大きな揺り戻しが来る のか?

10/22付け日本経済新聞、大機小機に「非常識な時代」という記事がありました。従来の常識が通用しないあれやこれやを提示し、非常識な時代としてまとめています。読んでいて、なるほどごもっとも、、、なお話ばかりなんですが、少し変化の兆しというか、そろそろ揺り戻しが来るのでは、という感じがしました。

非常識の数々

「お金を借りたら利子を払う」、「物価は経済の状態を映す体温計」、「資本市場は企業が資金を調達する場」、という常識がそれぞれ、「マイナス金利」、「完全雇用でも物価は上がらず体温計は動かない」、「資本市場は企業が自社株買いを通じ、投資家に資金を返す場に変質した」、と変わってしまったと指摘しています。

まさにおっしゃる通りなんですが、問題はこれが恒久的に続く現象なのかという点です。ここでは、そうではないという観点で書きましょう。ここまで米国を除き主要国経済においては、中国の一人勝ちが続いてきました。彼らの理屈で動く経済に対して、従来の常識が壊れてきたと考えられないでしょうか。

中国が必要とするものについては価格は上昇したが、中国が生産し輸出するものについては価格破壊が続いた。民主主義が必要とするあらゆるコストを要しない中国に対抗するため、先進国の金利は低下を続けた。中国との競争に勝てる自信のない企業は、投資に踏み切れず、自社株買いに甘んじた。こんな整理もできるかもしれませんね。

揺り戻し 巻き返し

そんな中国の力にも陰りが見えてきました。トランプ氏の功績と言ってよさそうです。これまで中国の快進撃に端を発して起きてきた経済の非常識に揺り戻しや巻き返しが始まるのでは。そんな気がしています。日本株の復調が最も分かりやすい現象ではないかと。

また、スタートアップバブルが弾けたのも。株式市場が正常化する一因になりそうです。海のものとも山のものとも分からない企業に大金を投資して、上場を機に設けるという仕組み。上場手前でのバブルが弾ければ、投資家は再び市場に戻ってくるのではないかと。

民主主義と社会主義 米国 vs 中国

米中貿易戦争をめぐり、米中次官級協議が合意しそうだとか、進展がなかっただとか、そんな話題でマーケットは相変わらず一喜一憂しています。米中貿易戦争に関するメディアの論調としては、「誰も得をしないから、世界経済を混乱させるだけだから、速やかに交渉を開始し、関係を改善すべき」という感じの意見が多いかと思います。

社会主義の勝利なのか

しかし、見方を変えると少し違った景色にもなってきます。トランプ氏は米国民主主義の代表として、また、西側先進国を代表して中国と戦っているとも言えます。民主主義の下に開放されてきたマーケットを社会主義の中国が独占してしまおうとしていることに対する反撃です。

そんなふうに考えると、この戦いは中途半端に終わらせるべきではないようにも思えてきますよね。週刊東洋経済に、「建国70周年の中国から西側先進国への重い問い」という記事がありました。この記事の中で筆者は中国が西側に二つの問いを投げかけている。としています。

「民主主義に伴うコストは非効率ではないのか」
「個人のプライバシーの大切さはデジタル化がもたらす便利さに勝てるか」

常に過半数の賛同を得ることでしか立法できず、政策も展開できない民主主義。企業レベルでも同様です。確かにそこには膨大なコストが伴います。中国では選挙により民意を問う必要もなく、個人の権利を守るための数々の配慮や手間も必要ありません。社会主義だからこそ、恐ろしいほどのスピードで世界一に追い付こうとしているわけです。経済面で米国が中国に敗れるということは、民主主義の敗北を意味しています。

欧米で社会主義者が増加

このように中国と戦っている米国の足もとでは、格差社会に嫌気がさして、社会主義を望む若者が増加していると言います。彼らが考える社会主義は、中国や崩壊したソビエトのそれとはやや異なり、社会民主主義と言われるもの。富の大半が上位1%の富裕層に独占されていることに対する若者たちの反乱ですね。

こうした動き、民主党が先導するかたちで選挙結果にも表れてきています。トランプ氏が社会主義(中国)に対して強硬に対峙するのも分かるような気がします。

インドの人口ボーナス

少し前ですが、日本経済新聞の大機小機というコラムで「アジアは一強から三つ巴へ」という記事が掲載されていました。アジアではこれまで日本や中国のように、「一強」の時代でした。ここへ割って入ってくるのがインドというお話。そこで根拠としていたのが「人口ボーナス」でした。

人口ボーナス

経済の高成長を支える要件の一つとなるのが人口ボーナスです。人口ボーナスとは、「総人口に占める生産年齢(15歳以上65歳未満)人口比率の上昇が続く、もしくは絶対的に多い時期」であるとか、「若年人口(15歳未満)と老齢人口(65歳以上)の総数、いわゆる従属人口比率の低下が続く、もしくは絶対的に少ない時期」を指す言葉です。

生産に携わる人口が増加し、経済の労働供給力が高まることで経済成長につながります。また、高齢者の比率が低いこの期間は、社会保障費なども抑制されます。消費面では働く世代の拡大により住宅費や消費支出全般の増加が見込まれます。ちなみに、人口ボーナス期とは全く反対の時期を、人口オーナス期というんだそうです。

日本における人口ボーナス期は2005年に終了しています。その後先進国の中で最も少子高齢化が進んでいます。代わって中国がアジア一になったというわけですね。あまりに強くなりすぎたため、米国との間で貿易戦争になってしまいました。1980年代に日本がたどった道のりと一緒です。

これからのインド

これまでのところ、中国、インドともに高い成長率を維持していますが、両国の人口動態には明らかな違いがあります。国連の推計によると、インドの人口ボーナス期は2040年まで続く見通しとなっており、豊富な若年層が今後とも経済成長を後押しすることが期待されます。一方の中国は少子高齢化に突入しており、既に2010年から人口オーナス期に入っているんですね。

これから人口ボーナスを享受する人口1億人以上のアジアの国は、インド、バングラデシュ、パキスタンだそうで、特にインドは13億人の人口を抱えており、人口の半数は25歳以下。総人口も2、3年後には中国を抜くと言われています。次の時代、アジアで一番になる資格は十分だと思われます。

日本の9倍の国土を有するインド。コメの輸出は約1000万トンで世界一、自動車生産は5位、鉄鋼生産は約1億トンで日本と同じ。昨年の国内総生産(GDP)はフランスに次ぐ7位でしたが、5年後には現在の日本の水準に追いつくと言われています。年率7%の成長路線にあり、かつ潜在成長力を秘めた魅力的な経済です。

米中貿易戦争とそれに伴う中国経済の減速、米国の利下げに伴う円高におびえる日本の株式市場ですが、それはあくまで目先の話。長期の資産形成を考えるならば、視点を大きく変えることが必要です。人口ボーナスという成長力を図る指標は、長期投資には非常に有効だと思います。