天馬 外国公務員への贈賄 2500万円

東証1部上場の天馬。そのベトナム子会社が2017年と2019年に、現地の公務員に2500万円の現金を渡していました。この件については4/2公表の第三者委員会調査報告書の中にも出てくるんですが、5/11にその天馬が東京地検に自首申告したことが報じられました。

第三者委員会

第三者委員会の報告書では、このベトナム事案はX国天馬における事案と書かれていましたね。2017年には税関局職員に要求されて1000万円。2019年には税務局職員に要求されて1500万円を支払ったというもの。

現金の支払いは追徴税の減額を求めるものです。減額の見返りに税務局職員や税関局職員に袖の下を渡していたということですね。新興国では、現地の役職員が外国公務員からの金銭要求に日常的に遭うという現実があるそうです。

外国公務員から金銭要求された時にどのように対処するか。その現実的な対処方法を策定し、役職員に研修して指導してこなかったこと。無防備に海外展開していたことなどを、第三者委員会も発生原因にあげていました。

Y国天馬 Z国天馬

今回の報道ではベトナム現法だけが報じられていましたが、調査報告書では、Y国天馬事案とZ国天馬事案というのが登場します。どこの国かは分かりません。Y国天馬では4回にわたり計615万円の調整金(袖の下です)を税関課長へ。 Z国天馬では60万円の調整金を労働局職員へ。ただ、いずれも委員会としては事実の認定には至らなかったとしています。

自首申告

追徴税だぁと言われれば、違法に外国の公務員にお金を渡してそれを回避してきた会社が、今度は東京地検に自首申告ですかぁ。自主申告(最後くらいは正しい表記で)して既に改善対応しているからということで不起訴狙い?なんかこれって許せないんだけど。

第一商品(8746)の不正会計 第三者委員会の調査完了

第一商品株式会社は1972年設立、1996年に店頭市場(現在のジャスダック)に上場した企業です。金地金取引、金先物取引を扱う会社ですね。2015年3月期から2020年3月期第1四半期の決算に係る会計処理において、不正経理等に関する指摘を主務官庁より受けていました。3月上旬に第三者委員会を設置しています。

これまた酷い会社ですわ

最初に第三者委員会設置を公表したのは3/10でした。ところが同日すぐに公表内容の訂正が行われます。主務官庁から指摘された会計期間を誤って表示しています。さらに翌日第三者委員会の委員等が固まり、正式な委員会設置の公表をするんですが、ここでは第三者委員会の「調査の目的」が示されておらず、翌々日に再度開示するというドタバタです。

最初から躓きまくってるわけですが、4/30第三者委員会の調査報告書を受領したとのこと。翌5/1には過年度の決算短信等の訂正を行っています。ちなみに不正経理等について指摘した主務官庁というのは、経済産業省および農林水産省のようです。

広告宣伝費を偽装した謎の資金還流

かなりややこしい会計不正で、かつ15年前から続いてきただけに、ここで不正の内容を詳細までは説明できそうにありません。ざっくり書くと、、、「ある事業会社に対する長期貸付金12億円がまったく回収されないことに対して監査法人から指摘され、第一商品が広告宣伝費の名目で支払った資金を還流させて貸付金の回収をしていた」というものです。

貸した金を回収できず、自社が広告宣伝費の名目で支払った資金がぐるっと回って返済金になってるわけです。なんと毎月2000万円、51か月にわたって。実質的には債権放棄ですよね。

この事件の凄いところは、不正会計に関与した人物の肩書き。取締役会長、代表取締役社長、経理担当役員などなど、それも直接的に関与というか指示、実行。ガバナンスだのコンプライアンスだの、一切超越した会社です。金を借りていた企業および関係者、広告宣伝費を偽装して受けていた企業など、怪しい人物が登場しますが、、、週刊誌ネタとかになるのかな。

特別調査委員会設置 ネットワンシステムズ 日鉄ソリューションズ

ネットワンシステムズ株式会社と日鉄ソリューションズ株式会社は、12/13、特別調査委員会設置のお知らせを発信しました。両社ともこれまで社内調査を進めてきましたが、ここで外部の専門家を入れて特別調査委員会を設置することになったということです。

