株式会社イメージワンにみる 第三者委員会の調査費用

株式会社イメージワンは2/22、「第三者委員会調査及び過年度決算修正対応に伴う特別損失の計上見込みに関するお知らせ」を公表しました。第三者委員会調査関連費用 22,406 千円、過年度決算修正対応費用 39,327 千円)を特別損失に計上する見込みとのこと。

おさらい

代表取締役社長及び1名の取締役が、同社子会社における新規事業参入にあたって、第三者に対して不正に金品を供与したと疑われる行為があったこと、及びこれに関連する不正な行為を行った疑いがある。という、取締役の不正について第三者委員会で調査してきました。

今回の開示では第三者委員会調査関連費用 22,406 千円となっていますが、これは2024 年 1月稼働分の追加作業の費用だとしています。これに先立ち、前四半期でも特別損失の計上が公表されており、その時点での第三者委員会調査に要した費用は73,122 千円を計上する見込み、としていました。

調査委員会の費用

同社が第三者委員会を設置したのが昨年10月16日。調査結果を受領したのが今年1月15日でした。調査期間はちょうど3ヶ月ということになります。委員会の構成は弁護士、公認会計士である委員長と、弁護士2名、公認会計士1名の計4名となっていました。

4名の第三者委員会で3カ月間の調査を行い、当該調査に要した費用が約9,550万円になりました、という結果なわけです。もちろん、委員にどれくらい著名な方を招くか、とか、事案の調査範囲などによりかなり変動しますが、まぁ、一つの目安ということで。

第三者委員会のあり方に懸念 中村直人弁護士

7/1付けの日本経済新聞に、「第三者委、『マンネリ』懸念 企業法務の雄 中村直人弁護士に聞く」、という記事がありました。「企業が選ぶ弁護士ランキング」で21年まで10年連続で総合首位だった弁護士先生だそうで、おっしゃってること、とても納得できるお話でした。

中村先生の指摘

記事からいくつか引用します。
「(第三者委員会について)売り上げをあげるために弁護士側から仕事を取りに行くような風潮があることだ。それでは厳しく調査できるわけがない。イヤイヤ受けて報酬は慰謝料であると思うくらいがちょうどいい。」

いやぁ、深いですね。経営陣を徹底的に調べ上げるような仕事なので、それによっていただく報酬は、「いろいろご迷惑をおかけしました」って感じの慰謝料みたいなものとおっしゃってます。

「報告書が定型化している点も懸念している。動機・機会・正当化がそろうと不正が起こるという『不正のトライアングル』という理論が浸透しているが、それらの論点のみに終始しがちだ。実際はそれ以外に山ほどの要因があり、細かい分析が必要であるにもかかわらず取りこぼされている。」

これまたおっしゃる通り。一般化している方程式(不正のトライアングル)に当てはめて解決できるなら、こんなありがたいことはありませんが、そんな単純な話ではありません。

「(社外取締役について)、取締役にないノウハウを社外から補うという発想で人選を変えないといけない。経営者と同じような価値観を持った応援団ならいないほうがいい。だが経営者の多くは社外取締役に何かしてもらおうと思っておらず、害がないのが大事という意識のままだ」

これも今の日本企業というか、日本の経営陣が抱える最も大きな問題点です。とまぁ、こんなふうに日本企業のガバナンスが抱える問題点を鋭く指摘されていました。他にもまだまだ良いお話出てきますので、日経読み返していただければ。電子版であれば簡単に遡って読めますよ。

株式会社アクアライン (その3) 第三者委員会について

8/30付で消費者庁から業務停止命令等の行政処分を受けたアクアライン。9/2に処分を受けた旨を開示し、10/14には決算発表の延期と第三者委員会の設置も開示しました。さらに、10/15には四半期報告書の提出期限延長についても公表しています。

第三者委員会の調査対象

あまりにあくどい商売で、正直なところ開示内容(第三者委員会での調査に関する部分)を詳細には読めていませんでした。消費生活センター等への問い合わせや相談が大量に入っている、みたいな報道もありましたし、第三者委員会の調査は大変だろうなぁ、程度に思ってたんですね。

