株主の時代へ

明けましておめでとうございます。令和二年、資産運用元年の翌年の始まりにこの記事。

昨年末の日本経済新聞に「バブル30年 成熟した株 割高さ解消 成長の果実、株主に」という記事がありました。バブル時代の異常な高株価を引き合いに、今では国際的にみても、利益変動を素直に反映して株価が動く、普通の資本市場になったと評価していました。

持つ者と持たざる者

昔は「持つ者と持たざる者の差」といった表現が、主に「土地」を意識して使われることが多かったように思います。土地を持っていないことが格差の象徴の時代です。バブルが膨張して最も恩恵を受けたのが土地持ちだった時代のことですね。

格差を生む原因だった土地ですが、最近はどうも違ってきてるようです。日本企業はリスクを取った積極的な経営を控え、安定的な経営に甘んじてきました。多くの企業が内部留保に励み、その内部留保は自社株買いや配当の増加に回っています。

そうした流れの中で端的に表れたのが、従業員の処遇の低下(賃金の低下や非正規雇用の増加)と株主への配当金の大幅な増加であり、この大きな流れが格差社会を作り出してきた原因だったのではないでしょうか。

株主にならなければ

日経の記事の中でも次のような記述があります。「法人企業統計によると00年度から18年度までで、企業(金融除く)の純利益は7.4倍となった。その間、人件費の伸びはわずか3%だが、配当は5.4倍に増えた。付加価値の配分は従業員から株主にシフトしている。」

正規の従業員として生き残った人は3%伸びたかもしれませんが、リーマンショック等の影響で、この統計の期間中に正規雇用されなかった若者は増加しましたし、大量のリストラもありました。そうした人たちまで含めると給与の伸びは実感しにくいところでしょう。

「企業の成長の果実を十分に受けるには、株主になって配当を得続けることが今や重要だ。」と日経も書いています。米国がまさにそういう歴史で先行しており、日本がこれにならい始めた感じです。さらなるガバナンスの高度化は配当の増加につながります。資産運用が日本でも定着しようとしているところ、今後も株主になることの重要性はどんどん増していくと思われます。

資産運用 株式市場はいま(3) 東洋経済オンライン 平野憲一氏

東洋経済オンラインに「日経平均は『大相場への初期段階』の兆候がある」という記事が出てました。平野憲一氏(ケイ・アセット代表)という方の書かれた記事です。この方、立花証券のご出身だそうで、1970年に同社入社といいますから、kuniにとっても大先輩の方ですね。

積み上がった裁定取引売り残

同氏の説明。積み上がった裁定売り残やレバレッジETFの信用売り残が減少することなく、スルスルと日経平均は上昇してきており、この積み上がったままの売り残が解消するまで、息の長い相場になるのではないか、、、との見立てです。

また、投資家サイドへの取材を通じて、空売り筋も個人投資家も圧倒的に弱気が多いとおっしゃってます。確かにまぁ、弱気を決め込む理由はいくらでもありますからね。弱気の理由も沢山あるし、その影響で実経済も痛み始めているにもかかわらず、『なぜか相場は下げない』。

なぜか下げない

実は相場ってこういうところが大事なんですね。「相場は理外の理」などという格言もありましたっけね。なぜか下げない、、、ということは自分に見えていない何かがあるわけです。平野氏も何かそういう雰囲気を感じられているのかもしれません。この場面で「大相場」なんて言葉なかなか使えないものです。

平野氏は最後に次のようなことを書かれています。「大相場の予感がするが、それに投資家が気付くのは日経平均が27年ぶりの高値を再び抜いた時かもしれない。」うん、うん、そうかもしれません。

年末相場

2018年の年末は大暴落でした。10月からの3カ月間で日経平均は5000円下げ、19000円まで売り叩かれるといった荒れ相場でしたね。では、もう一年前、2017年を覚えてるでしょうか。この年の10月から12月末までの3カ月間は、逆に3000円超の上げ相場でした。今年は2017年ふうな感じでしょうかね。最後にもう一つ格言を。「相場は相場に聞け」。

資産運用 株式市場はいま(2)

日本の株式市場が下げ難くなりましたね。米国が下げた翌日にその強さを実感させられます。今日はそんな株式市場の強さについて、株式供給サイドから説明してみようと思います。

相次ぐ社債発行

9/19付け日本経済新聞で、「社債発行 世界で急拡大」という記事が1面トップで伝えられました。低金利を背景に、9月の一日当たり発行金額は過去最高ペースにあるとのこと。低コストで資金調達できることから、多くの企業が起債を急いでいるとしています。

日本だけで見ても、1998年の発行額を超え、過去最高を更新するのではないかと言ってます。こうして企業が調達した資金は、当然設備投資や研究開発に向かうわけですが、最近の流行として、「自社株買い」の原資にもなって行くことが注目されます。

株式の供給減 ROEの向上 

社債での資金調達が低コストで容易になるということは、一方で株式による調達(株式時価発行による増資)が減少することを意味します。つまり、市場に新たに供給される株式が減少するということです。このことは株式市場の需給をひっ迫させる方向に作用します(ただし、今後も株式持ち合いの解消売りは残りますが)。

また、調達した資金で自社株買いを実施することで、1株あたりの収益等は向上しますし、債券等の負債が増加するため、同企業のROE(自己資本利益率)も向上します。つまり、投資家から見た同企業の企業価値が向上し、投資対象としての魅力も増すというわけです。また、自社株買いはその買い付けという行為自体が、同企業株式の市場での需給を引き締める効果もあります。

市場への株式供給量が減少し、企業価値が増大し、投資対象としての魅力が増す。そこへ、先日書いた投資家サイドの大きな変化による中長期的な運用資金が継続的に流れ込んでくる。今、日本の株式市場で始まっているこのような変化は、決して侮れません。と、kuniは感じています。

資産運用 株式市場はいま

8月18日に「日本株式市場を取り巻く環境の変化」という記事を書きました。米国と中国の対立の構図は、意外に日本市場にとってメリットがあるのではないか。老後2000万円問題で、日本に資産運用元年が来た。そんな話を書いたんですね。

そして翌日にも「日本株式市場を取り巻く環境の変化(その2)」の中で、「米国や中国発で日本市場が急落する場面。コツコツ買っていきましょう。個別の銘柄が分からなければ、日経225投信やTOPIX、JP400といったインデックス投信でいいと思いますよ。」なんてことも書いてます。

日経平均株価 7月高値を更新

上記の記事を書いたとき、日経平均株価は20,500円程度でした。その後何度か2万円割れしそうな場面はありましたが、無事反発に転じ、9/13、先週末の終値は2万1988円。約1500円の値上がりとなっています。7月の戻り高値は更新してきました。

こうなってくるとメディアも一気に強気になってきます。
9/5「海外短期筋の買戻しによる上げ。一巡すれば一服するだろう」くらいの解説でしたが、9/11「300兆円を超える機関投資家の待機資金が控えており、日本株の上昇は意外に続きそうだ。」といった具合です。

日本市場の需給が中長期的に変化していくのとは別に、円安、強硬派のボルトン補佐官の解任、米中関係の一服、イランとの交渉開始といった、足元の材料や思惑で上げ幅を拡大したのも事実ですね。ただ、やはりここで重要なのは、日本株式市場の環境変化です。

押し目は買い

「押し目買い」という言葉があります。株価が中長期的に上昇していく際も、一時的に下落することはあります。この一時的な下げのことを「押し目」と言うんですね。そこで買いを入れることを「押し目買い」とか、「押し目を拾う」などと言います。今の日本株、まさにこの押し目買いで正解だと思います。