平成30年中の交通事故死者数について

1/5 日本経済新聞で、平成30年の交通事故死者数が過去最低となったことが報道されていました。2018年の全国の交通事故による死者は前年より162人少ない3,532人でした。これを読んで、警察庁のホームページで、統計そのものを確認してみました。

24時間以内の死者数

この統計は交通事故が発生してから、24時間以内に亡くなった方を集計しているんだそうです。つまり、集中治療室等でまる一日以上治療を受けた場合は、亡くなってもこの統計にはカウントされないということですね。

平成5年あたりからは、発生後30日以内の死者数についてもグラフが添えられていましたが、生データが提供されていないので正確な数値は読み取れません。24時間以内のデータよりも数百人多くなっているようです。

交通事故件数と負傷者数

死者数が最も多かった昭和45年を基準年としていて、この年のデータを指数:100として、その他の年と比較しているんですが、死者数は一貫して減り続け、平成30年は指数は21まで下がっています。つまり79%減少したということですね。

死者ではなく、交通事故そのものの件数を見てみると、ピークは平成16年になっています。この年負傷者数もピークを付けていて、指数でみると交通事故件数が133。昭和45年との比較で33%増加しています。負傷者数を見ても指数121。21%増加ですね。

こうしてみると、昭和45年をピークに死者数は減少してきたものの、交通事故件数は平成16年まで増加していることが分かります。まず、事故が発生した場合の衝撃を緩和するテクノロジーや、救命のためのテクノロジーが導入され、その後平成16年以降には事故そのものを発生させないためのテクノロジーが実装されていったと見ることができそうです。

月別交通事故死者数の推移

こちらは平成28年、29年、30年の3年分が集計されていましたが、やはり師走というだけあって、毎年12月が一番多くなっています。昨年で見ると、12月は410人で、最も少ない6月が235人。最も少ない月はこの3年間で2月、4月、6月となっていて、毎年違うみたいですね。

ついでにですが、去年12月の410人という死者数。月間データでみると28年12月の420人以来の400人超となっていて、約2年ぶりの高い数値になっています。

都道府県別交通事故死者数

都道府県別にみてみると、ほとんどの自治体が減少している、もしくは減少傾向を示す中、山形県、神奈川県、広島県が2年連続で死者数が増加していることが分かります。埼玉、千葉も明確な減少トレンドではないようで、人口の増加が影響しているのかもしれませんね。

以上、日経で報道されていなかった視点でまとめてみました。統計ってなかなか面白いです。

ソーシャルレンディング 金融庁は

昨年12月、関東財務局はソーシャルレンディング業者である「エーアイトラスト」に対して、1か月間の業務停止および業務改善命令を発出しました。証券取引等監視委員会の勧告による行政処分でしたが、併せて建議まで行っています。概要についてはこの記事を。

相次ぐ貸付型クラウドファンディングへの行政処分

一昨年の「みんなのクレジット」に始まり、「日本クラウド証券」、「FIPパートナーズ」、「ラッキーバンク・インベストメント」、「maneoマーケット」、そして「エーアイトラスト」。ソーシャルレンディング業者の不正が止まりません。FIPパートナーズに至っては改善の見込みがなかったためか、第二種金融商品取引業者の登録が取り消されています。

貸金業法の債務者保護

なんでこれほどまで悪行がまかり通っているのでしょう。どうやら、貸金業法が彼らの味方をしているようです。貸金業法は、例えば高利のローンで借入者が被害を受けないように貸出金利の上限を設けたりしています。つまりこの法律、融資先(債務者)の保護を目的としているわけです。

金融商品取引法の投資家保護

一方で、金商法は出資する投資家を保護する法律です。出資する対象となるモノがどういう輩かについて、徹底的に開示することを求めます。皆さんも聞いたことはあると思いますが、目論見書なんかがこれに当たります。貸金業法と金商法、それぞれの法律が相反する立場の融資先(債務者)と投資家(債権者)を保護しようとしているわけです。

匿名化のもたらした結果

現在のところ、この二つの法律のうち貸金業法の要請に応える形で運用されていて、ソーシャルレンディング業者は、融資先(債務者)の情報を匿名化かつ複数化して、ファンドの募集活動を行っています。当局からの要請なんですね。

仮に投資家と融資先が1対1の関係で投資ができるようになったら、実質的に投資家が貸金業をやっているのと一緒であり、問題がある。というのが当局の見解のようです。それで匿名化、かつ複数化しなさいと。

