日野自動車 エンジン型式指定、初の取り消し

国土交通省は3/29、「自動車製作者に対する行政処分を行いました」というプレスリリースを公表しました。① 日野自動車株式会社、② トヨタ自動車株式会社、③ いすゞ自動車株式会社に対しての行政処分です。

処分の概要

国交省は道路運送車両法に基づき、日野自動車の大型の2種類、中型と小型で1種類ずつのエンジンの型式指定を取り消しました。1951年の同法施行以来、取り消し処分が実施されるのは初めてだそうです。型式指定は自動車の販売許可にあたるんだそうで、30日以降、指定を取り消されたエンジンの生産ができなくなります。

トヨタ自動車株式会社、いすゞ自動車株式会社は、不正のあった日野自動車株式会社のエンジンを搭載したバスを販売していたことから、行政処分を受けたという格好です。

やはりインパクトが

不正に認証を受けたエンジン、性能面でも問題ありということで、これはかなりインパクトのある不正だろうなぁと思っていましたが、案の定、エライことになってきたようです。日野自動車は3/29、2022年3月期の連結最終損益が540億円の赤字(22年3月期の最終損益はこれまで150億円の黒字を見込んでいた)になりそうだと発表しました。

この業績下方修正の要因は今回の不正問題だけでなく、過去を含めたリコールに伴う費用がほとんどを占めるとのこと。今後の出荷停止による販売減などは来期以降本格化するとみられています。

そもそも基準を満たせなかったことが不正につながったと考えれば、技術面の課題をクリアし、製造・出荷を再開するにはかなりの時間がかかるかも。その間赤字の垂れ流しに。

日野自動車 特別調査委員会を設置

3/4、日本市場向け車両用エンジンの排出ガスおよび燃費に関する認証申請において、エンジン性能を偽る不正行為があったこと、さらにそのエンジン性能に問題があることも公表した日野自動車。3/11には、「特別調査委員会の設置について」を公表しました。

特別調査委員会

中型エンジン「A05C(HC-SCR)」、大型エンジン「A09C」および「E13C」)に関して、排出ガスおよび燃費に関する認証申請において、エンジン性能を偽る不正行為があったということでしたが、小型エンジン「N04C(尿素 SCR)」についても、不正の有無は判明していないものの、実際の燃費性能が諸元値に満たないことが判明したようです。全滅ってこと?

設置した特別調査委員会の委員長は、榊原一夫氏。元大阪高等検察庁検事長、弁護士という肩書で、アンダーソン・毛利・友常法律事務所に所属されてるのかな。この方、昨年発覚した日本軽金属の認証不正に関する特別調査委員会の委員長もされてました。あの時は同委員会の委員長が途中で交代してこの方になったんですよね。どういう経緯だったのか知りませんけど。

日野自動車の経営陣

日野自動車の筆頭株主はトヨタ。50.11%を保有しています。連結子会社っていうことですね。現経営陣を見てみると、代表取締役社長がトヨタから来られた方のよう。取締役6名のうちトヨタ出身者は社長ともう一人の2名という体制のようです。

他に社外取締役が3名いらっしゃいますが、トヨタとは関係なし。監査役は常勤2名に非常勤2名の計4名。常勤、非常勤ともに1名ずつのお二方がトヨタ出身の方ですね。

取締役2名と監査役2名で子会社を監督してきたわけですが、不祥事が発覚しました。よくあるパターンだけど、今後経営陣にトヨタ出身者が増えそうです。ひょっとしたら完全子会社化なんてのもあるのかな。

日野自動車の次は いすゞ自動車は大丈夫か

先日、当ブログでも取り上げたように、日野自動車がエンジン性能を偽る認証不正を公表しました。公表後、同社株価は2日間で241円の下げ。公表直前の株価から26.9%の下げとなりました。エンジン性能にも問題があるということですから、しょうがない下げですかね。

下落率を検証

2日間の下げには日経平均株価の急落も影響しています。ウクライナ問題や原油高などの影響を受け、2日間の日経平均の下げは1,194円安で4.6%の下落でしたから、やはり日野自動車の下げは強烈でした。

一方で、もう一つ気になる動きをしたのがいすゞ自動車株式です。同じ2日間で234円安しており、下落率は15.4%でした。日野自動車ほどではないにせよ、日経平均の下げ率の3倍以上です。

業界の常識?

