スルガ銀行とサブリース契約 二つの記事

日本経済新聞11/13付け記事です。「スルガ銀行、旧経営陣ら提訴」と「転貸借業者 実態調査へ」の二つの記事がそろい踏みですね。

スルガ銀行、旧経営陣ら提訴

まずこちらはスルガ銀行が会長以下9人の取締役経験者等に損害請求訴訟を起こしたというもの。kuniが指摘してきたように、取締役全員が対象になり、責任を問われることになりました。と、思いきや、先日社長に就任した有国氏がこの9人に入っていません。

この取締役に対する訴訟は会社法の定めにより、社外監査役2名が会社を代表して起こしていますね。1名だけ執行役員(取締役ではない)が訴えられていますが、こちらの訴訟は代表取締役が訴える形になっています。あと、監査役の責任についても問わないことを決めたようですね。

しかし、それにしても。2016年には監査部管掌役員だった有国氏が、何も問われないのはいかがなものでしょう。当時の株主総会の資料では、「有国氏は取締役監査部管掌として当社の健全性確保に貢献して・・・」などと書かれてますけどね。

転貸借業者 実態調査へ

こちらは、頻発している転貸借契約(サブリース契約)に関するトラブルや苦情を受けて、とうとう国土交通省が業者の実態調査に動き出すというニュース。ご存知の通り、これもある意味スルガ銀行発のお話でもあります。

しかし、サブリース、やっと動き出しましたかって感じですよね。当然問題になるのは、業者がオーナーに対して契約の内容を正しく説明し、理解を得ていたか、という点です。つまり、「賃料が減額されることがある」とか「業者から一方的に契約解除できる」という、オーナーにとって不利な条項ですね。

サブリース契約について金融庁が注意喚起をしている、と以前の記事で書きましたが、おそらく国土交通省とは連携して動いていると思われます。国土交通省が転貸借業者や不動産会社、住宅メーカー、建設会社を、金融庁が融資を付ける銀行を調査という分担ですね。どんだけ本気で調査するかによりますが、結構いろいろ出てきそうですよ。

内部通報制度 その2

前回は企業法務の観点から見た、新しい内部通報制度の有効性について書きました。今回は内部通報制度の本来の機能について考えてみます。

ガバナンス強化による自己浄化

東証が公表しているコーポレートガバナンス・コードの基本原則2ー5では、内部通報制度に関する体制整備の重要性が示されています。違法、不正な行為等があれば、それを経営に伝えられるよう、また、伝えられた情報が客観的に検証され、適切に活用されることが重要であり、取締役会はこうした体制を整備する責務を負っているとしています

社内に存在する不正等は会社自らが発見し、これに対する対策を速やかに実施して改善していく。この体制を構築し、監督していくのが取締役の責務ということです。これが大原則です。

働き方改革法の施行と公益通報への対応拡充

セクハラやパワハラなどの各種ハラスメント、労使問題やコンプライアンスの問題など、内部通報制度が扱う課題は様々です。これらの課題ごとに別々のホットラインを設ける企業も多いと思います。

2019年4月に働き方改革関連法が施行されます。企業が遵守すべきルールが強化され、法令化されるわけですので、当然企業の取り組みに対する通報は増加すると考えられます。また、働き方改革の一環として、厚生労働省ではパワハラの防止策づくりを企業に義務付ける法律を整備するとしています。

さらに、これらの側面支援的な位置づけと思われますが、労働局における相談員の増員や、夜間や土日の相談窓口を新たに設けるといった、相談体制の拡充に取り組むとしています。公益通報への対応もしっかり進めていくということですね。

内部通報制度の実効性向上

こうなってくると、企業としても外部への通報を発生させないよう、内部通報制度を充実させていかなければなりません。外部通報、つまり先ほどの労働局の相談窓口などに相談されると、当然労働基準監督署の調査を受けたり、出頭要請を受けたりと、大変なわけですね。

問題ある企業については企業名を公表するとも言ってます。ハラスメントに真剣に取り組んでいない企業という評価を受け、これを公表されることは、絶対に避けたいところです。そのため、社内で発見して、社内で適切に対処、解決していくというプロセスが、これまで以上に重要になってくるわけです。

社内の問題や不正等を社外に流出させることなく、より早い段階で発見し、適切に解決していくためには、内部通報制度をしっかり浸透させ、機能させていく地道な努力が不可欠なんですね。

東洋証券 証券取引等監視委員会が金融庁に行政処分の勧告

10/30 証券取引等監視委員会は金融庁に対し、東洋証券株式会社に行政処分を行うよう勧告したようです。今事務年度最初の勧告ですね。

監視委員会による勧告までの流れ

実際に立ち入り検査を行ったのは、監視委員会からの命を受けた関東財務局です。その結果が関東財務局から監視委員会へあがり、監視委員会が金融庁に対して行政処分を行った方が良いと勧告した、という流れになります。勧告というのは、検査を受けた業者に対して処分をした方が良いよ、と告げて勧めること、つまり意見することです。このあと金融庁が行政処分を下します。

