大手証券 vs ネット証券 IFA

日本証券業協会が6/14付で「インターネット取引に関する調査結果(2019/3末)について」という、会員を対象とする調査結果を公表しています。調査対象期間は2018年10月~19年3月までの半年間です。日証協の会員である261社に対する調査となっています。

ネット経由の取引は着実に増加

261社のうちインターネット取引を行っている会員は77社で、この半年で2社増加。「現在準備中」と回答した会員が5社、「現在検討中」と答えた会員が4社とのこと。まだまだこの後も新規参入してきますね。

インターネット取引の口座数は2,693万口座で、この半年間で105万口座(4.1%)増加しているとのこと。信用取引口座も166万口座となり、同様に9万口座(5.7%)増加しています。インターネット顧客、着実に拡大していますね。

高齢層にも拡大

今回の調査結果の中で最も気になったのは、顧客の年代別口座数です。ここは具体的な数字をあげておきます。

30歳未満:157万口座(5.9%) 有残高口座数:71万口座(4.1%)
30歳代:397万口座(14.8%) 有残高口座数:205万口座(12.0%)
40歳代:612万口座(22.8%) 有残高口座数:359万口座(20.9%)
50歳代:550万口座(20.5%) 有残高口座数:357万口座(20.8%)
60歳代:473万口座(17.6%) 有残高口座数:346万口座(20.2%)
70歳以上:492万口座(18.3%)有残高口座数:377万口座(22.0%)

最も多いのは40歳代で、次が50歳代ですが、目を引くのは60歳代と70歳以上。60歳以上の顧客が全体の35.9%となっていることです。右側の数字は口座残高がある顧客の口座数ですが、こちらでは60歳以上の顧客がなんと42.2%を占めています。60歳代を含めて高齢者とは言いにくいですが、高齢層へのインターネット取引、確実に拡大・浸透してきてますね。

大手証券の行方

インターネット取引がこれほど浸透してきた一方で、大手証券等の対面営業も富裕層中心にやはりそれなりの力を維持しているように見えます。各社とも富裕層に対するコンサルティング営業を強化してますよね。しかしながら、大手証券の富裕層顧客はほとんど高齢者なんです。

ある大手証券の幹部が東洋経済(ダイヤモンドだったかも)の記者に漏らした話として、「我々は炭鉱会社みたいなもの」と言ってたとか。斜陽産業どころではなく、消えてなくなる産業、、、みたいな話でした。野村證券の構造改革という号砲の下、対面チャネルの証券は一斉にコストカットに動き出したようです。また、野村、大和に見られるように、あらためてインターネット取引を見直す動きも・・・。

今回の調査結果を見ると、証券界もゆでガエルだったのかもしれない。そんな感じがします。ネット証券の勢力拡大に加え、異業種からの新たな参入、さらには金融庁お墨付きのIFAの台頭。こうした構造は銀行とそれほど違いません。

日本の労働生産性が低いとか・・・

最近やたらと、日本の労働生産性が低いことにみな言及するんだけど。労働生産性とは、1人の労働者がどのくらいのモノやサービスを生み出したかを示す指標なんですが、これがG7の中で最も低いと。で、働き方改革が声高に叫ばれるわけです。確かにそうなのかもしれないけど、そんなに悪いところというか、ちょっと見劣りするところばかり気にしなくても良いんじゃないの、、、ってkuniは思うわけですよ。働き方改革を否定しているわけではありませんが。

GDPランキング

世界各国の名目GDPランキング(2018年)を見ると、1位:アメリカ、2位:中国、3位:日本、4位:ドイツ、5位:イギリスと続きます。残念な話ばかり聞こえてきますが、それでも立派に世界3位ですよ。これを就業者数で割って生産性を計算すると、見劣りする順位になってしまうというお話です(国際比較で用いられる労働生産性はGDPをその国の1年間の「平均就業者数」で割って求めています)。

世界平和度指数ランキング

世界平和度指数ランキングという統計があります。各国がどれくらい平和であるかを表す指標とされ、国内紛争や治安悪化、軍事力強化など平和維持への不安要素が大きいほど高くなる指数なんだそうです。この指数ランキングでは日本は第9位です。最近治安はすごく悪くなってきているような気がしますが、それでも世界9位です。

GDPで上位にいる国のこの指数を見てみると、アメリカが128位、中国が110位、ドイツが22位、イギリスが45位、フランスが60位となっています。先進国において、自国の治安や他国への干渉など、不安要素が最も少ない国の一つが日本なわけです。G7で日本より上位にいるのはカナダの6位くらいです。日本の学生の留学先No1になっているのもなんとなく分かるような気が。