で、久しぶりに第三者委員会の設置に関する公表内容をじっくり読んでみたわけです。すると少々気になることが。以下に調査対象の部分を引用します。

① お客様宛通知を行ったことを受けて2021年10月22日までに当社に問い合わせがあった案件
② 本件処分の対象となった3案件を担当した当社サービススタッフが当社マザーズ上場時(2015年8月)から2021年10月14日までに関与した過去案件
③ (上記①②の案件を含む)当社マザーズ上場時(2015年8月)から2021年10月14日までにお客様から当社に寄せられた上記3案件と同種又は類似の案件(消費生活センターへの相談案件を含む。)

とにかくすべての受注案件を全件調査するのかと思っていたんですが、①でかなり対象を絞り込んじゃってますね。9/30に顧客に通知文を発送して、10/22までに問い合わせがあった顧客に限定しています。これってどうなんでしょう。

お客様宛通知を失念してしまった顧客や、面倒だから、また強面に絡まれるのが怖いから、みたいな理由で連絡を控えた顧客については対象外ということになります。本来はこういう顧客こそ救済されるべきですよね。

四半期報告書の提出期限を2か月も延長したんです。支払金額が不自然で、〇〇円以上の案件は全件調査するとか、もう少しやり方あると思うんですが。

ユニデンホールディングス 第三者委員会調査報告書を開示

英語版調査報告書を翻訳する際に、責任の所在や背景を不明瞭にする削除等が行われた疑いを調査していたユニデンHD。6/11、「第三者委員会の調査報告書受領のお知らせ」を公表しました。同調査報告書についても公表されています。

調査結果の概要

同社の米、豪連結子会社2社において会計不正が行われていたという事件。これに関する調査報告書を同社の幹部たちが改ざんしていたという事件。結果から言いうと、同社の創業者でもある会長が主導する形で行われていたということです。

英語版では、これら会計不正の原因は、「会長をはじめとするユニデンHDの経営幹部たちによる強いプレッシャーに起因するものである」とされていましたが、日本語版ではこの部分が削除されていました。あくまで子会社のインセンティブ獲得という利己的な動機により行われたことにしてしまったわけです。

詳細については触れませんが、同報告書には英語版と日本語版の対照表も付いていますのでご覧いただければと思います。非常に面白いです。

報告書を読んでみて

改ざんに関与した人物として、会長をはじめ、C、E、Bという方たちが登場するのですが、この方たちはほとんど既に退任されています。お一人だけが今も残っていて、その方がどうやら現在の常勤監査役のようです。

その常勤監査役が中心となって先日、監査役会が監査報告書で意見表明をしていました。会計不正の件に関して、現経営陣たちが無関心すぎるというような批判的な意見でしたね。ユニデンHDを守って(本人たちはそう思ってるかも)退任していった役員たちが、物申す格好でしょうか。。。定時株主総会は6/29開催予定です。

ユニデンホールディングス 第三者委員会を設置

ユニデンホールディングス株式会社は4/30、「第三者委員会設置のお知らせ」を公表しました。昨年6月に公表した不正会計に関する「日本語版調査報告書」について、英語版調査報告書を日本語に翻訳する際、改変が行われた疑いがあることを把握したためとしています。

調査結果と改善提案

というのが昨年6月に公表した調査報告書のタイトル。その内容は明らかに英語版を翻訳しました、って感じの日本語で、読んでて気持ち悪くなってくるような報告書でした。よくこんなの公表したもんだ、、、と、当時思ったものです。

その英語版調査報告書を翻訳する際に、「調査対象事項に関する責任の所在・背景を不明瞭にする改変が行われた疑いがあることを把握した」ということです。英語版は昨年4/30に受領し(未公表)、同6/3に日本語版を公表していました。この間に改変が行われたということですね。

調査の対象となった不正

そもそもの事件は、少なくとも2017年以降、UAC(ユニデンアメリカ)、およびUAUS(ユニデンオーストラリア)で、収益を水増しするための不正会計が行われていたというもの。これを海外の会計事務所に調査依頼して出てきたのが英語版調査報告書です。

責任の所在・背景

ところが、実は和訳する段階で責任の所在をうやむやにするような工作が行われていたというわけですね。当然考えられるのが取締役等、経営陣の関与についてでしょう。

そこで気になるのが、改変が行われて3ヶ月後の9/25、創業者の代表取締役会長が退任していること。不正会計の発覚などで遅れていた2020年3月期連結決算の確定作業にめどが立ったと判断し、本人の意思で退任しています。

まぁ、この方が直接関与したかどうかはともかく、第三者に依頼した調査結果を社内で書き換えていたんではねぇ。今度こそは、まともな調査結果を期待したいものです。