野村證券に見る証券界の向かう先

6/4付け日本経済新聞に、「個人向け証券営業に成果報酬型も」という記事が。野村が個人向けの証券営業で、成果報酬型の手数料体系の導入を検討していると伝えています。大手証券として業界をリードしてきた野村の動向。対面証券他社も追随するんでしょう。

まずは預かり資産の一定割合を報酬として受け取る仕組み

日経では、成果報酬型の手数料体系の導入をクローズアップしていましたが、野村としてはまず、預かり資産の一定割合を報酬として受け取る仕組みの導入を考えているようです。証券業界ではこれまで、金融商品を売買する際の手数料が収益の柱でした。

今後は顧客の同意を元に、この仕組みを導入するようで、併せて金融商品の販売手数料を引き下げるんでしょうね。そうすることで、営業員の回転売買(売り買いを頻繁に繰り返すことで収益を得る)に対するインセンティブがなくなります。長期投資を浸透させる効果があるといえそうです。

さて、この仕組み日本で受け入れられるでしょうか。お金や有価証券を無料で安全に預かってくれるのは当たり前と考える日本人の常識。この壁は結構高いように思います。銀行がいまだに逡巡する口座維持手数料の導入と似ています。銀行も野村の動向に注目しているでしょう。

1%くらいかな

預かり資産の1%を手数料としていただく場合、10年間で顧客は10%の手数料を支払うことになります。長期投資においては、これは意外に大きなコストです。このコストを払ってでも受けたいと思うような、質の高い投資アドバイスができるかどうかが鍵になります。

というのが一般論だと思うんですが、、、。実際のところはどうでしょう。どれだけ質の高いアドバイスができたとしても、結果が伴うかどうか(儲かるかどうか)は分かりません。日本の顧客はこの結果にかなりシビアなんですよね。

最初の一年が経過して、結果が出ていなければ、翌年の手数料取られる前に解約。みたいなことにならなきゃいいんですが。昔、ラップでこれを経験しました。

新型コロナショックは資産運用アドバイス事業に追い風 (日本資産運用基盤)

金融財政事情5/25号で、『リテール金融業界は「利潤消滅」前に事業モデルの転換を図れ』という記事を読みました。日本資産運用基盤の大原社長のインタビュー記事です。同社は28日の日経でも「地銀の資産運用助言」で取り上げられてましたね。

資産運用アドバイス事業の付加価値

大原氏は一貫して同じことを訴えてこられてるんですが、この記事では2点気になるお話がありました。その一つ目が「資産運用アドバイス事業の付加価値」について。ブローカレッジ事業もアセットマネジメント事業も手数料ゼロ化に向かうなか、資産運用アドバイス事業の付加価値は年率に直すと3~4%あるといいます。

この中から仮に1~2%の手数料を徴収しても、高い顧客満足を与えることができるはず、というお話。しかし、この1~2%の手数料を顧客からどうやって(どういう名目で)いただくのか、、、ってとこは難しいところです。もちろん、これは事業者が知恵を絞るところですが。

コロナショックはアドバイス事業に追い風

二つ目が、「コロナショックはアドバイス事業に追い風」というお話。米国で資産運用業界のアドバイス事業が伸びたのは、ベビーブーマーの退職時期に老後資金問題が社会問題化。これにリーマンショック後の混乱が追い風となって専門的な資産運用アドバイスが求められるようになったんだそうです。

日本においても昨年、老後2000万円問題が話題になり、運用に対する関心が高まったところへコロナショックですもんね。大原氏が指摘されている通り、非常によく似ています。ネット証券でも口座開設が急増しているようですしね。

日本における資産運用アドバイスに対するニーズは高まりそうだし、コロナは結果的に追い風になるかも、、、とは感じてたんですが、米国も同じような経緯だったんですね。勉強になりました。

リテール証券 手数料等ゼロ化の行き着くところ

ネット証券の株式委託手数料の無料化が始まったと思ったら、その流れがすぐさま投資信託の販売手数料や信託報酬にも飛び火。株式手数料をゼロにして、信用取引の金利で食っていくんだろ、、、と思っていると、野村が信用金利まで0.5%に下げてきました。なんでもかんでも引き下げ、ゼロ化の様相です。

最後の砦、資産運用アドバイス

もう顧客の注文を執行する業務(ブローカレッジ)では収益は上がりませんね。ただ、引き続きこうした商品へのニーズは残りますし、資産運用新興国の日本ではむしろ今後盛り上がっていくはず。プロによる資産運用アドバイスは最後の砦になるんでしょう。

金融財政事情2月17日号で、日本資産運用基盤グループの大原社長が資産運用アドバイス事業について、次のように書かれていました。「顧客とアドバイザーとの個別の関係性に基づく体験価値が大きいため、コモディティ化に対する耐性があり、事業利潤が比較的残りやすいという特徴がある」。なるほど、おっしゃる通りですね。

手数料ゼロの奔流(3)

