とうとうやったか「みずほ」 やっとやったか「三井住友」

4/17 日本経済新聞の金融面で、両社の「初めて」の記事が紹介されていました。みずほに関しては、中小企業向けのオンライン融資に大手で初めて参入するという話題。三井住友は年功序列制度からの脱却を目指し、若手を管理職に登用するなどの人事改革。なかなか面白いコントラストで、とうとうやったか、、、と、やっとやるんですか、、、。というメガバンクの動向が伝えられてます。

みずほ銀行

ロットの小さい中小法人向けの融資。これまでは地域金融機関が担ってきたゾーンですが、ネットの発展やAIの進化で、とうとうこのゾーンまでメガバンクが進出です。第一報はすでに一週間くらい前に日経が伝えていましたが、地銀や信金の皆さんはどう感じてるんでしょうか。

こうした法人の規模による金融機関の棲み分けも、なくなったと言われてきましたが、今回のみずほの戦略は、かなり小規模法人までを根こそぎという感じがしますね。融資業務は95%AIが業務を代替できると言われてますし、他のメガバンクも当然追随するでしょう。なりふり構わず、、、って感じです。

三井住友銀行

一方の三井住友は、年功序列から脱却して、最短8年目で管理職への登用に道を開くんだとか。また、定年を65歳に伸ばし、50代以降の給与水準を引き上げて、長く働ける環境も整えるとのことです。50代半ばで多くの人が関連会社や取引先に出て行ってしまうという銀行の文化も変わるかも、としています。

50代半ばで社外へ去るという制度、実はもう制度的に回らなくなってきてるんですよね。受け入れ先がなくなってきているということです。昔のように取引先に睨みがきくような時代ではなくなりましたし、子会社や関連会社にしても、どんどん人を受け入れられるほど景気は良くないです。銀行の人事部が受け入れ先を用意してあげられなくなってきているという事情も大きいはずです。

最短8年目で管理職へ登用というのは、良いことだと思うんですが、、、。銀行の今の文化の中で30歳になったばかりの課長さんが年上の部下を持つってのはかなり気の毒な気がしますね。まずは制度よりも、カルチャーを変えないと。処遇面でも成果主義の色合いを強めるとしていますので、こういうところでカルチャーを変えていくんでしょうね。残された時間はあまり長くなさそうだけど。

実は二つの記事、いずれも初めての領域に踏み込むというお話です。前者は踏み込んではならない業界におけるタブー領域に踏み込んだというニュース。後者はみんなそうするべきだと思っているのに、なかなかできなかった。それがやっと踏み込めたというニュース。そんなふうに感じたもので、変なタイトル付けてしまいました。

日本郵政 かんぽ株 主幹事 野村證券外し

4/17 日本経済新聞で「日本郵政 かんぽ株追加売却 主幹事野村外しの波紋」という記事がありました。日本郵政がかんぽ株の主幹事等を公表したのが今月4日。なんでまたこのタイミングでこんな記事が掲載されたのか、ちょっと良く分かりませんね。

野村不動産を巡る意趣返し

2年前に日本郵政が野村不動産を買収しようとしたものの、価格面で折り合わず、破談となったことに対する意趣返し。というのが今回描かれているシナリオのようです。もともと野村証券が持ち掛けた買収話だったんでしたっけ。しかし、そんな大人げないことやりますか?おまけに2週間も経ってから蒸し返すような話ですかねぇ。と、思います。

今年1月、もう一つ野村外しがあったようで、こちらはかんぽ生命が初めて発行した劣後債。引受先は大和、みずほ、三菱UFJモルガンの3社だったそうです。このタイミングで2回の野村外しに対してこんな記事が出るというのは、この後に控えている日本郵政株第3次売り出しに向けての牽制という意味でもあるんでしょうかね。となると、野村が書かせた記事ということになりますか。

ただ単に不芳な業者外しじゃないの?

