

さらに、公取委のもう一つの所管である独占禁止法については、コンビニ24時間営業等のフランチャイズ契約の問題で脚光を浴びていますし、課徴金減免を拡充する改正独占禁止法の成立という話題も。なにかと話題が豊富な公正取引委員会。冒頭の話で言えば、組織としての権益拡大の好機であり、下請法、独占禁止法のもとに摘発企業が増加するのでは、、、という気がします。