皆さんのご記憶にもあると思いますが、自動車業界って不正が出てくると芋づる式に同業他社でも出てくるんですよね。少なくとも過去はそういうことを繰り返してきました。国内の普通トラックではシャアを争うトップ2の両社ですから、「いすゞでも同じことが・・・?」という連想が働いたとしても不思議ではありません。

公表から3日目以降は、日野自動車が続落する一方で、いすゞ自動車は自律反発しています。が、横並び意識の強いこの業界、この後いすゞ自動車が「弊社でも実は・・・」という発表があってもおかしくありません。当面同社(その他の自動車会社もか)からは目を離せませんね。

日野自動車 エンジン性能を偽る認証不正が発覚

日野自動車は3/4、「エンジン認証に関する当社の不正行為に関するお知らせ」を公表しました。日本市場向け車両用エンジンの排出ガスおよび燃費に関する認証申請において、エンジン性能を偽る不正行為があったことを確認し、エンジン性能に問題があることも判明したということです。

日野自動車

日野自動車は、ディーゼルトラック・バス、各種特殊自動車、小型商用車、各種ディーゼルエンジンの製造・販売を手がけるトヨタの連結子会社です。国内の普通トラックでは、いすゞとシェア争いを展開する東証1部上場企業です。

不正の概要

日本市場向け車両用エンジンの排出ガス、および燃費に関する認証申請における不正行為ですね。中型エンジンでは排出ガス性能の劣化耐久試験において、大型エンジンにおいては認証試験の燃費測定において、それぞれエンジン性能を偽る不正行為がありました。さらに、エンジン性能に問題があることも判明したといいます。

もともとは北米市場向け車両用エンジンについて、社内にて排出ガス認証に関する課題を認識したことから、外部弁護士の主導の下、自主的に調査を開始し、現地当局への報告を実施しています。これまでの間に米国司法省からの調査も開始されているといいます。

これを受け、日本市場向けエンジンにも調査対象を拡大し、今回公表した認証に関する不正が発覚したということです。既に、国土交通省および経済産業省へ報告したとのこと。

認証不正があちこちで発生していますが、ほとんどのケースで「性能には問題なし」というパターン。日野の場合は不正に認証を受けたエンジンが性能面でも問題あり。これはかなりインパクトのある不正ですね。3/7の同社株は取引開始後早々にストップ安(-150円)となっています。

神東塗料 認証不正(その3)

神東塗料が水道管用の合成樹脂塗料の認証を不正に取得していた件。同社からの新たな開示はありませんが、経団連や日本水道協会からは反応や情報アップデートが継続しています。ここまでに出てきたお話を整理しておきます。

経団連

経団連の会長は1/24、定例記者会見で、「神東塗料が合成樹脂塗料の認証を不正取得していた問題に関して、非常に遺憾に思う」とコメントしました。経団連の会長が個別企業の不正に関して言及するとは。と思ったんですが、現会長は住友化学の会長だったんですね。住友化学は神東塗料の筆頭株主なもんで、、、なるほどそういうことね。

日本水道協会

日本水道協会はかなり頻繁に情報発信しています。1/16以降、認証品の出荷停止等が徐々に解除されてきています。直近の情報は1/28時点で既に「第8報」まで発信されています。事の重要性に配慮した迅速な対応が取られているようですね。

日本経済新聞によると、1/30、同協会が調査の対象を拡大することを明らかにしたと伝えています。これまで不正の疑いがある12製品の品質や水道水への影響について調査してきましたが、これとは別の12製品についても調査を拡大するということです。

不正の手口についても触れられていて、認証を取得するために協会に提出する塗料の試験片を、規格に沿わない方法で製造していました。

規格ではセ氏55~65度で24時間乾かすと定められているのに対し、80度で10日間乾燥させていたとのこと。さらに水で洗浄も。認証試験で合格するため、水に溶け出す成分がより少なくなるように不正な手順をとっていたということです。