オンコリスバイオファーマ(4588) インサイダー取引

証券取引等監視委員会は2/5、オンコリスバイオファーマの社員から伝達を受けた者によるインサイダー取引を認定し、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令を発出するよう勧告しました。

違反行為の概要

オンコリスバイオファーマの社員から、中外製薬との業務提携に関する情報の伝達を受けながら、その事実が公表される前にオンコリス株式を合計2万株買い付けたというもの。なんと買付代金は4,700万円だそうで。で、納付を命じられる課徴金の額は2,820万円です。

オンコリスバイオファーマの開示

この監視委員会の勧告について、オンコリスは2/5、2/8の二日にわたって情報開示を行っています。同社の社員が第三者に情報を提供したという指摘について、同社としてはそういう事実を確認していないというもの。また、監視委員会から「同社社員」に関する情報提供もないと。

重要事実を第三者に伝えたものの、その第三者を儲けさせる意図までは立証できなかったんでしょうね。それでこの社員はお咎め(課徴金納付命令)を受けていません。

また開示文では、監視委員会へ問い合わせた際の口頭回答として、「役員以外の関係者につき、まとめて『社員』という表現を使用するため、そのような表現となった」と聞かされたようです。

さて、ここで監視委員会が言ってる「まとめて社員」とはどういう意味でしょう。アルバイトやパート、派遣社員までも含んでいるという意味でしょうか。最近は受付嬢や秘書まで事務派遣っていうの珍しくないですしね。役員が密会等で秘書に漏らし、秘書がまた別のパトロンに伝えたとか、とか。妄想膨らむわ~。

話を戻して、このインサイダー取引、公表日の後場寄りまで買付けてるんですが、最初の買付けはその2週間も前からなんですよね。先日、モルフォの役員の課徴金命令が取り消されたように、実質的な決定時期の判断等が争われる可能性もあるかもしれません。

アイシン精機 子会社従業員のインサイダー取引

証券取引等監視委員会は1/29、アイシン精機子会社従業員のインサイダー取引について、課徴金納付命令を発出するよう、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して勧告しました。この子会社がアイシン精機に吸収合併されるという重要事実を知りながらの取引です。

法令違反の事実関係

課徴金納付命令対象者は、アイシン精機の子会社であるアイシンAWの社員であるが、その職務に関し、アイシンAWの役員甲がアイシン精機との合併にかかる基本合意契約の締結の交渉に関し知り、その後、同社の社員乙が職務上知った。

アイシン精機の業務執行を決定する機関がアイシンAWと合併を行うことについての決定をした旨の重要事実を、乙から伝達を受けて知りながら、上記重要事実が公表された令和元年10月31日午後1時頃より前の、同日午後0時30分頃、自己の計算において、アイシン精機株式合計200株を買付価額合計76万円で買い付けたものである。

なんでこんなバカなことを

上記法令違反の事実関係は、監視委員会の説明をほぼそのまま掲載してみました。合併という重要事実が公表されるわずか30分前に買い注文を出しています。こそっとトイレかどこかでスマホから発注したんですかね。インサイダー取引規制のことを知らなかったんでしょうか。

自社や関係会社の内部情報に基づくインサイダー取引、100%バレますからね。取引所は監視委員会から言われたままに証券会社の手口情報を提供しますし、証券会社はその手口(買い注文や売り注文)の顧客情報をすべて提供します。

76万円で買い付けて課徴金15万円。微々たるものですが、アイシン精機は「同従業員に対する社内調査を進めたうえで、厳正な処分を行いました。」と発表しています。おそらく懲戒解雇でしょう。皆さんも気を付けてくださいね。インサイダー取引は絶対割に合いませんよ。

富士ソフトサービスビューロ ユー・エム・シー・エレクトロニクス 課徴金納付命令勧告

証券取引等監視委員会は1/29、富士ソフトサービスビューロとユー・エム・シー・エレクトロニクスの両社における有価証券報告書等の虚偽記載について、課徴金納付命令を発出するよう、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して勧告しました。

富士ソフトサービスビューロ

同社は東証2部上場。名前の通り富士ソフトの子会社ですね。ビジネスプロセスアウトソーシングやコンタクトセンターサービス、人材派遣などを手掛けている企業です。2年前に虚偽の要員計上による誤請求が発覚、その金額の総額は2年間で約3億円弱にのぼったという事件。

その結果、売上を過大に計上し、重要な事項につき虚偽の記載がある有価証券報告書及び四半期報告書を提出したということです。課徴金の額は1,200万円です。

ユー・エム・シー・エレクトロニクス

ユー・エム・シー・エレクトロニクスの方は当ブログでも取り上げてきました。2名の取締役副社長の関与の下、多数の海外拠点において長期間にわたり不正会計を行っていたという事件です。そのため虚偽の記載がある有価証券報告書及び四半期報告書の提出となりました。