かなりの類似性

これって単なる偶然なんでしょうか。それまで社内で進めてきた調査を、同じ日に特別調査委員会設置へ格上げ。また、東京国税局による税務調査の過程で指摘を受けた取引であり、取引の実在性が問題となっているところまで一緒なんですね。

ネットワンシステムズでは、「一部の取引について納品の事実が確認できない取引との疑義」と表現されてます。また、日鉄ソリューションズでは「一部の物品仕入販売型取引に関し、その実在性に疑義を示された」と説明されています。要するに売上げの計上に係る疑義ですね。

両社の間での取引が問題になっているということでもないんでしょうが、類似点が多すぎてどうしても気になってしまいます。そこで思い出すのが・・・。

6年前の悪夢再び?

売り上げの過大計上、循環取引など、、、何が出てくるのか待つしかありませんが。ネットワンシステムズに関しては、6年前の事件が頭をよぎった株主も多かったんじゃないでしょうか。発表後、月曜日の株価が一時400円以上下げたことからもそうした背景を感じさせます。

この事件、社員が外部業者らと共謀して、架空の外注費名目で同社に対し不正な請求を行わせる手口で、7年間で8億円近いお金を騙取していたというもの。この時の共謀した犯人3名は、ネットワンシステムズ、十六銀行、TISの社員でした。

いやいや、ネットワンシステムズと日鉄ソリューションズの間でまた同じことが・・・、と疑っているわけではありません。たまたま同じ日だっただけだと思います。

不祥事対応での第三者委員会報告書と秘匿特権

皆さんは猫レンジのお話、ご存知でしょうか。米国でおばあさんが濡れた飼い猫を乾かそうと、電子レンジに入れてチンしてしまった。当然猫は死んでしまうんですが、おばあさんはレンジの取扱説明書にそのことが書かれていなかったとして、メーカーを訴え、勝訴したという都市伝説です。今では、それくらい米国が訴訟社会であるというたとえ話ですが、昔は本当にあった話のように伝えられてました。

2/11 日本経済新聞の記事「公表リスク悩む企業 不祥事対応での第三者委員会報告書」は、まさに訴訟社会である欧米と日本の違いを感じさせる記事です。

秘匿特権というのは、弁護士と依頼人のやり取りについては、裁判の証拠から外すことができるという権利で、日本にはない権利だそうです。米国における訴訟を準備せざるを得なくなっていた神戸製鋼は、秘匿特権を放棄したと見られかねないため、第三者委員会報告書の公表をあえてしなかったということのようです。

秘匿特権を放棄したとみなされた場合、当局調査や集団訴訟に対して、証拠をすべて開示せざるを得なくなるということですね。

日本の特殊性

一方で日本では、弁護士等で構成された中立の立場の第三者委員会が徹底的に調査し、結果を隠すことなく正直に公表する企業の姿勢を評価するお国柄。訴訟等で不利になる材料を提供することになるかもしれませんが、世論や社会を敵に回すよりは良いという判断があると思われます。

米国ではしばしば法外な(日本人から見て)賠償請求が認められるのを見聞きします。当局から受ける罰金なんかもそうですよね。日本では考えられない高い罰金を科せられ、その金額から、この会社は信用を無くしてもう駄目なんじゃないか、と思われる会社が結構その後も普通に存続します。

日本における賠償金(少額)と社会における信用の遺失(ダメージ大)=米国における賠償金(膨大)と社会における信用の遺失(小)、という関係が成り立ってるのかもしれませんね。日本では訴訟で負けてお金を払ったら決着とはなりませんが、米国では多額の金を払うので、それで決着してしまう文化があるのかもしれません。

第三者委員会の公正性と客観性

米国における訴訟との関係で、第三者委員会の調査結果を公表するかどうかという論点があることは理解しましたが、これも極端に突き詰めてしまうと、昔のオリンパスみたいに隠蔽に走ってしまうんじゃないかと心配になります。訴訟を控えてどこまで客観的な情報に蓋をするのか、そういう意味では同根ですよね。

米国等での訴訟を意識したとは到底思えない厚生労働省。第三者委員会の面談に幹部社員を同席させていたとか、という信じられないことが起きています。「第三者委員会の調査結果報告書を弁護士名で公表するかどうか」という話と、「第三者委員会の公正性と客観性を守ること」は別の話ですからね。