契約締結前交付書面 ウェブ交付(電子交付)解禁

金融庁は1/10、「金融商品取引業等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」を公表しました。以前一度、改正に向けた調整が始まっている旨、書いた気がしますが、やっとですね。契約締結前交付書面の交付方法に関する規制緩和です。

業者の対応が悪いから改正って

改正にあたって、金融庁の言い分が面白いです。「上場有価証券やプレーンな債券については、現在多くの金融商品取引業者等において契約締結前交付書面を冊子にまとめて、全顧客に年1回交付する実務運用が行われています。このような運用は、顧客にとって必ずしも合理的な情報提供となっていないと考えられるところ、・・・」

いかにも法令は優れているが、これを遵守しようと業者がとっている行動が問題あるため、法令を改正するといった感じです。相変わらずですわ。複雑な法令に違反しないように工夫した結果ですよ。

まぁ、いきさつはともかく、、、今の時代にウェブで閲覧という方法を除外してきた法令の改正は歓迎すべきでしょう。これまでは年に一回、紙の書面を交付しなければならなかったわけですが、一度交付したことのある顧客に対しては、ウェブで書面の情報を提供することが可能になります。対象商品は株式等(上場有価証券等)および国債、地方債、社債とこれらと同等の外国債券といったところですね。

しかし、最良執行方針や無登録格付けとかは、、、? 相当値切られちゃった感じですね。

パブリックコメント

2/10までパブリックコメント募集だそうです。上場有価証券等についても、債券についても、そうですが、ウェブで提供を可能にするために、「次に掲げる要件のすべてを満たす場合に限り、、、」というくだりがあり、4つの要件が求められています。

金融商品取引業等に関する内閣府令第80条第1項に新設された第6号、7号。ここに置かれたイ、ロ、ハ、ニという4要件の理解と、さらにそれを実務でどう実現するかという点がパブコメの焦点になりそうです。

レギュレーション・ベスト・インタレスト(最善の利益規制)

選択11月号に「証券業界『顧客軽視』商売に荒療治」という記事がありました。米国SEC(証券取引委員会)が公布した新規制「レギュレーション・ベスト・インタレスト」が日本でも導入され、日本の証券界が壊滅的な影響を受けるだろうと予想しています。

レギュレーション・ベスト・インタレスト

日本語では「(顧客の)最善の利益規制」などと訳されています。7月に公布され、9月10に施行されています。2020年6月30日までに遵守しなさい、とされています。この新ルール、投資家に投資推奨を行う場合に、その投資家にとっての最善の利益を追求することを義務付けるものです。

つまり、証券会社の営業員は自身の経済的な利益や、その他の利益(会社の利益や関係会社の意向など)を優先してはならないわけです。この「レギュレーション・ベスト・インタレスト」を日本の金融庁も検討していて、同様のルールを日本でも導入しようとしているというわけです。

プリンシプルベース

いわゆるプリンシプルベースのルール(原則論)ですが、日本での導入、確かにありそうですね。米国のように法令として明記するに至るかどうかはビミョーだと思います。フィデューシャリーデューティー、顧客本位の業務運営と相次いで打ち出してきましたが、法令化はしませんでした。今回初めて法令化に踏み込むのかどうか、注目されます。

また、法令化されないにしても、「顧客本位の業務運営に関する原則」の中で、各原則(メインは原則2と原則3あたり)を明確化かつ強化するような改正は十分ありそうですし、それでも証券界には相応の影響が出ると思われます。「選択」が例示していた野村への行政処分。この時金融庁が振りかざした金商法51条は、原則であっても適用可能でしょう。

ちなみに「選択」さん、「昨年5月の野村の行政処分」、と紹介されていましたが、今年5月の間違いですね。

明豊エンタープライズ(8927) 有価証券報告書虚偽記載

10/23、証券取引等監視委員会は、明豊エンタープライズの有価証券報告書の虚偽記載について、法令違反が認められたとして、課徴金納付命令の発出を勧告しました。一報だけは見ていたんですが、ちょっとスルーしてしまってて。この会社もアパート等のサブリースを手掛けてる業者なんですね。JASDAQに株式を公開している企業です。

課徴金 2,400万円

平成26年7月期以降29年7月期までの13四半期の報告書において、重要な事項につき虚偽の記載を行い、提出したとのことです。虚偽の内容は、中国における住宅開発事業から発生した長期未収入金および長期貸付金に係る貸倒引当金の過少計上だそうです。

これ以上詳細は分かりませんが、未収入金と言ってますから、何かの売却代金の回収が不能になっている。長期貸付金と言ってますから、貸した金が回収できなくなっている。といったところでしょうか。にもかかわらず、貸し倒れ引き当てをしていないということで、その分、期中の利益を大きく見せようとしていたということですね。

明豊エンタープライズ社のホームページでも詳細は分かりませんが、勧告の段階ではあるものの、既に「特段の事情がない限り課徴金に係る違反事実等を認める方針」とあります。

子会社の明豊プロパティーズ

明豊プロパティーズという関連会社が、マンション、アパートの管理を行う子会社です。事業の案内を見ると、賃貸事業においては、業務委託(代理)と家賃保証(サブリース)が二本柱という説明になっています。

ネットで調べても、今のところサブリース関連で悪い噂などが出てくるわけでもありません。ただし、業績面で苦しんでいることは間違いありません。ソーシャルレンディング等にも絡んでいるようですし、今後の報道等は要チェックですな。

