すてきナイスグループ(8089) 粉飾決算か

東証1部上場の住宅関連事業を手がける「すてきナイスグループ」(横浜市鶴見区)が粉飾決算をした疑いが強まり、横浜地検は16日、証券取引等監視委員会と合同で同社本社を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで家宅捜索しました。

社名を聞いてもピンときませんでしたが、kuniが株屋をやっていたころの社名はナイス日榮でした。これなら聞いたことあります。もう少し前は日榮不動産株式会社でした、新入社員の当時は。

粉飾の内容

日経の記事では「関係者によると、同社は連結決算で、不動産取引を巡り架空の売り上げを計上した有価証券報告書を関東財務局に提出した疑いが持たれている。こうした取引の実態などを、同地検と監視委は詳しく調べる。」とのこと。まだほとんど内容が不明です。

すてきナイスグループのホームページでは「金融商品取引法違反(平成 27 年 3 月期の有価証券報告書の虚偽記載)の容疑で、証券取引等監視委員会および横浜地方検察庁により強制調査が実施されておりますことをおしらせします」としていますので、4期前の有価証券報告書記載内容に虚偽記載が、ということになります。

それにしてもタイミングが悪い

同社は5/10に決算短信を出しています。直前の2018年3月期で業績を悪化させていたため、2019年3月期は業績回復のイメージを与える決算発表になりました。そのため、株価は5/10から上昇し始め、947円から1129円(5/16)まで付けています。

そこへこの強制捜査のニュース。一転して下げ始め、先週末は646円まで売られて終わっています。わずか6営業日の間に、180円上昇し、480円下げるという、まさにジェットコースター。問題なのは、この上昇時に買い付いた投資家を巻き込んでしまったことです。粉飾決算の疑い(それも4期前の)をかけていたのなら、決算発表を中止させたうえで捜査するとか、決算発表の前に一旦差し押さえてしまうといった方法はなかったんでしょうか。

疑いの段階から既に粉飾とは

ここ最近は不正会計とか、不適切会計のように、広告主企業にかなり配慮した形の表現がされることが多かったんですが、今回は第一報、かつ疑い、、、という段階から「粉飾決算」と報道されています。いやぁ、マスメディアには広告宣伝費たくさん使っといた方が良いです。3/29に公表されたトヨタの310万件個人情報漏洩事件なんて、第一報の後何も報道されませんもんね。

富士通、東レと素材開発 デジタルアニーラ活用

5/16 日刊工業新聞に、富士通が新しい計算機アーキテクチャーである「デジタルアニーラ」を使用して、先端領域での共同研究を本格化すると伝えています。主役はこのデジタルアニーラです。簡単に言うと量子コンピューターにおける量子ビットの動きを、デジタル回路上で実現するというものです。

デジタルアニーラ

つまり、量子コンピューターではないんですね。従来通りのデジタル回路を使っていますので、量子コンピューターのようにバカ高くはないと思われます。富士通の言葉を借りると、「従来のコンピューターの技術はすでに限界がきており、今後飛躍的な技術となると量子コンピューターになる。しかし、実用化にはまだ年月がかかるため、その間を埋めるものとして開発したのが、デジタルアニーラだ」ということです。

デジタルアニーラは「組合せ最適化問題(量子コンピューターでしか解けないと言われる問題)」に特化して解を高速に導く、全く新しいコンピュータアーキテクチャー。従来のコンピューターでは膨大な時間がかかる問題が瞬時に解けるそうです。

記事では、ビット規模が従来8192ビットであったのを、100万ビットに拡張すると伝えています。一気に100倍ですね。規模と精度という考え方があるようで、より規模を追求するのは科学分野への適用。精度を追求するのは金融の世界などという説明がされていました。

アニーリング方式

以前、量子コンピューターの記事を書きましたが、その中で主に紹介したのが「アニーリング(焼きなまし)方式」というカテゴリーでした。日本人の西森教授がその原理を提唱したという、、、あれです。アニーラはこのアニーリング方式を採用しているということですね。

このアニーリング方式、富士通のホームページでは、「揺らして、全体を落ち着かせる」と説明されています。なんだか、書けば書くほど分かりにくくなってきているような気が、、、。以前量子コンピューターの西森教授の本を読んだ時もそうでしたが、あまり正確に理解しようと思わない方が良いような気がします。

全体的になんとなく、方向性を理解すると言いますか、、、。そもそも今のデジタルのコンピューターだってどんな風に動いているのかなんて分からないですもんね。ただ、慣れてきたから、「そういうもんだ」といういい加減な、分かったような気になっているだけです。富士通ホームページのデジタルアニーラ特集ページ、結構分かりやすく作られてます。ココはタダですから是非!!

ESG 「RE100」 「TCFD」 「SBT」(その2)

一昨日の続きです。一日遅れました。すみません。

SBT(Science Based Target)

世界の平均気温の上昇を「2度未満」に抑えるために、企業に対して科学的な知見と整合した削減目標を設定するよう求めるイニシアティブで、2015年にWWFおよびCDP、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)が共同で設立しています。日本語だと、「科学的根拠に基づく目標」と呼ばれているようです。

科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出量削減目標の設定を促すことを目的としており、2019年3月時点で、世界191社が加盟し目標が認定されていて、日本からは第一三共、小松製作所、コニカミノルタ、リコー、ソニーなど39社が入っているようです。また、同時点で350社が2年以内の目標設定を表明しているんだそうです。この中には日本企業は34社だそうです。