話を戻して 労働生産性 分母に問題あり

さきほど労働生産性の計算方法を書きましたが、「GDP÷1年間の平均就業者数」です。で、この平均就業者数というのが曲者らしく、失業者の定義が各国で違っているのと同じで、就業者数というのも違った定義のまま使われているようです。日本の場合は他国と比べると失業率が低めに出ると言われます。当然就業者数は高めになるでしょう。

また、国外から就労している人は就業者数に含まないし、不法就労者もやはり含まなかったりします。国外から就労している人がやたらと多いルクセンブルクが労働生産性第1位だったり、1200万人も不法就労者がいると言われるアメリカの生産性(第3位)も相応に高まります。国外就労者も不法就労者もいない日本、で、就労者数は他国より高めに出るため、労働生産性は低めになってしまう。どうもそういうからくりがあるようです。

ノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為

6/15に日本経済新聞で伝えられた記事です。公正取引委員会が、製造業の企業間取引で知的財産権の無償譲渡やノウハウの開示を強要されるなどの問題事例が726件あったとする調査結果を公表しました。独占禁止法で禁じる「優越的地位の乱用」にあたる事例も含まれるとみられ、違反が判明すれば厳しく取り締まるとしています。

近年、事業活動における知的財産保護の重要性が高まっています。そんな中、有識者から公正取引委員会に対して「優越的な地位にある事業者が取引先の製造業者からノウハウや知的財産権を不当に吸い上げている」といった指摘が複数寄せられていることを踏まえ、「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査」を実施したとしています。

公正取引委員会では従来、優越的地位の濫用規制に係る実態調査を行ってきたようですが、製造業者の保有する「ノウハウや知的財産権」に焦点を当てた調査を行うのは今回が初めてとのことです。

製造業3万社調査 問題事例726件

今回の調査では、3万通の調査票を製造業の全業種に送付して、事例の報告等を求める書面調査を実施(内訳:中小企業26,300社、大企業3,700社)するとともに、122件のヒアリング調査も実施しています。調査票の回収は15,875通(回収率52.9%)だったとのこと。なお、報告対象期間は平成25年10月1日から平成30年9月30日までの5年間です。

今回の調査では、製造業者641社(大企業160社、中小企業480社、資本金額無回答1社)から726件の事例報告があり、ベンチャー企業からの報告も寄せられたとのこと。報告された726件の内訳は、取引条件の内容自体を問題視するものが449件 (61.8%)、取引条件に含まれていなかったものを無償で提供するよう求められたというものが277件(38.2%)となり、取引条件の内容自体を問題視するものが半数を超えています。

不正・不祥事の新たなトレンド?

調査で報告された問題事例の分類は以下のようになっています。

① 秘密保持契約・目的外使用禁止契約無しでの取引を強要される
② 営業秘密であるノウハウの開示等を強要される
③ ノウハウが含まれる設計図面等を買いたたかれる
④ 無償の技術指導・試作品製造等を強要される
⑤ 著しく均衡を失した名ばかりの共同研究開発契約の締結を強いられる
⑥ 特許出願に干渉される
⑦ 知的財産権の無償譲渡・無償ライセンス等を強要される

ここでは、分類のタイトルにとどめ、事例の詳細については書きませんが、かなりひどい事例もありました。公正取引委員会は、今後も製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等についての情報収集に努めるとともに、違反行為に対し て厳正に対処していくとしています。

これまで検査に関する不正・不祥事というトレンドがありましたが、今後、「ノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為」というトレンドが出てくるかもしれません。

ゆうちょ銀行、高齢者向け投信で不適切販売

ゆうちょ銀行が勧誘時の健康確認を怠るなど、不適切な手続きで高齢者に投資信託を販売していたことが分かった。と、日本経済新聞は6/15に伝えました。18日には定時株主総会が開かれ、社長が冒頭のあいさつで「守るべきルールが順守されていなかった点を厳粛に受け止め、深く反省している」と述べたそうです。

ゆうちょ銀行HPには何もなし

円滑に運営し、すべての議案を可決させてほしい株主総会ではお詫びして見せたものの、ゆうちょ銀行のホームページではこの件について一切触れていません。念のため、この報道から一週間待ってみましたが、やはり何も知らせるつもりはなさそうです。

この報道があったのち、株式市場は米国の利下げ観測を材料に反発しましたが、ゆうちょ銀行は反発の気配なし。上場来安値の更新をうかがっている状況です。コーポレートガバナンス体制、コンプライアンス態勢、お客様本位の業務運営に関する基本方針に、その取り組み状況。美しいお話がそこら中に掲載されていますが、肝心な顧客と正面から接するという姿勢がない。そんな感じです。