かんぽ生命、保険料二重徴収 日本郵政グループ経営 不作為の罪

日本郵政グループでの不正販売等に関するニュースが止まりません。今回はかんぽ生命で、社員が故意に保険料を二重徴収していたというニュース。新規の保険契約後半年以内に既存契約を解約すると、営業員に新規保険契約の手当てが入らなくなるため、半年以上既存契約を解約させず、保険料を二重に払わせることになっているというものです。

ニュースの伝える内容を見る限り、保険販売については乗り換えではなく、新規契約をとるようインセンティブが与えられていることが分かります。乗り換えを抑止して、新規契約を促すという会社としての経営の方向性は見て取れるわけです。

ところが、こういう戦略をとったにもかかわらず、「実質的には乗り換えだけど、新規の契約に見せかける手口が横行するのではないか」というリスクを想定し、そうしたことが行われていないことを確認するためのモニタリング態勢ができていなかったという結末です。営業戦略の推進には必ずその裏側にリスクが付いてきます。経営陣の不作為と言わざるを得ません。

日本郵政の社員が販売

かんぽ生命の個人向け保険を実際に販売するのは、全国で2万局を超える郵便局の職員とのこと。かんぽ生命から委託されて販売しているんだそうです。日経の記事では「郵便局では貯金集めをしながら、投資信託と保険を一緒に販売するところもあり、専業の保険会社に比べると知識や経験で劣る」などと書かれてました。しかし、保険も投信もそれぞれ販売するための資格取得というプロセスがあります。その中で法令や規則は真っ先に学んでいるはず。全く言い訳になりません。

投資信託 保険間の乗り換え

先ほど紹介した日経の記事にもあるように、販売する部隊は保険も投資信託も扱っているようです。保険の乗り換えは自粛、投信の乗り換えも自粛というルール等があると思われます。となると、次に懸念されるのは、保険と投資信託間の乗り換え営業です。投信を売却して保険を契約する、もしくは、逆に保険を解約させて、投信を買い付けさせるという勧誘です。販売にあたる営業員は苦しくなるとこれ(業界では他商品乗換などと言います)を考えます。

顧客にとってメリットのない取引は、基本的に一部の顧客にしか通用しません。本来投資信託を買う顧客と保険を契約する顧客は別(顧客のニーズに沿う商品を勧誘するべき)のはずですが、営業員にとって都合の良い取引をさせてくれる顧客は同一なんですね。だからこうした乗り換えが生まれます。

当然、経営としてはこのルールの潜脱行為としての他商品間乗り換えに関しても、目を光らせておく必要があるわけです。しかし、保険の乗り換えだけをとってもモニタリングできていなかった会社ですから、おそらく別の商品との乗り換えをモニタリングできているとは思えません。いずれこの話題も出てくるでしょうね。多くの場合、これらの取引は、「顧客にとって経済的合理性を欠く勧誘行為」として、是正を求められることになります。

おまけ

ゆうちょ銀行は以前スルガ銀行と提携していました。住宅ローンや個人ローンの媒介ですね。調査委員会まで立てて調査を実施。ゆうちょ銀行の従業員に審査資料の偽装等の不適切な行為はなかったとして、悪いのは全てスルガです、、、な感じで、提携を解消しました。

しかし、ここまで不適切な営業行為を見せられると、あの調査委員会の報告も心配になってきますよね。実はゆうちょ銀行側にも不適切な媒介行為がありました。なんてことになりはしないかと。

三井住友銀行 外貨建て保険 利回り明快に

何だか最近三井住友銀行がらみの話題多いですね。別にkuniが意識して取り上げているわけではないんですけどね。こちらは2/6 日本経済新聞の記事です。今月から窓口で扱う外貨建て保険の運用利回りを実態に近付けて表示するというお話。契約者の誤解を招きやすいと金融庁がケチをつけていた件です。

なぜこのタイミングで?

このニュースの面白いのは、なぜこのタイミングでこの話が新聞に掲載されたか、というところです。記事の中でも触れられていますが、生命保険協会と全国銀行協会はこの件について話し合いを始めていて、実質的な利回りも明記した資料を4月から配布する方向で調整を進めています。

普通に考えると、「どこまでやるか」を自主規制機関で調整している最中に、協会員、それもメガバンクがフライングで先に動き出すことって、普通はないんですよね。「そういう自主規制をやられると、大手は大丈夫でも中小は経営へのインパクトが強すぎるから勘弁してくれ」。まぁだいたいこういう声に対する調整が必要になります。

にもかかわらず、三井住友銀行がこのタイミングで自主規制に踏み切ると。踏み切らざるを得ない、特別な理由があったのではないか。と、勘ぐってしまうのはkuniだけでしょうか。大手投信運用会社で直販により手数料なしの投資信託を販売というニュースも三井住友アセットマネジメントでしたね。

ファイアーウォール規制違反の件との関係

例のファイアーウォール規制違反に関する金融庁の審判についても、その後聞こえてきませんし、公表もありません。そんな場面でやたらと金融庁が喜びそうなニュースの連続って、かなり違和感ありですよね。

司法取引じゃないけど、「当行が先頭切って投信手数料改革や保険改革に取り組んで参りますので、今回のファイアーウォール規制の件につきましては何卒よろしくお願い・・・・・・。なんてことがあるんでしょうか。この辺りはほぼ妄想の世界です。

(もう少しまじめな推測)ファイアーウォール規制違反は、当局の検査によって発見されたということですが、その検査の中で同じように、外貨建て保険の実質利回りについても指摘を受けていた可能性はありそうです。であれば、改善策の一つですから、金融庁の検査結果を待つことなく対応することはあるでしょう。

しかし、協会との調整とかってのは、できてるんですかね。やっぱり、いろいろ気になります。