大手や準大手の証券会社は監視委員会本体が担当しますが、中堅以下の証券や地方の証券会社は、その地域の財務局が担当しています。東洋証券には関東財務局が立ち入り検査したというわけですね。

勧告の内容

実際に公表された勧告内容を読んでみました。「米国株式取引の勧誘に関し、虚偽表示又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」という法令違反行為を指摘しており、その具体例も書かれています。全文引用します。

誤解表示の具体例
1株=1,000ドルの銘柄を1ドル=120円の時に買い付け(1,000×120=12万円で買付け)、その後、1株=1,300ドル、1ドル=100円の時に売却(1,300×100=13万円で売却)した場合、為替差損益を考慮した円ベースの損益は売却時の円換算額(13万円)から買付時の円換算額(12万円)を差し引いた額(1万円)となるところ、かかる利益額ではなく、ドルベースの利益(1,300-1,000=300ドル)を売却時のレート(1ドル=100円)で円換算した利益額(300×100=3万円)を伝えることにより、円ベースの利益額を過大に誤解させた。

理解できましたでしょうか。要するにドルベースでの値上がり益を円換算して伝えているだけで為替変動による損失分を考慮せずに損益を伝えているということですね。言うまでもありませんが、徹底的にセールストークの通話録音を聞いて指摘するという以前の検査スタイルですね。

外国株の取引においては各社で起きていたこと

米国株式が絶好調で、大きく上昇してきたこの数年。日本株では全然稼げなくなった証券会社は、当然外国株式営業に傾斜していきます。そんな中で、証券界ではこのような損益の伝え方が問題視されていました。外国株式の損益状況を外貨ベースでのみ伝えることの是非です。外貨での運用を継続してもらうのであれば、外貨ベースでの利益だけでもいいんじゃないかといった議論もありました。。。これ以上書いていくときりがないので、詳細は別の機会にしますね(外国株式営業にはいろいろ問題がありまして)。

その後、このような説明については、是正し、改善した証券会社も多いとは思いますが、この東洋証券の勧告の話題で、朝から大騒ぎになっている証券会社もまだまだ多いと思われます。

収益優先で機能しなかったガバナンス

極めつけはこれ。「営業部門の責任者が社内検査で指摘を受けても是正してこなかった」、「経営陣は検査結果を把握していながら、再発防止の改善措置についてなにも指示しておらず、営業優先の企業風土を醸成していた」。ガバナンスの教科書に載せてくれと言わんばかりの状況です。

立ち入り検査が本格化する今日この頃、外国株式でかなり稼いできた証券会社の経営層のみなさま、御社は大丈夫ですか?

金融機関における個人不正 最近の傾向

このところ上場企業による組織不正・ 不祥事が毎日のように報道されており、 当ブログでも取り上げる機会が増えてきています。 今日は企業ぐるみの不正ではなく、 金融機関で発生する個人の不正について書いてみます。

企業不正・不祥事と個人不正の違い

企業の不正・不祥事はその発覚に伴い、 第三者委員会などによる調査結果が詳細に公表されますが、 個人不正(個人行為)についてはその事実だけが公表(報道) されることはあっても、 詳細について公表されることは稀です。 これが最も大きな違いでしょうか。

そのため、金融機関においても、 他社で発生した事象の情報を入手することが難しく、調査・ 検証できるサンプルが限られ、 発生原因や未然防止への対応について考える際に情報が不足しがち です。

個人不正の傾向

kuniの場合は、情報不足を補うため、 同業他社との情報交換なども積極的にやってました。個人不正、 特にその中でも顧客のお金に手を付ける、 または会社のお金に手を付けるといった、いわゆる詐取・ 横領などの重度の不正で見られる傾向は以下の通りです。

  1. 不正を行った行為者の年齢は40歳前後が多い
  2. 収益環境が悪化するなどし、 営業員個人への数字のプレッシャーが過大
  3. 高齢の顧客との間で発生
  4. 行為者の生活の乱れ、酒やギャンブルなど遊興費が引き金
  5. 営業成績が芳しくない社員が多い

こんな感じでしょうか。 40歳前後という年齢は、住宅ローンを抱え、 子供の教育費がかさむ世代と一致しており、 ある程度の権限も持つようになる年齢ということで発生しやすいよ うです。数字のプレッシャーというのは説明不要でしょう。 高齢者との間で発生する傾向があるのも分かるような気がしますよ ね。そして酒やギャンブルについては、 これは証券会社特有なのでしょうか。実に多いんですよ。