やはり、上記の目標が認定までされている日本企業の中に、金融は含まれてませんね。目標設定を表明している34社の中には、損保3社が入ってました。

SBTに加盟することで、イノベーションの促進、規制の不確実性の軽減、投資家からの信用・信頼を高める、収益力と競争力を改善する、などの効果が期待できる。と説明されていました。

まとめ

RE100、TCFD、SBT、について見てきました。このうち、RE100とSBTについては賛同する企業が参加するイニシアティブということでしたが、他にもEP100だとか、BELOW50、EV100などなど、たくさん出てきます。「脱炭素」への取り組みなど、環境問題を重視し、世界中の企業が取り組んでいくことは非常に良いことだと思いますが、イニシアティブの乱立なんとかならんもんですかね。

ここまで書いてきたこと、書ききれなかったことも含めて、環境省の「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」というページに詳細が整理されています。ご興味ありましたらご覧ください。

TSR(トータル・シェアホルダー・リターン)株主総利回り(その2)

TSR 株主総利回りについては以前取り上げた通り、キャピタルゲインと配当を合わせた、株主にとっての総合投資利回りです。改正された企業内容等の開示に関する内閣府令により、有価証券報告書への記載が義務付けられました。今後、TSRの推移と役員の報酬額の推移が比較できるようになるわけですね。

利回り?

利回りという言い方をするもんですから、該当する期間の株価上昇分と同期間の配当総額を足して、直前期末の株価で割りたくなりますよね。で、利回りは10%とか、12%っていう感じです。

ところがこの法令が求めるTSRは、期末の株価(株価上昇分ではなく)と期中の配当の和を直前期末の株価で割りますので、110%とか、112%という数字になります。5年で株価が2倍になってたりすると、250%とかになるわけです。こういうのって普通利回りって言わないですよね。「期間株主総収益」とかいう名称の方がイメージしやすかったかもしれません。

株主優待は?

株主が受け取ったすべての経済的価値を指標化するのが目的だったはずですから、ここに株主優待の経済価値を上乗せするのはどうでしょう。バカなことをと怒られそうですが、経済的な価値を認めているからこそ、個人投資家は株主優待に敏感です。各上場企業の優待内容を一覧にした書籍なんかも少なくありません。

もともとTSRを有価証券報告書に・・・というアイデアは欧米から輸入したモノです。株主優待という制度が欧米にはなく、日本特有の制度であるため、今回取り入れられていませんが、十分ありだと思います。機関投資家にとっては意味のないことかもしれませんが、個人投資家・少数株主にとっては結構重要なファクターですから。

またはこれに類する他の方法により算定した割合

開示府令の株主総利回りの計算方法について規定している部分。最後のところに、「またはこれに類する他の方法により算定した割合」というのがあります。「これに類似した他の方法で計算するのもありだよ」ということですから、ここで優待制度も読んじゃいましょうか。

2019年3月期の決算短信は出そろいましたが、有価証券報告書は6月末までですね。TSRに加えて、独自の判断で株主優待を加味したTSRを載せてくる企業(もしくはオマケで載せてくる企業)が出てくるかどうか、期待したいと思います。

ESG 「RE100」 「TCFD」 「SBT」

エネルギー源を石油や石炭などの火力から、太陽光や風力へと転換する、いわゆるエネルギーシフトが世界中で急速に進んでいます。金融機関は二酸化炭素を大量に排出する石炭火力発電には資金を出さなくなってきましたし、商社などもこれに追随する動きを見せています。日本でも「脱炭素」への取り組みが経営の重要要素になってきてしまいました。今日はこの動きを理解していくための3つの用語について、整理しておきます。

RE100(Renewable Energy 100%)

RE100は、The Climate GroupとCDPによって運営される、企業の自然エネルギー100%を推進する国際ビジネスイニシアティブです。企業による自然エネルギー100%宣言を可視化するともに、自然エネの普及・促進を求めるもので、世界の影響力のある大企業が参加しています。

2014年に発足したRE100には、2019年3月時点で、世界の177社が参加しています。日本企業ではソニー、リコー、富士通、コニカミノルタといった企業17社が名を連ねていました。ちょっと意外なところでは、コープさっぽろ、城南信用金庫、ワタミなんて言う名前もあります。残念ながら、金融37社の中には、城南信用金庫と芙蓉総合リースのみ。メガバンクや地銀等の名前はありません。

RE100プロジェクトに参加するには、事業運営を100%再生可能エネルギーで行うことを宣言しなければなりません。多くの現参加企業は、合わせて100%達成の年を同時に宣言しています。100%達成は、企業単位で達成することが要求され、世界各地に事業所等がある企業は、その全てで100%を達成しなければなりません。また、ここで定義される「再生可能エネルギー」とは、水力、太陽光、風力、地熱、バイオマスによる発電を指していて、原子力発電は含まれないようです。

TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)

気候関連財務情報開示タスクフォース、だそうです。G20財務大臣・中央銀行総裁会議の指示により、金融安定理事会(FSB)が設置したTCFDの提言が2017年6月に公表されたことをきっかけに、気候変動に関する企業の取組について、投資家等からの情報開示の要請が高まっているということです。

気候変動を含むESGを、リスク管理の強化や新商品の開発といった企業競争のために、どのように活用できるかという視点で、長期戦略の問題として取り組んで行こう。という世界的な取り組みらしいです。つまりこちらは、企業が加盟するとかではなく、賛同して取り組み、投資家に開示する、といった文脈で使われることが多そうです。FSBが中心になっているということもあり、金融機関はこちらへの取り組みがメインになっている模様です。

長くなりました。SBTについては明日、その2として書きますね。