株式会社ベクトル(6058) 不適切会計で社内調査委員会設置

東証一部上場の株式会社ベクトルは10/9、同社子会社における会計処理に関わる社内調査委員会設置に関するお知らせを公表しました。連結子会社である株式会社あしたのチームの売上計上のタイミングについて会計処理の前提となる事実の精査が必要となることが判明したとのこと。

あしたのチーム

子会社のあしたのチームは、人事評価制度に関するコンサルティングサービス及びクラウドシステムの販売を事業とする子会社です。その傘下には台湾、シンガポール、中国、香港と、4社がぶら下がってるようですね。

監査法人による2021年2月期第2四半期レビュー手続きの中で、あしたのチームにおいて、同社の特定の取引に関わる売上について期間帰属の適正性に疑義が識別され、過年度の類似事象の存否を含めた事実関係についての精査が必要となることが判明したということです。やはり、在外子会社で起きた事件なんでしょうかね。

ベクトル(6058)

ベクトルの事業内容です。PR業務代行・コンサルティング、ブランディング業務、IRコミュニケーション、キャスティング、リスクマネジメント業務、マーケティングリサーチ業務、イベントの企画/実施、SNSコミュニケーション、マーケティング・・・。

なんとも昭和生まれには理解しにくい会社です。基本的にはPR事業を中心にしているようですが、「企業と生活者の運命の出会いを創り出す、コミュニケーションのインフラを提供」する事業ならなんでも取り組むって感じですかね。

1993年に設立された会社ですが、10の事業部門それぞれに複数の子会社を置いていて、その中には東証一部上場の(株)PR TIMESなんかもあります。有価証券報告書で数えてみると、全部で41社ありました。このサイズの企業で40社の経営管理(特に経理など)は大変でしょうね。その弊害が出たということでしょうか。

カンダホールディングス 子会社役員による横領

この事件に関する社内調査委員会の設置、実は8/21に開示されていたんですが、ノーマークでした。カンダホールディングス自体が東証2部上場で、その子会社での事件ということで、取り上げていなかったんですが、、、。9/29、調査結果報告書受領の開示が。

舞台は連結子会社レキスト

カンダホールディングスは総合物流企業です。その子会社のレキスト。一般貨物自動車運送事業の会社です。犯人はこのレキスト社設立以来、27年間にわたり、経理財務の職務を一人で担当してきた人物。

最終的には取締役管理本部長という肩書ですね。経理財務の担当責任者としての地位を利用して、毎月の人件費(給与)を水増しし、自己名義の複数の銀行口座に金銭を振り分けて振り込み、着服していたとのこと。

犯行の期間はなんと2000年4月~2020年3月までの20年間だそうです。さらにその間に不正に領得した金額の合計は719,212,273円。7億円ですよ、7億円。金の使い道は、定番の遊興費、投資資金およびその損失の穴埋めだそうで、被害額の回収可能性は極めて低そうです。

発生原因

これも分かりやすく、27年も同じ人物に重要業務を任せていたこと。会計データと銀行振り込みデータの照合(事後チェック)も同一人物。グループ各社に統一の給与システムを導入しようとしたが、この人物の反対で導入しなかった。などがあげられています。

統一給与システムの導入に際し、この人物が事務効率の低下を主張し、強硬に反対したため、給与システムのデータが他のシステムに連動せず、犯人によるデータの修正が可能な環境を残した格好になっています。

犯人が不正を働くための「機会」を提供、継続しただけでなく、この時点で親会社が子会社の不正を発見できる「機会」も失っているということですね。