とまぁ、いろいろと背景だとか、誰が書かせているのか、、、などと想像してしまう記事ではありますが、kuniは記事を読んで、ただ単純に「最近やらかした2社を外したんだ」と思いました。で、日本郵政の選定結果、全く違和感ありませんです。

直近3年間で4つの刑事事件、5人の逮捕者を出してしまった野村證券。3人は顧客のお金に手を付けてしまい、2人は社員寮で麻薬所持で逮捕。上場企業全部見渡しても、ここまで逮捕者出している企業はおそらくないでしょう。総合的な判断で主幹事外れて当然です。

記事では触れていませんでしたが、もう1社主幹事を外れてます。野村と同様、これまではグローバル・コーディネーターを務めていた、ゴールドマン・サックス証券です。こちらもマレーシア政府系ファンド「1MDB」の汚職問題に幹部が関与していて、壮大な訴訟に発展しています。こちらも総合的な判断で主幹事外れて当然です。

日本郵政側の判断としては、「不祥事を起こした業者は一定期間、取引先から外す」という普通の判断をしただけだと思います。日本郵政の公式な説明では「総合的な観点から選択した」とコメントしているようですね。実は証券界等では、反社会的勢力に該当する顧客との取引をお断りする際にも、「総合的な判断で」なんていう言い回しをするんですね。

働く高齢者 ひきこもり中高年 8050問題

4/16付け日本経済新聞の記事。1面には「厚生年金加入、70歳以上も」という働く高齢者に関する記事。そして、社会面には「中高年ひきこもり深刻 支える親も高齢に」という記事も。対照的な記事であり、日本を象徴する世代の今を見ているようでした。

働く高齢者

記事そのものは厚生年金への加入年齢に関する内容なんですが、注目したのは、「きょうのことば」という補足記事の方。「2018年の就業者数は、10年前に比べて255万人増え、6,664万人。15歳から64歳までの就業者数が54万人減ったのに対し、65歳以上では309万人増加した」とのこと。数字の出どころは総務省らしいです。

15歳以上64歳以下という、いわゆる生産年齢人口については、就労者数が54万人減っています。日本の場合、この生産年齢人口は今後どんどん減少していくわけですが、これを補って65歳以上が309万人も働いてくれているということですね。戦後の貧しい日本で生まれ育ち、高度成長期を支えてくれた世代。まだまだ日本を支えてくれてます。65歳以上の高齢者(この言い方は失礼ですかね)と女性の就労率拡大、日本の救世主です。

ひきこもり中高年

社会面の「中高年引きこもり深刻」。こちらはかなりショッキングです。内閣府が公表したデータですが、40歳~64歳の推計61万人が自宅に半年以上閉じこもっているとのこと。80代など高齢になった親が、ひきこもる50代ら中年の子を抱えて困窮するという現象を、福祉の現場では「8050問題」と呼ぶそうで、これが深刻になっているそうです。

収入のない中年の引きこもりですから、親を頼るしかありません。唯一社会とのつながりだったその親が高齢化してしまうと、完全に社会から孤立してしまうんですね。記事ではある教授の指摘を紹介していましたが、このひきこもりの世代が、就職氷河期で働き口を得られなかった世代なんだとか。平成10年前後、kuniのいた会社でも新人が採用できていませんでしたから、この頃の新卒の人たちだと思われます。

生産年齢人口のうち61万人もがひきこもってしまい、一方で、65歳以上の309万人もがまだ現役で頑張ってくれている。なんだか考えさせられますね。どちらもその時代や社会が産んだ日本人像、ということでしょうか。インターネットの普及でクラウドソーシング・リモートワークなど、人との交流なしで働ける機会も増加してきていると聞きます。この人たちにも頑張ってもらいたいものです。

欧米基準のESG 超々臨界圧 サーマルリサイクル

4/13 日本経済新聞に「石炭火力 狭まる包囲網 三菱UFJ、新規融資中止へ」という記事が掲載されました。石炭火力発電所の新設を取り巻く環境が厳しくなっているため、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が石炭火力発電事業への新規融資を、原則として中止する検討に入ったという記事です。程度の差こそあれ、融資を絞る動きは三菱に限りません。

超々臨界圧

この記事の中では、「CO2の排出が少ない最新鋭の『超々臨界圧』と呼ぶ発電方式も、原則として融資をやめる」と書かれていました。超々臨界圧というのは、石炭を燃焼させて作る蒸気を、従来よりもさらに高温、高圧にして発電する方式で、今の日本の技術では石油による発電とほぼ同レベルの二酸化炭素排出量を実現しています。