不適切な対応とは

日経が伝えている不適切な行為というのは、以下の2点です。

①社内で定めた書式を使っていない
②勧誘時に行うべき健康状態の確認を購入の申し込み時に一緒に実施

①についてはよく分かりませんね。日本証券業協会が定めたガイドラインでは、75歳から79歳までの顧客と、80歳以上の顧客で違ったルール(手続き)を定めています。「書式」というのは、例えば80歳以上の顧客なのに、手続きが比較的シンプルな75歳から79歳までの顧客用の書式を使用していた。みたいなお話でしょうか。

②についは、本来、顧客の健康状態の確認を商品の勧誘を行う前に実施することになっているんですが、商品を勧誘し、購入することを決めた後に行っているというものです。ここでいう健康状態の確認というのは、高齢のそのお客様に認知症等の兆候が見られないか、投資信託の商品性やリスクについて理解でき、そのうえで投資を判断できる状況か、、、と言ったことを確認する作業です。

そのため、商品やリスクを説明し、顧客が「じゃぁ、買ってみようかしら」という判断をしてから、健康状態の確認をしても意味がないわけですね。この②については日証協の高齢者ガイドラインに抵触しています。①については何とも言えませんが、②のルールが守れない組織が、あらかじめ日証協のガイドラインより厳しい自社ルールを作るとは到底思えません。おそらく①についてもガイドラインに抵触していると思われます。

何も変わってないみたい

何年前だったか忘れてしまいましたが、彼らが金融庁検査でかなりたくさん指摘を受けた際に、コンプラの方が改善に向けての施策等について相談に来られたことがありました。「そんなことも出来てないの?」というレベルでしたが、あれから何も変わっていないみたいです。金融機関の中で圧倒的なアドバンテージを持っているのに、、、もったいない話です。

金融業が担うべき役割 機関投資家の評価基準

英国の生命保険大手 リーガル&ジェネラル CEO ウィルソン氏が日本経済新聞のインタビューに答えた記事を紹介します。ESG投資に力を入れていることについて、その狙いを聞かれたのに対しての答えの一部です。

「金融業が担うべき役割は、低金利を背景に国債から逃げ出した巨額の投資マネーを、社会で必要とされる分野へ回し、社会課題の解決や経済成長につなげることにある」と、なかなか良いこと言ってます。金融業の本質を言い当ててるようですよね。他にも、

「議決権行使や対話によって企業経営者や政治家など影響力のある人々に働きかけ、社会の中でのお金の流れを変える」とも言ってます。こちらは機関投資家としての使命を言ってます。

ESGへの対応

このインタビュー、日経としてはESGへの対応の重要性を書くことが目的だったようですが、金融機関のあるべき姿を見せてくれていると感じました。最近では「社会的課題を解決するスタートアップ企業」というのをよく見聞きします。が、そうした企業へお金を付けている(リスクマネーを供給している)のは、もっぱらベンチャーキャピタルだったりするわけで、この分野で伝統的な金融機関が活躍しているとは言えません。残念なことですが。

「ESGへの対応・取組みについて、社会的課題と捉え、これを解決するために金融業がお金を回す」というのが記事のお話なんですが、「ESGが社会的な課題なのかどうか」は良く分かりません。現に米国はトランプ政権になって「パリ協定」から脱退してしまいました。

社会的な課題なのかどうかに疑問があったとしても、そう捉えている世界の機関投資家たちの動向を止められないのも事実です。化石燃料からのダイベストメント(投資撤退)に踏み切った機関投資家の運用総額が6兆ドル。これを含めて、ESG投資の運用残高は30兆ドルにのぼるとか。3300兆円ですよ。

事実はどうであれ、金融経済(行き先を失った運用資金)が一方向へ動き出すと、もう止められないということですね。気候変動への取り組みが不十分と判断され、ESG評価を下げられた企業は、株価は下がるわ、融資も受けられないという悲惨な状況になるわけです。現代の魔女狩りですな。金融経済のパワーはまだまだ増していきそうです。

ILOがハラスメントを全面的に禁止する国際条約を採択

ILO(国際労働機関)がハラスメントを禁止する国際条約を採択したそうです。性的被害を告発する「#Me Too」運動が世界に広がっており、今後もかなりのうねりになりそうな気配です。この国際条約採択を機に、ハラスメントに対する取り組みも、機関投資家が企業を評価する際の一つの基準になるかもしれません。