さらに、同社は重要な事項につき虚偽の記載がある「有価証券届出書(株券の募集)」を2度にわたり提出していて、それぞれ40億円と80億円の資金調達をしています。これに関する課徴金の額が半端なく、3億9,615万円となっています。

最初の有価証券届出書(株券の募集)に係る課徴金の額は約1億8,500万円。二度目の有価証券届出書(株券の募集)に係る課徴金の額は約1億8,800万円ですから、合計で3億7,300万円ほど。発行開示書類に関しては、かなりお高くつきます。これがなければ、いわゆる継続開示書類のみの課徴金となり、2,400万円ほどですね。

クリエイトジャパン 証券取引等監視委員会が検査結果に基づく勧告

証券取引等監視委員会は13日、金融商品取引法違反行為が認められたとして、クリエイトジャパン株式会社に行政処分を行うよう、内閣総理大臣及び金融庁長官に対し勧告しました。クリエイトジャパンはFX(外国為替証拠金取引)とCX(商品先物取引)の会社です。

不招請勧誘に関する法令違反

違反行為として2種類の行為があげられています。一つは、勧誘受託意思確認義務違反というもの。FX等の勧誘に先立って、顧客に対し「勧誘を受ける意思の有無」を確認しなければならないんですが、これを確認することなく勧誘していたということです。

そしてもう一つが、再勧誘の禁止違反というもの。勧誘を受けた顧客が「FXはやらない」とか「勧誘を引き続き受けることを希望しない」という意思表示をしたにもかかわらず、FXの勧誘を継続したということです。

それぞれ、金商法第38条第5号、第6号の禁止行為に該当する行為。FX等のデリバティブ取引の勧誘に関して設けられた、いわゆる不招請勧誘ルールです。同社では長期間にわたり、継続的かつ恒常的に多数の営業員により、これら法令違反が行われていました。

経営管理態勢

経営管理態勢が極めて杜撰であると指摘されています。代表取締役が「顧客からの苦情等がなければ法令等遵守に問題はない」と安易に考えていた。営業責任者である担当役員はこの法令違反行為をむしろ容認し、行わせていた。などと指摘され、、、酷すぎますね。

経営が率先して、違法かつ積極的な営業を行わせ、法令違反を発生させないための管理態勢も設けない。今でもこんな悪質な会社があるんですね。今から10年位前かな、監視委員会によるFX業者の一斉検査が行われてました。こういう会社はその時一掃されたかと思いましたが、、、。

北川工業株式 TOBに関するインサイダー取引で課徴金納付命令の勧告

証券取引等監視委員会は9/11、北川工業に対するTOBに関してインサイダー取引が行われたとして、2人に対して課徴金納付命令を発出するよう金融庁に対して勧告を行いました。日東工業という会社が北川工業に対して実施した公開買付(TOB)を巡る取引です。

役員はセーフ

公開買付が公表されると多くの場合、株価は上昇します。そのため、公開買付を実施することを決定し、その旨を公表するまでの間にその情報を手に入れ、対象銘柄を買い付けることが出来れば、かなりの高確率で儲かるわけですね。今回は二人がお縄になりそうというお話。

一人は公開買付者である日東工業の役員から情報の伝達を受けた者(ある報道では愛知県の30代女性となっている)が235万円の課徴金。もう一人は日東工業と文書開示に係る契約を締結していた企業に勤める者から情報の伝達を受けた者、こちらも238万円の課徴金。

気になるのは、公開買付に関する情報の受領者がインサイダー取引を問われているにもかかわらず、公開買付者の役員が情報を伝達したことについては、法令違反に問われていないことです。

「重要事実の公表前に売買をさせることにより他人に利益を得させる」等の目的を有していなければ、日常会話の中で重要事実を話したとしても、基本的に規制対象とはならないものと考えられます。。。というのが金融庁の「情報伝達・取引推奨規制」に関する見解です。

当該役員が30代の女性に利益を得させることを目的に伝達・取引推奨した、、、かどうかについては立証しきれない。そういう判断なんでしょうね。それにしてもどういうご関係だったのか、気になります。

なぜかメディアが揃って間違えている件

あと一点気になるのが、多くのメディア(新聞)が日東工業株式でインサイダー取引、と伝えていることです。どこぞの間違えた記事を使いまわしてるだけでしょうが。30代女性、、、まで調べるんだったら、対象銘柄くらいは正しく伝えないと。