融資する先を匿名化できるし、複数化できる。要するに融資する先の実態は誰にも分らない状態で構わないという法律の要請を悪用し、実は全く実体のない融資先だったり、親会社の運転資金に充てたりといったこともできてしまうわけです。

金融庁の動向

金融庁は自らの指導で匿名化、複数化を進めてきましたが、一昨年から既に6件のソーシャルレンディング業者を行政処分してきました。こうした業者が悪いのはもちろんですが、当局も法の抜け穴のごとき状況を放置してきたと言われてもしょうがないですね。とうとう証券取引等監視委員会は建議も行いました。

金融庁にそろそろ法改正等を考えるよう促したということですね。建議の最後はこう締めくくられています。「貸付型ファンドに係る投資者保護の一層の徹底を図る観点から、投資家がより適切な投資判断を行うための情報提供や説明内容の拡充などの適切な措置を講ずる必要がある」

ここまで大きな動きはありませんでしたが、今回の建議を受けて、さすがに金融庁も動かざるを得ないでしょうね。

コーポレートガバナンス 社外取締役

平成の30年間でコーポレートガバナンスはどれほど進化したんでしょうか。確かに社外取締役は多くの企業で採用され、上場企業の93%が1人以上の社外取締役を置いていると言われています。ところが、2018年を振り返ってみると、それでどれだけ会社が良くなったの?社外取締役は機能しているの?という疑問は残ります。

社外取締役は機能するのか

はっきり言ってkuniは機能しないと思っています。例のスルガ銀行で不正が頻繁に行われていたころの社外取締役は、かの有名な元日本マイクロソフト社長ですよ。経営に関してはプロ中のプロが就任していたにもかかわらず・・・なんです。

なぜかというと、それはあまりにもその業界のことを知らないから。その会社のことを知らないからです。kuniも取締役会の根回しで何度も社外取締役を訪ねて行って、議案の事前説明をしてきましたが、とにかく骨が折れます。的を射た質問であればよいのですが、ほとんどが見当はずれ。本番の取締役会でも進行の足を引っ張るだけです。

会社とは異質な人材として、より広い視界で見地を提供できると言われますが、そうもいかないのが現実だと思います。スルガ銀行の件でも、「当行だけこんな高い利益率っておかしいだろ」という感覚が持てなければ、何の疑問も持たないわけです。全くその業界に関する知識のない社外取締役はそろそろ考え直した方が良いと思います。

社外取締役に求められる機能

会社執行部隊との異質性を求めて招聘された社外取締役。社内で何か経営陣に都合の悪い事実が出てきたとき、経営陣は何を考えるか。知られてしまうと面倒な奴が出てくる取締役会には議案としてあげることなく、内々に決済してしまおう。こう考えるのは当然のことです。

ではどんな社外取締役が必要なのか。経営陣にとって不都合な事実を隠し続けることが困難な、そんな事実に気付いてしまいそうな取締役ということになります。つまり、異質性と同時に、業界情報、社内情報への理解度が相応にある人材ということになるわけです。

大株主から社外取締役を

そこで考えられるのが、大株主や主要取引先からの社外取締役です。米国では社外取締役の要件として株主を排除する規定がありません。実態としても大株主から派遣されている社外取締役は多いそうです。これは日本においてもヒントになるのではないでしょうか。(ここではグループや系列、機関投資家といった大株主は意識していません)

当然、少数株主や他の取引先への悪影響が考えられますが、これらの問題は本質が明確であり、他の取締役による牽制は常に効かせることが可能だと思われます。どうでしょう。報酬稼ぎだけが目的のお飾り取締役ではなく、本当に機能する社外取締役。今年は本気で考えないといけない年になりそうです。

TATERUの調査結果を受けて西京銀行は

TATURUの特別調査委員会が調査結果報告書を公表し、取締役等の処分が公表されましたが、同じ12/27に西京銀行も自行での調査結果を公表しています。第三者委員会や特別調査委員会ではなく、あくまで西京銀行自身による調査結果です。

何で同じ日に

西京銀行自身が行った調査結果なのに、なんでTATERUの調査結果が報告される日に合わせたのでしょうか。TATERUの調査過程で多数の改ざんが認められていて、それが公表されると当行にも飛び火してくる。そのタイミングで、当行には責任がないことを公表しよう。てな感じですかね。

なんかそう見えちゃいますよね。TATERUと比べれば調査対象件数も少ないはずで、ここまで引っ張る必要なかったんじゃないの、って思ってしまいます。公表した内容を見るとなおさらそう感じです。