最近の個人不正の新たな傾向

最近出てきた傾向としては、「20代社員の不正の増加」があげられます。 加えて、営業成績が良い社員でも発生し始めています。 承認欲求というやつでしょうか、SNSなんかでいう「いいね」 を欲しがる欲求みたいなもののような気がします。 デキる社員として認められていたい、 デキない奴と思われたくない、 自分が数字を達成できないことでみんなに迷惑かけたくない、といったことが原因となっているケースもありました。

また、働き方改革により残業時間が減少し、 手取り給与が減少してきていることも原因の一つになりつつあるよ うです。加えて、大学を卒業したばかりで、奨学金の返済もあり、 かなり窮屈な資金繰りとなっていることが背景にあるケースもあり ました。

そしてkuniが発生原因の一つとして感じてきたのは、 金融機関に勤めているにも関わらず、 現金を取り扱ったことがないという実体です。 kuniが営業をやっている頃は、顧客から入金のために3, 000万円、現金で鞄に入れて支店まで持ち帰る、 なんてことが普通にありました。

しかし、最近ではこうした恐い経験はすることもなく、 ほぼ全て振り込みです。現金の束を見ること持ち歩くことは滅多にありません。 すると顧客のお金もデジタルに画面に表示されるだけ、 紙に印字されているだけで、 お金としての重みがなくなってくるんですね。だから、 お金を扱うにも緊張もすることなく、慎重さにも欠ける。 一種のゲーム感覚なんだと思います。

不正に限った話ではありません。 命の次に大切なお金を預けてくれる大切な顧客、 という感覚も次第に失われていっているような気がします。

管理職が気を付けるべきこと

若年層の価値観はおじさんたちとは違うということ。 これにつきます。 おじさんたちの常識は通用しないことを大前提にすることです。 育った環境も違いますし、時代も違っています。 良くできる社員だから大丈夫、でもないんです。 こんな落とし穴に落ちてしまわないためにも、彼らの価値観、 考え方を理解した接し方に変えていかなければなりません。

財務省再生プロジェクト

森友学園がらみで発生した決裁文書の改ざん問題などを受け(セクハラとかもありましたね)、再発防止に向けて作られたのがこの「財務省再生プロジェクト」だそうです。「上意下達の風土が不祥事に繋がったとの反省を踏まえ、法令遵守を徹底する組織に立て直す」んだそうです。

行政も民間も同じ

行政機関も一緒ですね。赤字部分だけサクっと読むと、スルガ銀行の改善策みたいじゃないですか。スルガ銀行と違って第三者委員会等による徹底した調査と開示が行われたわけではないので、その実体は分かりませんが、おそらく省内にはパワハラや労務管理の不備なんか山のようにあるんでしょうね。今年7月末からボストンコンサルティンググループの女性を登用して、民間の知恵を組織改革に生かそうとしてたわけですが、この際、スルガ銀行並みに実態把握して開示するべきです。

360度評価の導入に、内部通報制度の実効性確保。報道を見る限りでは目玉はこの二つのようです。今頃ですか?っていうのが実感ですよね。ある程度の規模の企業であれば、既にこれくらいの体制は確立できていますよ。そもそも行政が所管する企業に対して、この程度のガバナンスは求めてきたはずです。それでも自分たちは違うんだと思ってたんでしょうね。

今さら、この程度の実態把握なしの改善策では・・・

法令遵守を徹底する。こんな掛け声でコンプライアンスを推進していたのって、kuniの経験では15年前のことです。少なくとも10年前辺りからは、法令遵守なんて当たりまえ、コンプライアンスは企業倫理や職業倫理に踏み込んでいました。法令守るだけじゃなくて、法令や規則に定められていなくても、倫理に悖る行為はダメだろう。そんなレベルです。

ここ数年は、といっても金融機関の場合ですが、「顧客本位の業務運営」が求められてきたわけです。こんなのどこの法令にも規則にも書かれてません。企業がそれぞれ考え、顧客に選ばれるために、法令を超えた領域で努力しているわけです。

内部通報制度にしても同様です。制度を設け、その存在をしっかり周知し、通報者の保護が図られることをどうやって末端の職員にまで浸透させていくか。先行している民間の企業もまだまだ苦しんでいます。

現状をしっかり把握して、まずは膿を出しきるべきでした。これまでパワハラしてきた上司たちがそのまま残った中で、表面だけ取り繕ってお終い、では何も変わりません。その組織の風土であったり、カルチャーの領域まで変えていかない限り、また違った形で事件が発生するだけです。

と、ここまでは報道された内容に基づいて(かなり限られた情報を基に)書いてます。この再生プロジェクト、調査結果も含めて是非開示してほしいですよね。