3/4付の日本経済新聞では、連載3回目のコラム「迫真」「手数料ゼロの奔流」で、米国における顧客とRIA(投資顧問型独立アドバイザー)との関係性について紹介していました。

ある顧客の言葉として、「アドバイザーというより、友達よ」、「転職に伴う年金の移行に苦戦した時も、自分の母親の看病で大変なのに私の家まで来てくれた。ずっとついて行こうと思ったわ」というのが紹介されていました。ようするにこういうことなんですね、顧客とアドバイザーの個別の関係性に基づく体験価値って。

米国のRIAは売買手数料は取らず、預かり資産残高の1%程度を報酬として受け取るそうですが、このスタイルは超低金利の今の日本で受け入れられるんでしょうか。実はここが一番の鬼門のような気がします。安全性を重視した運用だと、この1%がなかなか稼げない国ですからね。報酬体系についてはひと工夫必要な気がします。

兜町の風雲児 中江滋樹がひっそり死んでいた

兜町の風雲児と呼ばれた投資ジャーナル元会長、中江滋樹氏がひっそり亡くなっていました。2/20、葛飾区の自宅アパートの火災で、焼け跡から変わり果てた姿で見付かったそうです。kuniが証券界に入った年の前年には詐欺容疑で逮捕されていましたが、それまでの勢いは凄かったんです。

加藤あきら 中江滋樹

2016年12月、これまた兜町の風雲児と呼ばれた仕手筋、整備グループの元代表、加藤あきら氏が亡くなっています。75歳だったそうです。そして中江氏もあっけない最期を迎えたんですね。66歳だそうです。

投資(というより投機)に対する考え方が違っていたような気がしますが、二人とも日本の投資顧問業のはしりですね。そして二人ともバブルが弾けるところまでの美味しい時代を謳歌した後、ひっそり消えていきました。一時はおそらく何百億というお金を動かしていた、ある意味日本の市場の中心にいた人たちですが、最期は本当にあっけないものです。

同じ日、野村證券は

バブルが弾け、金融商品取引法が施行され、証券取引等監視委員会も番人として機能する現在の市場では、彼らのような需給と資金力に頼った仕手戦はもう成り立ちません。本来あるべき資産運用の時代の到来に合わせるかのように、彼らが亡くなっていくのはまさに時代の交代を表しているようで・・・。

中江滋樹氏が亡くなった第一報(警視庁の公表日)は2月25日でした。同じ日、野村證券は国内で初めて、信託報酬を0%とする投資信託を設定することを発表しています。とうとう野村が動いたと言われる、これも資産運用の時代到来を象徴する出来事です。非常に対照的なニュースを同じ日に見せられ、複雑な気持ちでした。

※ 仕手筋(してすじ)とは
人為的に作った相場で大きな利益を得ることを目的に、巨額の投資資金で大量に投機的な売買を行う人やグループのことを指します。また、仕手筋が投機の対象にした銘柄を仕手株と言います。仕手というのは能に由来する言葉です。

信頼できない日本の組織・団体 1位 国会議員とマスコミ

休日の新聞って、ついつい読み忘れてしまったりすることありませんか?特に仕事のために読む方が多い日経なんかは、週末読めない人って多いんじゃないかと。今日の話題は土曜日の日経朝刊6面の特集記事、「郵送調査2019」です。特集記事扱いなので、日経デジタル版では表示されないという、残念な記事でした(ビューワーでは見れます)。

信頼できない日本の組織・団体

この質問に対する回答、第一位は国会議員とマスコミで、同じ46%の回答を獲得ですと。どうなってるんですかねぇ、この国は。アンケートの実施時期が昨年の10月~11月とのことですから、「桜を見る会」の話題で盛り上がってた時期に重なったというのもあったかもしれません。

ちなみに、3位は教師、4位が国家公務員、5位が警察。3位に教師ってのもまったくもって残念な話です。一方の、信頼できる組織・団体の第一位は、「自衛隊」。60%の方が自衛隊を支持してます。災害に明け暮れた2019年だけに、自衛隊のお世話になった方も多かったんでしょうね。

憲法改正や戦争関係の話題になると叩かれがちな自衛隊ですが、こういうところ(災害対応など)ではしっかり支持される。この辺りは日本人のバランス感覚を感じられますね。

お金に関する質問

あともう一問。お金の運用に関する質問です。運用は預貯金と回答された方が67%で1位でした。このアンケートでは回答の仕方までは詳しく説明されていませんので、この67%の方たちが預貯金以外の運用をしていないのかどうかわかりません。ただ、「『貯蓄から投資へ』にはまだ遠いようです。」という日経のコメントからすると、おそらく67%の方はその他の運用はしていない、ということでしょう。

老後2000万円問題に関するメディアの騒ぎは沈静化しましたが、お金の運用のに関する日本人の進化はまだまだこれからです。さあ、始めてみませんか、資産運用。

※ 全国の18歳以上の男女を無作為に抽出して、郵送により実施。1677件(55.9%)の回答を得たという世論調査です。