プレスリリースの内容

プレスリリースにおける事実認定に関する部分を全文引用します。

(以下引用)TATERUの特別調査委員会の調査結果によれば、TATERUの従業員による資料の改ざんが疑われる事実があると認定されておりますが、当行の社内調査の結果では、当行行員が融資審査関連書類の改ざんその他の不適切な取扱いに対し関与したり、不審に思いつつ見逃し融資手続きを進めたりした事実は確認できませんでした。

 また、当行が融資を実行したTATERUのアパートについては、高い入居率があることを確認しており、TATERUが施工するアパート向け当行ローンについては現在、延滞はなく、これまでに貸し倒れ実績も発生しておりません。(引用以上)

内容の評価

もう少し簡潔に言うと、「当行行員が書類の改ざん等に関与したり、知りながら融資を行った事案はありませんでした」ということを言ってるわけですね。つまり、改ざんが行われたとされる350件のうちいくつかは西京銀行にもあるけど、うちの行員は関与していなかったし、その改ざんに気付くこともありませんでしたと。

関与していたかどうかをどのような調査方法で確認したのか、どういう客観的な証跡により、当行行員が気付く余地などないと評価したのか。この辺りに疑問が残ります。既に様々なところでTATERUと西京銀行の件は悪評がたっているわけですから、もう少し誠意を感じさせる調査結果を報告するべきだったのではないでしょうか。

金融庁が立ち入り検査を行うという報道がありましたが、あれってその後どうなったんですかね。今回のプレスではなんとも評価できません。当局検査の結果を待つしかなさそうです。

化粧品輸出 5,000億円超へ 日本経済復興のカギ

この記事も12/31日本経済新聞から。日本製の化粧品の輸出拡大が続いているという記事です。2018年の1月~11月の輸出額は前年同期比で44%増だとか。1年を通じて初の5,000億円台で、6年連続過去最高を更新することになりそうです。

インバウンド+アルファ

インバウンド消費(いわゆる訪日外国人旅行者の日本での消費のこと)だけでなく、帰国後もその商品をリピートしてくれているのが増加の一因のようです。今年も中国で日本製の輸出に弾みがつきそうな法律が施行されるらしく、さらなる売り上げ増加が見込まれるそうとのこと。この法律って何?

中国で化粧品を販売するためにはCFDA申請なるものが必要らしいのですが、その方法について大きな制度変更が行なわれるようです。登録手続きの撤廃や輸入港の制限撤廃、申請できる地区の拡大といった規制緩和が行われるのではないかという観測があるみたいですね(長くなりそうなのでかなりザックリ説明しました)。 資生堂、花王など。日本の化粧品製造販売メーカーの対中ビジネスに追い風となりそうです。

東京オリンピックと大阪万博の経済効果

大阪万博が決定して以降、東京オリンピックや大阪万博といった催しを高度成長期のイベントの焼き直しとする批判的な意見をよく見るようになりました。「当時の成功体験を持つシニアの短絡的な発想」であったり、「こうしたイベントが経済、産業に与えるインパクトは過去のモノとは比較にならないほど小さい」といった意見です。

確かに日本の経済、産業はあの当時とは大きく変化しました。しかし、やることが決まったんだからどうやって成功させるかを考えるべきじゃないでしょうかね。kuniとしてはこのところのインバウンド消費に注目していまして、さらに帰国後の継続消費にも期待したいところです。

前回との違い

前回と今回の違いはインバウンド消費+αだと思います。前回も多くの外国人観光客を誘致したと思いますが、今回は間違いなくアジアからの訪日客が爆発的に増加するものと思われます。日本が変わった以上に、中国をはじめとしたアジアの国々は大きく発展を遂げました。その富裕層たちの購買力は今更説明する必要はないと思われます。

欧米人にとっての日本商品とアジア人にとってのそれはおそらく違っていて、アジア人は先ほどの化粧品のようにインバウンドで手に取り、買い付け、帰国後もリピートしてくれるんですね。文化や生活様式が近いアジアの人たちだけに、より生活に密着したレベルで日本の商品の魅力を知るきっかけになるはずです。中国、インド、アジアの人口侮れませんよ。

日本の魅力的な商品はハイテク産業機械や自動車だけではありません。化粧品や食品に至るまで、いくらでもあります。ホスピタリティを軸としたインバウンド消費。そしてインバウンド+α、日本経済再興のキーワードのような気がします。