証券口座乗っ取りで不正売買 そろそろ証券取引等監視委員会も

日本取引所グループ(JPX)は、サイバー犯罪集団が証券口座を乗っ取る事例が相次いだことを受け、証券会社や日本証券業協会、証券取引等監視委員会などと密に連携していることを公表しました。さらに傘下の日本取引所自主規制法人に特別チームを設けて監視にあたっているとも。

口座の凍結

不正売買による相場操縦が疑われる取引について証券会社などと連携し、把握した不審な取引を証券会社側に伝えることで、実行犯の口座の凍結などの対応も可能になりつつあるということです。ただこの口座凍結って法的な措置ではありませんので、あくまで証券会社の判断で行われているということでしょう。

ただ、こうした情報は当然証券取引等監視委員会にも共有されますから、監視委員会から金融庁へ勧告したり、事態の重さを考慮して、検察庁に告発することで起訴させることも可能になるかもしれませんね。バンバンやっちゃってください。

また新しい業務が

一方で、証券会社には、口座の凍結といった事後の対応にとどまらず、入り口での対応も求められそうです。口座開設時の本人確認の強化や、その後の取引のモニタリング。異常を察知した場合の当局への報告などなど。悪さする奴が出てくるたび、こうして証券会社の管理業務は増えていくわけです。

株式会社創建エース 特別調査委員会を設置

少し前の話題になりますが、株式会社創建エースは3/19、「特別調査委員会設置に関するお知らせ」を公表しました。昨年から証券取引等監視委員会開示検査課から開示検査を受けており、今回3/7に、外部専門家による調査を行うよう要請があったということです。3/19付けで特別調査委員会を設置済みです。

株式会社創建エース

株式会社創建エースは各種施設の設計・建設などを行う建設事業が中核。昨年7月、クリニックの会計事務などを受託するメディカルサポートを子会社化した東証スタンダード上場企業です。これまでかなり激しく社名変更を繰り返してます。96年、キーイングホームに、2010年、クレアホールディングスに、さらに、2021年、中小企業ホールディングスに、2023年、創建エースに商号変更といった具合。

調査要請の概要

同社子会社における、2021年9月から2023年6月末日までの取引の実在性、および取引先に対する債権の資産性について疑義がある、というのが監視委員会の指摘。会社側は現経営陣が就任する前の問題(中小企業ホールディングス時代の事案)であるとはしていますが。

監視委員会がここまでやるということは、ほぼ答えは出ているようなものかと。同社の直近の株価はただの22円。100円割れの株価は昔はよく倒産株価などといわれました。いわゆる箱企業なんて言われる、過去の経営陣が食い散らかしてきた企業のようですね。架空取引や不正な会計処理などがこの後出てくるものと思われます。

インサイダー容疑 ポラリス・キャピタル・グループ元社員を告発

証券取引等監視委員会は3/3、「総合メディカルホールディングス株式会社株券及び株式会社スペースバリューホールディングス株券に係る内部者取引事件の告発について」を公表しました。過去に例のなかった、プライベートエクイティ(PE)ファンドの社員によるインサイダー取引です。

ポラリス・キャピタル・グループ

告発されたのはポラリス・キャピタル・グループの社員。ポラリス・キャピタル・グループは2004年にみずほ証券と興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現アセットマネジメントOne)出資で設立されたプライベート・エクイティファンド運営会社です。出ましたね、みずほグループさんです。

総合メディカルホールディングス株を巡り

2020年1~2月、ポラリスが調剤薬局運営の総合メディカルホールディングス(上場廃止)株に対してTOBを実施するとした未公表情報を入手した上で、同社株2,000株を約420万円で買い付けた疑いがもたれています。TOB価格から推察して、20%程度は儲けてそうです。

スペースバリューホールディングス株を巡り

2021年11月には、駐車場事業を手掛けるスペースバリューホールディングス(同)株へのTOBに関する未公表情報を基に、同社株2万7,000株を約2,390万円で購入した疑いがもたれています。こちらもTOB価格からみて約20%は儲かってますね。

アホな奴です。こんな仕事に就いていたら真っ先に疑われるの分からんのでしょうかね。2銘柄のインサイダー取引で数百万円儲かったのと引き換えに、この人の人生は終わりました。インサイダー取引は必ず見つかるのです。

ちなみに、スペースバリューホールディングス株について監視委員会は、「東京証券取引所等において買い付け」と記しています。取引所以外(PTSなど)での取得もお縄になるということです。

SMBC日興証券 幹部7人に加え法人も刑事告発 副社長も逮捕

証券取引等監視委員会は3/23、「SMBC日興証券株式会社による相場操縦事件の告発について」を公表しました。金融商品取引法違反(安定操作)の嫌疑で、嫌疑法人1社及び嫌疑者7名を東京地方検察庁に告発したということです。

おさらい

7人はSMBC日興が大株主から保有株をいったん引き取って投資家に転売する「ブロックオファー」取引に絡み、東証1部上場企業5社の株価を不正に安定させる目的で大量の買い注文を出した疑いがあるということですね。

とりあえず金商法違反を問われている5銘柄は、株式会社小糸製作所、株式会社モスフードサービス、アズワン株式会社、株式会社ファイバーゲート、株式会社京葉銀行の5社。先日書いたように、少なくともこれら以外の5銘柄についても捜査が進んでいるようです。

法人まで 副社長も

同社が行う自己売買の監視など、違法行為を防ぐための社内の体制も不十分だったとして、金商法の相場操縦罪に関する法人を罰する両罰規定を適用しようというものです。っていうか、役職員なのか、会社行為なのか、じゃなくて経営ですよ。多少あくどいことするにしても実績上げそうな外国人の専門家をスカウトしてきたってこと。

外国人の役員は雇われ期間中に最大限の成果を上げるだけ。後に法令違反を追及され、辞任に至ったところで、十分に元が取れてる。って話です。だからいつまでも質の悪い外資系出身者が後を絶たない。

この記事書いている最中、3/24の夕方には、この違法な取引に関与していたとして副社長も逮捕された、と報道されてます。

SMBC日興証券 相場操縦の銘柄さらに拡大

日本経済新聞は3/19、「別の5銘柄も相場操縦か 東京地検、SMBC日興幹部を追及へ」と報じました。元エクイティ部長ら4人が金融商品取引法違反容疑で逮捕された相場操縦事件で、逮捕容疑の5銘柄とは別の5社の株式についても捜査が及んでいるようです。

ブロックオファー

前回取り上げた際にも書きましたが、たった5銘柄だけの話ではありませんでした。まぁ、当然でしょうけどね。逮捕容疑の5銘柄として、小糸製作所やモスフードサービスなどの名前が挙がっていましたが、これら銘柄の売りについて、SMBC日興証券を選んだ株主(株を売却する顧客)も同じ穴の狢ってところです。

他の証券会社より即決で、かつ価格決定日の株価が大きく売られることも少ない業者(業者が市場で株価を買い支えるため)。という良い条件を提示するSMBC日興証券を選択したわけですよね。

売り方としては心強い業者ですが、引け際に出される売りが増加し、株価は下げないけど出来高は増加。不自然さは感じていたと思います。もちろん、ブロックオファーの噂を聞きつけて、引け際にカラ売りを出してくる投資家も問題ですけどね(こういう情報がどこから漏れているのかも闇だなぁ)。

東京地検

東京地検特捜部は18日、金融商品取引法違反(相場操縦)容疑で刑事責任を追及する方針を固めたそうです。過去にもいろいろとやらかしてきた会社だけに、監視委員会も目を付けてきた企業。地検特捜部も本気っぽいですね。