ところが、世界の世論はこのことを理解しようとせず、石炭火力は悪、石炭火力発電を推進する企業や、協力、支援する企業は悪。なんですね。このような国際世論が、今回三菱に新規融資の中止という決断を迫ったということですね。

石炭火力に依存する日本の発電にも大きな影響がありますし、今まさに発電能力を増強しようとしているアジアの国々に対する日本の輸出産業としても大きなダメージとなります。温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」に基づく国の目標も、「2030年度に電力に占める石炭火力発電の割合を、17年度比6ポイント減の26%とする計画」というふうに、石炭火力発電はひとくくりにされています。国際基準には勝てないんですね。

プラスチックのサーマルリサイクル

もう一つ似たような話があります。以前にも書きましたが、プラスチックのリサイクルにはいくつかの方法があって、その中に日本が得意とするサーマルリサイクルという方法があります。サーマルリサイクルというのは、廃プラスチックを焼却して熱エネルギーを回収したり、固形燃料にする方法で、日本でのリサイクル率にはこれを含めて計算されています。

ところが、国際機関が各国の取り組み状況としてリサイクル率を計算、比較する際は、このサーマルリサイクルとケミカルリサイクルを含まず、マテリアルリサイクルのみで計算されています。

経済協力開発機構(OECD)の報告書では、このマテリアルリサイクルで各国のリサイクル率が示されており、日本のリサイクル率は22%と、EUの30%を下回ります。ところが日本式で計算すると86%まで跳ね上がるんですね。これほどの差を生んでいるのが、サーマルリサイクルです。

二つの国際基準に悩まされる日本。独自の技術で先行してきたからこそ、こういうことが起きてしまうわけですが、ここはめげずに行きましょう。行政は理解を得るためにコツコツ世界に対して発信していく。民間は国際基準の技術をさらに発展させていく。両面からやっていかざるを得ないですね。

スズキ 完成検査不正

新車出荷前の完成検査で判明していた、検査データの書き換えなど不正事案についての調査報告書をスズキが発表しました。測定データの書き換えや試験環境が正しくなかった事例などの不正は、2018年9月の前回報告より約2500台増えて、1万1070台に拡大。これを受け200万台をリコール(回収・無償修理)して、2019年3月期連結決算で800億円の特別損失を計上するようです。

社長会見に見る無責任さ

新たにブレーキ検査などの不正が発覚。検査数値をかさ上げし、不合格の結果を「合格」としていたとのこと。ブレーキの制動能力が不合格の新車を販売してきたということですよ。ちょっと酷過ぎませんか。燃費なんかの合否とはわけが違います。だからリコールなんでしょうけど。

この会社、徹底したコスト削減で知られるそうですが、一方で品質管理を軽視してきたという実態が明らかになりました。当然、経営陣の責任を厳しく問う必要があると思います。ところが、社長会見では、「あくまで機能や品質などを確保したうえでのコストダウンと理解されるべきところが、誤った理解に結びついたのではないか」との発言も。他人事のような無責任さ。現場の理解に責任を転嫁してしまっているように聞こえました。

また、リコール対象を、「過去3年間に国内で販売して、まだ車検を迎えていない約200万台」としている点についても納得がいきません。要するに車検を一度受けていたら、その車の性能についてはもう自分たちの責任ではない。と言っているように聞こえてしまいます。

隠ぺい体質 経営の責任

「自動車業界の無資格検査は2017年、日産自動車やSUBARU(スバル)で発覚した。スズキは当時「無資格検査はない」と国土交通省に報告していた。その裏側で、検査補助者が単独で実施したことが発覚することを恐れ、書類の差し替えなどで隠蔽していた。こうした実態は課長クラスまで認識され、悪質だ。」

日経も珍しくここまでスズキの悪質性を書いています。200万台のリコールも、800億円の特別損失も、会社と株主の損失。経営者は報酬の減額ぐらいのことで、この難局を乗り切れるとでも思ってるんでしょうか。

ここ最近は老害ばかりが目立っていたスズキの会長。今回の会見等には出てきてないようですが、この人によるワンマン経営にも問題があったと思います。トップダウンで降りてくる徹底的なコストダウンに誰も逆らえない。現場で起きていることが経営に伝わらなかったと社長が言ってましたが、当然でしょう。この構図、スルガ銀行と何も変わらないですよね。